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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第80話 異常階層突入

 最短ルートでどんどん進んだからか、思ったよりも早く15階に着いた。一番奥のセーフティエリアにいた冒険者ギルド職員のライズさん、ハンクさん、コールさんによると、五つのパーティが15階まで潜っているとのこと。ガンジさんが持ってきた最新のリストと照合して確認したのでまず間違いは無いだろう。

「ゴールドが二つに、シルバーが三つか。まあこいつらなら実力を過信して21階より下に降りることはないだろう」

 ダンジョン前で記入した表、こういう風に使うのか。入山届みたいなものなんだな。これのおかげで最初に異常が出たときも全員の帰還を確認できたんだっけ。

 今のところ気になることが無いかと話し合っているギルド組と《烈火の戦士》の横で、ライヌさんとショウさんと食事の準備をしながら待つ。今日は携帯食と、トマトと豆と干し肉たっぷりのミネストローネ。俺の仕事は皿を並べて干し肉を裂いただけだけど。

 話し合いに参加できればいいのだけれど、今のところ気になることはダンジョンの仕組みと目的ぐらいです。

『ユウ、今よろしいですか?』

 あらかた食事の準備を終えたところでナイトから念話が来た。

『いいよ。ダンジョンボスの様子わかった?』

『はい。では、支度をしてすぐに戻ります』

『はーい』

 話し合っている全員に聞こえるように声をかける。

「ナイトがダンジョンボスを確認した。先に彼の報告を聞こう」

 みんながこちらを見たタイミングで影が広がった。ズルリと武装状態のナイトとロボと……ロボが咥えたケージの中で眠っているアースとネコが出てくる。時間を確認していなかったけれど、もしかして今は本来眠る時間なんだろうか?

 ナイトが胸に手を当てて敬礼する。

「お初にお目にかかります。ユウの一の随獣、首無し騎士のナイトと申します。以後お見知りおきを」

「お、おう。思ってた首無し騎士と違いすぎてちょいと驚いたが、よろしく頼む」

 ガンジさんが驚きながらも返事をして握手をし、他の人たちとも握手をしていく。首無し騎士って本来は甲冑姿なんだっけ。そっちを見たことがないから驚く気持ちがよくわからないな。

 ナイトが挨拶している間にロボからケージを受け取る。アースとネコは仲良く毛布に包まっているのでこのまま寝かしておこう。ネコは相変わらずアースの尻尾を吸っていた。

 挨拶がすんだので晩ご飯を食べながらナイトの報告を聞く。時間を確認したら朝の7時でしたがこれは晩ご飯です。



 報告をまとめると、ダンジョンボスはベヒモスのままだそうだ。父さんたちが攻略したのとは細かい違いはあるかもしれないけれど、ベヒモスと呼称して間違いのない魔物らしい。

 31階以降は事前に説明を聞いていたとおりで、40階まで迷路が続き、それ以降が洞窟のように変質するけれど出現する魔物が変わっていたり、凶暴化していることも無いという。

 変質している30階の階層ボスがスレイプニルとかいう八本足のウマらしいのだけど、それはベヒモスと変わらない危険度らしい。天災級だって。タコにウマがくっついているクリーチャーしか想像できないけど、意外と強いようだ。

 階層ボス以外の魔物は、ケンタウロスやミノタウロス、サラマンダーなんかが出現するとのことで、ミノタウロスなら対処可能だな。

 報告を聞き終えてガンジさんが腕を組んだ。

「30階を越える必要はなさそうだからスレイプニルは放っておくとして、ミノタウロスが出て来るとなると《迷宮への誘い(コール・ラビリンス)》が厄介だな」

 ジェシカさんたちが言っていた平衡感覚を狂わせるやつか。頷いたキルニスさんがユイさんを見る。

「ユイ、全員に《抵抗(レジスト)》を掛けられるか?」

「はい。今回は皆さんほとんど怪我をされていませんので、魔力には余裕があります。ただ……」

 そう言いながらユイさんが俺を見た。俺が何か?

「ユウさんには掛けられないかと……」

 何故でしょう? というかそもそも《抵抗(レジスト)》って何?

