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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第41話 戦闘訓練

 火を絶やさないようにしていたけれど、明け方になるとやっぱり息が白く濁るようになってきた。ジェシカさんは大丈夫とのことだったので子供たちに買った毛布を掛けておく。風邪をひいては大変だ。ビクターは毛皮があるし、ロボは俺の膝の上で寝ているから寒くはないだろう。

 ジェシカさんと交代するオリバーとネルが毛布にくるまったまま起きてきた。

「すみません、毛布ありがとうございます」

「いや。寒くないか?」

「これのおかげで。途中までめっちゃ寒かったんですけど、急にあったかくなったと思ったらこれ掛けてくれたんですね」

「冷えてきたからな。防寒具も考えた方がいいな」

 オリバーたちは長袖ではあるけど、日中はともかく日が暮れると自前の毛布では体温の維持が難しそうだ。

「ですね。厚着をしておくのも限度がありますし」

 着込みすぎると動けないしね。

「天幕も買わないとだし、金がかかるのもそうだけど、荷物が多くなるよな」

「やっぱりマジックバッグかぁ」

 高いんだってね。ニケさんの雑貨屋で値段だけでも見ておけばよかったなぁ。

「マジックバッグを買って、あとはとにかく近場の依頼を受けて金を貯めるのが無難だろうな」

「魔物も持ち帰れる量が増えるし、そっち優先の方がいいですよね……」

「今回はワイルドボアの討伐依頼だから証明だけ提出すればボアの肉は買い取りに出せるそうだし、ある程度貯まるんじゃないか?」

「持ち帰れねえっすよ」

「私が代わりに持ち帰ろう。鞄を提供するくらいいいだろう」

「いいんですか?」

「私は監督依頼の報酬があるから心配ない」

 やった! ありがとうございます!と喜ぶ二人は素直で大変よろしい。

「今日はロボにも手伝ってもらって、効率を上げていこう。昨日の調子では十匹討伐するまでに何日かかるかわからない」

「わかりました」

 どうやらこの時期のボアは単独で行動している場合が多いらしいからな。一気に数匹とはいかないだろう。

 二人に苦茶を差し出して俺も飲んでおく。しかし苦い。渋みが喉にくる。コーヒーとかそういうものじゃない。なんだろう、飲んだことないけどセンブリ茶ってこんなのかも知れない。

 陽が昇る少し前に二人をもう一度寝かせておいた。体が冷えていてはゆっくり休めなかっただろからな。起きてきたチルセとトーカに事情を説明したら納得してもらえたので二人と一緒に朝食の準備をする。と言っても俺は調理には関われないので、離れたところでパンを切る作業を請け負った。

「ユウさんも少し眠られますか?」

 パンを切り終わり起きたロボを撫でているとトーカが声をかけてくれた。

「大丈夫だ、ありがとう。……そうだな、眠るよりも偵察に行ってこようと思うんだが、少し離れてもいいか?」

「偵察ですか?」

「ああ。巣の位置を調べておこうと思って。危険なものもいるかもしれないからな」

「わかりました。ビクターがいてくれるのでここは大丈夫ですよ」

 オッケー。ロボも行くかい? 尻尾が元気だ。よし行こう。

 仮面を鎧にして、拠点の近くのほぼ垂直の崖を登る。いける気がして登ったけど、やっぱりこのくらいの崖なら魔力強化無しで登れるな。ロボはちゃっかり影に入っていて、崖の上に着いたら影から出てきた。この子本当に要領がいい。

 しかし大自然だなぁ。さらに南に真っ黒い地平線が見える。あれが女帝の森だろうか? 陽が当たったら明るい色なのかな?

