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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第106話 報告と責任

 朝食後に食休みとして仮眠を1時間だけ取って、元気いっぱいのロボの背中に乗る。アースとネコが膝の間に収まる。だいぶ南下してきたからかこの辺りの気温なら二人も外で平気なようだ。

 ボムは今日は瓶の気分らしい。ナイトは影の中。

「じゃあロボ、ドリアードが道を開いてくれているから、道なりに真っ直ぐ進んでくれる?」

「はーい。ドリアードってすごいんだねぇ」

「そうだね。樹の精霊らしいからね」

 ゆっくり走り出したロボが徐々に速度を上げて森を駆ける。今がどの辺りかわからないけれど、真っ直ぐに進めるならロボの脚なら昼過ぎには街に着けるかも知れないな。

「ぎゅ」

「うん?」

 途中、アースがソワソワとし始めた。肩に登ってきて後ろを窺っている。

「ギャォウ」

 ネコがアースを追って肩に登ろうとするのを止めていると、アースが膝に降りてきて今度はロボに声をかけた。

 それを聞いてロボが一瞬速度を落とし、再び加速する。

「お兄ちゃん、何かついてきてるって。……ぼくにも感知できた。たぶん聖獣だよ。ビクターにちょっと似てる」

 追ってくる聖獣?

 嫌な予感がして振り返ってみると、いました。

 外見だけは神々しい次男坊が元気いっぱい追いかけてきている。まあ、中心近くを突っ切って進んでいるのだと考えると遭遇の可能性はあったか。

「きゅい」

「倒してもいいかって」

 好戦的だな。しかし駄目です。

「あの子は駄目だ。女帝のお子さんらしい。倒すのも怪我をさせるのも駄目。ロボ、逃げ切れる?」

「任せてー。アース、ネコが危ないから影の中に一緒に入ってあげて」

「みゃん?」

「ガオ」

 アースがネコの首を咬んで影の中に入っていった。

「急ぐから、しっかり掴まっててね」

「わかった。お願い」

 ベルトを掴む手に力を入れて姿勢を低くする。俺の体重移動を確認したのかロボが一気に加速した。

 ロボの背中ギリギリまで姿勢を落としていたのにとんでもないGを感じた。普段は加減して走ってくれていたことを初めて知ったよ。

 これならユニコーンも撒けそうだ。

 しばらくそのまま進み、ロボが減速したのを感じて体を起こす。

「もうすぐ森の出口だよ。もう追いかけてきてないみたい」

「やっぱりロボは速いなぁ。ありがとう」

「えへへー。どういたしまして!」

 速度を上げて進んだおかげか、これなら昼前に街に着くだろう。しかし握力が死んだ。今もベルトを掴んではいるけれど感覚が無い。

 あのGを相手に握力だけで対抗するのはさすがにしんどいな。ベルトが千切れなくてよかった。いいお値段はしたけどこれ何革なのか聞いてなかったな。

 速度を戻したロボに呼ばれてアースとネコが膝に戻ってくる。なんだろう、ドライブ感覚で楽しいのかな?

 平地を抜けクンフォの街が視界に入る。行きもそうだったけれど、こちら側の門は空いていのは向かう先が女帝の森しか無いからか?

