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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第31話 VS水棲馬

「そういえば、金剛輝石とラキラ草はなんの素材なんだ?」

 暇を持て余すのもあれなのでお勉強といこう。もふもふと量産される毛束を麻袋に仕舞いながら訊くと、ジェシカさんが金剛輝石を一つ取り出した。

「麻痺毒の回復薬になるんです。金剛輝石は見た目と硬さから石と呼ばれていますが植物なんですよ。光っているところが実なんです」

 マジか。完全に石だと思ってた。改めて触らせてもらったけど質感も石そのものだ。

「金剛輝石の実を乾燥させて、ラキラ草の抽出液と混ぜて更に抽出するんです」

 手間がかかるんだな。魔物を倒せば手に入るのかと。なんだっけ、マムシの血清みたいな感じで。いや、でもその魔物を倒すのが一苦労なら別に薬がいるのか。

「一番効果が高いのは神獣の血液なんですけれど、そんなものとてもではないですが手に入らないので。次点でこの回復薬が効きますね。一応下位の状態治癒薬もあるのですが、やはり効果が落ちてしまうので、中堅以上の冒険者たちが相手にするような魔物の毒には効果が薄いんです。時間稼ぎにしかならないとか。あ、ちなみにですけど神獣の血液は麻痺だけでなく全ての異常や病を治せると伝わっているんですよ」

 神獣の血液ときたかー。魔物から取れる薬もあることにはあるんだな。なんか人魚の肉とかミイラの肉みたいな扱いだな。

「あとは確か……辟邪だったかな?の血液もいいらしいです。神獣の血液とまではいきませんが、麻痺や弱体にも効くそうです。辟邪は厄を退け邪を祓う聖獣だそうで、呪詛や魔物による疫病にも効果があるとか」

 へー。ヘキジャね。すごいのがいるなぁ。

「辟邪はケリュネイアと同じ聖獣ですが、性質がかなり異なりますね。ケリュネイアは風の加護と勝利の聖獣ですから」

 本当だ。聖獣はこういうものっていうテンプレはないんだろうな。櫛が通るのを気持ちよさそうにしているケリュネイアを見てジェシカさんが真剣な顔をする。

「聖獣の中でもケリュネイアや辟邪は温厚な性格をしていると言われていますが、殺戮や暴虐を好む者もいます。気をつけてくださいね。それらは天災級から幻想級に分類されます」

 聖なる獣どうした。神聖さ皆無だぞ。なんだ殺戮や暴虐って。

一角獣(ユニコーン)などは代表的ですね。子供を守護したり水を浄める一方で非常に好戦的で被害に遭う冒険者も少なくありません。個体数の少ない聖獣のわりに目撃情報が多いのがその好戦的な性格のためだと言われています。ユニコーンの角には魔法耐性があるので防御系の魔法を貫通してきます」

 過激に夢を奪っていくタイプのユニコーンだな。しかし、貫通してくるユニコーンで災厄級から天災級か。幻想級はどうなってるんだか。

「幻想級にはどういったものがいるんだ?」

「そうですね……神獣は勿論幻想級ですが、以前リアム様が討伐されたリヴァイアサンは幻想級の中でも上位だと聞いています。あとはラグナロクなども幻想級のはずですね」

 リヴァイアサンか。全身の細胞一つひとつが人間でできているとかいうグロい魔物だった気がする。父さんそんなもん倒したのか。もういいや、自由に過ごしててください。地球ではなんか対になる魔物がいた気がするんだけど、なんだったっけな。ラグナロクはギリシャか北欧かどっちかの神話の神々の大戦争じゃなかったっけ? それが個体として魔物扱いになってんの? 発生状態めっちゃ気になる。

