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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第46話 東の森へ

 ギルドに戻るには早いかなと思い、ジェシカさんたちを迎えに行くことにした。用事はとりあえず終わったし、放ったらかしもね。携帯食とドライフルーツはまだ余裕があるし、食事の準備はしなくてもいいだろう。

 門に向かうとさっきの騎士が正規の位置で検問していた。俺に気づいたようで手を振ってくれる。ちゃんと見てなかったけど、俺と同い年くらいかな?

「ありがとう、さっきは助かった」

「ああ、いや。たぶんすぐ帰ってくるだろうと聞いていたからな。思っていた以上に早かったが」

「急いで帰ってこいとのことだったからな」

 頑張りました。それにしても。

「鎧姿ではないのにすぐわかるものなんだな」

「あんたの特徴は聞いてるからな。黒髪に仮面の、長剣を提げた剣士。なかなか珍しい」

 あー。珍しいらしい黒髪に仮面の男なんてそうそういないか。

「まあそれ以上に血みどろで走り回ってる鎧の男として有名になっているけど」

「嘘だろう」

 そんな不名誉なことある?? 血みどろで走り回ってるってただの不審者じゃんか。不審者というか異常者だよ。警察呼んで。走り回ってるの俺なんだけども!

 項垂れると騎士の人に笑われる。

「俺はダンだ」

「私はユウ。これからよろしく」

「おう。よろしく」

 ダンさんね。よろしくです。

「で、外に出るのか?」

「ああ。監督依頼を受けている子たちを任せて帰ってきているからな。迎えに行こうと思っている」

「了解。通っていいぜ」

 ありがとうございまーす。さて、どの辺にいるかな。

 とりあえず走って探すか。一応仮面から鎧に変えて走り出す。山地に近づいてからロボに念話をする。

『ロボ、聞こえたら大きな声で鳴いてくれる?』

『わん!』

 元気な返事が聞こえてきたあと、かすかにロボと思わしき遠吠えが聞こえてきた。あっちか。俺は多少の崖を無視して直進したけどみんなはそうはいかないから、ルートがだいぶ違うな。

 声が聞こえてきたほうに走っていると、昼食を終えたらしいみんなを見つけた。結構山に近い場所だったけれどロボの声が大きかったのか俺の耳がよかったのか。

 足音で気づいていたのかロボが走り寄ってきて、それに気づいたオリバーがこちらを向く。

「ユウさん!」

「急にいなくなってすまなかった。何もなかったか?」

「はい。《迷宮への誘い(コール・ラビリンス)》の効果もすぐ切れましたし、ビクターとロボちゃんが守ってくれました」

 それはよかった。ビクターにお礼と、ロボにはご褒美で何か美味しいものでも用意しよう。

 特に急ぐ理由がないのでゆっくり帰還する。鑑定はウィルが付いていてくれるし、帰りが少々遅くなったところで済ませておいてくれるだろう。ナイトには念話で連絡をしておけばいいし。連絡するとナイトは食事の準備をしながら待っているとのことだった。やった。携帯食で済ませる気だったけど美味しいご飯が食べれるのはとても良い事。鞄をウィルに渡していることを伝えて念話を済ませる。

「そうだ。依頼を受けたから少し遠出をするが、帰ってきたら武器を買いに行こう」

「わーい!!」

 よしよし。

 どんな武器がいいかと話しながら街に入る。冒険者ギルドに戻って依頼の完了報告をし、報酬を受け取る。オリバーたちが依頼の報酬と肉の買取価格に驚いているのを微笑ましく思っているとドンッと重たい音を立てて麻袋がカウンターに置かれる。

