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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第49話 盾と剣

「アースはこのままここにいても大丈夫だろうか?」

 俺の肩に乗るアースを撫でていて気づいた。幼体とはいってもドラゴンだとしたら魔物の誘導に支障があるかな? シオンさんを中心に平原に向かいながら訊けばウィルが耳を振る。

「そうだなぁ。基本は旦那と一緒にいてもらって、こっちの手が足りなくなったら手伝ってもらうか」

「真性ドラゴン種の幼体がどのくらい戦えるかもわからんしな。ブレスとか吹くんだろうか?」

 どうなんだろう? ロボは相手が強かろうと遊んでくれそうな魔物には近づいていくっぽいからなぁ。ザーパトとも友達になってるし。

「ではナイトが戻ればナイトに預けよう。アース、しばらくナイトと遊んでいてくれるかい?」

「ピャウ」

 良いお返事です。他のパーティが展開している所まで来たけれど、魔物いないなぁ。アースがいるからというわけでは無さそうだな。

「戻りました」

「おかえり。首輪は受け取れた?」

「ええ。ロボ、こちらにおいで」

 くぅ?と近づいていくロボに合わせて膝をついたナイトが首輪を巻く。アースはロボの背中に移って首輪を観察しているようだ。うん。鞣した革の色がよく似合っている。琥珀も綺麗に見えているし、満足。

「苦しくないですか?」

「わん!」

 気になるようでかしかしと前脚で掻いているけれど、苦しくないならそのうち慣れるだろう。

「アースもこちらに」

「ピャ?」

 首を傾げるアースを抱き上げてナイトに向けると前脚にリボンの様な紐が巻かれた。アースの黒い体に白いリボンが目立つ。

「仮ですし、これでいいでしょう。首に付けると邪魔そうですし、きちんとお店で調整していただきましょう」

「そうだな。アース、キツくないか?」

「ギャオ」

 大丈夫そうだね。

「ナイト、アースを頼む」

「了解しました。さすがにアースがずっといると魔物の誘導に支障が出そうですからね」

「ああ。ごめんな。夜には呼ぶからね」

 ナイトにアースを預けて頭を撫でるとゴロゴロと鳴いた。よしよし。


 ナイトとアースが影に消えて行ったので、俺たちもちゃんと警戒しよう。《勇敢なる星(ブレイブ・スター)》がいたのでとりあえず近づいてみる。

「ノエルさん、どうなっている?」

「微妙だな。そろそろ仕掛けてきそうな気もするが、想定どおりすぎるのも不気味だな」

 今が昼前か。確かに、仕掛けてきいそうな時間ではある気がするけど、どうなんだろうね。

「そもそも向こうは私たちがここに待機していると知っているのだろうか?」

「……さすがにわかっているだろうと思っているが、どうなんだろうな。魔物が騎士団を避けて来ただろうから、何かあるとは勘づいているはずだが」

 ノエルさんでも相手の動きが読めないのか。ウィルもそうだけど、戦闘に慣れてそうな人たちが読めないっていうのがなんだかなぁ。何か考えがあって動いてるのか、戦争が下手すぎて逆に読めないのか。

「どうも想定どおりらしいぞ。ユウ、前に出ろ。シオン、頼む」

 ウィルがそう言うので前を向くと地平線が黒く染まって蠢いていた。

 ナニアレ。

「オークか。規模は……数百?」

「奥にもいるなら千は軽く超えるだろうな。総員、戦闘配置」

 オーク。なんだっけ、二足歩行の豚? しれっと言ったけど千超えかぁ。ウィルがバングルを触って俺たちの登録証が鳴る。

 とりあえずシオンさんと一緒に前に出る。

「オークとはどういった魔物だ?」

「デカくて力の強くなったコボルトだと思えばいい。コボルトと違って弓も使うから気をつけろ」

 飛び道具使い始めたのか。厄介。仮面を鎧に変えるとシオンさんから声がかかる。

「ユウちょっと待て」

 はい?

