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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第44話 非常呼集

お恥ずかしいことに編集途中のまま投稿してしまったので、再編集しました。

 血をチルセに洗い流してもらい拠点を探す。

 三徹はさすがにやめておいたほうが良さそうなので、拠点を確保したあと食事と最初の見張りの時間を寝させてもらった。たぶん三徹自体は平気なんだろうけど、うっかり明日非常呼集が掛けられて帰還早々出発なんてことになるといくらなんでもキツイ。

 食事をしつつ見張りをしていたけれど、ビクターがいてくれるからか何も起こらない。ケルピーのようなことがあったらいけないので気をつけていたけれど平和に済んでいる。夜中に暴れるのはなんともね。

 今日渡したナイフを振っていたオリバーがおずおずとこちらを向く。

「これ、本当に貰っていいんですか?」

「ああ。私にはこれがあるからな」

 ミスリルのナイフを振る。俺が買ったこのナイフは別格だそうだけど、ナイフ一本でも対魔物用のコンバットナイフは結構いい値段するらしく、新人では気軽に用意できるものではないらしい。ナイトにこそっと値段を聞いたところ銀貨5枚だったそうだ。オリバーたちが受けてるワイルドボア十匹討伐の報酬が銀貨2枚なのを考えると確かに高額だ。

 金貨50枚を小遣い感覚でポンと渡してきた父さん本当にヤバい。

「言ったとおりの激励と謝罪の品だ。守るためについて来ているのに、私が危険に巻き込んでしまったからな。気にせず使ってくれ。役立ててくれると嬉しいな」

「……はい。ありがとうございます。頑張ります」

「ああ。トーカにも言ったが、怪我はしないように気をつけて」

 はい!と元気に応えるオリバーに笑いながら夜が更けていった。

 翌朝拠点を引き払って再びワイルドボアの探索へ。今日はこのまま帰還できそうなのでジェシカさんとトーカも一緒だ。ジェシカさんに薬草のことを教えてもらいながら進む。

 回復系の薬草の原料なんかは結構そのまま食べても効果があるらしいので覚えておくと良さそう。俺はそう簡単に怪我はしないだろうけれど他人を治す方法がないので回復は覚えておいて損はない。

 ヴァネッサさんが魔力の回復薬があるみたいなこと言ってたけど、魔素の吸収を助ける薬草というのがあるらしい。珍しいものなんだそうだが、ギルドでは万が一の場合に備えて常に何本かストックしてあるのが常識とのこと。

 昼前には残りの二匹と、たまたま遭遇した一匹を合わせて三匹のボアを討伐することができた。一匹ずつだともう安心して戦えるな。複数戦闘の練習を今日無理にする必要はないし、帰りに平原で練習することもできるだろう。

 山を降りてから昼食にしようと思って下山していると違和感を感じた。

 なんだろうか、ロボもビクターもいるのに何かが近づいてきている。ビクターも気づいたのかジェシカさんを庇うように前に出る。

「ビクター、どうしたの?」

「ケン」

「何か来る。ビクター、私が出よう。みんな少し離れてくれ。ロボもな」

「アゥ?」

 不思議そうに首を傾げるロボの頭を撫でてビクターと代わる。隊列を組んでいたオリバーたちもビクターの近くに退避する。うーん。虫ではなさそうだし、そんなに強くもなさそうなんだけど、なんだか被害だけが大きな何かって感じかな。

 剣を抜いて待機していると、すぐ側の崖が内側から爆発したように弾けた。

 は??

 飛び散る破片と土煙の中から大きな影が現れる。

「ブモオォォォォ!!」

 ビリビリと空気を揺らす咆哮で煙を吹き飛ばしたのは大きな二足歩行のウシ。うっそだろ、お前ミノタウロスだったりするのか? 想像してたより数倍大きいうえに数倍ウシ。もっとこう、牛頭の胴体は人間って感じだと思ってた。

 マンモスサイズのウシが二足歩行で棍棒持ってる。蹄でどうやって棍棒持ってるんだよ、器用か。

 呆気に取られていると推定ミノタウロスが棍棒を振りかぶった。わっほい、やんのかコラ。

 空気を唸らせて振り下ろされた棍棒を腕をクロスさせて頭上で受け止める。鎧にしててよかった。漫画でよく見る気がしたやってみたけどこれ意外とやりづらいな! 下手すると頭潰されそう。