「ほいよ」

「……多くないか?」

 じゃらじゃら鳴る金貨に思わず準備してくれたウィルにそう言えば肩を竦められた。

「お前の髪にとんでもない値がついた。その他の素材と合わせて金貨658枚、銀貨7枚だ」

 ろっ。

「……どうしてそんなことに」

「どうしてと言われてもな」

 大量の金貨を数えて麻袋を貰って仕舞う。財布に入らんよこんな量。銀貨は財布に仕舞っておこうかな。

「それと、ほい。鞄」

「ああ。ありがとう」

 どうしようかなぁ。とりあえず鞄に仕舞っておくけれど、どこかに寄付とかしようかな。

 ジェシカさんとオリバーたちと一緒に食事をとり、ナイトが用意してくれた食事を鞄に仕舞う。

「ロボはどうしようか?」

「私が連れて行くわけにはいきませんから、ユウについて行かせましょう。ロボでしたら魔物の誘導に支障はないでしょうから」

「あう!」

 よーし。

「じゃあ、私のお手伝いをしてもらおう」

「わふっ!」

 頭を撫でてお願いする。

 どんな魔物が来るかわからないけれど、危なくなったら影の中に入ればいいしな。

 開門と同時に出発ということなので ジェシカさんたちと別れて早めに眠ることに。ロボはナイトにお風呂に入れられベッドに潜り込んでいた。



 翌朝。早朝と言うにも迷いがある時間に起きる。まだ外は真っ暗だが、あと1時間もすれば門が開く。

 顔を洗って着替え、剣とナイフ、鞄を装備する。まだダイナーが開いてない時間なので携帯食で簡単に済ませた。ロボとナイトは出発を一緒に行く必要はないので、二人を起こさないようにそっと部屋を出る。

 ギルドに顔を出すとウィルとフィオさん、マーナさんがいたので一緒に門まで向かうことに。三人とも前とは違ってギルド職員揃いの防具ではない。フィオさんに頭をグシャグシャと撫でられる。

「しっかし、ちょっと前に冒険者になったばっかりなのにもうオリハルコンか。出世頭だな」

「たまたまだろう」

「たまたまでオリハルコンになれるなら冒険者たちは必死にならないぞ」

 そうなのだろうか? 俺はだいぶ長いものに巻かれて流された感があるんだけど。

「今回はウーさんは来ないんだな」

「ウーは基本は事務職だしな。それにあまり戦力を集中させるわけにもいかない。いくらギルマスたちが残るとはいえ何が起こるかわからないからな」

 そうなのか。ウィルは指揮官兼任だからこっちなんだな。

 門に着いたが冒険者はいるけれど騎士団はいない。シオンさんがいたのでウィルたちと別れて合流する。

「騎士団は?」

「非常特権だかなんだかいうやつでもう出てる。戦闘に関する事項に関してのみ騎士は自由に門を開けられるんだと」

 へー。非常特権か。なんか特に切羽詰まった感じがないせいで実感が薄いけれど今戦争の瀬戸際なんだよな。

「元々本隊は出てたから、後続部隊が詰めたんだろう」

 本隊って、確か砂岩地域に展開しるらしい部隊か。騎士はほとんど出払っちゃうのかな? だからギルドの戦力をあんまり減らせないのかな。

 開門を待っていると続々冒険者が集まってくる。ミスリルランク以上の冒険者がリーダーを務めるパーティばかりだということで、全員装備が厳つい。ウッドランクの子たちとは比べ物にならない。比べては可哀想なのかもしれないけど。

 しかしシオンさんは鎧は模擬戦の時の白い鎧だけど、盾はあの白い大盾ではない。

「シオンさんはその盾を使うのか?」

「ん? ああ、あれが必要になるとは思わないからな」

 剣だけでなく盾も予備で用意しているのか。やっぱりいくつか準備しておくのが正解なのか。シオンさんは鎧まで何個か用意してるしな。

 ダミアンが手を振っていることに気づいてシオンさんに断ってダミアンに近づく。

「おはよ」

「おはよう。大丈夫か?」

「大丈夫じゃねぇよ。わかってて訊くなよな」

 ウッドランクの警護でも胃が痛がってたからね。肩を組まれて笑って誤魔化す。

「お前は大丈夫か?」

「たぶん。シオンさんとウィルがいるから周りを巻き込む心配もないし」

「なんか心配していることが違うんだよなぁ。魔物より自分の方が危険なのかよ」

 だってねぇ。

「つい最近山を凍らせたしな」

「あれお前だったのか」

 イェーイ。俺でーす。魔物の仕業だと思ってたと言いながらダミアンが肩を離す。

「気をつけてくれよ。リーダーたちはともかく俺はお前から逃げらんねぇぞ」

「用心する」

 剣もあるしたぶん大丈夫だとは思うけれど、気をつけておくに越したことはないよね。

 ウィルが来い来いと手招くので《勇敢なる星(ブレイブ・スター)》のメンバーに手を振って別れる。途中で《烈火の守護者》のメンバーも見つけたので手を振っておく。冒険者たちがブローディ・アーマーという単語を口にしていたけれど魔物だろうか?

