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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第34話 VSシオンさん

「獣人相手に腕力勝負は挑まんほうがいいぞ」

 みたいですね。余程いけそうな時以外はやめておこう。それと、確認だ。剣で風を飛ばせばウィルが抜いていた短剣で防ぐ。霧散するように風が消えたからやっぱりあの剣ミスリルか。光ってないけど、芯に使っているというということかな。

 氷の礫を飛ばしてみるけど、火花で弾かれる。

 氷の方が上位魔法でも、温度を上げてれば火魔法で防げるのか。そしてウィルは当然にそれができると。

 さて、速さで勝てない、腕力で勝てない、魔法は効果が薄い。どうするか。

「せめてどれか勝てればいいんだが」

「シオンは私以上に強いぞ。頑張って考えろ」

 なんでそんなこと言うの? ウィルにも勝てる気がしてないのに。

 やけくそ戦法でいくか。

 ウィルの周りを氷で囲む。すぐに火で溶かされるけれど数秒稼げたら十分だ。内殻を変えるわけにはいかないので、直接魔導回路に魔力を流して身体強化する。ちょっとは制御できるようになっていてほしい。

 氷が溶けたタイミングで跳ぶと、気づいたら地面に転がっていた。

 正確に言うとウィルに激突し、なぎ倒して転がった。何が起こったかわかっただけ成長しているのだろうか?

「……体当たりする気だったなら正解かもしれんけど、お前まで転がってたら駄目だろ」

「……いい感じに鳩尾に柄頭がヒットした」

「ははは、ザマアミロ」

 故意に衝突事故起こしといてなんだけどちくしょう。咄嗟に納刀してくれたんだけど、それが鳩尾にジャストヒットした。ドラゴンスキンの衝撃吸収力ってすごいんだな……。物理耐性と女帝の織り糸だけだと限界がある。というかウィル硬い。突撃してワンチャン狙ったけど駄目だった。

「一応私の物理耐性は最高ランクなんだけどな。ユウも同じか」

 お互いに物理耐性があってもダメージ食らうのか。物理耐性ってクッション的な感じで想像してたけど、もしかして硬ければ強いっていうストロングスタイルか? 硬いものと硬いもので殴り合ったらそりゃダメージ食らうよね。

「耐性にもランクがあるのか?」

「耐性系は全部あるぞ。ユウはたぶん全部最高ランクなんじゃないか」

「それは目立つか?」

「バレたら目立つが、ユウは世界樹の種子があるからそれ以上に目立つことはないだろうが、一応鎧無しで突っ込んでいくなよ」

 気をつけまぁす。でも世界樹の種子は勝手に鎧になってくれるからあんまり気にしないでいいかな。

「二人していつまで転がっているんです。ほら、立つ」

 近づいてきていたナイトがパンパンと手を叩いて促すので立ち上がる。ロボが大丈夫?と言うふうに膝にすり寄ってきてくれるので頭を撫でておく。

「ウィル様、地面を直していただけますか? ユウは氷の破片を片付けてください。皆様を驚かせてしまいますから」

「はーい」

 揃って返事をしてウィルは焦げた地面を土魔法で直し俺は世界樹の種子を仮面に戻してから氷を消す。しかし、ウィルの魔法、七変化だっけ? かっこいい。いいなぁ。俺もなんか技名みたいなの欲しい。今の所、風!氷!だもん。

 こら、ロボ、地面を掘るんじゃありません。遊んでるわけじゃないからね。

 騎士を巻き込んでいたらどうしようかと思ったけど、さすがに回避してくれていたようだ。というかなんだか引き気味に見つめられている気がする。

「ずいぶん派手に遊んでたみたいね」

「ヴァネッサさん」

 遊んでませんが?

 いつの間にか訓練場の中に入ってきていたヴァネッサさんに言われて首を傾げる。

「大技連発してたそうじゃないか。騎士たちが慌てて呼びに来たよ。「模擬戦の前に死ぬんじゃないか」って」

「言いつけ守って七変化までしか使ってないですよ。ユウがバンバカ氷魔法使うのが悪い」

「一番制御できるのが氷なんだから仕方ないだろう」

 俺が氷使うのはもう広まってるんだから使ったっていいでしょ。

「決着は?」

「ユウが正面から体当たりして両者ダウンです」

「しょうもない決着の付け方したね……」

 そんなこと言われても。

「本気でやっていいならもう少しまともな決着の付け方しましたけどね」

「結界もなしにあんたらを本気でやらせるわけないでしょ」

 文句を言うウィルをヴァネッサさんがバッサリ切り捨てる。どういう扱いをされてるんだろうな、俺たちは。いや、この場合はウィルか?

