誰でもできる? ダイベストメント
(* ̄∇ ̄)ノ 奇才ノマが極論を述べる。
ダイベストメントとは投資撤退のこと。
反対の投資はインベストメントと言う。
ダイベストメントとは株、債券、投資信託を手放すことを意味する言葉。
ダイベストメントは、欧米の機関投資家でよく用いられる。有名なところでは、南アフリカ共和国の人種差別政策に反対し、南アフリカ共和国への投資を行わないキャンペーンがボイコット運動ともに活発になった。
現代でも非戦闘員に深刻な被害をもたらすクラスター爆弾や、地雷の製造企業を投資対象から除外するキャンペーンが繰り広げられている。
■エシカル金融
エシカルとは、倫理的、道徳上、といった意味の形容詞。
英語圏からエシカルファッション、エシカルデザイン、エシカル消費という表現が広まりつつある。
法律上、違法で無くとも倫理的におかしなことはせずに、道徳上、誰もが正しく公平だ、というものを推進するのにエシカルと呼ばれる。
エシカル金融とは、倫理的な金融活動となる。
■ライトノベルのエロい表紙
説明する例としてエロい表紙のラノベを出してみよう。
かつてエッセイのジャンルで、ライトノベルのエロい表紙が気持ち悪い、というものを見たことがある。
エロというのは経済の中では強い。売れる見込みがある。エロいものをつい買ってしまう人は世の中に多いからだ。
だが、エロは売れはするが人目につくと風紀を乱すと眉を顰められることも度々ある。
しかし、書店にエロい表紙のライトノベルがあることを不満に思い、書店から排除するために実際に活動した人はどれだけいるのだろうか?
これをわりと誰でも行えるようにするのがダイベストメントになる。
■銀行に預金を預けない。
あなたが銀行を選ぶ理由はなんだろうか? あなたの預けた金を銀行はどこに投資しているか、あなたは知っているだろうか?
先程のエロい表紙のラノベで言うと、エロい表紙のラノベを気持ち悪い、という人がいる。
この人も銀行を利用している。
しかし、その銀行がどこに融資しているかをその人は知らない。
実は、その銀行がエロい表紙のラノベを作る出版社に融資していたならば?
この人はエロい表紙のラノベに文句を言いながら、エロい表紙のラノベを作る出版社に自分の金を出資していることになる。
銀行は預金を元手に投融資している。
これは俯瞰して見れば、知らずに自分の嫌いな業界が活性するように、銀行を通して自分の金を融資していたとなる。
これを知り、気にくわないと感じたならば、銀行から預金を引き上げればいい。
ダイベストメントとはつまり、自分の気に入らない企業に融資する銀行から、預金を引き上げることでもある。
これを同じ思想、同じ主義の人に広めることで、銀行から預金を引き上げる人が続々と増えれば、その銀行は融資するための現金が少なくなっていく。
同じ思想の人が多く、預金を引き上げる人が増え続けたならば、銀行を兵糧攻めにできる。
その結果として、エロい表紙のラノベを作る出版社は融資してくれる銀行が無くなっていく。
銀行から預金を下ろすだけで、未来において無くしてしまいたい業界にダメージを与えることができる訳だ。
反対に、表紙がエロいのも表現の自由だ。芸術は規制されるべきでは無い。エロいものを厳しく禁止すれば、欲求不満の解消手段が無くなり性犯罪が増加するのは旧ソ連が証明した、など。
エロい表紙のラノベの存続を望む人は、エロい表紙のラノベを作る出版社に率先して融資する銀行に預金を預ければいいとなる。
これがインベストメント。
お金をどこに預けるか、そのお金はどう使われるのか。
銀行がどの業界のどの企業に融資しているのかを詳しく知り、未来に置いて人の為になる企業や業界に出資する銀行を選ぶ。
反対に、未来の人の暮らしの為にならない業界や企業に出資する銀行は利用しない。
自分の金を何処に預けるか、預けた先では何処にどのように使われているのか。その先を考えて金の倫理的な使い方を模索する。
これがエシカル金融となる。
■銀行の社会性
銀行が社会に与える影響力は大きく、銀行の企業活動が人々の暮らしや環境問題に大きく影響している。
さらに他の先進諸国に比較して日本人は預貯金を好む傾向があり、2017年には1000兆円を超えた預貯金の使われ方が経済社会を形成する構造となっている。
日本の三大メガバンクがインドネシアの石炭火力発電所事業に融資したことにより、現地では農地や漁場を失い生活に困窮する人が現れ、呼吸器疾患に苦しむ子供が増えた。
こういった社会性が問われる事業に対する融資は、近年世界的に盛り上がりを見せる『ESG投資』の流れにも逆行する形となっている。
今、銀行の社会性が問われている。
エシカルに、倫理的にどうか? と思われるビジネスに融資する銀行は利用しない。
反対に未来を考えた再生可能エネルギー事業に融資する銀行を利用する人が増えれば、再生可能エネルギー事業が活性化する。
利用する銀行をいい加減に選べば、その銀行の預金もまたいい加減に使われる。
儲かりそうだから、という理由で兵器産業やギャンブル産業への融資が増えれば、兵器と賭博の業界が活発になる。
逆に日本でも気楽にカジノに行けるようになり、コンビニで銃や地雷が買える未来になればいい、と考える人はその業界に積極的に融資する銀行を選ぶと良い、となる。
■今のダイベストメント
エシカル金融の中で現在、注目されているのが気候変動。
地球温暖化の原因になる石炭などの化石燃料への投資をやめることがひとつのキャンペーンになっている。
化石燃料関連事業から株や債券などの金融資産を引き揚げることにより、化石燃料関連事業を停止させ、脱炭素社会を実現する運動だ。
■アイルランド
