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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第81話 『血塗れの鎧』

私の稚拙な文章ではマイルドな表現にしかなりませんが、おそらく主人公はR-15くらいのグロい戦闘スタイルです。

 地面を震わせながら現れたギガントボアは、ミノタウロスより大きい二足歩行のイノシシでした。

 なんでだ。

 進化の過程がおかしいだろう。この世界にダーウィンがいたらブチ切れてるぞ。上半身と下半身のバランスめちゃくちゃだよ。絶対に四足歩行のほうが楽だろう。別に武器とか持ってないのに。なんで立とうと思ったの? というかなんで立てた。

 しかも無理矢理な二足歩行のくせに速い。図体の大きさとスピードが比例してないぞ。

 近づかれるとまともに立つのも難しいと思って剣で風を飛ばしてみたんだけれど、血を流しながら猛然と突き進んでくる。

 斬れてない? そんなに硬いのか?

「ギガントボアは魔法耐性を持っているものがいる! 魔法はあまり効かないんだ!」

 耐性か。なるほど、マジか。

 キルニスさんの声を聞いて遠距離は諦めて接近する。走るのは速いけど、動作そのものはそこまで速くないな。殴りかかってきたのを跳んで避けて、壁を蹴って方向転換して首を斬る。横に飛び抜けながら斬ったからか、血は被らずに済んだ。

 そのまま着地と回避、ジャンプを繰り返して残りのギガントボアも斬っていく。これ、ギガントボアの体を足場に跳び回ったほうが楽か? 揺れでバランスを崩すことが無いから安全な気がする。

 3体倒して、多少返り血を浴びてしまったけれど頭から被ることは回避できた。今回、ずぶ濡れになるのは回避できているし、なかなか頑張っているのでは?

 素材は骨と牙と皮。肉は無しか。ボアの中ではジャイアントボアの肉が一番美味しいらしいけれど、ギガントボアの肉はどうなのか気になる。

「ユウ、ここに留まるのは拙い。せっかくだから素材だけ回収したらすぐに進むぞ」

「了解した」

 ガンジさんに言われて素材を回収する。皮、畳まれているのはもうダンジョン君の優しさだとして、できれば5等分くらいに切ってくれているともっと嬉しいなぁ。大きくて重い。でもこれは大きい方が喜ばれるのか?

 通路は広くなっていたけれど、道順は変わっていなかったらしい。地図どおりに進んでみたらすぐにセーフティエリアがあった。セーフティエリアに入る前にディーナさんに頼んで血を落としてもらう。

「今日はここで休もう。ギガントボアからもわかっていると思うが、明日からは戦闘も激しくなるだろうから、みんなゆっくり休んでおいてくれ」

 ガンジさんの号令にみんなで返事をして、簡単に食事を終えて休憩に入る。頭から毛布を被って敷布に寝転び、父さんを呼んだ。

『お父さん、今いい?』

『ああ、いいぞ。どうした?』

『魔法耐性のある魔物ってどう倒すのが正解?』

『魔法耐性か……友人たちは「耐性でカバーできないくらいの魔法でゴリ押す」と言っていたが』

 ゴリラ共め。まあ俺の風でも斬れたことは斬れたから、威力を上げればできるんだろうな。

『一般的には物理火力で押し通すしかないな。耐性のランクにもよるが、上級魔法のはずが下級魔法くらいの威力にまで減退してしまったりするらしいからな』

 マジかよ。耐性ってそんなに役に立つものなのか。あったらラッキーくらいのものかと思っていた。想像していたよりすごいものなんだな。

『ユウは自身での調整ができないし、常から弱く使うことに意識を向けているせいで咄嗟の時に耐性を抜く程の高火力を出すのは難しいだろう。光魔法を使えればいいのだが、制御できない光魔法は危険すぎる』

 ですよね。自分で制御できないっていうのがやっぱりネックだな。

『剣への強化は耐性に関係はないから、剣を強化して斬るのが一番いいだろうな』

『関係ないの?』

『剣から火を出して燃やしたりは効かんが、魔力を通して剣自体の切れ味を上げることはできる。身体強化のようなものだからな』

 違いがよくわからない。でも、今日も剣に魔力は通しっぱなしだったけれど弾かれるなんてことはなかったからまあいいとしよう。

 しかし、真正面から受け止めるのを止めようと思ったのに、真正面から相手にするしか無いとは。

『わかった。なんとかしてみるよ』

『もうダンジョンに入っているのか。ナイトも一緒なら大丈夫だと思うが、気をつけるんだぞ』

『はーい』

 いざとなったらちゃんとナイトを呼ぶので大丈夫です。

 何故かタイミング良く出てきたアースとネコを毛布の中に招いて眠るとしよう。



 翌朝、朝食を取った後二人をナイトの元に返して出発する。不測の事態も想定すると最短距離はさすがに危険だろうということで少し大回りになるけれど比較的安全だと思われるルートを進む。魔物の出現場所が変わっていたら強行突破しか無いんだけどね。

