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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第61話 素材採集依頼

タイトルが浮かびません。

 オトケさんが呼んできてくれたグランツにも何を壊したのかと疑われながらギルドに向かう。なんでそんな疑うかな?

「訓練場の改修なぁ。結構大掛かりになりそうか?」

「中二階を作ったり色々やることはあると思うぞ」

 俺の氷をそのまま置いておくわけにもいかないだろうし。今の状態じゃ斥候の子たちが訓練できないから、その辺はギルドの職員たちと相談してやってもらうしかないな。

 ギルドに戻ってヴァネッサさんとヤナさんと合流する。

「呼び立ててごめんなさいね。私はギルドマスターのヴァネッサ」

「俺は副ギルドマスターのヤナだ」

「どうも。グランツ工務店のグランツです」

 ヴァネッサさんグランツのこと知ってたみたいだったけど初対面だったのか。

「早速だけど現場を見てもらっていいかしら?」

「ああ。なんとなくはユウから聞いてますが、サイズ感を知りたい」

 みんなで訓練場に移動すると、子供たちで賑わっていた。

「……残念ですけど、ああいうのは無理ですよ?」

「あれを作れとは言わないわ」

 空中に浮いてる氷の柱を指差してグランツが言うと、即座にヴァネッサさんがそう返していた。

「あれは便利だからあの状態で固定できるように細工師に依頼を出そうと思っている」

 あれって固定とかできるんだ。

「固定用の術式にも相当量の魔力が必要だろうからユウにもまた協力を頼むことになると思うが、いいか?」

「勿論」

 お気になさらず。元々俺が作ったものだし。

「完全に空間を切ることがなければ大丈夫な感じか。なら、基本はこの形のまま、一番上に斥候職用の足場でも作ってみましょうか」

「落ちないか?」

鋼の糸(スチール・スレェド)を編んでストリングにした網を下に張っとけば大丈夫でしょう。素材採取の依頼を出します」

「必要な素材を教えてくれたら依頼はこちらで出すから気にしないでくれ」

「了解です。じゃあ、鋼の糸(スチール・スレェド)と、その上に敷く革と……木材はあるから、土ですかね」

 土。ああ、今の盛り土みたいなのを再現するのか。じゃあついでに。

「グランツ、土の中に木箱や板を設置することは可能か?」

「ん? そりゃあできるが、板なんか入れてどうするんだ?」

「実戦に近づけたい。急に足元の感覚が変わったり、滑ったりしても落ち着いて対応できるようになってほしいからな」

 さすがに沼みたいなのは無理だろうけれど、不確かな足場があることを頭に入れているだけでも違うだろう。

 演習の時点で他のウッドランクよりも練度の高かった《架け橋(アーク)》でも、山の中に入ると足場の悪さと視界の狭さに苦戦していたし、少しでも練習できるならそれに越したことはない。

「わかった。やってみよう」

 わーい。お願いしまーす!

 細かい話をし始めたヴァネッサさんとグランツの横で待っていると、ボムがフワフワと訓練場内を漂っているのに気づいた。

 投擲場を覗くと光る石が設置してあったので、ライト代わりが必要なくなって遊んでいるのだろうか。ボムを見上げているとヤナさんがボムを指差す。

光石(こうせき)を設置したからボムは外に出したんだ。つれて帰るか?」

 あの光る石、そのまま光石っていうのか。

「そうなのか。どうするかな。ランプはあるから別に」

 置いていってもいいと言おうとしたら、ボムが頭にぶつかってきた。ポポポポポっと勢いが強いので抗議されているのだろう。

「……つれて帰ろう」

「その方が良さそうだな」

 ボムに懐かれるやつなんているんだな、と不思議そうなヤナさんに肩を竦めて、ボムを入れていた瓶を取り出して振ると、空中を漂っていたボムが集まってくる。蓋を開けると勝手に入ってくれるので便利だが、お前たちそれでいいのか?

 ボムでいっぱいになった瓶を鞄に戻すのを待っていたヤナさんが紙を差し出してくる。

「色々頼んで悪いんだが、素材採取も頼めるか?」

鋼の糸(スチール・スレェド)か? 勿論いいぞ」

 暇ですし。子供の役に立つならなんでも手伝いますよ。受け取った紙は依頼書で、採取場所は南の山地の奥の方らしい。

 グランツと話していたヴァネッサさんがこちらを向く。

「え、ユウ大丈夫なの?」

「ん?」

鋼の糸(スチール・スレェド)って、クモから採取するのよ?」

 ……んーーー???



