第71話 ジェットコースター(3時間コース)
大変お恥ずかしい話なのですが、コメントを頂いているということに本日初めて気づきまして、金曜ではないのですが急ぎ投稿とともに、読ませていただきましたと報告させていただきます。
内容についてのご指摘など頂いておりますので、ゆっくりにはなりますが本編を読み返して矛盾があるところ、説明が足りていないところは修正していきたいと思います。
登場人物紹介もゆっくりと、できたらな、と思っています。
小心者ですので個別での返信はできないと思いますが温かく見守っていただけたら大変嬉しいです。
今回の話に関係の無い前書きを失礼しました。
次の投稿は来週の金曜になります。
ロボの背に乗って走ること数時間、俺たちは山奥の小川のほとりで停止を余儀なくされた。
「おぇぇぇ……」
俺の体調不良のせいで。
「お兄ちゃん大丈夫?」
「ピャァゥ」
大丈夫だよ。大丈夫だから今はちょっと近づいてこないで。お見せできない。ナイトが心配そうに覗き込んでくる二人を抱えて離れてくれる。
「まあ安定の悪い状態であれだけ上下に振られたら酔うでしょうね」
「酔ったというか、内臓が行方不明だ……」
胃が肺の辺りまで浮いていた気がするし、逆に肺は膵臓辺りまで落ちていた気がする。実際そんなことは無いのだろうけれど、気分の問題だ。
せっかくロボが走ってくれているのに、これでは小休止を挟みながら進むしかないな。さすがにロボの背中でリバースはちょっと。
木陰で涼みながら落ち着くのを待つ。
「ロボ、アース、遊んできていいですよ」
「え、いいの?」
「はい。ロボのおかげで常人であれば一週間以上かかる距離を進めています。今日はもうこのままここで野営にしますから、大丈夫ですよ」
ナイトに言われてソワソワと俺を見てくる二人に手を振って返す。俺がしんどそうなのに遊びに行っていいのか、と心配できる二人は優しいなぁ。
「じっとしていればすぐ良くなるよ。遊んでおいで」
「ぎゃう」
「わかった! 行ってきます」
ロボは走り足りないだろうし、アースは俺の膝に収まっていただけだから遊べてないしね。飛び出していった二人を見送ったナイトがコップを差し出してくる。
「ジンジャーエールの用意がありませんでしたので、蜂蜜レモンソーダです。一口ずつゆっくり飲むのですよ」
「はーい」
口の中を水で濯ぎ炭酸が弾けるのを聞きつつゆっくりとコップを傾ける。甘すぎない蜂蜜と蜂蜜で抑えられたレモンの酸味が胃を落ち着かせてくれる。
「3時間で一週間分と思えばこのくらいはしょうがないかな」
「そうかも知れませんが、毎度ではロボが心配しますね。一度地球に帰って対処法を調べてきましょうか」
対処法なんてあるのかな? でも調べないよりはいいかもしれない。
「わかった。野営の準備は俺がしておくから、調べてきて」
「承知しました。そこまで強い魔物はいないようですが、念のため簡易結界を張っていきましょうか?」
戦闘ができる体調ではないからな、どうしようか。簡易結界ってなんだろうか。
「どんな物だ?」
「空間の座標を少しずらします。見えるし聞こえるけれど届かない、という感じでしょうか。ロボとアースは影を通って出入りが可能です」
それで簡易なの? 空間魔法すごい。
「じゃあお願い。……影を通って他の魔物が出てくるってことは無いの?」
「ロボとアースが影の出入りができるのは私の獣弟だからです。影魔法は使える種族が極端に少ない魔法ですし、影魔法が使えるランクの魔物は私に関わりたくはないでしょう」
「なんで関わりたくないの?」
「私、ものすごく強いので」
そっかー。
「「死なない」という絶対的アドバンテージを誇りますので。開幕爆アドです」
爆アド。どこで覚えるのそういう単語。いや、英智が見てるゲーム実況とか一緒に見て覚えたのだろうけれど。
胸を張るナイトに頷くだけで返す。
「では、行ってきます。時間はありますから、準備も焦らなくていいですからね」
「はーい」
熱出した子供みたいな扱いだな。
それにしても鎧のおかげで腰が痛くなったり尻が痛くなったりはしないのだけれど、この内臓の不安定さを解消できる手段はあるのだろうか。
絶叫系に強い人だったら平気なのか?
木陰から移動し小川に近づく。鎧を仮面に戻して靴を脱ぎ、ズボンの端を折って川に足を浸けるとひんやりして気持ちいい。
そのまま上半身を倒して寝転ぶ。ちょっと寝よう。体調を回復させるには寝るのが一番。しばらくして目を覚ましたら両脇にロボとアースがいた。何この子たち可愛い。
撫でていると起きた二人にご飯を食べさせ、俺は蜂蜜レモンソーダを飲む。食べるのはまだ止めておこう。
食べ終わった食器を片付けているとロボが裾を軽く引っ張ってくる。どうしたの?