「戦闘は大丈夫そうか?」

「物理で殴るのが一番早いと理解したのでそう対処しよう」

 警戒のために横に並んで歩くキルニスさんと話しながら進む。

 改めて話を聞くと、ギガントボアやミノタウロスは災害級下位の魔物らしく《烈火の戦士》やガンジさんは少数であれば問題なく対処できるとのことなので、挟まれた場合も後ろのことは特に心配しなくていいそうだ。一安心。

 しかしゴールドランクの冒険者たちでは連戦になると厳しいので万が一に備えて20階までで止められているらしい。

 魔物の気配が無いので気になっていたことを聞いておこう。

「そういえば、私はソロだから詳しく知らないのだが、パーティのランクはどういう基準で決まるんだ?」

「基本的には所属している冒険者個人のランクの平均だな。ただ、個人のランクが極端に違うパーティの場合は下に寄せる。例えば、ユウがシルバーと組んだとしたらパーティランクは高くてゴールドだな」

 《(デイ・ブレイク)》がストーンランクだったのはそのせいか。イアンはカッパーだったけれどユウラとジンコは確かストーンランクだったはずだ。確かにイアンが二人を庇いながらカッパーランクの依頼をこなすというのは難しいか。

「今回のようにパーティに別の冒険者が混ざることはよくあるのか?」

「指名依頼だと少なくはないな。討伐依頼や、今回のように出現する魔物が判明していない場合が多いから」

 そうなのか。そういえば討伐依頼の時パーティの人たち結構入り乱れてたな。前衛後衛で分かれて動いてた感じだったな。

「ランクが上がるとコミュニケーションスキルも必要なのか」

「まあ、ユウは今のままでいいと思うぞ」

「そうか?」

 それならいいんだけど。

「……ストップ」

「ああ。何かいるな」

 気配が無いと思っていたけど、もうすぐ階層ボスの部屋という所で急に不穏な気配が漂いだした。

 手を上げて制止の合図を出して、俺だけ進む。重たい物が動く音が聞こえてきたと思いながら角を二つ曲がったところで、6体のミノタウロスがたむろしていた。なんで? 飛び出さないように気をつけていたので気づかれてはいないようだ。

 先に倒してしまってもいいけれど、音を聞きつけて他からも集結してくると拙いか。戻って判断を仰ごう。

 戻ろうと数歩歩いた矢先にみんながいる方から昨日聞いた地響きが聞こえてきた。拙いと思ったときにはミノタウロスが地面を揺らして角を曲がってくる。

 ええい、タイミングの悪い!

 落雷でミノタウロスを一掃してから急いでみんなの元に戻る。

「大丈夫か!?」

「今のところは! ただ数が多いです! 推定8体!」

 みんながいる通路に飛び込むとギガントボアが詰まっていた。何? 団体行動が好きなの? 後方から現れたらしいギガントボアに対応するためキルニスさんも列の後ろに移動していて、前にディーナさんとユイさんが来ていた。

 この数は少数とは言えないだろう。

「ルートを確認してくれ。このまま進むのは拙い」

「はい!」

 ミノタウロスのこともあるし、こっちにいる戦闘員がディーナさんだけでは不安か。誰かに代わってもらおう。

「代わる!」

「おう、頼む!」

 ガンジさんに蹄を弾かれてバランスを崩したギガントボアを蹴り飛ばして距離を空けながら、ガンジさんと場所を交代する。

 しかし、さっきまで影も見当たらなかったのに突然どうしたんだ。

 文句を言っていても仕方が無いので目の前のギガントボアを斬り倒す。1体倒しても圧迫感変わらないな……。まあ、ギガントボアが大きすぎて広くなったとはいえ通路に詰まって2体以上は攻撃してこないのが救いか。

 キルニスさんとジンさんは、ジンさんが攻撃を防いでキルニスさんが斬るという役割分担が巧い。ダンジョンに入る前に連携が取れると言っていたのはこういうことか。

 3体倒したところで重低音の咆哮が聞こえてくる。一瞬だけど視界が揺らいだということは《迷宮への誘い(コール・ラビリンス)》か。ただでさえギガントボアの動く音で耳が利かないのに、こうも反響すると音が聞こえてくる位置どころか何の鳴き声かもわからない。

 視界の端にキルニスさんとジンさんの周りに魔術式が浮かぶのが見えたので《抵抗(レジスト)》は正しく発動したのだろう。しかし咆哮が聞こえてきたということは、もしかしてミノタウロスも近づいてきているのか。

 早めに終わらせたほうがいいな。

「前方からミノタウロス!」

 どうして??