職場での全面禁煙、消費者に税を課す形でレジ袋を有料化、同性婚の是非を問う国民投票の実施など、これらの決定を世界に先駆けておこなっている国、アイルランド。
2018年、アイルランド下院は『化石燃料ダイベストメント法案』を可決した。これにより同国は、国債管理庁の管理下にあるアイルランド戦略投資基金に関し、今後5年間でダイベストメントを進めることになる。
同法案では、化石燃料の探鉱、採掘、精製の収益が収益全体の20%以上の企業を化石燃料事業者と定義し、事業者への直接投資を行わないことなどを求めている。
アイルランドの政府系投資ファンドは2019年末時点で北海道電力や北陸電力、出光興産、JXTGホールディングスなどの日本企業を投資対象から外している。
■ノルウェー
ノルウェーの年金基金KLPは2019年にアルコールとギャンブル関連の企業からの投資撤退を決めた。キリンホールディングス、よみうりランドなどが対象になる。
■スウェーデン
スウェーデン公的年金基金は、たばこ関連企業と核兵器関連企業、合計約60社からのダイベストメントの決定を発表した。
■日本
日本では2019年、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)が石炭火力発電所新設融資の停止を表明。
2020年、みずほフィナンシャルグループ(MHFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、が石炭火力発電事業への新規投融資を停止する決断を発表。
日本の三大銀行の化石燃料産業への投融資に対し、数年前から国際社会の風当たりが強くなっていたのを受けた結果になる。
日本の三大銀行が世界の石炭火力発電企業に2015年から2017年に投資した額は、80億米ドル(約8,800億円)以上となり、ランキング上位を占めている。
これが環境汚染ビジネスに投融資する日本は環境汚染大国、と呼ばれる一因となった。
■銀行の説明責任
これからの銀行はどの業界のどの企業に投融資しているか、銀行の利用者に説明しなければならない。
銀行、生命保険、年金による投資決定が環境や社会に及ぼす影響について、関心を持つ人が世界に増えている。
石炭から始まり石油と天然ガスからも引き揚げも表明した欧米の年金や保険の流れに押され、日本の銀行、企業は変わり始めている。
ダイベストメントが広まることにより、単に化石燃料企業への投資は倫理に反しているだけでなく、石炭関連株の下落を招くなどの金融リスクを起こしている。
■銀行の通信簿
しかし、個人ではどの銀行が何をしているか調べるのも難しい。また日本では銀行が何処に投融資しているか、という話題も少ない。
国際青年環境NGO A SEED JAPANが取り組んでいる『Fair Finance Guide』というプロジェクトでは、各金融機関の社会性に関する『通信簿』を公開している。
各金融機関は17のテーマで評価され、10点満点で採点された点数によってその機関の『社会性の高さ』が一目で分かるようになっている。
こういったものを参考に銀行を選ぶ、というのが良いのだろう。
■銀行に預けるメリットは?
しかし、銀行に預金を預けるメリットはなんだろうか? 銀行に預けても預金の利息など雀の涙でしか無い。
ならばおかしなことに使われないように預金を引き上げてしまってもいい。
銀行引き落としで必要な最低限の預金を口座に残し、残りは自宅の金庫にしまう。または解約して銀行に金を預けない。良い銀行が見つからなければこれでいい。
1987年、国際社会がアパルトヘイトに反対して南アフリカ共和国との文化交流を禁止し、経済制裁に動く中で日本は逆に、積極的に経済交流を続けた。
日本は南アフリカ共和国の最大の貿易相手国となった。
他の国々がボイコット運動をする中で、世界の流れに取り残された日本がいつまでも南アフリカ共和国と貿易を続けていた。
この日本の姿勢は国際社会から激しく非難された。金のためならアパルトヘイトを容認するのか、と。
この状況は現在の化石燃料からのダイベストメントとも似ている。
世界の化石燃料事業からの撤退、という時流に取り残された日本が石炭関連事業への融資の上位となった。
世界から環境汚染を容認するのか、と非難される状況となった。
ならばこれからは、銀行の預金がおかしなことに使われる前に、さっさと預金を引き上げることが日本のイメージを守ることにも繋がる。
銀行に預金する者がいなくなれば、銀行は何処にも投融資できまい。
銀行は利用者の信頼を得る為に、何処に投融資しているかを利用者に説明できなければならない。
それができない銀行からは利用者が預金をダイベストメントする。ある意味で市民が銀行をリストラするとも言える。
銀行の利用者が銀行を選び、選ばれない銀行は潰れて消える。これが可能かどうか、試してみるのもおもしろい。
世界のダイベストメントの流れから日本の三大メガバンクは方針を変更した。外圧から石炭火力発電事業への新規投融資を停止すると発表した。
一人一人の預金は少ないかもしれないが、百人、千人と集まればその総額は大きくなる。
民主主義的に数の暴力で銀行を兵糧攻めにしてしまえばいい。
だいたい日本は人口の数から見て銀行の数が多すぎる国だ。その銀行が生き延びる為に老人食いビジネスに手を出すようならば、これを機に信頼を失った銀行の数を少し減らしてみてはどうだろうか。
あなたの利用している銀行は、その預金を何処に投融資しているのだろうか?
もしかしたら、あなたのこれからの生活を脅かす業界に投資しているのかもしれない。
エロい表紙のラノベが気に入らない人は、ちょっと調べてみてはどうだろうか。