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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第50話 ナイトVSバジリスク

 遅めの昼食のためにナイトとアースを呼ぶと、周りがどよめいた。そういえばウィルとシオンさん以外にちゃんとアースの紹介をしていなかった。

「ドラゴンの幼体!?」

「ちっちゃくて可愛い!!」

「抱っこしていい!?」

 そして意外と言ってはなんだけど、女性にも人気だ。地球の爬虫類よりぬるぬる感が無いせいなのか、それとも女性陣が冒険者だからなのかはわからないけど。ロボがやきもち焼くかなと思ったけれど、ドヤ顔で弟をお披露目していた。平和で何より。犬ってあんなにわかりやすくドヤ顔するのか。

 話したことがない人たちもアースにつられて寄ってきてくれたので、ここの人たちは俺に慣れてくれただろう。ダイナーで凝視されることが減ればいいな。

「ユウー! お前、マジか!」

「マジだ」

 突撃してきたダミアンに肩を揺さぶられる。

「首無し騎士にチャーチグリム、ドラゴンときたら次はなんだろうな?」

「ヒッポグリフとか連れてきてももう驚けないな」

 ノエルさんとアルさんが笑いながら話しているけど、次があるという前提なのか。ヒッポグリフってなんだっけ?

「人型、モフモフ、ツルツルときたら次は液状でしょうか?」

 ルーンさん?? そんな縛りは嫌です。そして液状の魔物なんているっけ? スライムは液状なのか?

 一頻りアースとロボを撫でてきたらしい《烈火の守護者》のメンバーも近づいてく来た。

「まさか手乗りドラゴンを撫でられる日が来るとは」

「ウェスト様はおっかないからさすがに撫でられないけど、ドラゴンの鱗ってあんな感触なんですね」

 満喫してますねぇ。レオとベルナさんがほくほく顔で笑っている。アッカとウリオはまだアースを撫でているようだ。

 とりあえず昼食をとろうとウィルとシオンさんと並んで座るとカイさんと話していたナイトが影から何かを取り出した。

「忘れるところでした。ユウ、どうぞ」

「なんだ?」

 渡されたのは竹の葉で包んであるもの。これはもしや。

 開けてみると綺麗な三角形のおにぎりが。

「おにぎり!」

「はい。朝ラウ様がお米を届けてくださいまして」

 ラウさんありがとう!! 左右から覗き込んできたウィルとシオンさんが首を傾げる。

「なんだそれは」

「麦じゃないよな。稲?」

「はい。粉砕していない稲を水で研いで表面の糠を落としてから炊き上げたものです。我々の国では米と呼んでいて、パンと同じように食事の主食として食べられています。今回はこのまま食べられるようにお出汁で炊いてお塩で味付けをしました」

 塩おにぎり! しかも出汁で炊いてあるとか最高かよ。久々に食べるとより美味しい。もっちり感はあんまり無いけど、粒がしっかりしていて満足感がある。しかもだし巻き玉子まで。ナイトのだし巻き玉子は出汁と塩で味付けするのでご飯のおかずになる。甘い玉子焼きはおかずとして食べるのはちょっと苦手。

 それにしても。

「どうやって炊いたんだ?」

 この世界炊飯器どころか土鍋とか無いよね? 訊くとナイトが両手を上げた。

「普通に鉄鍋で炊きましたよ」

「炊けるのか」

 鉄鍋で。

「飯盒は鉄ですよ」

 あ。確かに。飯盒炊飯とか言うもんな。土鍋じゃなくても炊けるのか。

「遠赤外線がどうのと言いますが、水の量と火加減さえ間違えなければ問題無くお米は炊けます」

 そうなのか。

 俺が食べているおにぎりをジッとウィルとシオンさんが見てくる。あげませんよ! おにぎりを隠すようにするとナイトが笑いながら大きな皿を取り出す。

「ナヒカ様たちとたくさん炊きましたので、皆様の分もご用意していますよ」

 わーいと手を上げて喜ぶ二人を横目におにぎりを頬張っていると、撫で撫でから解放されたのか空腹が限界にきたのかロボとアースが近づいて来た。

「ロボとアースには焼き飯を作っていますから、二人のお皿を出してくれますか」

「わかった」

 ロボの赤いお皿と、アースの分は白い陶器のお皿を出す。鍋ごと持って来ていたらしい焼き飯を注いでもらって二人の前に出すと嬉しそうに食べ始めたけれど、何かに気づいたようにアースが膝に登ってくる。どうしたの? 玉子焼きはお皿に乗っているよ?