「とにかく、体は起きたでしょ。もう少ししたら始めるから、ユウは休んでなさい。ウィルとナイトは結界の手伝いと最終確認を一緒にしてくれるかしら」

 三人が行ってしまったので、ロボと一緒に座って寛ぐ。

 気にしていなかったから気づかなかったけれど、ギャラリーが結構集まっている。

 つらい。

 ため息を吐いているとロボが立ち上がって尻尾を振りながら柵に近寄っていくので、どうしたのかと視線を追えばゴウルクさんがいた。慌てて立ち上がって近づく。

「ゴウルクさん」

「おう。どんな戦い方を基本にしているのか見ておこうと思ってな」

 声をかければ影を移動して柵をすり抜けたロボを撫でながらそう言われる。

「基本の型なんてないと思うが」

 決まった行動パターンがができるほど戦ってないので。

「どうしたって癖はある。勝手に納得するから気にせず戦え」

 そうなんですか? まあ了解しました。変えろって言われてもわかんないしね。

「ユウ、そろそろ準備してくれ」

 ウィルが呼びに来たのでゴウルクさんに挨拶してから離れる。ロボはゴウルクさんが見ていてくれることになった。いい子にしてるんだよ。

「今日は反結界を張るから余程の高火力の魔法を使わない限りは周りに被害が及ぶことはないだろう」

「反結界?」

「普通の結界は中を守るものだが、反結界は中に閉じ込めるものだ。内向きの結界だな」

 へー。父さんが防音の結界とか言ってたし、結界にも種類があるんだな。

「シオンの強さは聞いてるか?」

「父が強いと言っていた。詳しくはジェシカさんから聞いている」

 高速航行する重巡洋艦だと思ってますとか言えない。

「まあ親父さんから聞いてるなら大丈夫だろうが、シオンの戦い方はこれぞ盾持ちって感じの完全カウンター型だ。さっきの私の戦い方は一切参考にならんから慎重にな」

「了解した」



 訓練場の中央に移動してシオンさんを待つ。シオンさんは騎士たちに囲まれて何やら話している。改めてギャラリーを見渡せば《烈火の守護者》や《勇敢なる星》のメンバーだけでなくウーさんにギルさん、アリサさんとジェシカさんやオリバーたちとトーカもいた。他にも名前は知らないけどギルドで見かけたことのある冒険者やギルド職員、グランツたち工務店メンバーにラウさんまで。他にも大勢の人が見物に来ている。やばい。胃が痛い。

 キリキリと痛み出した胃をさすっているとウィルが笑う。

「緊張しているか?」

「緊張というか、大事になってしまったなぁと思って胃が痛い」

 これは中途半端なことしたらランク上がるどころか下がるんじゃないか?

「それはシオンが出てくる以上は仕方がない。なんせ大陸一の呼び声高い冒険者だ。問題行動の多い勇者パーティと違って素行優良だしな、純粋に尊敬されている」

 問題行動が多い勇者ってどうなんだろう。しかもパーティ規模で。

 そう思っているとシオンさんがヴァネッサさんとごつい鎧の騎士と一緒に中央に向かって来た。シオンさんはこの間着ていた簡素な鎧と違って、白に金色の装飾がある鎧を着ている。夕焼け色の鬣と相まって、なるほど、輝ける金獅子。

 ゴホン、と騎士が咳払いをした。

「これより模擬戦を始める。立ち合いは駐屯騎士団長ヘリオット・バーガンとギルドマスター、ヴァネッサが務める。両者準備は?」

「できている」

「私も」

 よし、と騎士改め騎士団長のヘリオットさんがよく通る声で宣言する。

「模擬戦であるから、一本取るか、我々が終了を判断する。では、始め!!」

 ヘリオットさん、ヴァネッサさん、ウィルがバッと跳び退く。同時にシオンさんが盾を構え、俺は世界樹の種子を鎧に展開した。

 バングルから変形した盾は鎧と同様に真っ白で、金継ぎのような金色の装飾が映える。

 『白銀の大盾(プラタ・エスクード)』の所以だろうな。端から見れば真っ白なシオンさんと真っ黒な俺の対比がすごそうだ。

 先手必勝というわけではないけれど、剣を抜いて即座に鎧を魔力強化して突っ込む。

 全速力で突っ込んだけれど簡単に盾で受け止められてしまった。想定していたけれど悲しい。一応全体重を乗せて最高速で突撃したんだけどな。体勢で言うとドロップキックに近い。

