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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第107話 父さんのお友達

 借りた部屋で風呂に入って洗濯をしつつロボたちの話を聞く。ナイトはサウスに結果を伝えに行った。

「それでね、ハーピーがネコを連れてっちゃおうとしたから大変だったんだよ!」

「それは大変だったね」

「ギ!」

「にゃー」

 ロボの言葉に同意するようにアースとネコが鳴く。

「だからね、アースがネコを回収してぼくがハーピーをやっつけたの!」

「そうなの? 二人とも優しいね。ネコを守ってあげたんだね」

「へへー」

「ギュー」

 ロボとアースの頭を撫でてから、撫で撫で待ちをしているネコの頭も撫でる。

「ネコも、優しいお兄ちゃんがいて嬉しいね」

「にー」

 ナイトが作業場でハーピーを出したときに首無し騎士(ナイト)フェンリル(ロボ)ドラゴン(アース)に挑もうとするハーピーなんていたのかと驚いていたけれど、近くで遊んでいた化け猫(ネコ)を狙って来たというのなら納得もできる。

 ゴッツイ保護者がいるなんて考えていなかったんだろうな。

「お兄ちゃんとボムは何してたの? ナイトが「まったくもう」って怒ってたよ」

「森の中でドリアードとユニコーンと追いかけっこしてたよ」

「……ぷー?」

 嘘は言っていません。なんですかボムさんその不満げな声は。

「追いかけっこかぁ。明日もユニコーンと追いかけっこできるかな?」

「どうだろうね」

 ロボにはユニコーンに追いかけられるのも楽しい追いかけっこなんだな。

 追いかけっこはともかく、明日森に着いたらドリアードに他に関わってはいけない魔物がいないか訊いておかないといけないか。ユニコーンが次男坊ってことは少なくとも長男はいるのだろうし。

 ナイトが帰って来たのでダイナーで簡単に夕食を済ませ、ネコが俺の枕を振り回してエキサイトしていたのをなんとか宥めて布団に入る。

 生後3ヶ月くらいの大きさの子ネコが大人用の大きな枕を余裕で振り回しているのを見ると、やっぱり魔物なんだなと不思議な気持ちになった。

 ダイナーで《勇敢なる星(ブレイブ・スター)》に会えないかと思ったけれど、数日前に街を出てしまっていたらしい。残念だ。もしかしたら他の街の警護に向かっていたのかも。

 翌朝元気いっぱいのロボに起こされ、準備を整え仮面を鎧に展開してギルドホールに降りる。ボムは迷ったようだけれど結局瓶の中に落ち着いた。

「お早いですね」

 まだ人がまばらな時間だったけれどラピスさんがいた。

「おはようございます。ロボたちが楽しみで仕方がないんだ」

 我慢できずに扉の前で尻尾を振っているロボとその頭の上で待っているアースとネコを見ると、ラピスさんも俺の肩越しにロボたちが見えたのか顔を和ませた。

「ふふ、それは仕方ないですね」

 仕方ないです。あんなに尻尾を振られてはお預けは難しい。

 鍵をラピスさんに返して、報酬と買取り金を受け取る。肉は16体分受け取れた。大量。

「結局ギルドマスターは間に合いませんで、申し訳ありません。彼も噂の新人に会いたがっていたのですが」

「いや、こちらこそ落ち着きが無さすぎた。ちょくちょくハーピーの様子を見に来るつもりだし、依頼を受けることもあるだろうからそのうちお目にかかる機会はあるだろう」

「そうですね。では、また次の機会に」

 ナイトと一緒に一礼して、バイバーイと元気に言っているロボに押されてギルドを出る。

「早く行こ!」

 飛び跳ねながら進むロボについて門を出ると、すぐに巨大化した。

「加減して走ってくれよ?」

「そこは任せて!」

 よし、任せた。

 どこで覚えたのか鼻歌交じりで進むロボの背中に乗っていると、途中でネコが舟を漕ぎ始めた。アースが支えているけれどさすがに危ない。

『ナイト、ネコが寝そうだ』

『昨晩興奮して運動会を開催していましたからね。受け取ります』

 夜中もエキサイトしていたのか。全然気づかなかった。遠足前に眠れなくなるタイプの子かな?

 数時間で森に着いたので、少しだけ内側に入って天幕を立てる。

「遊んできていい?」

「ギュイィ?」

「確認しておきたいことがあるから、もう少しだけ待って」

 我慢できなくてうろうろしているロボとアースの頭を撫でて宥める。こんなに落ち着きがなくソワソワしているのはこの森に強い魔物がいるせいだろうか?