 昨日と打って変わって気持ちのいい秋晴れの空の下、サリカさんの工房に向かう道を手綱を引いて歩く。

「すまない、ジェシカさん。帰ってきたばかりだというのに」

「構いませんよ。山地の奥は私も行ってみたかったですから」

 昨日、クモが相手だと聞いて絶望していたところに、ちょうど帰還したジェシカさんが一緒に来てくれることになったのだ。女神か。

「それにしても、コシュタ・バワーってこんなに大きいんですね」

「ああ……記憶ではもう少し小さかったんだがなぁ」

 ビクターの横を走るのにせっかくだからとナイトに馬具を借りてバターを呼んだのはいいけれど、なんだか記憶よりも一回り大きい。

元々牝馬にしてはだいぶ大きかったけれど、今は体高が俺の身長より高い。2メートル弱くらいだろうか? ナイトが乗ると考えるとこのくらいあってもおかしくはないのかも知れないけれど、急に育った理由がわからない。成長期か?

「あの、本当に僕もご一緒していいんですか?」

「勿論だ。というか一緒に来てくれないと私が困る」

 バターとビクターに挟まれるようにして歩いていたイアンが不安そうに訊いてくる。

 イアンはジェシカさんが同行してくれることが決まった後ヴァネッサさんの推薦で同行することが決まったのだ。鋼の糸(スチール・スレェド)が採れるスチール・スパイダーはイアンの実力より少し強いので、訓練にはちょうどいいのだとか。

 《(デイ・ブレイク)》が受けられる依頼ではイアンの訓練があまりできないとのことらしく、今回は俺の監督の下イアンのみが同行している。ちなみにさん付けで呼んだら《(デイ・ブレイク)》全員に固辞された。悲しい。俺も呼び捨ててくれとごねてやろうか。お兄さんだからしないけど!

 イアンは安全に訓練ができて、俺はイアンにスチール・スパイダーの回収を頼むことができるのだ。Win-Winな関係だな。

 ジェシカさんは俺が暴走しないように気をつけておくためのお守りのような扱いをされていた。全部燃やしかねないだろうと言われては反論の余地が無い。スチール・スパイダーは見分けも難しいらしく、それの判別もお願いすることになるだろうということだ。

 そんなことを話していたらサリカさんの工房に着いた。

「お邪魔します」

「いらっしゃい。やあ、君か。依頼されたものはできているよ」

 今日は店舗の方にいてくれたサリカさんが出迎えてくれる。ちょっと待っていてくれたまえ、と言って奥に引っ込んでいったサリカさんを見送り、工房の中のものを見ながら待つ。前も思ったけれど使い道のわからないものがたくさんあるなぁ。

 色々な術式が刻んである板を見ているとサリカさんが戻ってきた。

「はい。蓋と、提げられるような金具付き。もしかしたらチルセから聞いているかも知れないが、諸事情で鎖はサービスだ」

 そう言いながら差し出されたのは、手の平に収まるくらいの懐中時計。しっかりした重量があり、蓋には幾何学模様が彫られていて高級感がある。落ち着いた銀鼠色で、ナイトが持つにもちょうどいいだろう。

「とても綺麗だ。ありがとう。きっと喜んでもらえる」

 鎖も細いけれどしっかりしていて簡単にはちぎれそうにはない。家事やロボたちの相手で動き回るだろうけれど、これでベルトにでも繋いでおけば滅多なことでは無くさないだろう。