 反動も利用して両足で盾を蹴って大きく後ろへ跳ぶ。案の定跳ね上げられた盾の死角から剣が突き出された。

 あっぶね。

 完全カウンター型ってことは反撃はしてくるものだと思って動いてて正解だな。パワーでは圧倒的に不利か。腕力勝負どころの話ではない。重量差があるにしてもこうも軽々と弾かれるとは。

「なるほど、速いな」

 ミントグリーンの目がペリドットのように輝き、シオンさんが楽しそうに笑う。余裕だなちくしょう。易々と見切っておいてよく言うよ。真正面からでは話にならない。でも単純に回り込んでも見切られるだろうな。重量級パワーファイターなのにスピードもあるとか勝ち方なくない?

 難しいな、対人戦闘。

 戦い方はさっきのウィルを参考にするか。とにかく手数で攻めるしかない。

 もう一度、今度は内殻をオリハルコンに変更し魔力強化して突っ込み、土で壁を作ってシオンさんを囲む。壁を壊されるまでの時間で後ろに回り込んだけれど、斬り込んだ瞬間に反応されて盾で防がれる。剣に魔力を通したけれど全然押し切れない。この盾ミスリルか!

 風で巻かれて後方に飛ばされたのでバク転の要領で片手を着いて、一回転して体勢を立て直す。

 次は土の壁を多数出現させ、それを火で爆発させる。

 内殻をドラゴンスキンに戻し、粉塵を立てて視界を塞いだうえで走り回って撹乱する。俺の視界も遮られるから先に見つけた方が勝ちだ。

 視界が土煙で真っ白に覆われたところで風魔法で吹き飛ばしシオンさんの姿を見つけたけれど、シオンさんのほうが速かった。

 すでに真横に迫って剣を振り被っていたので、腕で肋を庇う。

 ゴッという重たい衝撃と共に体が吹っ飛ばされた。数十メートル飛ばされ、地面を跳ねる。

 跳ねたところで体勢を立て直したけれど、膝をついても勢いが殺しきれずにガリガリと靴が地面を削った。ドラゴンスキンにしていたのに腕が痺れるとか、どんな馬鹿力だ。ゴリラか! ライオンのくせに! コボルトなんて比べ物にもならない。次受けると腕がしばらく使い物にならなくなりそうだ。

 脳内で罵倒していたらシオンさんが歩いて近づいてくる。

「咄嗟に肋を庇ったか。いい判断だ」

「折れはしないだろうがヒビくらいは入りそうだったからな」

 肋は横からの衝撃には弱いって聞いたことがある気がする。なんにせよ腕で受けた方がマシだっただろう。

「魔力強化した魔鋼鉄の剣を折っておいてヒビも入ってないか。ドラゴンスキンだけじゃないな?」

 剣を折った? シオンさんの手元を確認すると、本当に剣がバッキリ根元から折れていた。

「どんな力で振ったんだ」

「お前さんはそれを耐えてるんだが?」

「鎧の中も頑丈でな」

 なんてったって女帝の織り糸と最高ランクらしい物理耐性。まあでも。

「頑丈なだけでは勝ち目がなさそうだが」

「はは、経験の差だな」

 勝てるビジョンが一切湧かない。何しても防がれる。視界を塞いだところで音と匂いで位置がバレてたっぽいから撹乱もできない。

 それにしても。

「困った」

「ん?」

「さっきウィルとやった時もそうだったんだが、勝てる気が一切しないのに楽しくて仕方がない。やりたいことがたくさんあって困ってしまう」

 ケルピーを倒した時と違って、全然思ったとおりにならないのが楽しい。想定している行動が通じないことが面白い。

 パチパチとペリドットを瞬かせてシオンさんが破顔した。

「とんだ戦闘狂だったか」

 えー?? 魔物と戦うのに抵抗がないのは俺が戦闘狂だったからなのか?

「完全に父譲りだな」

 ……父さん譲りの戦闘狂だったようだ。さて、とシオンさんが盾を揺らす。

「ではそのやりたいことをもう少し見せてもらおうか」

「勿論だ」

 いろんなことを試してみよう。シオンさんなら大怪我することは無いだろう。


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