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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第16話 希少金属

 繋ぐ作業が終わったようで降りて来たグランツさんにウィルが声をかける。

「さて、さすがに屋根の本格修理は私たちでは手伝えないし、ユウはお使いの途中だからそろそろお暇させてもらう」

 ウィルにそう言われてハッとする。そういえば食料の買い出しに来ていたんだった。子供たちと夢中で遊んでいるロボには悪いがそろそろ行かないと。

「俺たちは勝手にやってるから気にしなくていいぞ」

「ああ。頼んだ」

 すみません。よろしくお願いします。

「私がルーク院長と話してくるから、ユウはロボを回収してきなさい。門で待ち合わせよう」

「わかった」

 お願いします。視界からいなくなっていたロボを探すと噴水周りで子供とかけっこをしていた。楽しそうなところ悪いけれど、そろそろ行くよー。

「ロボー」

 呼びながら近づくと耳をピンと立ててすぐに振り向きやって来た。よしよし、いっぱい遊んでもらえてよかったね。ぐりぐりとすり寄ってくるのを受け止めて撫で、ロボについて近づいて来た子供たちを見る。

「すまない。もうそろそろ行かないと」

「えーー!!!」

 ごめんよ。案の定とても断念そうにされたが、さすがに長時間置いていくわけにはいかないからね。

「すまないな。泊まりの依頼が入っていて、その準備をしなくては。依頼が終わったら屋根を見にくるから、その時にまた遊んでくれるか?」

 小学校3、4年生くらいの子たちは残念そうにしながらも頷いてくれた。

「うー……仕方ないよな。仕事は大事だし……」

「絶対遊びに来てね?」

「ああ。約束しよう」

 聞き分けのいい子たちだなぁ。環境的に仕方ないんだろうか、と思ったけど小さい子たちは俺に登ってきてるのでそんなこともなさそうだ。単純にお兄ちゃんお姉ちゃんだからしっかりしてるのかな。

「今度はお兄ちゃんも遊んでね!」

「肩車!!」

「ああ。今度は私も是非混ぜてくれ。すまない、肩車は次の機会にな」

 背中まで登ってきた子を下ろして男の子に預け、ロボを連れて門に向かう。ロボももっと遊びたいと渋るかと思ったが、思いっきり遊んで満足したのか素直に付いてきた。また遊べるということがわかっているのかもしれないな。

 門に着くとルークさんも見送りに来てくれたようだ。ルークさんが頭を下げる。

「ユウさん、すみません。柵だけでなく屋根の修繕まで」

「好きでお節介を焼いているだけだ。ロボもたくさん遊んでもらえて喜んでいるし」

「わぉう」

 そう言ってロボも見るとご機嫌に尻尾を振っていた。なんだかんだで俺はあんまり遊んであげる時間が取れなさそうだからな。今度修行もだけどナイトと一緒にロボとゆっくり遊べる時間を作ろう。ぶぶぶんと尻尾を振るロボを見てルークさんも笑ってくれた。

「子供たちと遊んでくれてありがとうね、ロボ君。ユウさんも是非また遊びに来てあげてください」

「ええ。次は肩車をする約束もしたし、屋根の完成を見るためにも……四日後になるか。またお邪魔する」

 そう思うと若干時間が空くな。本当に代金後払いでいいんだろうか? でも冒険者ってことは知られてるからギルドに行けば俺の所在は確認できるからいいのかな?

「じゃあ、私たちはここで。修繕が終わったらグランツから声をかけると思いますので」

 ウィルが会釈をして俺も続く。ロボもルークさんにグリグリと頭を押し付けてから付いてきた。よし行こうね。



 目的地はわかっているのか迷いなく進むウィルに続く。ロボは眠くなったのか影の中に入ってしまった。限界まで遊んでたんだね。

「そんなナイフ持ってたか?」

 ウィルがレッグシースに気づいて指差す。

「さっき買った。向こうの通りで、看板の出ていない武器工房だ」

「あの通りで看板の出てない武器工房……?」

 ウィルが通りを振り返ってから少し考えるように顎に手を当てる。どうかした?

