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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第52話 討伐終了

 よっし、終わった。終わっただろう。合計3時間くらいかかったけど、もう動く気配も無いし大丈夫だろう。さすがにこれ以上増えると怒るぞ。

「アース、お疲れ様。ありがとうね」

「ギャーウ」

 ご機嫌で飛んでいるので怪我も無いようだ。肩に着地したアースを撫でているとロボの鳴き声が聞こえた。なんだか良くなさそうな声だぞ?

「先に行ってくれ!」

「ピャイ!」

 影に飛び込んだアースを追いかけるように氷に穴を空けて飛び降りると、視界を埋め尽くすゴブリンの大軍。昨日のオークはここまでひどく無かったぞ、最悪。

 勢いを殺すついでにまとめて飛ばしておこう。風の魔力を通した剣を地面に向かって振ると反動で若干体が浮く。よし、この程度は使いこなせるようになったかな。

 着地に成功してロボがどこにいるか探すと、あらやだ、ゴブリンに群がられている一団が。あれっぽいなぁ。人がいるなら魔法で一気にっていうのは無理か。

 ロボは別の場所だとしても、アースが行ったから大丈夫だろう。

「大丈夫か?」

 ゴブリンを蹴散らして確認するとマーナさんがいた。

「ユウさん! ありがとうございます」

「怪我は無いな? どうしてこんなことに」

 結構時間が経ってるのに、まだまだゴブリンがいる。

「それが、あれのせいで」

 あれ? マーナさんが指差した先を見ると、なんだアレは。

「タイタンです。先程急に現れて、前衛職が取られてしまって」

 タイタン? 巨人? え? 巨人ってあんな機械質なの? どっちかと言うとロボットじゃないか? 15メートルくらいの青銅色のロボットがいるんですが。確かにちょっと顔とかは人間味が強いけど、それでもロボットだろ、あれは。

「タイタンは魔法耐性も物理耐性も高いので、対処が難しいんです」

「なんでそんなものが」

「バジリスクを召喚できるなら呼べてもおかしくはないですね」

 バジリスクよりは弱いのかな? いやでも、魔法・物理耐性持ちって、気軽に出て来ちゃいかんでしょそれ。

「私が行っても役に立ちそうにないな。ゴブリンを減らすのを手伝うか」

「お願いします」

 倒すだけならいくらでも頑張るけど、たぶん今の俺にあの巨人の相手は手に余るだろう。

「アースもゴブリンを減らすのを手伝ってくれ! ロボ、もうちょっと頑張ってくれな」

「ギャオ!」

「ワン!」

 近くで囲まれている人を助けていたロボとアースに声をかけると元気に返事をしてくれた。よし。もう一踏ん張り。



 さらに数時間戦って、なんとか討伐は完了した。一体だけかと思っていたタイタンがワカメか?って訊きたくなるくらいに増えたのには乾いた笑いしか出なかった。今回はさすがに怪我人も多そうだ。

 ロボとアースはとりあえずは怪我もせずに戻って来てくれたので、ご飯代わりに干し肉をあげると嬉しそうに食べ始めた。あとでちゃんとご飯あげるからちょっとの間それで我慢しててね。

 そして。

「何故光っているんだ?」

 これを俺が言う側になるとは。

 なんでかシオンさんが光ってる。夕焼け色の鬣が金色に。ピカピカした感じではないけど、キラキラした感じ。

「身体を強化したらたまにこうなるんだ。余剰魔力が発散するために光る」

「光る……」

「これが『輝ける金獅子』の異名の所以だ。ただでさえ目を惹く白銀の鎧と大盾なのに、本人が光り始めるからな」

 二つ名が『白銀の大盾(プラタ・エスクード)』で、『輝ける金獅子』は異名なのか。なんかその二つの違いもわかんないけど、とにかくすごいんだろう。

「俺が光っているのはそのうち戻るから気にするな。上はもう問題無いか?」

「ああ」

 そういえば氷そのままにしてたな。

「あっ!! 馬鹿お前!」

「え?」

 手を振って氷を消そうとするとウィルが慌てたが、間に合わなかった。シオンさんが盾を頭上に構える。

 消えた氷から大量のペリュトンの死骸とその血液が降って来て、平原にいた冒険者の頭上に降り注ぐ。阿鼻叫喚ってこのことかな。

 ホワイトタイガーからレッドタイガーになったウィルがジト目で見てくる。ごめんなさい。決してわざとでは無かったんです。

「……何か言いたいことは?」

「とってもごめんなさいって気持ちでいっぱいです」

「おう。その気持ち大切にしろよ。次やったらビンタするからな」

 甘んじて受けます。そうだよな。なんか世界が薄赤いとは思ってたんだよ。薄赤い光の原因は氷の上に溜まってた血だったのか。シオンさんは水と一緒に血を消したりできてたけど、あれはどうやってたんだろう?

