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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第26話 帰還

 ベースに戻るとロボが尻尾を振って迎えてくれた。起きちゃったかぁ。心配させたかな? ごめんよ。全員がふんふんと一生懸命嗅いでくるロボの烈々歓迎を受けながら居残り組と簡単に報告をしあう。ベースは特に何もなかったようだ。

「ますます杜撰だなぁ」

「行き当たりばったり過ぎるな。一応騎士団に報告しておくが、意味があるんだか」

「まあここまで大規模の召喚を行なえるのは国ぐるみでしょうから、報告しておくことに意味があるかと」

「とにかく一旦は心配ないだろう。俺たちは交代で休んでたから、1時間くらいしかないけどみんなも仮眠を取ったらどうだ?」

「そうさせてもらおう」

 報告が終わり、眉間を揉んでいたウィルだったけどフィオさんに促されて頷く。やったー、ちょっとでも寝たら頭スッキリなりそう。天幕に入るとロボも毛布を咥えてついて来た。あー……可愛いけど、寂しい思いさせちゃったかな? 反省。

 ロボを抱えて仮眠を取り、朝日が昇る前に全員何事もなかった顔で起きる。昨日と同じように水差しをコーンスープにセットして設置しておく。朝食を食べていたらウィルが横に座った。待ってましたとばかりにロボが膝に滑り込む。俺の膝じゃ狭いんだよね……。

「今日の予定は?」

「昼まで訓練して、昼食を摂ってから帰還する。夕方になるだろうし、報告もあるから孤児院に顔を出すのは明日だな。私もついて行くから声をかけてくれ」

「わかった」

 ……お目付役??

「ギルドからも孤児院に援助してるんだよ。屋根はユウが直してくれたが、中も修繕が必要になってないかの確認だ」

 そっか、よかった。ギルドって孤児院に援助とかもするんだ。

「さて、今日は最終日だ。子供たちも気合が入って怪我が増える。気をつけてやってくれ」

「了解」

 ウィルが言っていたとおり気合の入った子供たちが頑張ってどんどん魔物を相手に立ち回る。しかし無謀なことをしているようなパーティは見当たらない。昨日相手にしていた魔物よりも上の魔物に向かっているけれど、巧く対処できている。まあ確実に昨日より怪我する子は増えてるけど。子供の成長の著しさよ。俺にも分けて。コボルト戦でちょっとは成長した気がするけど、最終的には怪我をしないこと前提の力押しをしていたからな。

 今日の戦績次第でウッドからストーンに昇級する子もいるらしい。その判断はギルド職員にしかできないので判断基準はわからないんだけど、なんとなくオリバーたちのパーティと、レノンさんたちのパーティは昇級する気がする。あと2、3組動きがしっかりしている子たちがいるからその子たちもかな。

 昨日のようなジャックウッドの襲来もなく、昼食を摂ってからベースを片付けレニアの街に帰還する。

 はー……街に着くまで安心はできないけど、なんとか初依頼無事に終了かな? 帰りの警戒はしっかりしよう。お家に帰るまでが遠足です。帰りもトーカの本が入った袋を受け取り、ロボは子供たちの間を好きなように走り抜ける。