 血塗れの鎧って、物騒。首無し騎士みたいなものかな? だとしたら結構強いかもしれないな。バジリスクが出る森だし警戒しておいて損はないか。

「まもなく出発だ。準備しておけよ」

「了解した」

 世界樹の種子を仮面から鎧に変える。

 ウィルが集合した冒険者に向かって手を上げた。

「総員注目。注意事項を伝えます。出発次第、東の平原を抜けて東の森に入りますが、大平原に突入するのは騎士団から合図があってからとなります。各パーティは大平原近くに潜行し、パーティリーダーは呼応術式が反応次第平原に突撃していただきます。基本的に自由に立ち回っていただきますが、緊急時は指示に従っていただきます」

 おうっという低い返事が轟く。女性もそこそこいるはずなのに何故か野太い。

「バジリスクに関してはユウの随獣である首無し騎士に対応していただきますので発見しても近づかないように願います。以上。では、行動開始」

 やっぱり端的。

 居残り組の騎士が門を開けると同時に冒険者たちが別れて走り出す。

「一緒に行かないのか?」

「ギリギリまでは別行動のふりをする。こちらの動きに気づいているとは思わないが、一応偵察を警戒しておいたほうがいい」

 ほーん。だからウィルたちはギルド職員の鎧を着てないのかな? あくまで冒険者としての活動中に遭遇しましたという体にするのか。俺たちはシオンさんとウィル、俺の三人パーティ扱いなので三人揃って進む。

 しかし、大人が走ると速いな。2時間もかからずに平原を越えて森に着いた。それにしても。

「魔物が少ないな」

「ああ。森どころか平原の魔物も少ない」

 森が静かだ。なんというか生き物の気配が無い。平原のメリーシープたちの姿がだいぶ減っている。ウィルが眉間にシワを寄せ、シオンさんがため息を吐く。

「ガーゴイルのせいだな。奴らは悪食だからなんでも食ってしまう。ウェストが警告していたのもこういう状態だろう。全く、前の調査の際にも結構ガーゴイルを討伐したんだが、あやつらまた召喚しておったな」

 ガーゴイルかぁ。

「どんな魔物なんだ?」

「凶暴な飛ばないグロテスクって感じだ。グロテクスよりは小柄だが外皮は鋼鉄だから頑丈だし、鋭い爪や牙が凶器だな。そのうえ腕力、脚力は大型獣人と引けを取らない。対応ランクはゴールドランク以上」

 まっじか。

「今回編成しているパーティでは問題ないが、本来なら気軽に相手にするもんじゃない」

 つまり今回は気軽に相手をするもんじゃないものの相手を気軽にさせられるんですね?

 森に入ったところでナイトとロボが影から出てきた。

「おう。おはようさん」

「おはようございます」

 穏やかに挨拶するナイトとシオンさんを尻目にロボの胴体を脚で挟む。

「ロボ。遊びに行っちゃ駄目だぞ」

「うう?」

 走りに行きたそうなロボを止めると不満そうに鳴かれた。ごめんね。でも駄目。頭を撫でて慰めているとウィルがロボの前にしゃがむ。

「旦那にはバジリスクを頼むとして、ロボにも仕事を頼みたいんだ」

「おぅ?」

「マーナに付いて、危険があればユウを呼んでくれるか? 治癒術士たちを守るお手伝いをしてくれ」

 治癒術士たち?

「治癒術士たちはまとまって動くのか?」

「本格的に動き始めたらな。状況によっては本隊は置かないが治癒術士と魔導士を中心とした後方部隊は準備するつもりだ。魔物の規模が大きくなるなら私たちが戦線維持、他のパーティが掃討、後方部隊が援護という形になる」

 へー。じゃあお願いしようかな? マーナさんは戦闘も多少はできると言っていた気がするけど、たくさん来ると面倒だろうし。シオンさんとウィルが見ててくれるならちょっとくらい離れても問題ないだろう。咄嗟に動くなら役割の薄い俺が適任か。

「頼めるか?」

「わん!」

 誇らしそうに胸を張ってお座りする。よし、頑張ってね。

 ロボを撫でているとナイトが首を傾げるように肩を揺らす。

「……今、三人で戦線維持すると言いましたか?」

「中規模討伐以上の規模になると難しいだろうが、小規模討伐程度なら問題なく可能だろうからな」

 シオンさん頼もしー。俺をそのメンバーに数えてなければ。

「ちなみに、中規模討伐とはどのくらいの規模なんだ?」

「数万から数十万かな」

 わぁ最悪。


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