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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第96話 救助完了

気づけば二度目の年越しです。一年お世話になりました。

 ボムの先導の元休憩拠点に向かうとなんだか想像以上に賑わっていた。火を強めに熾してとは言ったので明るさはわかるんだけど、どうしてか天幕の数が多い。大きな天幕が五つくらい立っている。

 ビュンと飛んでいったボムに呼ばれたのかナイトが天幕の陰から出てきた。

「ユウ、大丈夫でし……た、か?」

 固まった。そりゃあね。

「ネコ……?」

「グルァウ」

 うーん。猛獣。ちゃんとお返事はするんだけどね。

「本当にネコなんですね……一体どういうことです?」

「わからない。来たときにはこうだった」

「えぇ……。どうして……まあ、化け猫(ケット・シー)なら巨大化くらいはできるでしょうけれど、ネコにもできたんですね……」

 困惑がすごいな。そもそも化け猫(ケット・シー)が巨大化できるのが初耳。魔法が得意な魔物だって言ってたからできるのかな? ネコにそれができる知能があると思ってはいなかったけど。未だにロボが通訳してくれるのが「ごはん」と「ねんね」と「あそぶ」だけだからな。あとは顔と態度で「撫でて」ってしてくる。

 アースが整地してくれていた地面に怪我をしてない子だけ降ろし、ナイトがネコの背中から女の子たちを降ろす。

「ありがとう、ネコ。とても助かったよ」

「グル」

 返事をしたネコを撫でているとアースが飛んできた。一瞬ネコに驚いたようだけれど、気にせず子供たちに向かってブレスのように熱風を吹きかけていく。

「わぁ、あったかい!」

「毛布がどんどん乾いていく!」

 熱風で乾かせられるの便利だな。アースは魔法巧いよね。子供たちが完全に乾いてからネコを乾かしてくれている間に子供たちを中心地に連れて行く。

 ……ちっちゃい集落みたいになっているなぁ。天幕でぐるっと囲ってある中心は空き地のようなスペースになっていて、そこで炊き出しを行なっているようだ。

 どうやったのか知らないが雪も吹き込んでこない。足音に気づいたのか、焚き火の近くにいた冒険者が振り返った。ヒョウの人と焦げ茶の髪の知らない女性だった。

「あ、君たち!」

「お兄さん!」

 子供たちがヒョウの人に走り寄っていくので、元気な子たちは彼に任せよう。

「その子は怪我を?」

「ああ、脚が腫れていて。一応回復薬は飲ませたんだが」

 女性が近づいてきてくれたので説明し、焚き火の横に置いてあった椅子に座らせて怪我の具合を確認してみる。まだ赤みはあるけれど腫れはだいぶ引いていた。

「ふむ……冷えで回復が遅れていたみたいだけど、暖かいところでゆっくり休めばすぐに完治するだろう」

「そうか。よかったな」

「はい!」

 歩くくらいなら問題ないとのことで、子供たちのパーティをヒョウの人に任せる。炊き出ししているシチューを食べさせて天幕で休ませるらしい。ナイトとアース、ネコも戻ってきた。って、ネコ縮んでいるし。どうなっているの一体。

 片方の肩にアースが乗り、反対側にボムが2体とも乗ったところで女性が手を差し出してきた。

「名乗っていなかったな。私はヒューゴ、君がユウで間違いないか?」

「ああ。初めましてヒューゴさん」

 握手をして挨拶。ヒョウの人の名前を聞くタイミングも逃してるんだよな……早めに訊いておこう。

「あの、この天幕は一体?」

 それはそれとしてこの状況を説明してください。たくさん増えている天幕を指差して訊くと、ヒューゴさんが笑った。

「君のおかげだよ」

「私の?」

「そう。まあ、正確には君とこの子たちのおかげ、かな」

 この子たち、と言ってヒューゴさんが肩にいたボムを指差すとボムは誇らしげにふわふわと飛び始めた。

「ボム?」

「そう。山を捜索していたら急に目の前に飛んできたんだ。この吹雪の中ボムがいるなんて異常事態なので何かあったのかと思っていたら呼んでいるみたいに飛ぶからついて行ってみたら、子供たちがいた」

 ボム、子供を探すだけじゃなくて救助員に引き渡しまでしてくれてたのか。え、すごくない? 賢い。

「しかもこの拠点までの案内もしてくれてな。本当に助かった」

 ボム賢いなぁ。もしかしてヒョウの人をここに誘導してって頼んだから他の人もここに呼べばいいんだと認識したのかな? それを共有した? 普段の行動を見る限りはそのくらいはできそうだよね。