「《楔を穿つ咆哮(アンカー・ローア)》!」

 シオンさんが吼えると、オークの大群がこちらを向いた。

「注意を引いた。俺に向かってくるから他所はそんなに気にしなくていいぞ」

「了解した」

 やったー! 飛び出すとロボはウィルの方に向かって行った。昨日言ったこと覚えているのか。賢い。

 今日はオリハルコンの剣を装備してるし、魔法も使っておこう。えっと、風が真横に薙ぐイメージで。

 剣を振るとオークの最前列が吹き飛んだ。よし。成功したけど威力が思った三倍だったのでもうしません。オリハルコンの剣を鞘に戻して鞄からミスリルの剣を取り出す。どうするか。このままオリハルコンを佩いておいて、魔法も使えるようにしておくか。ミスリルの鞘を鞄に戻す。

 昨日と同じで鎧の内殻はミスリルだ。一応物理攻撃を喰らわないように気をつけておこう。

 シオンさんに向かっていくとはいえ、シオンさんの目の前で戦ってても意味がないからオークの群れに飛び込んで剣を振る。昨日と一緒でとにかく数を減らせば良いだろう。

 目の前でひしめき合う巨大な武装したブタってなかなか迫力がある。

 ……武装してるんだよな、このブタ。

 振り下ろされた剣を剣で受け止める。きちんと鍛えられているようには見えないけれど、それでも剣の形はしている。コボルトよりも知能も技術も高いのか。弓を使うとも言っていたし、棍棒を振り回していたコボルトとは次元が違うか。単純にコボルトの強化版とは思わないほうが良さそうだな。

 剣を使いながら背後から襲ってくるオークに対しては魔法で防御する。

 うーん。どうしても使いやすい氷を使ってしまうけど、これは過剰防衛な気がするな。かといって氷以外を使おうとすると意識しないと火柱が上がるんだよな。咄嗟に火が出るっていうのは俺の精神的な何かが関係してるのか?

 まあ水は壁にならないだろうし、風だと他の冒険者が危ないし、土の壁では視界が塞がってしまうと考えると一瞬で噴き上がる火の壁っていうのは理にかなっている……のか? オークの丸焼きが完成しているけどもう考えるのはやめよう。

 しかし多い。千を超えるってって本当だったのか。しかもオークだけではなくてたまに知らない魔物やコボルトも混ざってるし。しかし、中規模討伐が数万から数十万ってことは、これだけいてもまだ小規模討伐になってるかどうかってところなのか? 異世界すごいな。

 コボルト戦と違って魔法を使っているのに、時間がかかる。昨日のホーンブルと違って連携してくるから面倒だな。やっぱり知能があるのは相手がしにくい。しかもチクチク弓矢が鬱陶しい。内殻をミスリルにしているから痛くはないけど衝撃が結構くる。

 他のパーティはどうやって戦っているのかと思ったら、昨日と違って盾持ちや前衛職を中心に魔導士が攻撃の基本となって戦っているようだ。本来のパーティの戦い方ってあんな感じなんだろうか。

 しばらく無心で数を減らすことに集中していたけれど、気づくとシオンさんが守っている場所から離れるにつれてどんどん戦線が下がっているし、みんな疲れてきたようだ。

「そろそろ疲れが溜まってきたか」

 ウィルに近づいて確認すると頷いて周りを見る。ロボがいないと思ったら近くのパーティで魔導士らしき人を守っていた。やるなぁ。

「この人数でこれだけの数を相手にするのは堪えたか。各パーティそれぞれ魔力を温存してるんだろうが、このままだとジリ貧だな」

 あ、この人数で相手にするのはやっぱりおかしいんですね。中規模までなら戦線維持できるって言ってたからこのくらいで相手にするのが当然なのかと。

 しかし、そうか。魔力切れの心配もあるのか。そうだよな。派手な魔法は見てないけど、数撃ってれば消耗するか。

 ここまでかね、とウィルがバングルを触って登録証が鳴る。短く二回鳴らすのはなんのサインだろうか。

「総員退避! 森まで退がれ!」

 ウィルの声が届いた冒険者たちがそれぞれ近くにいる冒険者に声をかけ、退避を開始する。ほぼ全てのパーティが森に入ったところで俺たちもシオンさんの近くまで退がった。ロボが尻尾を振って駆け寄ってくる。よしよし。すごいぞ。

