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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第19話 烈火の守護者

 ビーフシチューのようなものとライ麦のパンを食べながら説明を聞く。

「まず、絶対必要なのは武器と防具だが、これはまあ忘れんだろう」

 忘れませんね。最悪武器を忘れたとして防具というか、鎧は標準装備です。

「あとは、食事と毛布、水浴びの時用の桶とタオルだろ、それから非常用の食事。これは本当に携帯食とかでいい。万が一遭難した場合なんかにウッドランクの分も合わせていくらか用意しておいてくれ」

 毛布とか桶は父さんに貰ってるし携帯食はラウ商店で買ったけれど、遭難?

「遭難の危険性があるような場所なのか?」

「いや。見通しいのいい平原だし、平原から出ないように警告はするんだがな。話を聞かん奴はいるからな。勝手に離れていく奴が何年かに一組二組いるんだよ。そういう奴を放っておくわけにもいかないから、一応な」

 あー……そういうことね。了解です。

「あとは、水差しだな」

「水差し?」

「そ。水差し」

 水差しってあの水差し? 水を入れておく器? あったけ? 鞄を漁ってみると、あった。真っ白な陶器でできた水差しは蓋にいくつか印が付いている。なんだろうな。これに水を入れておけばいいのか?

「ちょっと見せてくれるか」

 はい、どうぞ。

 渡した水差しを検分すると、ウィルは蓋の印をカチカチと合わせて、空だったはずの水差しからコップに水を注ぐ。何事。コップを持ってみると冷たい。

「ちゃんと魔道具だな。この印に合わせると水が湧いて、この印に合わせると水が枯れるようになっているみたいだ」

 マジで。魔道具って、本当にすごいな。永遠に水が湧く水筒って感じなのか? もう一つ印があるけどこれはなんだろう。ナイトがその印を指差す。

「もう一つ印がありますが、それはなんでしょうか?」

「たぶん常温の水だろうな。常温と冷水なんだろう」

「なるほど。冷水では体を冷やしすぎることもありますからね」

 本当に便利だな魔法世界と魔道具。なんとなく常温と思われる方に印を合わせてコップに注ぐと、注ぎ口から出てきたのは湯気の立つコーンスープだった。

「……」

「……」

「……体を温めようという気概は評価しましょう」

「……いや、おかしいだろ……」

 コーンスープが水差しから出てきちゃ駄目でしょ。ナイトがなんとか絞り出したフォローをウィルが却下する。

「やはりそうですよね。せめてコンソメスープなら良かったんですが」

「良くないが?」

 いや、確かにコーンスープよりはコンソメスープの方が塩分も摂れるけど、今はそうじゃないでしょう。というか、これ絶対父さんかそのお友達集団が作ってな!? 父さんコーンスープ好きだもんね!!

「どうすりゃ水差しにコーンスープ出す術式なんて刻めるんだよ……」

「才能を全力で無駄に使えば?」

「洒落にならねえわ」

 とりあえず印を水が枯れると思われる最初の印に合わせて蓋を外し確認すると、コーンスープはちゃんと水差しの中に水滴一つ残さず消えていた。この薄くなったコーンスープは捨てましょう。もったいないけど仕方ない。

 水差しを鞄に封印し、明日の予定を教えてもらう。

「明日は夜明け前にはギルドのホールに集合して簡単な打ち合わせと顔合わせがあるから、夜更かしするなよ」

「わかった」

 とは言っても、この世界めざまし時計無いしな。早く寝て早起きするしかないか。そもそも時計があるのか? 鞄を漁ると懐中時計のようなものが出てきた。これか? 精巧な作りが高級感がありまた胃が痛くなる。

 蓋を開けると、メモが落ちた。見ると父さんの字だ。

『お父さんのことだ、説明を忘れるだろうからメモを入れておく。この世界は地球と同じで24時間で一日を区切っている。まあ地球と違って閏年は無いのだが、その辺の説明はいいだろう』

 ここまで読んでメモをポケットに仕舞う。後で確認しておこう。説明を忘れる前提でメモを仕込んでいるのは賢いのか突き抜けて馬鹿なのか。

「まあ起きてこなかったら私が叩き起こしてやるよ」

「そうしてくれ」

 夜明け前って何時くらいなんだろう。5時前くらい? そのくらいなら起きられるかな。

「私が起きていましょうか?」

「いや、寝てくれ」

 平気ですよ?と言われるけれど、他人に徹夜でめざまし代わりさせて寝られないです。では朝食だけ用意してキッチンに置いておきますね、と言われたのでそれは有難くいただきます。



 そんなことを話していると、ここにいたのか!とウィルにレオがのしかかってきた。というかウィルを潰して俺の視界に入ってきた。

「探し回ったんだが、まさか帰ってきているとは」

「すまない?」

 探させてしまったらしい。どうかしたのだろうか?