 しかし、地球人としてはやっぱり魔物といえばドラゴンなんだよな。ウェストは元ワイバーンだけど、他にもいるんだろうか。東の平原の先の森にもドラゴンの幼体がいたし。

「ドラゴンは?」

「ドラゴンは天災級から幻想級に分類されますね。ファブニールなどは天災級上位に位置します」

 ファブニール! やっぱりいるんだ! なんかテンション上がる。でも天災級上位なら幻想級になったウェストの方が強いのか。

 それを訊こうとしたが、咄嗟にジェシカさんを抱えて跳ぶ。ケリュネイアも高く鳴いて湖から距離を取った。

「どうしました!?」

「わからん! だが何かいる!」

 なんだ!? さっきまで何も感じなかったのに。着地し、傍に寄ってきたケリュネイアの背中にジェシカさんを預ける。俺が戦うならここの方が安全だろう。勢いで掴んでしまったケリュネイアの抜け毛が詰まっている麻袋をジェシカさんに渡して警戒態勢を取る。

 一瞬はっきりと感じられたのにまた気配が消えた。しかし、一瞬でも感じた敵意は無視できない。鎧の内殻をオリハルコンに変更し魔力を回して準備をしておく。

 なんだろう、湖の中か? 動かずにいてジェシカさんに危害が及ぶくらいならこっちから仕掛けるか。

 剣を抜き、出せる全力で湖に向かって走ると湖から視界を遮るように水柱が上がった。ビンゴ! 思いっきり剣を振り抜いて風で水柱を吹き飛ばす。魔力の制御が乱れてつんのめって一回転したが着地が成功したのでよしとする。するったらする。飛散した水から一瞬視線が外れたせいでどんな魔物か見逃したけれど、とりあえずは水系の魔物だろう。地面を削りながら滑って一度止まる。気配はまた消えた。

 よし、お前には俺の練習相手になってもらおう。喧嘩を売ってきたのはそっちだ。



 水柱を吹っ飛ばしたせいか、魔物はさっきよりも慎重になったようだ。知能があるタイプか。たぶんコボルトよりランクも上だろう。上等だ。シオンさん相手に模擬戦しないといけないんだから、できる限り自分を使いこなせるようになってないと。

 魔力強化を脚だけにして、魔法に回せる神経を増やす。じりじりと湖に近づくと、突然横から草のようなものが向かってきた。海藻みたいな湿った草を避けつつ斬り付けつつ移動すると、いつの間にか水辺ギリギリまで誘導されていた。なるほど、頭が良い。

 でも残念でした。

 わざと湖のほうに跳び、着水寸前で氷を張る。着氷するとスケートかってくらい滑ったけれど、ジャックウッドの時に意識して止めない限りはこの足場が構築され続けることはわかっていたので自然に止まるのを待つ。剣を持っていない方の手と片膝を着いて安定した姿勢を保っていたけれど、これ鍛えたら立っていられるようになるのかな?

 止まる前にドンッと下から何かが激突し氷が震えたので、やはり俺が水に落ちるのを待って仕掛けてくる予定だったようだ。それにしても、かなり薄めを意識して足場を作ったんだけど、ヒビも入らなかったということは思っているよりこの氷は頑丈らしい。

 しかしここからどうするか。一方的に水の中でやられることはないけれど、かなり集中力が要求されるぞ。常に足場を構築しながら魔物の相手か。対グロテスクの時よりも難易度が高い。しかも魔物の姿もわかっていないのでどんな攻撃をしてくるのかも一切わからない。あの海藻みたいなのも魔物の一部なんだろうか?

 とりあえず様子を見よう。

 意識して剣に魔力を流し、切先を湖面に付けると音を立てて湖面が凍る。湖面全てが氷で覆われると、氷の下で何かが蠢くのがわかった。

 はは、怒ったな?

 一方的に蹂躙する予定だったみたいだが、そうはいかないぞ。

 どう出るか観察していると、俺を中心に氷の下で魔法陣が構築された。マジか、お前。そんなこともできるの?