「ロボ、どっちの方が面白いと思う?」

「うー……わん!」

「よし、そっちに行ってみよう」

 池が見える方角が気になるようなのでそちらに向かう。崖から飛び降り、途中を蹴って大きく跳ぶ。アニメや映画でよく見る感じだけど、いざやってみるとなかなか楽しい。地面に着地するとロボが飛び出してくるので、池を目指して走る。

 池に着くとロボは大きな水溜りは初めてなのか大興奮して水面に近づいていた。

 俺も一緒に近づく。さすがに二連続でケルピーなんて来ないよな?

「ん? ロボ、ちょっと待っててくれるか」

「わん」

 鎧の外殻をポセイドンの外皮へ変更。濃い藍色に変わるのを待って池に飛び込む。ここの池も水綺麗だな。池の底にあった綺麗な石を取って上がる。発光しているように見えていたけど、やっぱり光ってる。

「わぅ?」

「なんだろうね?」

 ピンポン球くらいの大きさで綺麗にまん丸な石。ロボが匂いを嗅ぐけれど何かはわからないみたいだ。

「帰ったらウィルたちに訊いてみようか。ギルさんなら知っているかもしれないし」

「あう!」

 外殻をアダマンタイトに戻して、本来の目的を果たすために山を走り回る。何匹かワイルドボアを見つけ、巣と思わしき場所も見つけた。コングベアやだいぶ大型の魔物の巣らしきものも発見したのであれには近づかないようにしよう。

 30分ほど偵察して拠点に戻る。

 ジェシカさんも起きていたようだ。

「おはようございます。どうでしたか?」

「おはようございます。十匹以上は見つけたから、上手くいけば今日明日で予定数は討伐できそうだ。大きな巣があったから、そこには近づかないほうがいいな。西側にある崖の近くだ」

「この森にいる大きな魔物となると、ジャイアントボアかミノタウロスでしょうか。西の崖ですね。わかりました」

 ミノタウロスはともかくジャイアントボア? まだ大きいボアがいるの? 冗談でしょ。

「あと、これがなんだかわかるか? 池の底にあったんだが」

「綺麗な石ですね。うーん……池の底にあったというなら魔石ではないでしょうし、ちょっとわからないですね。すみません」

「いや。それがわかっただけで十分だ。ありがとう」

 ジェシカさんも知らないものとなると、本当になんなんだろうか。危険な感じはしないからまあいいんだけど。

 オリバーとネルも起きてきたので、朝食をとって拠点を片付ける。

「では昼までは別行動にしましょう。昼食時にここに戻ってきて、午後からは次の拠点を探しつつ移動しましょうか」

「了解した」

 一緒に動くとトーカにゆっくり説明していられないものね。



 見つけていた一番近い巣に向かって移動していると、早速ワイルドボアに遭遇した。昨日と違って今日は幸先が良い。

「昨日言ってたことを試そう。チルセ!」

「うん。《ストーンバレット》!」

 チルセの言葉に足元の石が浮き上がってワイルドボアに向かって発射された。バシバシと音を立てて当たった石にワイルドボアがこちらを向いて走り出してきた。

 なるほど、ある程度の距離ならこれで引きつけられるのか。

 オリバーがワイルドボアの前脚を射抜き、ネルが牙を掴んで動きを封じる。獣人だから元々力は強いんだろうけど、それにしたって正面からウシサイズのイノシシを止めるのは一仕事だろう。だから前脚を射ったのかな?

 昨日と同じように土の槍がボアの心臓を貫いた。昨日と違うのは、チルセが槍の魔法を使う前に余裕があるのと、ネルが強化を使うのが一回で済むことかな?