「あのね、あっちに洞窟があったの」
「ガウ」
「探検してきていい?」
期待いっぱいの目で見てくる二人に駄目とは言いづらいな。ダンジョンの可能性は低いだろうし、フェンリルとドラゴンがいて苦戦することはないだろう。
「いいよ。二人なら大丈夫だと思うけど、危なくなったらすぐに帰って来るんだよ」
「はーい!」
やったーと再び飛び出していった二人を見送り、靴を履き直して野営の準備を始める。まあそう言っても天幕を展開して中に絨毯を敷くだけなんだけど。薪も集めておこうかな。
天幕の中に入ってみると暗いなぁ。あ、ボム出しておこう。
「出ておいでー」
鞄から瓶を出して、ボムたちを放つ。この子たち、鞄に入るってことは生物っていうか、生きているって認識ではないのだろうけれど、なんなのだろうか。メダカ飼ってる感覚なんだけど名前付けた方がいいのか?
日光を浴びて膨らんでいるボムを横目に見ながら、天幕の入り口の布を上げて中に絨毯を敷く。絨毯って呼んでるけどこれも革製だよな。
厚みに対して異様にクッション性が高いからこれドラゴンスキンなんだろうな。
毛布も2セット出しておいて、枕を上に積んでおく。敷き布団的なのは無いけれどこの絨毯なら体を痛めることはないだろうし、底冷えの心配もないだろう。
漂うボムに絡まれながら薪を集める。頭にぶつかってくるこの子絶対いつも同じ子だろ。
集めてきた薪をナイフで適当な大きさに割って積む。調理台を用意して、組み立て式の焚き火台を組み立てる。なんかキャンプ動画上げてる人がこういう道具使ってた気がする。
この世界の道具、意外と地球と似通っているのもあるよな。体の形が一緒だから完成形が同じようになるんだろうか?
旅をする人が多いからこういう道具が発達するのかな。組み立て式の椅子もあるし。椅子なんかはこっちの世界の方が頑丈なくらいだ。探せばハンモックとかも普通にありそう。
天幕は基本柱が無いみたいだから持ち運びやすいし、マジックバッグは確実に地球の鞄よりも有能。魔道具は名前から魔法が使えないと使えないのかと思ってたけれどそんなこともなかったし。
ランプはそのままランプだし。むしろ地球と違って火事の心配がない分こっちの方が優秀かも。
俺は服が優秀過ぎるから何も対策してないけど、暑さ寒さの対策はどうなんだろうな。寒いときは着込んで火を焚くしかないんだろうけど、冷やす魔道具とかありそう。今度面白魔道具とか探してみようかな。
通信機器とかが無いのはこっちの方が少し不便だな。気軽に予定を変更できないし、ギルドを通さないと直接出向くしか無い。調べ物も難しいか。魔物が強いから開拓もそこまでできないのだろうな。
のんびりとそんなことを考えながら準備をしていると陽が傾いてきたので、火を熾しておく。ロボたちは大丈夫だろうか?
日が暮れたからか集まってきたボムたちを瓶に戻し、焚き火を眺めているとナイトが戻ってきた。
「遅くなりました」
「大丈夫だよ、おかえ……何を抱えているの?」
なんか大量に抱えてる。
「旦那様がいらっしゃったのですが、私たちだけで遠出をしているとお伝えしたら、人に見られないのなら持って行けばいいと」
何々? ……醤油と味噌! それに砂糖!