 血の一滴でこんなにサービスしてもらって本当にいいのだろうか。

サリカさんにもう一度礼を言って、道具を見ていたジェシカさんとイアンを連れて工房を出る。

「そういえばサリカさん、結婚されるそうですね」

「らしい。……ところで、その。失礼な話なんだがサリカさんは男性だろうか、女性だろうか?」

「女性ですよね?」

「え、男性じゃないんですか?」

 三人で顔を見合わせる。よし、今度素直に訊こう。お祝いを渡すにも何を渡すのが正しいのかもわからん。

 門番の門を抜けて平野部に出る。バターよりもビクターの方が体格はいいけれど、イアンは俺の後ろに騎乗することになった。

 ジェシカさんは後ろに人を乗せることに慣れていないし、俺の鎧は腰布が垂れているので、鞍は足りないけれどその布を畳んで上に座れば尻を痛めることもないだろう。なんたってドラゴンスキンの衝撃吸収性能。手触りは完全にただの布なんだけど、この世界のものは不思議だ。

「バター、重たくないか?」

「ブルルン」

 大丈夫みたいだな。まあ家でイアンより大きい英智と一緒に乗っていたしな。大きくなっているし俺が鎧を着ていてもイアンくらいなら平気か。

 門から出てくる人たちの視線も痛いし、バターの腹を軽く圧して歩かせる。イアンがしっかり掴まっているのを確認して常歩から駈歩へ。種族的に足が速いらしいビクターは遅れることなく悠然とついてくる。

 もう少し速くても大丈夫そうかな? こんな広いところで走るのは久々だからかバターが楽しそうだし。

「イアン、落ちないようにな」

「え?」

 手綱を緩めて腰を浮かせるとバターが襲歩へと歩様を変える。グンと加速したバターにイアンが小さく悲鳴を上げるけれど気にしない。腕はしっかり鎧の飾り紐を掴んでいるので問題ないだろう。

 ビクターも一緒になって平野を駆け抜ける。さすがに俺がジェシカさんを担いで走るよりもずっと速い。あっという間に山の麓に着いた。競走馬では考えられない距離を走ったけれど、バターもビクターも元気いっぱいだ。この辺は魔物クオリティなのかな。

「はっや……」

「これでも加減して走ってくれていたんだぞ?」

 トップスピードを出されるとさすがにイアンを気遣っていられない。くたくたのイアンを鞍から降ろしながら、ビクターから降りたジェシカさんに顔を向ける。

「ジェシカさんは大丈夫か?」

「はい。ビクターは加護があるので揺れが少ないんです」

 そうなのか。すごいな加護。山の中では騎乗しては進めないので馬具を全部外してバターとビクターを放す。ビクターの場合は装具と呼ぶのが正しいのだろうか?

「スチール・スパイダーがいるのは洞窟の中らしいから、数日かかるだろう。戻ってきたら呼ぶから、それまで遊んでいてくれるか?」

「ヒヒン」

「ケン」

 コシュタ・バワーとケリュネイアだから大丈夫だと思うけれど、心配は心配だな。

「もしグリフォンにあったら、ユウの友人だと伝えなさい。そうすれば襲われることは無いはずだ」

 バターは影に逃げられるとして、ビクターはそうもいかないからな。サウスならこれでわかってくれるだろう。

 元気に山の中に走って行った二人を見送り、ギルドで貰った地図を広げる。結構遠いな。今日の間に洞窟に着けたらラッキーかな。

「では移動しようか。イアン、先頭は任せるぞ」

「はい!」

 イアンが剣を構える。イアンは魔導剣士らしいのでこのパーティは前衛2枚に非戦闘員一名の超変則パーティということになる。

シオンさんとウィルとの前衛3枚のときは全員単体戦闘性能が高かったから何も問題が無かったのだけれど、今回はそうは言っていられないので俺がジェシカさんを護衛しながら後衛を務める。

「ギルドでも言ったが、私も気を配ってはおくが、指示が無くとも危険だと思ったらすぐに退きなさい。スチール・スパイダーはイアンのランクでは本来相手は難しい。ジェシカさんが撤退を判断したときも必ず従うこと。いいな?」

「はい!」

 良いお返事。

 しかし、スチール・スパイダーって本来はシルバーランク以上のパーティで相手をするって聞いたんだけど、カッパーランク、しかも単独でそれの相手の練習をさせられるってだいぶスパルタじゃないか?

 いくら壁になれる俺と、知識があって戦闘可否の判断ができるジェシカさんがいるからって、ヴァネッサさんも無茶言うよ。回復薬は持ってきてるけど、万一のことが無いように気をつけておかないと。


登場人物が増えてきたので、そのうちネタバレしない程度にまとめます。

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