「ゴウルクの工房か……? ユウ、ちょっと見せてくれるか」

 はいよ。どうぞ?

 鞘から抜いて差し出すと、きゅっと眉間にシワが寄る。トラも意外と表情豊かなんだな。そのまま受け取り、角度を変えて検分して返却された。

「総ミスリルのナイフとなると、ゴウルクだろうな。あの気まぐれ親父に気に入られたのか」

 あのおじいちゃんゴウルクさんっていうのか。ギルドの職員に知られているってことは有名な職人なのかな? ところで。

「ミスリルとは?」

 なんでしょう。冒険者のランクにもなってるし金属であろうということしかわからないのですが。純粋な気持ちで訊くと額に手を当ててため息を吐かれた。

「親父さんから聞いてないか」

「基本説明は後回しな人だから」

「……そう言われると否定できないな」

 はぁーと息を吐いて頭を振られた。父さんがわりと行き当たりばったりなのは知れ渡ってるのかな?

「ミスリルはアダマンタイト、オリハルコンに次ぐ希少金属だ。特徴としては緑色に薄く発光している、魔力を通さない、軽い、頑丈というのが挙げられる」

「魔力を通さない?」

「ああ。金属の性質だな。そのナイフに魔力を通してみな」

 ナイフに。

 言われたとおり持ったままだったナイフに魔力を通すように意識してみるが、なんだか力がそのまま素通りして散らされているような感じだ。

「なんか変な感じがする」

「ナイフに通そうとした魔力が表面を滑って霧散するんだ。勿論自分が通す魔力だけでなく、攻撃として受ける魔力も無効化する。だから前衛職の盾持ちなんかはミスリルの盾を持っているかがパーティのメンバーを決める指標になったりするな」

 へー。じゃあこんな感じで緑に光ってる盾を持ってる人には魔法は効かないのか。説明を聞いてナイフを戻すとウィルが指を立てる。

「ついでに他の二つについても説明しとくぞ。アダマンタイトは最も希少な金属だ。鉱物としては存在せず、絶対に壊れないという特性を持つ漆黒の金属だ」

 鉱物として存在しない金属ってどういうことだ。武器の形したまま埋まってるの?

「創造神が形作ったものしか存在しないと伝わっている。勇者選定の剣がアダマンタイトだって聞いたことがあるな」

 マジで武器の形のまま埋まってる系か。そして当然のようにそんなもの持ってる父さんはなんなんだ。いや、でも昨日剣に創造神の加護とか言ってたな。創造神謹製だったから加護が付いてると思ってたってことか。

「次に、オリハルコンだな。アダマンタイトが鉱物としては存在していないことを考えると、ある意味では一番希少な金属だ。淡い青色に発光し、魔力を非常によく通し、増加させる性質を持つ。そしてミスリルよりも硬く軽い」

 青色に光る金属かぁ、かっこいいな。

「で、お前が腰に佩いてる剣がそのオリハルコンだ。しかも総身オリハルコンの一本造り。加工してあるが柄も鍔も鞘も鞘の装飾も全てオリハルコン製」

 ブホッ。

「い、いや。おかしいだろう。私の剣は普通に鉄色だ」

 いくら父さんでもそんな希少金属をホイホイ渡したりは……デュランダル渡そうとされてたな、そういえば。いやでもしかし。この剣は確かに普通に鉄の色をしていたはず。

「オリハルコンはミスリルやアダマンタイトと違って、魔力を通さないと色が変わらないんだよ。ちょっとだけ抜いて魔力を通してみろ」

 んぇぇ? 言われたとおりに数センチだけ抜いて魔力を通す。

 あらまぁ、綺麗な青色。

 キンッと音がする勢いで戻す。

「マジか」

「マジだ」

 マジかー……。

「さっきも言ったが、加工してあるから光りはしないが柄や鍔もオリハルコンだぞ。それと、鞘だがな」

 黒いけど柄もオリハルコンなのか、と眺めているとウィルが鞘を指差す。

「剣帯に引っ掛けるための装飾があるが、そこを持って双剣のように使うこともできるようになってる」

 ほう?