「本来救助はもっと時間がかかるんだが、この拠点のおかげで大幅に短縮できている。それは君とナイト殿、アース君に感謝だな」

「休憩できる拠点になればいいと思っていたんだが、役に立って何よりだ」

 休憩拠点というかこうなるとベースキャンプだな。

 肩の上で誇らしげに首を上げるアースを撫でる。ここの中はアースが元気に活動できる程度には温度が保たれているようだし、子供たちも平気だろう。

「救助員の数にも限界があるからな。一々街道まで下山させると時間がかかりすぎるし、単独で不時泊(ビバーク)させるとどれだけ備えさせても低ランクの子たちは万一の不安はある。それがここなら彼を始めとしたシルバーランクの冒険者たちが面倒を見ていてくれるし、万一の時にはアース君がいる」

 彼、と指差された先にはヒョウの人がいた。始めとした、ということは他にもシルバーランクの人たちもここに集まってきているのか。ボムがそれだけ動き回ってくれているということだろう。

 ご褒美奮発したいけれど、俺の血だから大量に提供とかできない。

「しかもナイト殿のおかげでギルマスとの連絡も密にできるし、騎士団からの物資の供給も十分。あの天幕は騎士団から借りてきたものだ。ロボ君のおかげで複数人を連れて移動するのも苦にならない。本当に助かるよ」

「特技が役に立ってよかったです」

 影魔法を特技と呼ぶんじゃありません。この天幕たちは騎士団のものなのか。ロボも色んな所に助けに回ってくれているんだな。あとでいっぱい褒めよう。

「あと見つかっていない人数は?」

「ブロンズランクの2パーティとシルバーのソロが一人だな。私は今からもう一度行ってくる」

「私も行こう。ナイトはここで待機していてくれ」

「承知しました」

 行くと言うとアースがナイトの肩に移動して、ボムが戻ってきた。赤い子を残してもう1体は先に向かってもらうとヒューゴさんが首を傾げる。

「……助かったし感謝しているんだが、ナイト殿やアース君たちはともかく魔素の塊であるボムがそんな風に懐くものなのか?」

「理由はわからないけれど懐いてくれているし、手伝いもしてくれている。あ、そうだナイト、ボムが鳴くようになったんだが、契約はできそうか?」

「ボムが鳴く……?」

 ナイトもヒューゴさんも怪訝な声を出す。そりゃそういう反応になりますよね。肩に乗ったボムをつつくと元気に鳴いた。

「ぷ!」

「うわ」

 うわって。咳払いをしてナイトがボムを手に乗せてみた。

「ぷーぷ! ぷぅ?」

「……無理そうですね。音で聞こえる以上の意味が読み取れません。音のトーンで伝えたいことはなんとなくはわかりますが、契約には至りそうにないです」

 まだ無理か。そろそろできるかと思ったんだけどな。まあ焦ることでもないか。

 拠点のことはナイトとアース、元気な冒険者の人たちに任せて捜索に戻る。拠点スペースの中だと忘れていたけど本当に酷い吹雪だな。今日は止みそうにないか?

 2時間ほどで残り三組分の合図が上がったので拠点に戻る。

 合計で37人が休憩拠点に保護された。救助員が俺を含め7人だったことを考えるととんでもない速度で完了したな。自力で下山した人たちも全員街道の拠点で無事保護されたらしいので一安心。帰って来たロボを全力で褒める。ネコ以上の除雪性能でみんなの道を作ってくれていたらしい。

 救助員で集まって、シルバーランクの人たちが用意してくれていた温かいご飯を食べながら作戦会議をする。

「しかし止まないな」

「本日中の下山は危険すぎるな。せめて夜が明けて少しでも明るくなるのを待つか」

「朝になっても止まなかったらロボ君に先頭を進んでもらって雪を退かしながら下山するしかないかも知れないな」

「ぼく頑張るよ-」

 捜索が終了した頃には俺の腰まで雪が積もっていた。1メートル近い積雪だ。いくらなんでも積もるのが早すぎるだろう。

「この吹雪の原因はわかるか?」

「北の方にゼウスが出張っているらしい。ゼウスに押されて本来もっと北にあるはずの雪雲が一気に降りてきたんだろう。それでこの吹雪だ」

 ……上空に寒気団が追いやられてきたと? 遠因はゼウスか。悪意無く災厄を撒くってこういうことなのか?