「いいの?」
「食べてしまえば問題ないとのことです。お砂糖はそもそも高価なので出回っていないというだけでこの世界に無いものではないですからね」
やったー。煮物とか食べれる! いろんな料理があるから飽きはしてないけど、それでもやっぱり日本食が恋しくはあったんだよね。
「せっかくですので、早速お味噌汁でも作りましょうか」
「やった!」
ではホッケがあるので是非焼いてください。大根おろしくらいなら俺できるよ。
「ロボたちは?」
「洞窟の探検に行ってる」
「そうですか。夢中になって時間を忘れていますね」
子供が遊んでいるときに時間とか気にしてられないからね。
「お腹が減ったら帰って来るさ」
「仕方ありませんね」
晩ご飯の準備をしながらナイトが調べてきてくれたことを教えてくれる。
「ユウが酔った内臓が行方不明になる感覚ですが、どうやらエアタイムと呼ばれているそうです。無重力状態で内臓だけ浮いている状態だそうですよ」
浮いてるって、内臓本当に行方不明になっていたのか。
「対処法ですが、呼吸を意識して落下時に強く息を吐くそうです。大きな声を出すのも有効手段だそうですが」
「大声はちょっとな。誰にも見られていないとは言っても、奇行の類い」
山の中を絶叫しながら駆け抜けていく変な魔物として有名になってしまいそう。
「そうですね。ロボが驚くでしょうし、私も反対です。あとは、両手を上に挙げて重力の負荷を軽減することもいいそうなのですが、これは転がり落ちるので却下です」
手の力で掴まってるから、手を放すと転がり落ちるっていうか飛んでいくよね。状況的に。味噌を鍋に溶きつつ、なので、とナイトが指を立てる。
「落ちる際に腹筋に力を入れることで対処しましょう」
「力業」
「大きな声を出すのも、腹筋に力を入れるための手段のようですからね、仕方ありません。筋力で内臓を固定してください」
対処法っていうのか? それ。まあやるけどさ。酔い止めと一緒に頑張ってみよう。
帰ってきたロボとアースが泥だらけだったので先に風呂に入れた。
「あのね、洞窟の中にお池があったんだよ! お水冷たくて気持ち良かった!」
「ぴゃお! ぎゃん!」
「アースは泳ぐの上手だったよ! 楽しかったよね」
「ギュイ!」
大興奮だな。楽しかったのなら良かった。こらこらアース、尻尾で泡を飛ばさないの。
「魔物はいなかったのですか?」
「いなかったね」
「ぴゃ」
「ただの洞窟っていうのもあるんだね」
どんな洞窟でも魔物の巣になっているわけではないのか。魔物がいないなら報告の必要は無いかな。
綺麗になったのでみんなでご飯を食べると、ロボもアースも味噌汁が非常に気に入ったようだ。俺の魔力で強化されているから味覚も影響されているのだろうか?
「これ美味しいね!」
「そうだろう? 今レニアの街の人たちと作ってみてるんだよ」
「ほんと? 美味しくできるといいね!」
「そうですね。楽しみに待っていてくださいね」
「ぎゃう」
俺も楽しみに待ってます。
翌日、ロボに少しペースを落としてもらい、崖から降りるときに一言声を掛けてもらうようにすると少しだけマシになった。ただ腹筋に力入れるタイミングをミスると不必要に疲れるので小休止も挟みつつ、それでも初日ほどふわふわはしない。
「落ちるよー」
「了解」
岩肌を登り切ったロボが声をかけてくれたので、腹筋に意識を向ける。一瞬しっかり見えた眼下の森は、どこだったか、アメリカのザイオン国立公園だったか?に似ている気がした。
赤く焼けた砂岩の断崖絶壁と谷底の緑のコントラストは、こんな状況でなければ絶景に息を呑むところなんだろうけれど、今は全く別の意味で息を呑んでいる。
ほぼ垂直の崖を直滑降していくロボに装具を頼りにしがみつく。自分で飛び降りるよりもはるかに怖い。でも自分だとここを直滑降していこうとは絶対に思わないから、最速の最短距離を進むには仕方ない。
ロボはこれ怖くないの? フェンリルだとこのくらい屁でも無いの?
ドッと地面に着地して、すぐさま走り出し崖の窪みに爪を掛けて軽々と登って行く。さっきからロボはこの数百メートルのアップダウンを繰り返しているけれど疲れないのだろうか? 全然ペース落ちてないし大丈夫なのか?
昨日俺の膝に収まっていたアースは、今日はロボの横を併走するように飛んでいる。直線を走るときは膝に戻ってくるので、もしかするとロボが上り下りしやすいルートを探してくれているのだろうか。
ちなみに、ナイトは影の中で食事の仕込み中だ。移動中ってどういう感覚なのか訊いたら、影の中は特に何も感じないらしい。部屋の扉を開けたら外の景色が急に変わっている感覚だそうだ。影魔法って不思議。
しかし、このくらいならダウンすることは無いだろうから明後日にはアヌカの街に着きそうだ。
コメント頂いた内容で、今簡単にお答えできる所を返させていただきます。
主人公の口調は、本人が真面目に喋っているだけでギャグです。元男子高校生が頑張って厳つい話し方をしようともがいているだけですので、おかしい話し方だと笑ってあげてください。主人公は基本的に意識して精神年齢が少し幼めに読めるようにしているので、18歳って実際はこんなもんだよな、と微笑ましく見守っていただけたら幸いです。
ボムの正体ですが、もうちょっとしたら教えてくれる魔物が現れます。名前はその後でつけられます。
主人公の仕事、役割が多い。私もそう思います。一人で護衛をしつつ前衛も後衛も熟しているのですが、この後のダンジョン編では少しマシになります。
ロボの新しい装具ですが、縮んでいるときは非常に重いです。大きいときと同じ重さです。フェンリル的には気にならない重さですが、50キロ超はあります。武器への縮小魔術の転用はされていますが、重いので使い勝手が悪く一部の高ランク冒険者以外には不評です。
主人公の魔法については、勇者パーティが登場すれば教えてくれる予定です。そこまでに矛盾のある記述は直せたらいいなぁ……と思っています。
これはコメントには無く、期待されている方もいないと思うのですが一応補足として。
この主人公はハーレムは作りませんのでよろしくお願いいたします。