 ガンジさんの声に頭を抱えたくなるけれど、抱えている暇も無い。振り下ろされたギガントボアの腕を斬り落として回避し、跳び上がって首を刎ねる。

 斬ったギガントボアが消える前に横目で見ると、どうやらミノタウロスwithギガントボア。どちらも複数体いるようだ。なんなの本当に。

 再びの咆哮は来ると予想していたからか視界が揺れることも無く耐えられたのだけど、ジンさんの術式に罅が入った。あれじゃ次は耐えられないか。

 殴りかかってきたギガントボアの腕を受け止め、勢いよく押し返す。体勢を崩したギガントボアに登り、振り返って確認するとミノタウロスは2体か。

「ガンジさんミノタウロス1体は頼む!」

「何!?」

 声だけかけ、雷の魔力を通した剣を奥にいるミノタウロスに向かって投げる。剣は眉間を貫通したらしく、ちゃんとミノタウロスは消滅してくれた。

 よし、ひとまず《迷宮への誘い(コール・ラビリンス)》の対処はオッケー。次!

 正面のギガントボアに向き直る。内殻変更、オリハルコン。魔力強化・雷。俺を振り落として起き上がろうとしたギガントボアの顔に向かって拳を叩き込むと、バッとギガントボアの頭が弾けた。

 アッ、コレすごい精神にクる。

 全身に血を浴びるけれど、挫けてはいられない。続けざまにもう1体の上半身も殴り飛ばして、こっちは残り1体。

「最後頼む」

「任せろ」

 前に戻ろうとして調査部隊の人たちが術式に守られているのに気づいた。なんだろう、あの術式。まあ、一旦放置だ。たぶんディーナさんかユイさんの魔術だろう。

 天井に刺さっていた剣を雷で呼び、ガンジさんの横を抜けて残りのギガントボアの首を落とす。

 ディーナさんが腕と脚を封じてくれていた最後のギガントボアを斬って、ようやく終わった。結局何体いたんだ?

 振り返ると、全員が俺を見て呆然としていた。

「……何か?」

「何か、というか……」

「オリハルコンランクの戦闘性能の高さに感動すればいいのか」

「「なるほど『血塗れの鎧(ブローディ・アーマー)』ってこういうことなのか」と納得すればいいのか……そんな戦い方をしていれば魔導剣士でも血塗れになるわな」

「昨日も結構血を被ったわりに平然としてると思ったが、お前さん、もしかしなくても普段はそれくらい浴びているのか」

 そう言われて、確認するまでも無く頭から血塗れなのを思い出した。正面から近距離で二回も浴びたからね!! しかし言わせてください。好きで浴びているわけではないです。

「私はあまり戦うのが巧くないからな。接近戦になってしまえば多少は仕方が無い」

「いや、それ、多少どころの騒ぎじゃないですから……」

 ユイさんにドン引きの顔で言われる。確かに頭から被っていて多少では済まないですね。

 でもさすがにもう徒手で頭打ち抜くのはしないかな。あんなに弾けるとは思わなかったし、精神衛生上とてもよろしくない。コボルトを相手にしたときは夜だったからあんまりわからなかったけれど、明るいところではキツイ。

「壁に飛んだ血は消えるのに、何故浴びた血は消えないのだろうか」

「ダンジョンが吸収できる範囲じゃないんだろうな。俺たちが吸収されないのと同じ理屈だろう」

 なるほど。

「……とにかく、また囲まれては敵わない。急いで22階に抜けてしまって対策を練ろう。ユイ、ジンに《抵抗(レジスト)》の掛け直しを頼む。ディーナはユウの血を落としてくれ」

「どうせ戦闘になればまた濡れるだろうから、セーフティエリアまでこのままでも構わないのだが」

「儂らの精神衛生に良くないんだよ。大人しく洗われてくれ」

 あ、はい。すみません。そういえば調査部隊の人がみんな俺から目を逸らしている。本当にごめんなさい。


好きで血を浴びているわけではないけれど、浴びることに慣れてきてしまっている主人公。周囲の人のSAN値を削る。

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[一言] 誰もが「血濡れの鎧」とか聞いたら「狂暴だからそんな名前が付いただけで、実際いつも血濡れなわけないだろ!」って思うよね・・・
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