「ぎゃう」

「はい」

 一鳴きしてからロボを見て、自分のご飯を見て、俺を見る。んー?

「あ。皿か? これ?」

 ロボのお皿をつつくとぎゃぉうと鳴く。なるほどなるほど。

「街に帰ったらアースの皿も買いに行こうか。ちょっとの間だけこれで我慢してくれるかい?」

「ぴゃう」

 わかったのか頷いてご飯に戻る。専用のお皿が羨ましかったのかな。

 ご飯食べてるところも可愛いねぇと撫でられているロボとアースを見守っていると、おにぎりを食べていたウィルとシオンさん、カイさんとノエルさん、ルーンさんがナイトを囲んで米の調理法について質問していた。

「これは水を含むと膨らむのですか?」

「水で炊くだけで食べられるなら持ち運びが簡単か」

「これは冒険者の主食に良いかもな」

「そうだな。その場で調理できるし、聞いている限りパンより手軽に準備できそうだ」

「柔らかいパンよりも腹持ちがいいですし、おすすめではありますね。最悪はお塩を振っただけでも食べられますし」

「水差しを持っている冒険者に勧めてみるか。量は確保できそうか?」

「冒険者ギルドに卸す用に一定量を確保してくださることになりました。市場に流通するかはラウ様が判断なされます」

 ラウさんに頼りきっちゃってるな。今度お礼に何か持って行こう。

 そんな話を聞きながらのんびりご飯を食べていて、さっき気になったことを思い出した。

「鎧についてなんだが、質問がある」

「ん?」

 シオンさんが首を傾げて続きを促してくれたので世界樹の種子を仮面から鎧に変える。

「こう、初期状態?と言うのか? 一番最初は必ずこの、外殻がアダマンタイトで内殻がドラゴンスキンなんだが」

 手の甲に走るラインを確認すると色が変わらないので内殻はドラゴンスキンで合っているのだろう。

「ポセイドンの外皮も物理耐性と魔法耐性が高いと聞いたんだが、それでは足りないのか?」

 俺が血塗れと悲しんでいるのを知っていながら世界樹の種子がわざわざ拘っているくらいだし、何か意味があると思うんだけど。

 んー、とシオンさんが顎を掻く。

「俺はこういった説明が苦手でな。ウィル」

「そうだな……うん。鉄の箱があるとする」

 うん? 大きさはどのくらいでもいいんだけど、と言いながらウィルが手でエアー箱を作る。

「その箱の中に生卵を入れる」

 鉄の箱に生卵を。

「その卵入りの箱を、机の上から落としたとすると、どうなる?」

「……卵が破れる?」

 よな?

「そう。箱は無事だが中の卵は破れる。物理耐性とはこの場合の箱の頑丈さのことを指す。生卵が人間の肉体な」

 ほう。……ほう?

「ポセイドンの外皮は確かに物理・魔法耐性が高いが、ポセイドンの場合は卵も鉄で頑丈だからそれでいいのだが、人間だとそうはいかない」

 いかないでしょうな。中グシャグシャだもん。

「だから衝撃吸収能力のある物で包む必要がある。ドラゴンスキンは衝撃吸収能力が最も高い素材だ。だから世界樹の種子は絶対に壊れないアダマンタイトで箱を作り、ドラゴンスキンで中を包んでいるんだろう。鎧としては一番手堅い」

 へー。ガラス食器とかを梱包するとき緩衝材を入れるのと一緒か。頑丈に守ってくれてるんだな。ありがとうね。

 腕を撫でてみるとゆるゆると表面が波打っている。喜んでくれてるのかな?