「剣身だけで105センチを超す長剣だからな。鞘も十分な長さがあるし、普通は鞘は剣帯に固定するようになっているんだが、外れるようにしてあるからには使うことを想定してるんだと思うぞ」

 そんなこともわかるのか。鞘をちゃんと見てみると鯉口から……洋剣でも鯉口って言うのかな?15センチくらいまでが装飾で覆われている。

「鞘でも戦えるのか?」

「双剣は両方ともを攻撃に使う場合と片方は防御に使用する場合がある。オリハルコンの鞘なら盾としても優秀だろうし、ユウの腕力なら十分鈍器として使えるだろう」

 鈍器として振り回すのはともかく、テクニシャンな戦い方を要求されている気がする。うーん。とりあえずは怪我をさせられない相手と戦うときに使うようにしようかな。

「この剣は私の魔力制御を助けてくれると父が言っていたが、ミスリルではそういうことはできないのか?」

 魔力が通らないならその方が安全では?

「ミスリルは術式が乗らないからな。剣士としてしか動かないならともかく魔導士として魔法を使うために制御術式を刻むならオリハルコンで正解だ。そもそもオリハルコンはミスリルを除く他の金属より取り込める魔力が多いから、術式がなくても多少の制御能力はあるはずなんだがな」

 そうなの?

「オリハルコンはさっきみたいに光ることを起動と呼ばれてて、起動しないと本領発揮とはいかないんだが、それだけの大きさのオリハルコンに魔力拡散術式なんてもんを刻まれた剣を起動できるやつが何人いるかってところだよな……」

「そんなに魔力が必要なのか?」

「ああ。普通オリハルコンの武器は芯にオリハルコンを使用して後は普通の鉄や魔鋼鉄で仕上げるんだ。オルハルコンが希少だということもあるが、そうしないと魔法の威力を上げるどころか起動する前に魔力切れを起こすからな」

 マジかよ。

「とりあえず、その剣は金貨6000枚は下らないから、変なやつが買い取るとか言っても無視しろよ」

 ナイフの400倍かぁ。売ることは絶対にないけど、めちゃくちゃ高額な気がするぞ。胃が痛いな。



 ラウ商店に着いて食品を見る。普通の肉だけじゃなくベーコンやハムのような加工肉、乳製品に海鮮やパン、野菜も袋売りされている。壁に囲まれた街の中で魚が売られているの不思議だな。……ハマグリ?? なんでもありか。パンはベーコンやチーズが練り込んである惣菜パンも作ってあるようだ。

 肉は名前を読んでもなんの肉かよくわからないけれど、なんとなく予想ができそうなものを選んで買っておこう。バイソンって牛みたいなものだったよね? 10kgくらいの袋入りのジャガイモやニンジン、葉物野菜。肉も大量に。そのまま食べられそうなパンやチーズに干し肉、ドライフルーツなんかも買ったのだけど、お会計が銅貨8枚と鉄貨5枚だった。大量購入だったからと端数はおまけしてくれたが、安すぎない?

 値札を見る限り、鉄貨の下におそらく石貨と木貨があるようだが、この世界物価すごく安い?

 ウィルがまだ買い物をしているのを確認して世界樹の種子に小声で話しかける。

「ごめんだけど父さんに繋いでくれる?」

 世界樹の種子がシュルッと視界で動いた数秒後には念話のような感覚で父さんの声が聞こえてきた。

『どうした?』

「昨日訊き忘れてたんだけど、金貨って何円くらいなの?」

『ん? 言ってなかったか? 金貨は1枚で大体10万円くらいだな』

 グホッ!!

『大丈夫か?』

「大丈夫……ありがと……」

 通信?が切れる。つまり俺は6億を腰にぶら下げてこれから生活しなくちゃいけないの? 店先で頭を抱えていたら買い物を終えたウィルに変なものを見る目で見られた。やめてください、ダメージが大きい。


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