 実はまだ朝ご飯も食べていないのだけど、気づいていないようだ。

「ドリアード、いますか? お伺いしたいことがあるのですが」

 呼びかけるとすぐにドリアードが現れた。前に見た女性の姿とは少し違うようだ。

「どうされました?」

「この子たちが森の中を探検したいと言っているので、ユニコーンの他に手を出してはいけない魔物がいれば教えていただけませんか」

「はじめまして!」

 ロボたちを指すと、あら、とドリアードが笑う。

「ユニコーンを撒くような子ですからやんちゃな子かと思っていましたが、きちんと挨拶できて良い子ですね。はじめまして。お名前は?」

 頭を撫でられてロボがご機嫌に尻尾を振る。しかし、さすがドリアードはロボがユニコーンを撒いたのを知っていたか。

「ぼくはロボ!! ドラゴンのアースと、ナイトの膝で寝てるのが化け猫(ケット・シー)のネコ、お兄ちゃんの瓶の中にいるのがボムだよ! よろしくね」

「はい。よろしくお願いしますね」

 ロボー、ナイトの紹介を忘れているよ。まあロボは弟たちとボムの紹介しかしたことないからしょうがないか。流れからわかっていただけるでしょう。

「さて、この森にいる魔物で手を出してはいけない魔物とのことですが、そういう個体はユニコーン以外は向こうから手を出してくることはありませんので、攻撃されない限りは攻撃しないようにしていれば問題はありませんよ」

 例外的な次男坊笑う。

「向こうから攻撃してきたら倒してもいい魔物ってこと?」

「はい。そうですよ」

「わかった!! アースもわかった?」

「ギュー!」

「アースもわかったから遊びに行ってくるね!」

 わかった、わかった。ちょっとだけ落ち着いて。

「はい。わかったよ。行ってらっしゃい。でも、いつも言ってるけど危なくなったらすぐにナイトの所に戻るんだよ」

「はーい!」

 アースを頭に乗せたまますぐに姿が見えなくなったロボに苦笑しつつ、ドリアードにお礼を言ってから俺たちはひとまず朝食をとることにした。

「貴方もお食べになりますか?」

「生臭が無いのでしたら、いただいてみたいです」

 馴染んでおられる。

 本日の朝食は、イチジクジャムのトーストと目玉焼きとベーコン、フレッシュサラダ、コーンスープと紅茶とフルーツ、ヨーグルト。

 目玉焼きとベーコン、ヨーグルト以外を食べてみたドリアードが感動していた。

「魔素から栄養を補給できないなんて不便だと思っていましたが、これなら不便を感じないでしょうね」

 そうか……食事を必要としない魔物や精霊からすると、食事をしないと生きていけない生物は不便なのか。目から鱗。

 美味しかったですと頭を下げて消えていったドリアードを見送って、ナイトが起こしたネコにご飯を食べさせている間に食器を洗う。

 せっかくだから俺も遊びに行ってこよう。



 ナイトは地球から持ってきていた料理本を読んでのんびりしているとのことなので、まだ眠そうなネコを任せて遊びに行く。

 ボムも今日はナイトの所でのんびりしていることに決めたようで、瓶から出てきたけれどナイトの膝でネコの横に収まった。ここ最近ずっと手伝ってもらっていたから疲れちゃったかな。

 完全に独りで行動するのは久しぶりだ。改めて日中に走っているとこの森も生き生きしているな。樹に苔が生えているのがなんだか神秘的……光るキノコだぁ!

 あれダンジョンの中にあった発光キノコか?

 虹色の花や根っこが光っている樹もある。ウェストの森よりも不思議な植物が多い。

 しばらく走っているとガサガサと音が着いてきたので、何事かと思って振り返ると次男襲来。

 どうして!!??

 ここ全然森の内側じゃないよ? 君はそれほど外側を回っていないってネッシーが言っていたのに!

 もう一度振り返って確認してみるけど、間違いなく次男坊。満足そうな顔しちゃって! 追いかけっこ楽しいね!

 そこまで全力で探険するつもりはなかったのだけど、全力で森の中を駆け抜けた。

 走っていると崖上に出たので勢いでそのまま飛び降りる。高さは50メートルくらいか、このくらいなら受け身を取れば大丈夫だな。

 着地の反動で一度跳んだけど、転がって受け身を取る。

 妙に拓けているとは思ったけれど、土がふかふかしているし、畝のようなものがあった。

 畑? この森の中に?

「こんな所に人が来るとは珍しい」

 反射的に跳び上がって振り返りファインティングポーズを取ったら、驚いた顔をした美、人……?美形?の人がいた。とにかくすごく綺麗な人だ。

 見覚えがあるような気がするが、誰だったか。これだけ見事な金髪翠眼の人なら忘れないと思うのだけど。

「上から落ちてきたみたいだから心配したけど、それだけ動けるなら大丈夫そうだね」

 男性だった。そういえばさっき聞こえた声も低音だった気がする。

「……あ、あ! すみません! いきなり畑を荒らしてしまって」

 呆けている場合ではなかった。やっていることほぼハーピー。

「気にしないで。ここの畑はもう収獲が終わっていたから」

 収獲後だったか。良くはないけど、最悪の事態は回避できていた。

 それでも畝を崩してしまったので修復だけは手伝わせてもらおうと思ったのだけど、お兄さんが眉間に皺を寄せて険しい顔で俺のことを見ていた。どうしました?