 帰りの道のりは子供たちの話し声が絶えることなく賑やかな道のりになった。三日間の反省と次の課題が山盛りのようだ。

 ウィルと最後尾を歩いていたのだけど、門を抜けようとしたら騎士の人にウィルが呼び止められた。

「ウィル! あの噂聞いてるか?」

「鎧の魔導士ならこいつだぞ」

 雑。

「それはもう聞いてる! 俺はグルドだ、よろしくな! じゃなくて、勇者のことだよ」

「……勇者がどうした?」

 適当に俺を指差していたウィルの声のトーンが変わったけれどグルドさんは気にせず話し続ける。

「どうも勇者に子ができたらしいぞ」

「……」

「……」

 あら初耳。

「……どうしてそんな噂が?」

「少し前に帝城から鑑定鏡を借り受けていたらしい。それはもうウッキウキだったとか」

「…………そうか……本当だったらまた教えてくれ」

「おう。本隊で広がってる噂とは言え、怪しいっちゃ怪しいんだよな。勇者なら大神官様や大賢者に鑑定を頼めばいいだろうに、わざわざ鑑定鏡を借りるなんて」

 そうだな、と相槌を打ったウィルに手招かれて列に戻りながら小声で詰め寄られる。

「借り受けて来たのか」

「借り受けて来たな」

「大神官や大賢者を頼らなかった理由は?」

「その二人も私の存在を知らない。今更教えても決死の鬼ごっこが始まるだけだからと」

「隠す気があるのかあの人は」

「隠す気はあるが隠し方はよく考えていないと思う」

 父さんだもの。

「こりゃ、だいぶ広まってるだろうな。逆に考えればお前ほど大きな子供だとは思われないだろうから、それを狙ったのかも?」

 そんなことはないかと。基本行き当たりばったりの出たとこ勝負ですよ。今回は運良くいい方に転がっただけだと思う。肩を竦めて誤魔化し、ギルド前の広場に集合する。

「では今回の演習はこれにて終了とする。各自今回の演習で手に入れた素材を換金するなら直接倉庫のほうに持って行きなさい、準備してくれているはずだ」

「はい」

「警護班はこのままギルドへ。ギルマスに今回の演習の結果を報告する」

「了解」

 はーい。子供がきゃっきゃとホールに向かうのを見送り、ギルドの階段を上る。ロボはしばらく考えていたが影の中に入っていった。

 ヴァネッサさんへの報告はほとんど関係なかった。ジャックウッドの襲撃の時以外ほぼ何もしてなかったからな。コボルトの時は警護員としてではないし。しかしコボルト襲撃の件もあるので次回からの演習は南の平野になるらしい。平原と平野の違いって何。

「なんにしても、今回はみんな急な依頼を受けてくれてありがとうね。適当に組んで行ってたらどうなってたか考えたくもない」

 ヴァネッサさんが眉間を揉む。

「従来の編成ではジャックウッドはともかく気づかれずにコボルトを掃討するなんてできなかったでしょうからね」

「編成そのものを見直す必要があるかねぇ。まあ問題は調査部隊が帰って来てから考えるしかないか。今回の報酬は全員一律で金貨2枚。コボルトの討伐報酬はまた騎士団から出るだろうから少し待ってね」

 コボルト討伐の報酬も出るんだ。厳密に言えば今回のが初任給ってことになるんだろうか? しかし、ほぼ何もしてない新人警護で20万円貰ったことになるのか? ぼったくってる気がする……。しかもコボルトの討伐報酬も出るみたいだし。お金がないのは不安だけどありすぎてもねぇ。とりあえず財布代わりに麻袋使ってるから財布買おうかな。

「ユウさん。ジャックウッドの種子を解体したいので、一緒に来ていただけますか? トーカも倉庫で待っているはずです」

「わかった」

 俺が凍らせたから俺が溶かすしかないんだよな。ウーさんについて先に部屋を出る。

「ジャックウッドの種子は何かの素材に?」

「それが、種子が手に入る機会は滅多にないのでまだ何に使えるか詳しく研究されていないんです。もし有用な素材であれば春にユウさんへの指名依頼が増えると思いますよ」

 種子保存係か。役に立つならそれでもいいけど。

「役に立ってくれるならいいんだけどな。何にも使えないとなると申し訳ない」

「いえいえ。使えなかったとして、そういうものだと解ることが重要なんです。知識とはそういうことの積み重ねです。今使い道のない物でも、いつか思いもしない形で役に立つこともありますし」

 んぁい。勉強と同じですかね。しかしウーさん嬉しそうだな。

「ウーさんは研究が好きなのか?」

「ええ。基本的にエルフは知識を得ることが好きな種族ですからね。私は採集自体も好きなので戦闘職員として働いていますが、ほとんどは籠もって研究三昧です」

 エルフ。

「ウーさんはエルフなのか?」

「はい。言っていませんでしたか?」

 言っていませんでしたねぇ。エルフなのか。ずっと被っていたフードを脱いで、長い髪をまとめて耳を見せてくれる。確かにベルナさんより長くて尖っている。映画とかで見るエルフそのものだ。