 それにしてもだ。

「ではそのドラゴンスキン越しに腕が痺れるほどの打撃を与えてきたシオンさんは化け物ということだな」

「そういうことだ」

「ちょっと待て」

 ブホ、とウィルの説明を一緒に聞いていたシオンさんが吹き出した。

「そういう話じゃなかっただろう」

「いや、改めて聞いて化け物だなぁと思ったからつい」

「常日頃から化け物だと思っていたからつい」

「ついじゃない。どんな話の飛躍だ」

 だって。

「リアムは素手殴りでドラゴンに穴を空けるからな!? それに比べれば俺なんて可愛い物だろう」

「基準がおかしい」

「勇者もおかしい」

 父さん素手でドラゴン打ち抜いてるの? きもっ。



 食事を終えてナイトとアースが戻って行ったのを見送り、俺たちはさっき頑張ったので夜の警戒まではゆっくりしていいとのことでロボを枕に仮眠を摂っていると体が浮き上がるくらいに地面が揺れた。

「なんだ!?」

「バジリスクの真体だ! 全員顔を伏せ」

「その必要はありません」

 シオンさんが声を張るので意味のわからないまま顔を伏せようとすると、ドンっという音とナイトの声が聞こえた。

 ドォンと地面が震えてまた体が浮く。巨大な何かが地面に倒れたようだ。

 顔を上げるとウェストくらい大きな魔物が倒れていた。ナニコレェ。バジリスクって言ってたけど、バジリスクってこんな大きいの? この森こんなのが大量に湧いたらはみ出しそうだけど。

 森と平原の境目を見ると武装したナイトが仁王立ちしていた。

「あれの相手は私は請け負っていますので」

 あ、はい。

 ウィルが起き上がりながら頭を掻く。

「しっかし、バジリスクの真体か。さすがに驚いたぞ」

 しんたい?

「ウィル。その、しんたいというのはなんだ?」

「真体な。真の体。この森に普段からいるバジリスクは小型で、見た目は3メートルくらいのヘビ型なんだが、真体はあんな風に」

 指を追ってバジリスクを見る。ロボは興味があるのか影から出てきたアースと一緒にバジリスクに近づいて行く。

「王冠を戴く鳥で、尾ではなく蛇が生えている。ワイバーンがドラゴンになるように、ヘビ型のバジリスクが進化すると真体になる」

 王冠? 首が飛ばされたバジリスクの頭を探すと、確かに頭の近くに王冠のようなものも転がっている。あれ魔物の一部なのか。進化する魔物ねぇ。

「大きさや姿もそうだが、能力も段違いだぞ。普通のバジリスクは災害級の魔物で目が合うと全身が麻痺して動けなくなるんだが、真体となると見ると死ぬ」

 ……はい?

「見ると死ぬとは」

 ウィルの説明を受け継いで説明してくれたシオンさんに顔を向ける。

「そのままの意味だ。全身に即死効果のある魔力を纏っている。高ランクの弱体耐性と魔法耐性を持っている者でも数分しか保たんだろうな」

 俺数分しか保たないじゃん。っていうか父さん以外は数分しか保たないんじゃない? 今は見ても大丈夫なんだよね? 確実に死んでるだろうから大丈夫だよね?

「幸いなことに見なければ効果が無いから、オリハルコンランクくらいになると目を瞑ったまま気配探知だけで戦ったりはできるがな」

 できないよ。化け物か。なんだ目を瞑ったまま戦うって。引いているとウィルが首を振る。

「言っとくが、ほんっとうにごく一部のオリハルコンランクだけだからな。目を瞑っていると即死はしないが、バジリスクの真体は災厄級から天災級にランク付される。スピードも攻撃も防御もオリハルコンランクだろうが基本的には太刀打ちできん。普通は一発で外皮を打ち抜けるもんじゃ無いんだが」

 一発で撃ち抜いた人がいますよ。魔物ですけど。

「私はドラゴンでも打ち抜けますので」

 怖い。ナイトって本当に強い魔物なんだな。

「念のために網を張っておいて良かったです。皆様に何かあっては私の沽券に関わりますから」

 網? 警戒網みたいなのを仕掛けてたのかな?

 それにしてもなあ、とウィルが頭を掻いた。他の冒険者たちも続々と集まってくる。

「バジリスクの真体なんてもんを出してくるとなると、今日明日辺りで勝負を付けに来るかもな」

 うわー。頑張らないと。頑張ってどうにかなるか知らないけど。

 ……というか、見ると死ぬ魔物が災厄級から天災級なの? それ以上の幻想級って何。


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