「おーい! 全員集合! これ以上は無いだろうから天幕を張る。順番に血を落とせ。怪我人は先に治癒を受けてからにしろよ」

「私の天幕も使ってくれ。男女分けた方が効率がいいだろう」

「助かる」

 絶対的に俺のせいだし。鞄から天幕を出して、血で汚れていない地面を探して展開する。柱も何も無いけれど、ギルドの天幕と同じように魔力を通すと自立した。便利だけど謎。

 確か大きめの桶もあったはず。よし、あった。天幕の中に設置して、と。準備ができたところでウィルに声をかけられる。

「ユウ、お前は一応周囲の警戒を頼む」

「了解した」

 俺は鎧のおかげで上から水掛けるだけで血を落とせるからね。

 それにしても。

「ひっどい眺めだな」

 来たときは、魔物は少なかったとはいえお日様燦々の平原だったのに。今では魔物の死骸と血が散乱する地獄絵図。干し肉あげといてなんだけれど、ロボもアースもこの状況でご飯食べ続けられるのすごいな。

「ユウ、まだ余力はあるか?」

 盾の血を落としたシオンさんが戻って来た。

「あるが、どうした?」

「じゃあペリュトンを何体か回収して、あとは燃やしてしまうから手伝ってくれるか」

「勿論」

 ゴブリンは回収しないのかと訊いたらゴブリンは取れる素材がほとんど無いので回収の必要は無いらしい。ペリュトンは羽と皮と骨が素材になり、肉が干し肉に最適らしい。ラウさんにお礼としていくつか渡そうかな。

 あんまり多すぎても処理に困るので、三十体くらいでいいかな? ペリュトン大きいし、シオンさんも回収してくれてるし。

 回収し終わってシオンさんに近づく。

「よし、じゃあ俺が風で巻き上げるから、まとめて燃やしてくれるか」

「了解」

 平原全体に散乱している魔物がシオンさんの風魔法で巻き上げられ竜巻のようになる。血も巻き上げているので、真っ赤な血煙が。うわ、B級映画でありそうな感じ。とりあえず燃やそう。あの量を燃やすなら遠慮せずに最大火力でいいだろう。

 レッツ火柱。

 結構火力上げようと意識しないと灰になるまではいかない。そうなるとアースの火力恐ろしいな。

 そのあとは食事をとって、昨日までと同じように一応夜間も警戒していたが何も起こらなかった。本当になんなの?

 次の日は昼まで待って、帰還することに。帰りは全員でまとまって帰ることになったので、ウリオとアッカ、ダミアンと並んで歩く。ロボは魔物が戻って来た平原でメリーシープたちと追いかけっこをしたりしながらついて来た。

「なんだか、拍子抜けと言うか」

「わかる。大変は大変だったけど、もっと大事になるかと思ってたよ」

「私も同感だ。しかし、嫌な予感もしないからおそらくはもう何も起こらないだろうな」

「これで諦めるのかねぇ?」

 ウリオが首を傾げるけれど、どうだろうか。

「この程度で諦めるなら最初から戦争なんて仕掛けてこないのではないか?」

「俺もユウと同じ意見。もう事を起こしてるんだから何かしら利益が出るまでやるだろうなぁ」

 そうかな?とアッカが言うけれど、もしかしてアッカたちには勇者召喚のことは話されていないんだろうか? ダミアンを見るとわずかに頷くのでそうなのだろう。しかし、よく仮面越しでわかったな。