「かまわんさ。俺のパーティを紹介しようと思ってな。顔合わせの時ナイトには紹介したんだが、いなかっただろう?」

「ああ。そうだったな」

 そういえば昨日そんな話をしたな。すみません、ロボのお散歩行ってました。

「とりあえず私の上から退け」

 潰されていたウィルがぐいーっとレオを退けて起き上がろうとするのをワハハと笑って拒否している。仲良しだなぁと感心していたけれど、メンバーの人はどこだろうか。

「ユウ、彼らです」

「ん」

 戯れている二人を無視して、ナイトが後ろを指すので振り返る。手を振る人がいた。この人たちか。引き剥がされたらしいレオがその人たちの前に移動し、満面の笑みで手を広げる。

「俺のパーティ、烈火の守護者のメンバーだ」

 一番近くに立っていたオオカミの獣人を指す。

「彼はカイ。サブリーダーで斥候だが剣士としても優秀だ」

 カイさん。差し出された手を取って握手するとその手をナイトに抱かれたロボがフンカフンカと嗅ぐ。どうしたの? ロボを撫でるカイさんをそのままに、レオが次々と紹介していく。

「彼女はベルナ。優秀な治癒術士で、パーティの保護者的な存在だ」

 金髪の女性がベルナさん。耳が尖っている?

「彼女はアッカ。魔導士で、このパーティ最年少だ」

 元気そうな短髪の女性がアッカさん。

「彼はウリオ。槍使いで、素材の知識が豊富だ」

 グランツと同じ灰色の肌の人がウリオさん。

 全員と握手するが、ロボはカイさんが気になるようでずっと匂いを嗅いでいる。し、失礼に当たらないよな?

「私はユウ。まだまだ訓練中だが、魔導剣士だ。この子はロボ。チャーチグリムの子供だな」

「わん!」

「噂話聞いているぞ。魔導士なのか剣士なのかと思っていたが、魔導剣士だったのか」

 カイさんにそう言われたので肩を竦める。そういえば噂二つあったな。

「グロテスク叩っ斬ったって聞いたぜ! 本当か?」

「氷の壁張ったとか! 空中を走ったとか!!」

 カイさんを押し退けてウリオさんとアッカさんが寄ってくる。勢いに気圧されていると二人が後ろに引っ張られる。カイさんとベルナさんに引き離されたらしい。

「近いし、いきなりすぎる」

「二人とも、もう少し慎ましくね」

 ぶぅぶぅと文句を言う二人を叱るカイさんとベルナさんをレオがまあまあと笑ってなだめる。よくわからないがバランスは良さそうだ。

「ユウ、ウリオ様は20歳で、アッカ様は19歳らしいですよ」

「……うん?」

「あのくらいの可愛げが出せませんか?」

 まだカイさんが気になるロボを引き剥がしながらナイトがそんなことを言う。ウィルも襟首を掴まれたまま暴れるカイさんとアッカさんを見て、俺を見て頷く。

「あのくらいはしゃいでみたらどうだ?」

 そんなこと言われましても。

「私には無理そうだ」

 少なくとも襟首を掴まれると動けなくなりそう。心の中ではあのくらいはしゃいでるんだけどな。口に出るまでの検閲が激しいんだよね。そもそも今口調変えてるし仕方ないよね。

 俺たちの話が聞こえたのか、アッカさんがこちらを振り向く。それ首大丈夫なんですか?

