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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第53話 打ち上げ

 登録を済ませて、アースをつれてお皿を買いにニケさんの店へ。みんなといると気づかなかったけど、視線がすごい。アースがいるから仕方ないか。しかも俺の肩に乗ってるからより興味を惹くんだろうな。

 店先にちょうどニケさんがいたので声をかける。

「おばあちゃん」

「坊かい。どうしたんだい?」

「新しい随獣が増えたから、この子用の皿が欲しいんだ。この皿に似たものはあるだろうか」

 ロボのお皿を鞄から出して見せると、アースと皿を交互に見てからヒヒっと笑う。

「またとんでもない子を連れて来たもんだよ。おいで、お気に入りを探そうね」

 ニケさんに抱っこしてもらったアースは興味津々で店の中を観察している。知らないものいっぱいで楽しいね。

 アースはロボのお皿よりもちょっと直径が小さくて、その代わりに底が深い深緑のお皿を選んだ。首が長いからこういう形の方が食べやすいのかな。代金を払い、ニケさんにお礼を言ってギルドへ戻る。

 風呂より先に倉庫を覗いてみたけれど、とても忙しそうだったので買取は明日頼もう。色々買い取ってほしいんだが仕方ない。

 今日はゆっくりしたいので大きな桶を出して浴槽の代わりにしよう。確か五右衛門風呂サイズくらいの桶があったはず。

 世界樹の種子も濡らした布で入念に拭いておく。基本的にアダマンタイトだからなのかツルッとしていて傷も無い。

「ピャー!」

「気に入った?」

「ピュァウ!」

 お湯を溜めるためにシャワーの下に置いた桶の中でアースが嬉しそうに泳いでいる。地龍王の系譜とか言ってたけど水も平気なのか。豊穣を司るなら平気でもおかしくはないか。

 頭と体を洗って桶に入る。膝に登ってきたアースを撫でながら明日しなければならない事を考える。

・討伐してきた魔物を買取に出す

・アースの装具を買う

・《架け橋(アーク)》とトーカのお詫びの品を買いに行く

 ラウさんにお礼としてペリュトンのお肉を持っていきたいけれど、ペリュトンの肉を解体してもらわないと駄目だからそれは後日にして……あ、ナイト用の時計を作ってもらうの忘れてた。細工屋さんとかあるのかな? 時計屋さんか? ゴウルクさんに訊けば知ってるかな。

 ジェシカさんへのお礼代わりの護衛もうっかり忘れないうちに予定を決めておかないといけないし、結局ウェストのところに挨拶に行けてないから西の森にも行きたい。凍らせてしまった後の南の山地も確認したいし、できれば孤児院にも顔を出したい。そして今日こんな事をしてしまったから浴槽も欲しい。節制とは。

「やることいっぱいあるなぁ」

 誰か俺にマルチタスクを熟す器用さをくれ。

「ウーさんやギルさんに訊きたいことがあった気がしたんだけど」

 なんだったっけな?



「ユウー! 遅いよ!」

「すまない、用事を済ませていた」

 ダイナーに行くとすっかりできあがったアッカに怒られた。いやー、みなさんできあがっていますね。アースが肩から離れ、出窓の枠に乗ってご飯を食べていたロボの横に着地したので、調理場にいるナイトにアースのお皿にご飯を注いでもらって置いてあげる。ビーフシチューか。そんな気はしてたけど顔を突っ込んで食べているのはどうなんだろうか。あとで顔拭いてあげないと。

 アッカとウリオ、ダミアンが座っているテーブルに参加させてもらう。

「用事って、完全にシャワー浴びて来てるだろ」

「一応他にもあったんだぞ」

 確かに時間はシャワーが一番時間かかったけども。ビスタさんがビールを持って来てくれたので有難く受け取る。食べ物はテーブルの上に乗っているものを適当に食べていいだろう。

「では、改めてお疲れ様でした!」

「お疲れ様でした」

 アッカの号令でジョッキを打ち合う。各々テーブルでやっていたようだけれど、他のテーブルからもジョッキが寄せられてきたので乾杯しておいた。すごい、大人って感じ。悪いタイプの大人かもしれないけど。

「しっかし、昨日は驚いたぜ。まさか『血塗れの鎧(ブローディ・アーマー)』に血塗れにされるとは」

 んあ! ごめんなさいね!

「完全に失念していたんだ。許してくれ」

「まぁいいんだけどね。どうせゴブリンとの戦闘で血まみれだったし」

「水浴びるかどうか迷ってたところにトドメって感じだったよな」

 確かにみんな結構血に濡れてたな。アッカが手を振って笑う。

「さすがにあれだけのゴブリンを前衛無しで相手にするとね。死人が出なかっただけでも良かったでしょ」

 あれ死人出るレベルの規模だったのか!? 怖い。もっとちゃんと考えながら動くべきだったかも。

「俺は前線で死にかけてたけどな」

 アッカの言葉にグッタリとした声で返すダミアンは相当に嫌そうだ。

「ダミアンはタイタンの相手に引っ張り出されてたんだっけか?」

「《勇敢なる星(ウチ)》は前衛特化の突撃を得意とするパーティだからな。リーダーがちょうど良いから練習がてらついて来いって」

 練習でタイタンの相手に引っ張り出されるのは辛いなぁ。うわー、とウリオとアッカも同情の眼差しでダミアンを見ている。

「そりゃリーダーもアルもすぐ近くにいてくれたし、間近でシオン様やウィルの戦いを見れる絶好の機会ではあったんだけどさぁ! もうちょっとなんかあるじゃん!?」

 ワッと肩を掴んでくるダミアンを宥める。やめてー。揺すらないでー。でもそれ俺も見たかった。

「見ることに集中しちゃうと命が危ないね」

 そんなに危ないのか、あの鉄巨人。まあ物理・魔法の両耐性持ちだもんな。

「タイタンは本来ゴールドランク以上で対応するべき魔物だしなぁ」

 マジで。ダミアンシルバーランクなのに巻き込まれたのか。大変。そもそも討伐メンバーは半数近くがシルバーランクだった気がしたんだけど。本当に大変だな。

「でも、さすがよね。シオン様もウィルも、バンバカ倒していくんだから」

「リーダーたちも平然と相手してたけどさ、やっぱりあの二人は次元が違うよな」

 そうなんだ?