「私は狂乱耐性があるから《迷宮への誘い(コール・ラビリンス)》にはかからないから大丈夫なんだが、無知ですまない、《抵抗(レジスト)》とはなんだ?」

 正直に手を上げて質問する。

「簡単に説明すると、耐性を付与する魔術です。狂乱、弱体耐性を上げる効果があるんですよ」

 へー。じゃあ、耐性を持ってない人でも《迷宮への誘い(コール・ラビリンス)》が効きにくくなるのか。

「便利な魔術だな」

「はい。ただ一つ問題があって」

 言葉と一緒に、俺の胴回りに術式が浮かんだけれど、ぱりんと割れてしまった。術式だったものは割れたガラスのように光る粒子となって消えていく。手で追いかけてみたけれど掴めるものではないようだ。

「《抵抗(レジスト)》に抵抗するなよ」

 ジンさんに呆れたように言われるが、そんなこと言われても。

「どういうことなんだ?」

「付与術はどうしてもお互いの魔力量に影響を受けてしまうんです。掛けられる側の魔力が掛ける側の魔力よりも多いと今みたいに弾かれてしまいます」

 そんなことがあるの?

「治癒魔法もそうなるのか?」

「いえ、治癒魔法は弾かれたりはしませんね。えっと、そうですね……治癒魔法は魔力を譲渡するもの、付与魔法は魔力で包むものだと考えていただければ。包みきれなくて破れた、という感じですね」

 風船に空気を入れすぎた感じなのかな? 耐性で狂乱を弾くみたいに味方の強化を弾いてしまうのか。

「まあ《抵抗(レジスト)》が効かん代わりに《迷宮への誘い(コール・ラビリンス)》も効かんというなら問題ないだろう。21階以降も今の隊列で進むぞ」

「了解」

 ガンジさんが締めて、一度睡眠を取ってから21階を目指すことに。



 ロボを挟んでナイトと川の字で寝たのだけれど、気づいたらアースがお腹に乗っていて、おそらくネコが顔を縦断していた。どういう状況なの、これ。アースはともかく、ネコは枕が無いからって顔に乗るんじゃありません。溺れる夢見たわ。せめて横断にして。

 甘え足りないのかずっと膝の上に乗ってくるアースとネコを乗せたまま朝食をとり、再びナイトたちとは別行動になる。

 25階以降の土で壁が覆われているフロアが地図と道順が変わっていないか確認をナイトがガンジさんに頼まれたからだ。ロボとアースは修行のためにナイトに同行し、ネコは一人でいても寂しいだろうからナイトが抱えておくらしい。

 アースもいるとはいえ25階以降の魔物相手でもナイトが戦闘しなくていいくらいに強くなったんだな、ロボ……。

 そんなことを思いながらライズさんたちに見送られてセーフティエリアを後にする。

「21階以降は本来ならどんな魔物がするんだ?」

「ハイコボルトにハイオーク、オーガにサラマンダーとアーマードアリゲーターとかだな。30階の階層ボスは本来ならハイオーガなんだが」

 ハイってなんだ? 純粋に高い(High)? コボルトとかの上位種だと思えばいいのか?

「特徴は?」

「魔法攻撃を使用し始める」

 なるほど、厄介。そういえば、ちゃんと魔法を使う魔物ってケルピー以外戦ったことがない気がする。スチール・スパイダーは糸を飛ばしてきたりはしたけど、魔法は使わなかった、よな? 薄目で見過ぎてよく見てなかった。

 苦戦することは無いのだけれど、16階以降に出現するようになったオークが大体6体で現れるので挟まれると動きづらい。フロア全体を凍らせるのはダンジョン相手とは言っても大人げない気がするしなぁ。そもそも他のパーティがいる可能性があるからできないし。

 《架け橋(アーク)》に複数体との戦闘の想定はするように言ったけれど、挟撃の可能性もあるって言ってないかも。レニアに戻ったらまた演習とか監督依頼とかに付けてもらおうかな。ダンジョン演習の警護もありか。

 コボルトや木を生やしたマウンテンクロコダイルもいるけれど、オークと比べると倒しやすい。コボルトは素早いけれど硬くないし、マウンテンクロコダイルは硬いが遅い。ちなみにマウンテンクロコダイルからは皮の他に枝が素材として落ちる。なんで?

 しかし、オークが弓を使い始めたので非常に鬱陶しい。攻撃手段を増やしたいと思ってはいたけど、こうなると遠距離攻撃の必要性を感じる。剣で風を飛ばしたり雷を飛ばしたり、凍らせたりはできるけれど、もっと精度を高めたいな。

 いくら刺さらないとは言っても、矢を全部体で受け止めているのはどうかと思う。キルニスさんが払ってくれたりもするけれど、コツコツ当たるのがやはり地味にストレス。飛んできた矢を斬り払える器用さなんてないし。

 そして実はオークよりもランクが上だったらしいホーンブルもいた。肉!と思うのだけれど残念ながらほとんど皮と角だった。

 いろいろと課題が増えたと思いながら20階の階層ボスに行き着く。

 階層ボスは扉で区切られた部屋の中にいるので、その扉の前で一旦止まる。

「階層ボスはジャイアントボアだったか」

 ガンジさんに確認すると頷いた。

「ああ。ジャイアントボアが2~4体出てくる。2体ならいいが、余計な消耗は避けたいな」

 なんで階層ボスの数がランダムなんだろう。しかもジャイアントボアは本来21階以降に出てくるハイオークよりもランク高いんでしょ? この程度も倒せん奴は下に挑む資格無し!ってことなのか?