「たぶん、こっちからの侵入を諦める程度だろうな。直接国境が接しているのはここだけど、別のルートを使ったりするんじゃないか?」

「そっかぁ。国境警備も増やさないと駄目だろうし、騎士は大変になるね」

「その分俺らに回ってくる依頼も増えるだろうから気合入れとかないとな」

 あー、単純な戦闘だけじゃなくてそういうこともあるのか。騎士って大変だな。

「まあ、一介の冒険者が考えたってどうしようもないだろう。あとは成り行きを見守って、身を守るだけだ」

 難しいことは難しいことを考える立場の人が考えてくれるだろう。父さんもここの皇帝陛下は戦争が得意みたいなこと言ってたし。



 ゆっくりめに帰って来たけれど、やはり子供たちとは速度が違うんだろうな。3時を少し回った頃には外壁が見えて来た。何かが門から飛び出してきたと思ったら昨日あの後街に帰っていたアースだった。

「迎えに来てくれたのか?」

「ギャン」

 ありがとうね。アースホバリング飛行もできるのか。アースはスッと横を抜けてロボの背中に着地していた。ロボも抱っことか、ザーパトの上に乗るの気に入ってたけど、魔物って甘やかさせるの好きなのかな?

 アースを見送ってウリオが頭を掻く。

「しっかし、本当にドラゴンが随獣になったんだよな」

「ああ。昨日の戦闘も手伝ってもらった。火力がすごかった」

「俺らも手伝ってもらった。タイタンの相手にリーダーが取られちまってさ。ゴブリンがどんどん塵になっていくのはなかなか怖い」

 見ちゃったか。うん。すぐ燃えちゃうからグロではないんだけど、怖いは怖いよね。

「そういえばアースちゃん、ゴブリンは燃やしてたけど平原の草は燃えてなかったよね? どうしてなんだろう?」

 そうなの? え、どうしてだろう?

「……地龍王の系譜で豊穣を司っているとナイトが言っていたから、それが関係しているのかもしれないな」

「なんかゴツいなぁ。いや、真性ドラゴン種の時点で相当にゴツいんだけど」

 うん、ゴツい。

 そんな話をしながら門を抜ける。今回は騎士団からの依頼だったということで検問を並ばずに通してもらえた。やったー。これならアースのお皿を買いに行く時間があるんじゃないかな。

 ギルドに着くと、パーティ組んでいる人たちはリーダー以外解散したけど、俺はソロだから解放してもらえなかった。うえぇん!! どうせ難しい話わからないのに!

 と思ったら、俺はアースを随獣にした時の状況の確認をされただけだった。登録が終われば解散していいって。やったぜ。

 ギルドのホールに戻るとナイトも迎えに出て来てくれていた。

「すみません、お出迎えに行けませんでした」

「気にしないでくれ、大丈夫だ。ところでなんだか盛り上がっているな?」

 子供のお使いじゃないので門までのお迎えとか本当に大丈夫です。俺18歳なの。そしてナイトの背後のダイナーから聞こえてくる声がやたらとテンションが高くてご機嫌だ。

「本日皆様が帰還されるという連絡が来ていましたので、貸切で打ち上げが行なわれています。リーダーの方々を待たずに始まっていますが、とりあえずユウは強制参加らしいですよ」

 マジか。そんな気はしてた。俺の昇格祝いの時もそうだったけど、理由を付けて飲みたいだけのような気がしないでも無いけれど、まあいいか。

「ではアースの皿だけ買って来てから合流するとしよう」

「ピャーウ!」

 約束してたしね。肩に飛んで来たアースを撫でると、ナイトが背中が空いたロボの頭を撫でる。

「承知いたしました。では、ロボは先にお風呂に入りましょうね」

「ばう!」

 あ、俺も風呂入ってからにしようかな。でもみんな直で宴会してるなら別にいいのかな? いや。気になるな、入っておこう。

 ナイトとロボを見送ってカウンターに近づくとちょうどアリサさんがいたのでそこに並ぶ。

「いるのは知っていましたけど、ドラゴンですかぁ」

「ドラゴンです。アース、おいで」

 遠い目をするアリサさんには悪いけれど、もううちの子なので。肩でアースがピャウと鳴くとクゥッと目を瞑る。

「幻想級の魔物なのに可愛い!! 危機感が薄れる!」

 可愛かろ。ロボがドヤ顔でお披露目する可愛い弟です。俺の登録用紙にアースの事を書き足しているわずかな間だったけれどギルド職員がみんなでアースを撫でに来ていた。

「ナイトが連れて帰っていたはずだが、会っていなかったのか?」

「ユウさんが帰ってくるまでは一応未登録という扱いだったので、ずっとナイトさんの肩の上にいたので触ったりはできなかったんです。鱗ツルツルー」

 なるほど。そこは確かにしっかりしておかないとね。


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