「ちまちま面倒になってきた」

「身も蓋も無いな」

 シオンさんが向かって来たオークを盾で弾きながらウィルに笑って応える。

「全体的に戦線が下がりだしたし、これ以上は消耗するだけだ。夜の警戒を手薄にするわけにもいくまいよ。ここまで減らせばいいだろう」

 倒しきらなくていいのか?と思っているとウィルが頭を掻いてから俺を見る。

「ユウ、まだまだ元気だな?」

「ああ」

 戦いにくいだけで別に疲れとかは無いです。ロボは、まだお昼ご飯食べてないからお腹減ったね。ちょっと耳が垂れてる。

「じゃあここからは私たちだけでいくぞ。あまり派手なの困るが、ある程度は好きにしていい」

「やったぁ」

 いいだろうってそういうことでしたか。

「シオン」

「任せろ。《楔を穿つ咆哮(アンカー・ローア)》それと《地に聳え立つ障壁(グランド・クリフ)》」

 シオンさんが言いきった途端に地鳴りと共に土の壁……と言うか岩壁に近いな。確実に岩。その壁が森と平原を遮断するように発生した。俺たちの前だけ開いているけれどここはシオンさんが守るからいいのか。

「二色・紫紺《睡蓮》」

 シオンさんの魔法はザ・魔法って感じだけど、ウィルの技は花の名前が付いてるのかな?

 地面に短剣を突き立てたと思ったら平原の地面が沈んだ。魔物の動きを妨害できるのか。しかしこれ、ただの沼では? 技名合ってないだろ。ふんふんと泥を嗅いでいるロボの横で試しに足を片方沈めてみると膝まで沈む。うーん。たぶん動けないことはないけど重たいな。

 氷の階段を作った時のように接触する一瞬だけ凍らせながら戦うなんて器用なことはできないだろうし、どうするか。

 泥って撥水でどうにかなるかな?

 外殻をポセイドンの外皮に変更。内殻は一応アダマンタイト。鎧の表面が光って深い藍色に変わり、白いラインが一瞬黒く光る。もう一度足を沈めてみるとちょっと重たい水くらいの感じに変わった。ポセイドンの外皮便利。ありがとう世界樹の種子。

「行けそうか?」

「ああ」

「私たちは援護に徹するからな」

「了解した。ロボを頼む」

 ミスリルの剣を仕舞ってオリハルコンを鞘から抜く。近くに誰も来ないとわかっているならこっちでいいだろう。

 さて、行くぞ。

 周りに誰もいないなら、風魔法でいいかな? 剣の斬れ味が鋭くなるように意識したら風の魔力が剣に流れるようだ。便利ぃ。

 ひたすら斬って斬ってを繰り返す。外殻がポセイドンの外皮だからか血も弾いてくれているし、ウィルが弓矢を持っているのを狙ってくれているのか先程までのチクチクとした衝撃がないのもだいぶ精神的に楽。

 あと数十体まで減らしたので、ちょっと楽をしよう。火柱を上げて一気に対処してしまう。

「よし、終わり」

 お腹減った。

 シオンさんの元まで戻っているとウィルが地面に刺していた剣を持つので跳び上がると、地面が沼状から元に戻った。あれもしかしてずっと魔力流してたのかな? 制御能力高すぎじゃない? 羨ましい。

 飛びついてきたロボを抱き上げてシオンさんに近づくとぐりぐりと頭を撫でられる。

「今回は血塗れにならなかったか」

「ポセイドンの外皮万歳だ」

 ずっとこれでもいいのかな? でもあれか。防刃性能は低いのかな? 物理耐性が高いって言ってた気がするけど、鎧が基本アダマンタイトなことを考えるとアダマンタイトの方がいいのかな? 一旦掃討完了したのでとりあえず鎧を仮面に戻す。

「警戒は休んでた他のパーティに任せて、俺たちも一度休もう。飯食って夜に備えないとな」

 了解です。ロボはご飯は……待っててくれたの? 優しい子! ナイトとアースも呼んでご飯にしようね。



──────────────


「一人で五百体近く相手にしてるぞ。《血塗れの鎧(ブローディ・アーマー)》は体力底無しか?」

「魔力だけじゃなく体力も天災級なんだろ」

「オリハルコンランク怖い」

「というかなんで膝丈の泥に埋まって普通に動いてるんだよ。元気いっぱいか」

「誰だよ最強の盾に最狂の剣持たせようと思いついた奴」

「ギルマスだろ」

「ギルマスも元オリハルコンだもんな。無茶苦茶やるよ本当に」

「と言うかウィルももう冒険者でいいだろ。なんであいつ職員なんだよ」

「やめろ。俺たちの仕事がなくなる」


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