「リアムの子?」

 やっば。

 転身して逃げようとしたけど、お兄さんのほうが速かった。後ろから押さえ込まれて背中で右腕を極められる。

「力強いですね!?」

 綺麗な顔してこの人、力強っ!! 腕とか俺よりもずっと細そうなのに、力を入れても外れる気配が全くない。むしろ肩関節のほうが外れそう。

「逃げようとしたということは自分がリアムの子だと知っているな?」

 墓穴!!!

 いや、でも逃げる以外の選択肢なくない!?

 無言でいると肩に掛かる圧が増した。痛いです。

「この場合沈黙は金ではないよ」

「サー、イエス・サー!! すみません、そうです!」

 肩がギリギリしている。この人怖いよう。

「申し訳ありませんが、どなた様でしょうか。父のお知り合いですか?」

 なんとか首を捻ってお兄さんの顔を見るけれど、やっぱり記憶にない。

「お知り合いというか……君もしかして俺のこと知らないの?」

「知らないですね……」

 申し訳ないことに全く思い出せないので、たぶんそもそも知らない人だと思います。どなた? 信じらんねぇって顔やめてください……。

「勇者パーティの神官だよ」

「イージス艦の方ですか!?」

「いーじすかん?」

「なんでもないです! 本当にすみません!」

 父さんがミサイル積んだイージス艦って言うから!! そりゃこの世界の人にイージス艦とか言っても意味わからないよね。

 父さんの友人の神官さんなら鑑定スキルがあるんだっけ。そりゃあバレる。

 いや、でも、勇者パーティは北の方で災害救助中では?

「あの、勇者パーティの方なら、北方の救助はどうなりました?」

「街と街道の粗方の除雪と、雪の重みで崩れた建物の修繕、支援物資の運搬に怪我人の治療、全て完了してきたよ。リアムはもう少し仕事があるみたいだけど、俺は関係ない仕事だったから一足先に帰ってきたんだ」

「そうですか。それは良かった」

 思っていたよりもすることが多かったんだね。それなら父さんがいても時間がかかって当然か。

 とりあえず解決したのなら良かった。

 そう思っていると深い深いため息を吐かれて、極められていた腕が解放された。

「あの」

「こんな状態で他人の心配をしている子を締め上げていたら俺が悪者だ」

 ……まあ、押さえ込まれたまま心配することではないな……。

 神官さんが離れてくれたので立ち上がって改めて向かい合う。神官さんは腕を組んで俺を見ていた。

 近くで見ると本当に綺麗な人だな。目がシパシパする。父さんとはまったくジャンルが違うけれど、顔が良い。

 ……今何か思い出しかけた気がするんだけど、なんだったかな。

「君の反応を見る限りリアムも君のことを認知しているね? 戦士が気にしていた『万能の鎧』の適合者がリアムの息子なら納得だ。そういうことなら君を庇ったシオンもグルか」

「……イエス・サー」

「まさかあの子が俺たちに18年も隠し事をし続けられるとは。驚きだよ……」

 驚くところはそこですか。父さんをあの子って呼ぶってことは、父さんよりも年上なのかな? とんでもない若作りだ、どう考えても俺と五つ離れていないくらいにしか見えない。

「いよいよボロが出そうになってシオンを巻き込んだということか。リアムがシオンには教えた君の存在を俺たちに黙っていた理由は?」

 えっと……。

「今更言ったところで、決死の追いかけっこが始まるだけだからと……」

「あのクソ野郎」

「すみません」

「君は悪くないから謝らなくていいよ」

 いや、まあ。そうなのですが。

 神官さんは再び深いため息を吐いて頭を掻いた。

「君は普段どこに住んでいるんだ?」

「あ、はい。レニアにいます」

「そう。君にもいろいろ確認しなければいけないことがあるけれど、ひとまずあの子だ」

 それだけ言って神官さんは魔方陣を展開して消えていった。

 ……これ、帰っていいのかな? そのうちレニアに神官さんが来るのだろうか? 父さんがちゃんと話し合ってくれればいいのだけど。

 どうしようか悩んでいると影からロボが現れた。キラキラの笑顔で尻尾が盛大に振られ、風圧である程度固められているはずの畑の土が舞っている。

「お兄ちゃん! すぐ来て!! ネコが大っきいお魚連れて帰ってきたんだよ!!」

 次の子は大きいお魚かぁー。


ようやく勇者パーティのメンバーが登場。

金髪翠眼の超絶美形で、見た目だけは完璧な神官様。

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