「これ、できないことなはいけど、結構腕にくる」

 腕を振りながらネルが言うとオリバーが頷く。

「じゃあ俺ももう少し攻撃に加わろうか。そうすればチルセももっと余裕ができるよね?」

「うん。ストーンランスは一応何回分か用意してあるけど、いざというときのために取っておきたいし」

 魔法の用意な。俺もやってみたいけどどうやってやるんだろうな。まあ今は剣が無いから魔法使えないんだけども。

「ユウさん、もう少し試してみたいので、もし複数戦闘になったら一匹を残して後をお願いできますか? ひとまず単体相手の戦闘に慣れたいので」

「わかった。任せてくれ」

 ロボも偵察お願いね。頭を撫でるとわん!と鳴いてロボが走っていく。

「ロボにもワイルドボアを探すように頼んだ。どこからくるかわからないから警戒を怠らないように」

「はい!」

 昨日歩き回ったからか山道にもなんとなく慣れてきた。視界の確保はなんとかなりそうだ。

 ドドドドっという足音を響かせてワイルドボアの集団が走ってきたときには驚いたけれど、後方を元気に走ってくるロボを見つけて笑ってしまった。確かに一匹ずつとは言わなかったな。

 動揺している三人の前に出る。

「先頭の一匹だけ気にしなさい。あとは私がやろう」

 剣を抜きながら声をかけるとオリバーが動揺を飲み込んだようだ。

「っ、はい! チルセ、ボアの正面に一旦ランスを出して! 勢いを落とさないと駄目だ!」

「わかった!」

「ネル、最大強化準備!」

「はいよ!」

 指示が早いな。

 チルセの槍を飛び越えて先頭のボアを踏み台に後続に剣を振る。ごめんよ。こっちも農地を荒らされたくないし、君たちは美味しいらしいから。感触はコングベアよりは柔らかいな。

「お利口だぞ、ロボ。あんなにいっぱいよく見つけたな。ありがとう」

 ボアを追い立ててきたロボが止まって、褒めてくれと尻尾を振るので全力で褒める。わっしゃわっしゃ撫でているとオリバーたちも終わったらしい。近づいてみると、今度はボアの眉間に矢が突き刺さり頭蓋が陥没していた。

 グロい。怖い。

「これはネルが?」

「はい。最大強化したらどうにか相手にできるんですけど、だいぶキツいっすね。俺たちはチルセの魔法攻撃に頼りきりなんで、そこもどうにかしないと」

「攻撃性能を上げるか、もういっそ俺が剣でも持つか……」

 たぶんネルは魔力量があまり多くないんだろうな。ん? 魔素量なのか? それにしてもオリバーが剣か。それはいいアイデアかもしれない。

「いいんじゃないか? 普段は弓使いとして、非常の際には剣で近距離戦というのは足りない前衛職分を補うこともできるだろう」

 役割を二つ熟すのは高ランクパーティではよくあることだとウィルが言っていたし、練習しておいて悪いことはないだろう。ということで。

「剣は私が練習しなければならないから貸せないが、これを使いなさい」

 ベルトからシースを外してミスリルのナイフをオリバーに渡しておく。ナイフを抜いたオリバーがひぇっと声を出す。

「これ使っていいんですか!?」

「他は調理用の包丁しかないからな。剣を扱ったことがないなら刃渡りが短いものから練習したほうがいいだろう」

 オリバーたちもナイフ持ってたけど、解体用っぽかったからあれで攻撃したら折れてしまいそうだ。俺のナイフは刃渡りが短いとは言っても15センチくらいはあるから剣の練習にもなるだろう。なんだっけ、コンバットナイフっていうのかな? 片刃のシンプルな大型のナイフ。確実に銃刀法に引っかかります。剣を佩いてる時点で銃刀法なんて無いけれども。

「ロボ、オリバーたちが練習したいいから、今度は一匹ずつ、ちょっと離れたところまで追いかけてきてくれるかい?」

「わん!」

 よし、お願いね。

「じゃあ訓練再開だ。ネル、ロボが近くまで誘導してくれるはずだから、一旦偵察役を頼めるか? チルセは攻撃の用意。前衛は私がやるから、オリバーは次はナイフを使ってみよう」

「はーい!!」

 よし。元気なお返事。前衛を務めるとは言ったけど、留めておくだけなら剣は使えないな。ネルみたいに正面から受け止めるか。


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