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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第48話 真性ドラゴン種

「はぁ……」

 血塗れの鎧かぁ……。あれかな、非常呼集の時に屋根の上走ったせいで目立ちすぎたのかな? 破壊神も嫌だけど血塗れの鎧とどっちがマシってなると破壊神でしょ。血塗れて。そりゃ頭から被ってたけども。

 しょうがなくない? 俺のせいじゃないじゃん。

「まだ落ち込んでいるのか?」

「落ち込んでいるというか、マジか、って気持ちだ」

「ははは」

 はははじゃないよ。仮眠を終えたレオと並んで警戒範囲を確認する。

「レオは二つ名無いのか?」

「俺はパーティ組んでるからな。『烈火の守護者』のレオだ」

 ほーん? あ、確かにジェシカさんがなんかそんな感じで言っていた気がする。父さんんたちはパーティを組んでいるのに個人に二つ名が付いているって。

「二つ名とはあだ名ではないのか?」

「それ他の奴に言うなよ。二つ名持ちになるために必死な奴もいるんだから」

 そんなこと言われても。レオが指を振って説明してくれる。

「二つ名ってのは一種の箔だ。一定以上の実力を認められた冒険者にしか与えられない、個人を特定するための名前なんだよ。『白銀の大盾』も『血塗れの鎧』もな」

「何故そんなものが?」

「名前だけだと連絡が錯綜するかもだろ? シオンもユウも特別珍しい名前じゃない。いざという時にユウを呼んだのに別の「ユウ」が来ないようにな」

 あー……この世界一般的には名字無いもんね。急いでるときにランクがどうのとかどんな奴だって説明してる暇がないからわかりやすい名前でってことか。

 ちょっと待って? つまり俺は「血塗れの鎧呼んで!」で呼ばれるの? つらい。いつも血濡れなわけじゃないもん。

「二つ名の更新とか無いだろうか」

「無いぞ」

 無いかー。悲しみ。

 まあもう付いてしまったものは仕方がない。諦めて仕事しよう。

 夜のうちは何故か平和に過ごせた。多少魔物が出て来たりしたけれど、これは元々森にいた魔物っぽいんだよな。ガーゴイルとかもいたけれどこれも森にいただろう。

 案の定血に濡れたがなぁ!!

 血を落としてくれた後、うっすらと白んできた平原を見渡してウィルが顎を掻く。

「ユウ、旦那を呼んでくれるか。一応騎士団の方に被害が出てないか確認したい」

「了解した。ナイト」

「──はい」

 呼べばすぐ来てくれる安心感よな。

「旦那、悪いが騎士団の様子を見て来てくれないか? できれば日中どうだったかも聞いて来てほしい」

「承知いたしました」

 影に消えていくナイトを見送ってウィルが深いため息を吐いた。

「どう思う?」

「私はこういった戦闘の経験が無いからなんとも。ただ、効率が悪いと思う。こういう時は昼夜を問わず攻勢を止めないものかと」

「十分だ。しかし、そうだよなぁ。経験が無いユウでさえおかしいと思うよな、これは」

「戦争が下手とかいうレベルではないのでは?」

「なんの考えも無く夜休んでいたとしたら壊滅的だな」

 昼間の召喚で魔力を消費し切った? だとしても下手では済まないな。俺みたいな感じじゃないなら魔力管理くらいはできるだろう。

「召喚魔法は魔力を大量に使うのか?」

「種類によると思うが……それこそ勇者召喚のように次元を跨ぐようなものは膨大な魔力が必要だろうが、恐らく今回使っているのは転移魔法の応用だ。なら魔石があれば術者本人の魔力はほとんど必要では無いはずだから、魔力切れなんかではないと思うが」