 ひとまず夜が明けるのを待つしかないということで、救助員も休むことに。シグルさんが俺のほうに歩いてきた。

「ユウが参加してくれて助かったよ。こんなに早く捜索が完了したのも全員の安全が確保できたのも初めてだ」

「どういたしまして。それにしても、思ったより捜索に参加していた冒険者が少なかったんだな」

 ゴールドランク以上しか参加していないとはいっても、レニアなら少なくとも20人以上は集まるだろうに。疑問に思ったので訊いてみたら教えてくれた。

「アヌカは高ランクの冒険者が常駐するような街ではないからな。ほとんどが俺のパーティと同じように商人の護衛で出入りしているだけだろう。これでも集まったほうだぞ」

「そうなのか?」

「レニアなら西の森があるし、テンカレならダンジョン、クンフォなら女帝の森とそれぞれ冒険者が目的とする場所があるんだが、アヌカにはそれがない。商人に雇われている傭兵は多いが、傭兵連中は今は街中の雪と格闘中だろうな」

 へー。ギルドに冒険者はたくさんいたけど数日中に街を出る人たちだったのかな? 傭兵の人が何しているのか知らないんだよね。商店とかに雇われているのだとしたら警備員みたいなものなんだろうか?

「ドワーフは来られないしな」

「どうして?」

「大雨ならともかく、雪じゃあ駄目だ。埋まる」

 あ。あー……ああ、うん。そっか、もう少し積もるとドワーフの身長より高くなる。

「お兄ちゃん」

「どうした?」

 シグルさんと話し込んでいるとロボが走ってきた。

「ボムたちがご飯食べたいみたい」

 おっと。

「わかった。ではまたあとで」

「おう。ゆっくり休めよ」

 シグルさんと別れてナイトたちの元へ。といっても俺の天幕近くに固まっているだけなんだけど。

「呼び立ててすみません。ネコがボムの周りを跳ねながらご飯と言い続けているので、おそらくはボムのご飯のことだろうと思いまして」

「大丈夫だ。ボム、待たせてすまない」

 いつものように手を切ってボムに血を飲ませる。最近この痛みには慣れてきた。

「一々切るのも手間ですし、壺にでも貯めておきますか?」

「いや……さすがにそれは、なんか食材として提供している感がすごいから嫌かな……」

 やっていることは同じだとしてもすごく嫌だ。

 ロボを枕に少しだけ仮眠を取って、起きてみると吹雪は少しマシになっていた。

 このまま下山するしかないとのことで、ルートを確認する。雪のせいで崖や段差が判断しにくくなっているとのことで、かなり大回りで街道に出る必要がある。ロボの横にヒューゴさんがついてルートを先導することになった。ちなみにだけどアースとネコは仮眠では足りなかったのかまだ寝ている。

 体調を崩してしまっている人は回復薬では治せないので救助員が抱えて下山する。夜明け前に拠点を引き払い、目標を昼に設定して下山を開始する。

 遂に肩にまで到達した雪をロボが弾き飛ばしながらずんずん進む。分厚い雪雲に覆われた空は相変わらず暗いけれど、吹雪が少し収まっていることもあって昨日よりは見通しが利く。

 なんとか麓にたどり着いたけれど、雪が積もりすぎて平地なのかどうか判断できない。

「おーい!」

 考えていると、前から聞き覚えのある声が聞こえてきた。そちらを見るとフィニスさんが走ってきていた。

「ナイトさんから聞いた拠点の位置ならこの辺りから出てくるだろうと思って待っていたんだ。迅速な救助、駐屯騎士団長に代わって礼を言うよ」

 フィニスさんに案内されて街道に出ると、結構雪が撤去されていた。麓の積雪がすごかったのは街道の雪を脇に避けた結果だったようだ。

 そのままフィニスさんについて街まで移動する。シグルさんのようにパーティと分かれて行動していた人も一旦街まで向かうらしい。みんなアヌカに集合するから大丈夫だそうだ。

 熱を出している人たちを騎士団が外壁から入ってすぐに設けていた出張治療所に預け、他の子を冒険者ギルドまで届けて、一件落着。

 全員無事に済んでよかった。


未だに主要メンバーになる人たちが半数も出てきていないので、そろそろ主人公の修行パートとかに入りたいです。

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