「エルフの特徴はこの耳ですね。まあ、さっきも言ったとおりほとんどは籠もって研究していますのであまり会う機会はないでしょうが」

 へぇぇー。

「あと変人が多いのであまり関わることをお勧めできません」

 変人。

「寿命が人間や獣人と比べて長いのでどうしても特化型になるというか、偏っていくというか。ドワーフも気難しい人が増えますからね」

「そうなん「ジャックウッドの種子が手に入ったって!!?」ガフッ!!」

 バゴンと開いた扉で顔面を強打する。この世界に来て久々に痛ぇ!! タンスに小指ぶつけた感じ! ……顔面強打した割りにあんま痛くないな。

「ギル!!」

「お? 悪い」

 あっさりとした謝罪と一緒に姿を見せたのは、初日にグロテスクの解体をしていたタオルの人だった。が、初日と違ってタオルから長くて尖った耳が出ている。

「……エルフ」

「これは中でも特異な例ですので不審者だと思って見てください」

「兄を不審者として見ることを推奨する奴がいるか」

 ……兄? 言い合う二人を交互に見て見るけれど全く似てない。言われないとわからないな。ウーさんは御伽噺のエルフそのままって感じだけれど、ギルさんは暗めの紺色の髪をしているし体格もがっしりめだ。コホンと咳払いしてウーさんがこちらを向く。

「すみません、ユウさん。兄のギルです。無礼なうえに基本小汚いですが解体の腕はギルド1だと断言できます」

「そうだって胸を張るには前置きが失礼すぎんだろ」

 似てないけど仲は良さそうな兄弟だな。なんだかんだ二人とも笑ってるし。倉庫の中に入って用意されていた台に近づくと、思い出したようにギルさんが俺を振り返る。

「そういや、あんたが突っ込んでたらしい廃棄品の箱は捨てといたぞ」

 ……あ!!!

「申し訳ない。すっかり忘れていた」

 っていうかあれ廃棄品だったのか。使う予定のものじゃなくてよかったけどなんでそんなものが積んであったのか。

「気にすんな。急な仕事だったらしいしな。そもそも捨てる予定だったもんだし」

「廃棄品を積むのはやめた方がいいですかね」

「でもなぁ。ウッドランクの訓練でよく壊れるし、都度捨ててたんじゃ面倒だぞ」

 あー訓練に使ってるものなのか。

「普段はどうやって捨てているんだ?」

「ある程度溜まったらまとめて燃やす」

 雑ぅ……。

 ワクワク顔のトーカも加わりジャックウッドの種子を解体する。氷を溶かして殻を破るのだけど、うっかり地面に落ちないように先に地面に革を張るらしい。大変。いざ破ってみると中には粘土のようなものが詰まっていた。一瞬味噌っぽいと思ったけれど、匂いが違う。なんだろう?

「これは……ふむ。鑑定してみるか」

 ギルさんが持ってきたテーブルミラーを種子の前に置く。これ鑑定鏡か。映った種子の周りに文字が浮かぶ。


ジャックウッドの種子

  粘土質の核は加工しやすく非常に魔素変換率が高い 特に土魔法との相性が最高


 ……どうなの? これは。

 ウーさんが指先で核を掬って唐突に魔法陣を展開する。

「ユウさん」

「うん?」

「春先はできるだけ予定を空けておいてくださいね」

「……了解した」

 有用だったんですね。

「これは細工師たちが喜ぶな」

「ええ。加工しやすく魔素伝導率がいい素材なんて滅多にありませんからね」

「粘土質ってことは加工の幅も広がりますよね!」

「そうだな。装飾品としても使えるだろうし……」

 盛り上がり始めた三人にどうしようかと思っていると、ウッドランクの子たちの素材の買取をしていた職員に手招きされる。

「ああなると長いので、もう休んでくださっていいですよ。伝えておきますから」

 あらら。

「わかった。ではお願いする」

 お礼を言って倉庫を離れる。

「ロボ、出ておいで。ご飯にしよう」

 出てきたロボが尻尾を振る。ダイナーでご飯食べようね。今日は久々にあったかいご飯が食べれるよ。


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