 ほーん。転移魔法の応用ってことは、いでよ!って呼ぶんじゃなくてどこかにいるのをこの場に呼び出しているって感じなのかな。魔石って色々使えるんだな。

 ブワッと影が膨らんでナイトが戻ってきた。

「戻りました。どうやら騎士団の方でも夜襲に備えていたらしいのですが、肩透かしを食ったと」

「んー。油断を誘う作戦か? 気が緩んだところを一気に押してくるとか?」

「偵察隊の方の話を聞く限りそういったことも無さそうですが」

「本隊がそれに見せかけた陽動の可能性は?」

「無いでしょうね。バジリスクを探しながら周辺を確認していましたが何も見つかりませんでした」

「ますますわからんなぁ。何がしたいんだか。とにかく、一旦仮眠を取っておこう。マーナ、頼んだ。何かあれば叩き起こしてくれればいい」

 頭を掻いたウィルがそう言って呼びかけると起きて準備を始めていたらしいマーナさんがはーいと元気に応えていた。

「旦那はどうする?」

「そうですね。バジリスクは昨日のうちに狩り切りましたので、一度街に戻ります。夜には戻りますが、何かあればお呼びください」

「わかった」

 ベルナさんたちと一緒に寝ていたロボも起きてきて尻尾を振っている。ご飯出してあげるからちょっと待ってね。



 ロボに朝ご飯を出したあと遊びに行くのを見送って仮眠に着いたんだけど、3時間ほど眠って目が覚めた。だいぶ明るくなっているな。

「まだ寝てていいですよ?」

 近くにいたベルナさんがそう言ってくれるけれど、体を起こす。

「ああ……いや。ロボが呼んでいる気がするから、少し行ってくる」

 気のせいでなければさっき念話で呼ばれた気がする。

「ロボちゃんが? 何か問題?」

「いや。問題があればあの子は影に入るだろうから、何か面白いものでも見つけたのかもしれない」

 アッカに手を振って走り出す。そこまで離れてないだろうからウィルに言わなくても大丈夫だろう。一旦森を抜け、東の平原に戻る。

『ロボ、一回鳴いてくれるか?』

『わん!』

 遠吠えが聞こえた方に走るけれど、その林はちょっと嫌な予感がするぞ?

「ロボ?」

「あん!」

 林に入って呼ぶと、バッと飛び出してきたロボはとてもご機嫌に尻尾を振っているけれど、その、背中の上にいるトカゲちゃんは誰かな?? 真っ黒で格好良いねぇ。目の中に瞳が三つくらいある気がするけど気のせいかな? あ、右目は瞳一個だけだね。良かった。

 爪も真っ黒で格好良いねぇ。めっちゃ尖ってる気がするけど背中の上にいて痛くないの? 痛くなさそうだね。じゃあいいや。

 それで、お願いだからトカゲちゃん翼を仕舞おっか???

「ギャオウ」

 ギャオウ言っちゃったよ。もう駄目だ。ドラゴンじゃん。絶対トカゲで誤魔化せない。お友達になっちゃったの?

 この子絶対ナイトが前言ってたドラゴンの幼体でしょ。

 頭を抱えてしゃがみ込むとロボとロボに乗ったドラゴンが不思議そうに寄ってくる。どうしたの?という感じで覗き込んでくるのでとりあえず二人とも撫でておく。ドラゴンはしっとりとした鱗がツルツルとした手触りで撫で心地がいい。ウェストよりも柔らかいのかな?

「ドラゴンって逆鱗とか無かったっけ? どこ撫でても怒らないね?」

 頭も顎の下も翼の間も背中もお腹も尻尾も怒らない。むしろ腕の中でゴロゴロと寛いでいる。この世界のドラゴンは逆鱗ないのかな? まぁ地球にはドラゴンいないから逆鱗が本当にあるのか知らないんだけど。

 しかし、どうするか。

「ロボ、お友達できたの?」

「うー、わん! ばう!」

 おお。ロボに唸られたの初めてかも。何か言いたいことがあるらしい。

『ユウ?』

『ナイト? どうしたの?』

 急にナイトから念話がきた。

『ロボが「お兄ちゃんに弟って伝えて」と言ってきたんですが、どういう状況です?』

 弟だったかぁ。もうお迎えする気満々なんですね! お友達じゃないもんっていう抗議だったんですね。

『説明が難しいから、こっちに来てくれる?』

『承知しました』

 現れたナイトに腕の中にいるドラゴンを見せると固まった。

「……弟?」

「らしいよ」

「わん!」

「ピギャォ!」

 絞り出されたナイトの声に元気に返事をしている。ナイトが頭に手を当てる仕草をした。

「どうしましょうか。もう完全に拾って帰る気ですよね?」

「弟宣言してるしね。大人しくて良い子だし、問題無いとは思うんだけど驚かれるよね」

 ドラゴンですしね、と頭を掻く仕草をするナイトの無い頭にドラゴンは興味深々らしい。首を伸ばして確認している。瞳が三つあるのは驚きなんだけど、それでもクリクリした目で可愛いんだよね。そんな目で見つめられてナイトが勝てるわけがなかった。