 そしてさすがミノタウロス、力が強い。シオンさんほどではないけど結構痛い。

 棍棒を弾いて空いた腕を狙って飛び込み剣を振ったのだけど、躱された。

 ミノタウロスが咄嗟に棍棒を離して一歩引いたようだ。うわ、知能があるタイプか。今は魔法使えないのに厄介だな。

 空中で体勢を整えることもできずに、横から飛んできたミノタウロスの拳に吹っ飛ばされた。動きも速いなぁ。腕でのガードが間に合ってよかった。殴られた勢いそのままに崖に着地する。地面を平行に見るって変な感じだな。このまま大人しく着地しよう。

 ミノタウロスが棍棒を拾ってこちらを向く。

 再び吼えるミノタウロスに一瞬視界が揺らいだ気がしたけれど、特に異常はなさそうだ。魔法が使えない以上やりたいこともあんまりないから速攻で終わらせよう。

 また血を浴びそうで嫌なんだけどなぁ。

 振り下ろされた棍棒を避けて、足元まで接近して跳び上がる。これだけ近づいたら数步退いた程度じゃ避けきれないぞ。

 首を狙った剣はきちんと当たった。そして真正面かつ頭から血を浴びた。泣きそう。

 二日連続で血塗れは酷くない??

 冒険者ってこれが日常茶飯事だったりするの? 心強くない? 同じように接近戦してるネルは血塗れになってないじゃないか。どういうことだ。俺が下手なのか?

 ショックを受けていても仕方ないのでミノタウロスを鞄に仕舞ってジェシカさんたちの方を見ると、ロボとビクター以外の全員が倒れ込んでいた。

「どうした!?」

 何かが来た気配はなかったんだけど! 慌てて近づくとジェシカさんが手を上げる。

「大丈夫です。《迷宮への誘い(コール・ラビリンス)》に巻き込まれて平衡感覚が少し麻痺しただけですから」

 コール・ラビリンス?

「世界が回ってます……」

「うはは、全然立てない。これが《迷宮への誘い(コール・ラビリンス)》かぁ」

 子供たちが面白そうに笑っているからまあ大丈夫か。目が回っている感じかな?

「ミノタウロスと戦うにはこのスキルが厄介なんですが、ユウさんは平気そうですね。狂乱耐性のおかげでしょうか」

「そうかもしれないな」

 立ち上がるのに手を貸したいけど悲しいかなずぶ濡れなので。申し訳ないが頑張って自力で立ってください。

「ロボとビクターは平気そうだな。ビクターはともかく……ロボはナイトのおかげだろうか?」

「チャーチグリムは元々死に属する妖精なので各種耐性は高めでしょうから、ロボちゃん本人の素質だと思いますよ」

 そうなの? すごいねぇ、ロボ。すごいでしょ!みたいな顔して尻尾振ってるけど今は撫でられないんだ、ごめんね。

 みんなの回復を待っていると、突然金属の薄い板を打ち合うような音が響いた。キーンというかリーンというか、そんな感じの甲高い音が結構な音量で近くから聞こえる。

 近くっていうか、これ俺の登録証が鳴ってるな?

 街を出る直前にウィルに渡されたオリハルコンランクの青色の登録証には表にギルドの紋章と内側に俺の名前と職種が彫ってあった。

「非常呼集です!」

「!」

 非常呼集ってどうやって離れてる人を呼び戻すのかと思ってたけど、まさか登録証が鳴るとは。前にウィルが言ってた呼応術式みたいなのが仕込んであったのかな? そうなるとギルドに住んでいる意味あるか謎だな。

「すまない、私は一足先に戻る。ロボ、みんなと一緒に帰ってきてくれ。何かあったら昨日みたいにナイトを呼ぶんだぞ」

「わん!」

「ビクター、みんなを頼む」

「ケーン!」

 よし、じゃあ、頑張って帰りますか。



 魔力強化はできないけれど、誰にも気を使わずに全力で走れば結構なスピードが出るはずだ。シオンさんみたいに視認できないほどの速度は出ないけどな。ちょくちょく蹴った足場が崩れている気がするけどきっと気のせいだ。