「待って待って! ユウさんって何歳なの?」

「18だが」

「マジかよ! 歳下じゃん。ユウって呼んでいい? 俺のこともウリオでいいから」

「あ、ああ。どうぞ」

「えー! ずるい! 私もアッカでいいから、ユウって呼ぶね」

「ああ。かまわない」

 グイグイ来るな。これが陽キャってやつか? まあ名前なんて好きに呼んでくれたらいいんだけど。

「ユウはまだ18だったのか。落ち着いているからもう少し上かと」

「……お前の前ではまだ落ち着いてるとこしか見せてないからな」

 レオの言葉に地球でもよく上に見られていたなぁと思っているとウィルの言葉が刺さる。大変申し訳ない。そういえば壊れた木箱どうしよう? あとで確認しないと。

「あの……ユウさんは随獣師ではないのですか?」

 おずおずとベルナさんに訊かれたので頷く。

「私自身は随獣師だが、冒険者としては魔導剣士で登録している」

 登録時は随獣師って知らなかったからね。そう答えるとウリオが首を傾げた。

「随獣師って調教師テイマーとは何が違うんだ?」

 俺もよくわからないのでナイトを見る。

「随獣は自ら主人を選びます。テイマーのように魔物を調伏する必要はないですし、調伏したところで随獣にはなりません。そもそも契約できるほどの知能を持つ魔物を調伏できるとは思いませんが」

「契約自体を魔物の側から結ぶんだったか?」

 カイさんに訊かれてナイトが頷く。

「はい。契約術式を魔物が構築します。術式も複雑ですので少なくとも天災級以上の魔物しか随獣契約はできないでしょう」

「チャーチグリムは? 中級だろう?」

「ロボは私の承認をもって随獣となりました。契約術式はユウの魔力を使い私が代わりに構築しています」

「とりあえず最初の一体が契約できたら次からは低級の魔物を随獣にすることもできるんだな」

「はい。あくまで魔物の側に随獣になる意志があればですが」

 カイさんとナイト、ウィルが難しい話を始める。ロボはその隙にカイさんの腕の中に収まっていた。犬科だから落ち着くのかな?

 レオがちょいちょいと手招きするので近づくと、テーブル席に移動する。ベルナさんやウリオ、アッカも移動してくる。

「ああなると奴らは長い。こっちで食おう」

 はーい。テーブルに全員の食事が来たところで、気になっていたことを訊こう。

「失礼でなければウリオの種族が何か訊いても?」

「ん? ああ、珍しいもんな。俺の種はドルーフだ。エルフとドワーフの混血でドルーフはみんな灰色の肌と青い髪なんだよ」

 へー。ドルーフなんて種族があるのか。ハーフだけど別の種族として確立してるのかな。

「ベルナさんはエルフか?」

「私はハーフエルフですよ。ハーフエルフはエルフより少し耳が小さいのが特徴ですね」

 ハーフエルフか。エルフはもう少し耳がわかりやすいのかな?

 カチャンとテーブルにジョッキが置かれる。首を傾げるとレオが笑う。

「明日に向けて英気を養っておこう。だがまぁ仕事前だからほどほどにな」

「やったぜ!!」

「わーい! リーダーの奢りね!」

「はいはい。飲みすぎるなよ」

 決起会みたいなものかな? 盛り上がるアッカたちに聞こえないように小声でベルナさんに確認する。

「この国では18歳で飲んでも?」

「ええ。16歳から許可されていますよ」

 いいのか。じゃあ飲んでみよう。ビールみたいに見えるけれど……なんか、なんだろう? 不思議なお茶みたいな味がする。薄い玄米茶? 雑穀茶? みたいな味。アルコール感が全くないけどこんなものなんだろうか。

 しばらく飲みながらレオたちに色々な話を聞いていたのだが、ウィルにそろそろ寝なさいと促されたので挨拶をして部屋に戻る。ナイトはまだカイさんと話し合っていたので、寝てしまったロボだけ受け取ってきた。

「結構飲んでたけど大丈夫か?」

「平気だ。酔っている感じが全くしない」

「んー……酒精に嫌われてんのかね。なんにせよ酒に強いのはいいことだ。下手なトラブルに巻き込まれなくなる」

 そうなのか。酒精に嫌われるとかあるの? 酒精ってアルコールのことだよね?

「じゃあおやすみ。早く寝るんだぞ」

「わかった。おやすみ」

 ロボを俺のベットに寝かせてシャワーを浴びていたんだけど、戻るとナイトのベッドに移動していた。え、普通に悲しい。昨日そっちで寝たからだと信じよう。

 ナイトに言われていたようにバスケットの中のご飯を確認して、水差しとミルクの瓶も入っているから大丈夫だろう。

 よし、寝よう。


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