「っていうか、もう一人の次元違いは何してたんだ?」

 もう一人? 首を傾げているとウリオに指を差された。俺かよ!

「私はゴブリンの討伐を手伝っていたぞ。後方部隊の援護をしていたから後ろを走り回っていた」

「お前降りて来たならタイタンの相手手伝ってくれよ」

 いやー、だって役に立たなさそうだったし。シオンさんとウィルがいる以上問題は起こらないと思ってたし。

 そんな話をしながらご飯を食べていると、そうだ、とウリオが口を開いた。

「ユウはこれからどうするんだ?」

「これから?」

「指名依頼は終わったでしょ? 私たちはダンジョンに行こうかって話になったんだけど、《勇敢なる星(ブレイブ・スター)》は一旦最果ての街に向かうってさ」

「最果ての街?」

 なんだか物騒な名前だな。

「帝国の南端にあるからそう呼ばれているだけで、本当はクンフォっていう街だよ」

 そうなのか。良か……ん?

「帝国の南端というと、女帝の森が近いのでは?」

「そ。だから魔物のランクも高いし、採れる素材も高級品が多くてダンジョンよりも素材の自由度も高い。俺の鎧を新調してくれるってさ」

「素材の自由度?」

 鎧を新しくするのは良いことだけど、よくわからない単語が入っている。どういうこと? 訊き返すとえっとな、とダミアンが指を振る。

「ダンジョンだと魔物を倒しても全部の素材が拾えるわけじゃないんだ。ダンジョン内の魔物はダンジョンの管轄だから、倒しても即座に魔素分解されてダンジョンに吸収されるんだ。それで吸収されなかった素材だけが回収できるから、欲しい素材が出るまでダンジョン内を回らないといけない」

 吸収。魔物が。ダンジョンの管轄ってどういうこと? ウィルからはダンジョン内の魔物は絶対に向かって来る、くらいのことしか聞いてないよ。

「ダンジョンとは一体なんなんだ?」

「ダンジョンは超大型の魔物だぞ。動かないし、余程の異常がなければ魔物が外に出てくることもないけど、低くても天災級。内部の魔物はダンジョンが余剰魔力で作り出していて、ランクは下級から幻想級まで幅広い」

「中の魔物を求めて冒険者が入って魔物と戦って魔法を使ったりすることで魔素を循環させるの。そうしてどんどん強くなっていくんだよ」

 マッチポンプか? 自分を餌に冒険者を戦わせて成長する超大型の魔物。それは……何がしたいんだ?

「強くなったダンジョンはどうなるんだ?」

「出てくる魔物が強くなる。と言っても、ダンジョンも無限に強くなれるわけではないからそこまで心配は要らないけどな。ダンジョンボスって呼ばれる最下層の一番強い魔物が倒されない限りは急激に強くなることも無いし」

 へー。本当に、何がしたいんだろうか、ダンジョンとは。

「だからダンジョンは冒険者の実力の底上げにも有用なんだ。初心者向けのダンジョンとかもあるしな」

「初心者向け?」

「発見されているダンジョンは基本的に国や冒険者ギルドが管理してるんだよ。だから、弱い魔物しか出ないダンジョンにはランクの高い冒険者は入れないようになってるの、そういうのが初心者向け」

「逆も然りだけどな。最初っから強い魔物しか出てこないようなダンジョンはカッパー以上からとか、シルバー以上からとか決まってるんだ」

 なんか、本当に思っているより過保護なんだな、冒険者って。

「そう聞いていると魔法の練習にちょうど良さそうだな。最低でも天災級ということなら、私の魔法でも突き破ったりはしないだろう。済ませたい用事が終わったら行ってみようかな」

「心配するところがそこなんだもんなぁ」

 そこですねぇ。

「ユウ、すみませんが、ロボとアースが眠そうですので部屋につれて行ってあげてくれますか?」

「ん? わかった。では私も休もう」

 おすすめのダンジョンや他の領地の街のことなどを訊いているとすっかり時間が経っていた。ナイトに声をかけられて出窓を見ると、丸まってウトウトしているロボの上に登ってアースも体を丸くしている。

「おやすみー」

「ああ、おやすみ」

 ロボとアースをまとめて抱き上げてみんなと別れる。気づけばダイナーの中の人も少し減っていた。今回の討伐メンバーが全員ギルドに泊まっているわけではないのか。

 ナイトはまだダイナーの手伝いがあるとのことだったので、ロボもアースもまとめて俺のベッドに寝かせてみたけど、ロボはもそもそとナイトのベッドに移動して行った。悲しいけれどアースは俺のベッドで丸くなっているのでバランスが取れていると思おう。アースに布団掛けちゃうと苦しいかな? タオルケットみたいなの買うか。


そのうち主人公君をダンジョンに放り込みたい。

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