 数分で平野に出たけど、真っ直ぐ走っていたら何故かコングベアに出会した。今直進しかできないから退いてくれないなら押し通るぞ。

 やる気満々のコングベアが向かってくるので、申し訳ないが斬り倒して進む。素材を回収している時間も無いか。誰か冒険者が通りかかったら儲けたと思ってくれ。

 外壁が見えたけれど、結構門並んでるな。昼前だし混む時間なのかも。

 止まるためにスピードを落とすと、列の後方にいた騎士が気づいたように手を振る。

「オリハルコンのユウだな!? 構わないからそのまま進め! 冒険者ギルドで作戦会議だ!」

「了解した! ありがとう」

 声を張って伝えてくれた騎士に手を上げて応え、待機列の頭上を飛び越えて街に入る。そのまま建物の屋根に飛び乗って道順をショートカットしてギルドまで直進した。

 ギルド前の広場に着地してそのまま駆け足でギルドに入るとホールにいたウーさんが頭を押さえる。

「ユウさん、それで帰ってきたんですか」

「問題があったか?」

「問題と言いますか……とにかく、大会議室で会議中です。どうぞ」

 なんだろう? 案内されて部屋に入ると、なんだか強そうな人がたくさんいた。この間はパーティリーダーだけが集まっていたようだから、今回はパーティ組んでいる人は全員集合しているんだろう。《烈火の守護者》と《勇敢なる星(ブレイブ・スター)》のメンバーも全員揃っている。

 シオンさんに手招かれて横に入る。シオンさんの後ろにいたナイトが俺の後ろに移動してきた。

「お前さん、なんでそうなるんだ」

「何が?」

 小声で訊かれたけれど、なんのことなのか。

「ユウにはあとでいなかった間のことは説明するから、続けるわよ」

 ヴァネッサさんに促されてウィルが頷く。

「出発は明朝、開門と同時。基本の戦場は東の森を越えた大平原。砂岩地帯には騎士団が展開しますので、我々はその手前の平原内で魔物を討伐します。隊列は組みますが本隊は置きません、パーティ単位で警戒してください」

「ただし、今回はただの小規模討伐じゃない。討伐対象が召喚獣であるため、種族も数も不明。下手すると大規模討伐並みの規模になるかもしれない。緊急時の総指揮権はウィルに預けるから指示には従いな。まあここにいるパーティならいざという時の連携なんかは心配してないけどね」

 パーティ間の連携もあるのか。40人くらいいるけど、宴会の時になんとなくあったような気がする人たちが多いな。名前は全く思い出せない。というかウィルが総指揮ってことはヴァネッサさんは来ないのかな?

「戦闘による消耗品は領主殿が補償してくれるそうなので、食事の用意だけ各パーティそれぞれで。ギルドから私以外にも戦闘員が数名参加しますので、戦闘時の連携をお願いします」

「以上。各員明日に備えておくれ。解散」

 前も思ったけど冒険者の会議めっちゃ端的だな。個々人の能力に依るところが大きいからかな?

 漫画みたいな激励の言葉とか決意表明みたいなのは無いのか。

 レオたちに手を振って、説明を聞くために残ったヴァネッサさんたちに向き直ると全員が残念なものを見る目で俺を見ていた。

 なんですか。今日は何も壊してないですよ。足場を砕いた気がしますけどそれはノーカンでしょう。

「南の山を凍らせた件とかさすがに帰ってくるの早すぎるだろうとか色々言いたいことはあるがな、とりあえずだ」

 ウィルがビシッと音がしそうな勢いで俺を指差す。

「お前は外に行く度に血塗れにならないと気が済まないのか?」

「あ」

 非常呼集に驚いてすっかり忘れていた。

「全く……少し息を止めていなさい」

 シオンさんがそう言うので息を止めると、全身が水に包まれた。以前ウィルが見せてくれた水の球の大きいバージョンだ。数秒水流に揉まれて、水が消えると血も落ちていた。どういう原理なのかは知らないけどすごく便利。

「ありがとう」

「どういたしまして」

「あんたねぇ、乾いてたからいいけど、乾いてないと大惨事だからね? 気をつけなさいよ」

 ああー、床が血濡れになるのか。

「大体血を被ったタイミングで何か起こるんだ。だが、気をつけよう」

「おいよく考えろ。血を被る時点ですでに何か起こってるからな?」

 やっぱり冒険者でも血塗れは日常茶飯事ではない感じですか!?


仕事の時間の都合で、年明けからは毎週決まった日の投稿になると思います。

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