 30階まではシルバーやゴールドでも比較的安全って言うのは、階層ボスの試練があるからなのか? ジャイアントボアを倒すのに苦労するなら上の階でもっと修行しろってこと? ホーンブルが出てくるのはその訓練のためか?

「ジャイアントボアは私が相手をしよう。部屋に入ったらみんなは壁際で待機してくれ」

「いいのか?」

「ああ。いい加減私も役に立たないと」

 今のところ役に立っているのナイトとロボとアースだけなんだもの。ネコは可愛いのがお仕事だからいいとして、そろそろ俺自身も役に立ちたい。

 倒すのはいいんだけど、一緒に入らないといけないっていうのがな。外で待っててもらえるのなら倒してから声をかけるのに。あ、氷で防壁を作るか。それが安全だな。

 扉を開けてみると、中は巨大なホールになっていた。石畳の通路とは違って剥き出しの洞窟だ。そしてジャイアントボアは4体。3分の1とはいえ、最大数引かなくてもいいのに。

 一定の距離まで近づかないと階層ボスは反応しないので、ドシンドシンと足音を響かせながら徘徊するジャイアントボアを見ながら全員の入室を確認して扉を閉める。

 全員を囲むように氷の壁を作り、雷を落として討伐完了。

 間近で聞く落雷音ってお腹に響くな。内臓が揺れる。みんなは氷の向こうだから少しはマシだろうか。

「お待たせ。行こう」

「……おう」

 氷を消して声をかけるとみんなになんとも言えない顔をされた。なんです? 俺が氷魔法や雷魔法を使うのはもう知っているでしょうに。

「シオンが模擬戦の相手をした理由が今わかったよ。お前さん、手加減とかできないタイプだな?」

「しようとは思うんだが、仕方がわからないタイプだ」

「それ意味一緒だから」

 むぅん?

 納得はいかないがどう反論したものかわからないので肩を竦めておく。

 ジャイアントボアの素材は皮と骨、肉があった。……ちゃんと肉が薄い皮に包まれているのが謎すぎる。地面に直落ちしているのを食べたくはないけれど、ダンジョン君の気遣いが細やかで怖い。

「ジャイアントボアは毛が魔法を弾くからどう戦うのかと思ったが、問答無用の超火力で灼くとは思わなかった」

「これが一番早い」

「そうだろうけどもよ」

 周りに人がいないことと広い空間があることが前提だけど、対シオンさんで使った落雷は結構便利かもしれない。光魔法は万が一に対処してくれそうな人がいない所で使うのはちょっと怖いかな。

 21階に降りる階段を先頭で降りて通路を確認する。11階に降りたときのようにいきなり魔物と出会すことは無かった。ん、だけど。

「通路がだいぶ広がっているな」

 幅も高さも20階までの倍はありそう。ミノタウロスが闊歩しているとなるとこのくらいあってもおかしくは無いのだろうけれど。

 続いて降りてきたキルニスさんに声をかける。

「ああ。私たちもここで違和感を覚えた。元々は一回り広がっている程度だったからな。それでも少し進んでみたんだが」

 ドォンと空気が揺れる程の地響きがして言葉が遮られる。

「アレが出てきておかしいと確信した」

 地響きの主は確実にこちらに向かって来ているようだ。しかも、複数体か?

「一体なんだ?」

「ギガントボアだ。ミノタウロスよりも大きいぞ」

 ジャイアントとギガントのどちらの方が大きいかは審議の必要がある気がしますがそれはまあいいとして、まだいたのかボアシリーズ。マンモスよりも大きくなったのか。

 全員が揃ったところで、一旦壁を背にしてギガントボアを迎え撃つことに。

 待ち構えていると、小石程度なら浮かせるくらいの振動と共にギガントボアが角を曲がって姿を現した。

「立つなよ!!」

 思わず叫んでしまったのは許してほしい。


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[気になる点] 立つなよって、ギガントボアが?いや、イノシシは構造的に立つのはまず不可能では・・・恐らく天井しか見えんと思うけど・・・
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