 氷が下から吹き上げられるように粉砕し、氷の破片と一緒に吹き飛ばされる。水飛沫とともにウマのようなものが一瞬視認できた。周りの水と氷は風で吹き飛ばしたけれど、視界の端からまた伸びてきた海藻に捕まる。水中に引き摺り込まれる寸前、鎧全体が暗い藍色に変わる。

 派手に打ち付けるような音とともに入水したけれど水の抵抗は感じない。世界樹の種子が何か水に耐性のある素材に変更してくれたらしい。でもさすがに息はできないだろうから早く上がった方がいいな。

 透明度の高い水と世界樹の種子のおかげで視界も良好だ。水の中には海藻が巻き付いて輪郭を保っているようなウマがいた。海藻が別の魔物由来ではないとわかっただけでも落とされた甲斐がある。

 水の抵抗なんてまるでないように軽やかに後ろ足で立ち上がったウマはそのままの勢いで猛然と突進してきた。さすがに水の中では部が悪いので、ウマに向かって全開の氷の壁を張って離脱する。内殻はオリハルコンのままだろうか? アダマンタイトに変わっているのだったらオリハルコンに変更。ラインが青く光る。咄嗟に外殻を耐水使用に、内殻を防御特化に変えていたのか。この子本当に万能の鎧。魔力強化して湖底を思いっきり蹴ると氷を破って湖面に出れた。

 肺活量もおかしくなってるっぽいな。体感1分くらいは水の中にいたんだけど息が乱れない。

 外殻をアダマンタイトに変更。もう落ちるつもりはないので直して大丈夫。鎧全体が見慣れた黒に変わった。外殻はこうやって変化が確認できるんだな。

 湖岸まで移動すると背後で水柱が上がる。ガゴンと硬い音がするのでどうやら氷の上まで出てきてくれたらしい。水中では水に溶けていた輪郭がはっきりとわかる。海藻のような鬣を持つ透明度の高い氷像みたいなウマだ。サラブレッドというよりは重種の農耕馬に近い体格をしている。

水棲馬(ケルピー)!」

 ケリュネイアの背中に乗ったジェシカさんが湖から十分距離を取った場所で声を上げる。

「どんな魔物だ?」

「水中に相手を引き込んで襲う魔物で、ランクは特級上位です! かなり強力な魔法を使いますよ!」

 了解です。でも特級上位ならジャックウッドの方が強い。感覚だけど負ける気はしないのでなんとかなるだろう。

 ケルピーが大きく嘶き、それに合わせるように氷の破片が浮く。お前優秀だな! 俺よりずっと魔法得意じゃん。というかその氷の破片は俺が作ったやつだよな? 魔法で作ったものは物質になると他の生物が使うこともできるのか。勉強になります。

 飛んできた氷を火魔法で溶かしながら走り込む。あと一歩で剣が届く距離まで近づいたけれど逃げられてしまった。やっぱり馬なだけあって速い。魔力強化しているのに体が追いつかなかった。ジェシカさんの方に行かないように壁を張ろうかと思ったけれど、どうやらケルピーは俺しか眼中にないらしい。良かったけどよくわからないな。ケリュネイアがいてくれてるからかな?

 追いかけっこをしていても埒が明かないので、魔法主体でいくか。

 氷が溶けない程度の火で周りを囲ってみたけれど、ケルピーの水魔法で消されてしまった。やっぱりコボルトとは比べ物にならないな。一旦回避に集中するとケルピーが攻勢に出てくる。使える魔法は水と風か? 氷は俺が作ったやつを利用しているだけで自分では作ってないな。

『ナイト! 聞こえる?』

『はい。どうしました?』

『ケルピーと交戦中なんだけど、弱点とか知ってる?』

 火で押し切ろうにも、さっきの火の囲いを消火できるなら多少の火では効かないだろう。水蒸気爆発覚悟の超火力で燃やせばいいんだろうが、大惨事にも程があるので最終手段にします。ナイトに念話で訊くとしばらくの沈黙の後「そうですね」と返事がきた。

『ケルピーでしたら常套手段としては水場から引き離し火で囲って弱らせるのですが、ユウにそんなんことはできないでしょうから』

 一言多いな。できないでしょうけども。というか水場から離れると森を燃やしそう。

『雷でしたら多少制御が効くでしょうから、熱で焼き切ることが可能だと思いますよ。加勢は要りますか?』

 雷! そうか氷と同じで上位魔法だから消費魔力が多いんだったな。氷がある程度自由に使えるなら雷も大丈夫だろう。

『やってみる。無理だったら呼ぶよ』

『承知しました。頑張ってくださいね』

 頑張ります!


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