「……装具とやらを準備していただきます。それを着けていればひとまずは安心していただけるでしょうから」

「わかったー。じゃあジェシカさんのお店で……あ、ロボの首輪もできているだろうから受け取っておいて」

 割札を渡すと了解しましたとポケットに仕舞う。

「では随獣契約をしましょうか。その子を降ろしてください」

 はーい。名前どうしようかな。

「この子はどんなドラゴンなんだ?」

 魔法陣を構築しているナイトに訊く。

「この子は豊穣を司っているようですね。地龍王の系譜のドラゴンでしょう」

 地龍王の系譜か。響きがカッコいいな。それならば。

 魔法陣ができあがり、ドラゴンがワクワクとした顔でこっちを向く。契約主が俺っていうことはわかるものなんだな。

「この子の名は?」

「アース。ウェストみたいなどっしりした子に育ってほしいな」

「そうですね。では、アース。大地の名の子。豊かな土壌のようにたくさんのものを育んでくださいね」

「ギャオ!」

 元気でよろしい。

「じゃあ俺はアースを紹介してくるね」

「はい。装具は仮の物になるでしょうから、帰ってからしっかりした物を作らないといけませんね」

「うん」

 どんなのが格好良いかな。クール系かな?



 ロボの背中が気に入ったらしいアースを連れて帰ると、すごく良い笑顔のシオンさんと眉間にこれでもかというくらいシワを寄せたウィルが待ち構えていたので自主的に正座してしまった。ロボがよくわかってない顔で横でお座りし、同じくよくわかってないであろうアースが俺の膝に乗ってくる。

「……で?」

「新しい随獣のアースです」

「っは、はははは!! ドラゴンか! しかも真性ドラゴン種とは! よく見つけたものだな」

 我慢できなかったらしいシオンさんが大きな声で笑い、膝の上で大人しくしているアースの頭を撫でた。ぐりぐりと撫でられているがアースは気にしないようでゴロゴロと喉を鳴らしている。

「真性ドラゴン種?」

 ドラゴンじゃないの? 首を傾げると全てを諦めたらしいウィルが座り込んで説明してくれる。やったーと言いたげにロボがウィルの膝に入り込んだ。

「真性ドラゴン種っていうのは産まれた時からドラゴンである種のことだ。ウェストのように年月と魔力をかけてドラゴンになることのほうが多いんだが、稀に産まれたときからドラゴンの個体がいる。この子がそれだ。龍王の系譜か?」

「地龍王の系譜だとナイトが言っていた」

 真性ドラゴン種かぁ。種族の名前も格好良いな。

「見ただけでわかる物なのか?」

「真性ドラゴン種は他のドラゴンと姿が違うからな」

 ほう。いや、確かに東洋の龍みたいな感じの細長い体に西洋のドラゴンっぽい翼が生えてるから面白いなと思ってたけど。ヒゲがないから顔は西洋寄りか? 鬣もないね。でも基本姿勢は四足が地面に着いた状態みたいだからそれは東洋っぽさがあるな。

「演習の時にドラゴンの幼体がいるって聞いてからまさかなと思ってたが。まさかだったか」

 頭を掻くウィルに、アースを撫でながら説明する。

「ロボが弟と言って連れてきてしまったんだ。大人しい子だし、契約もしたから問題無いと思う」

「ははは。ドラゴンの兄貴になったのか。ロボは大物になるだろうな」

 シオンさんはもう笑いが止まらないらしい。シオンさんに撫でられてロボがウィルの膝の中で胸を張る。ドヤ感満載のロボにウィルもどうしようもないと納得してくれたらしい。アースの頭をポンポンと撫でる。

「済んだことを言っても遅いか。まぁ野良の真性ドラゴン種が近くにいるよりはユウの所にいてくれた方が安心できるしな。お前の主人は落ち着きがないから、世話してやってくれな。アース」

「ぎゃう!」

 俺の元にいた方がいいっていうのはいいのですが、世話してやってくれとはどういう意味ですかな???

「そこの三人! サボってないでそろそろ警戒に戻ってくれ」

 フィオさんに怒られてしまった。了解です。昨日みたいになったらロボはウィルの近くにいてもらうとして、アースはどうしようか。


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