 一応ロボから降りて申し訳程度の列に並んでいるとヘンリーさんが出てきてくれた。

「律儀に並ばんでもいいのに。騎士に声をかけてくれればすぐに通すぞ」

「いや、さすがに駄目だろう」

 緊急時以外はきちんと並びます。視線は痛いですけど。

 真面目だなあ、と言いながらヘンリーさんが俺の後ろで大人しく立っているロボを見上げる。

「大きいな。フェンリルかい?」

「うん! ぼくはロボ。背中にいるドラゴンがアースで、化け猫(ケット・シー)がネコだよ」

 ちゃんと挨拶できて良い子だね。小さくなったロボの背中の上でぎー、にー、とアースとネコも挨拶した。

 ロボたちを撫でつつ名乗ったヘンリーさんと順番を待つ。

「首無し騎士でも驚いたが、これだけいると怖いもの無しだな」

「逆に私が足を引っ張ってしまっているよ」

「枷が無いと人の手に余る魔物たちだ。力を持て余して怖がられるよりいいだろう」

 確かに。ネコはともかく天災級と幻想級だからな。

 話している間に順番が来たので、門を抜けてヘンリーさんと一緒に冒険者ギルドに向かう。

「しかし早かったな」

「諸事情があって」

 諸事情の内容は恥ずかしいので語れませんけど。



 ギルドに着くとすぐにラピスさんが出迎えてくれた。

「申し訳ありません。ギルドマスターはまだ帰還しておりませんで」

 報告するだけだからギルドマスターがいなくても気にしないと伝えて、ハーピーの数の確認もあるので倉庫に移動する。倉庫に入ったところでナイトも姿を現した。

 スペースを大きく開けてもらってハーピーを鞄から出していく。

 俺が倒していたのは41体。ナイトたちが倒したのが6体で、全部で47体だった。

「では、群れはほぼ全滅ですね」

 ハーピーの数を確認してラピスさんが書類に何か書き込むのを待って声をかける。

「ああ。ただ、少し問題というか、報告しなければならないことがある」

 残したハーピーのことを黙っておくわけにはいかないよなぁ。

 首を傾げるラピスさんとヘンリーさんに両手を上げて降参のポーズをとる。

「ハーピーの住処で怪我をしていた個体を数体見つけた。明らかに他の個体よりも弱っていたこと、刃物以外での裂傷があったことから魔物同士の争いで怪我をしたと判断し、ドリアードに保護を任せた。彼女はポセイドンに庇護を求めると」

 報告すると二人が真剣な顔になり、ヘンリーさんが頭を掻いた。

「いろいろと突っ込みたいことはあるが、その判断を実行した根拠は?」

「勘だ。そうするのが正しいと思った」

 完全に勘です。あの子たちは大丈夫だと。ボムも警戒はしたけれど、ドリアードを追いかけた時のように止めることはなかったし。

 思うように行動しなさいって父さんにも言われているし。

「もし、残党ハーピーによる被害が出た場合は貴方が責を負うことになりますが」

 険しい顔をしたラピスさんの言葉に頷く。

「承知の上だ。我を通した以上、問題が起こった際は責任を持って私が対処に当たる」

 ドリアードに頼んではいるけれど、どう転ぶかわからないからな。賠償でも討伐でも、俺がやります。人的被害が出ないうちに頑張ります。

「ユウの判断が間違っていた場合の責でしたら私たちも負いましょう。本人の移動には時間がかかりますが私たちなら即時対応が可能です」

「ぼくも頑張るー」

 ナイトとロボがそう答えると二人が顔を見合わせてため息を吐いた。ヘンリーさんが眉間を揉み、ラピスさんが苦笑する。

「なんだか、リアムと話している気分だ」

 どうしてそこで父さんが?

「あの方も「それが正しいと思った」で行動を起こす人ですからね……」

「「万が一駄目だったら連絡してくれ、すぐになんとかする」って女帝を連れて来たくらいだしな。まあ実際、直後に現れたポセイドンの抑止として女帝は役立ってくれたが」

「結果的には良かったですが、女帝が暴れた場合連絡している暇なんてなく全滅していると思うのですけどね」

 ここの森に女帝連れてきたの父さんなのかよ!!

 突っ込むわけにもいかないので黙っていると、ラピスさんがこちらを向いて笑う。

「責を負っていただくと言いましたが、今回の依頼はそもそも全滅を目的としたものではありません。何かあればこちらのギルドが対応いたします。脅すような言い回しをしてすみません」

「いや、当然の警告だろう。こちらこそ独断で動いてすまなかった」

 本当にやらかす前にちゃんと注意してくれるのはむしろ優しいと思う。全滅が目的の時はちゃんとしよう。

 反省しているとヘンリーさんがビシッと指を差してきた。

「気をつけろよ。シオンの顔に泥を塗りかねないぞ」

「何故シオンさんが出てくる?」

「ユウさんの推薦者はシオン様ですからね」

「推薦者?」

 とは?

 本気でわからないので首を傾げると逆に首を傾げられた。

「本気か?」

「何が?」

 主語をください。

「ユウさんを二つ名持ち候補として推薦したのがシオン様なのですよ」

 主語をもらってもわからなかった。

 まず二つ名って推薦制なの? 二つ名がただのあだ名じゃないって聞いたときにきちんと訊いておけばよかった。

「推薦者と本人にどのような関係が生まれるのですか?」

 ナイトが代わりに訊いてくれた。

「簡単に言えば、実力を保証したことになる。ユウの場合は実績がほぼ0の状態だったから実力の保証と併せて本来求められる信用をシオンが肩代わりした形になっているな」

 実績がほぼ0だったのは確かに。二つ名が付くまでに倒していた魔物はコボルトとケルピーくらいだった気がする。

 信用の肩代わりとかできるのかー……。

「つまり、私が信用を失うとシオンさんも信用を失うと」

「そういうことだ」

 あー、はぁん? なるほど? 仮面越しだけれど両手で顔を覆う。

「……肝に銘じておく」

 その泥は塗っちゃいけないやつですね!! 思ったよりもしっかりと迷惑をかけてしまうやつだ!! 本気でちゃんとしよう!

 嫌な汗が流れてきたところで、作業していた職員が俺たちに近づいてきた。

「ユウさんだったな。ハーピーの素材はどうする?」

 素材か。

 とりあえず今回の件は問題が無いということだし、気持ちを切り替えて考えよう。

「ハーピーから採れる素材はどういったものが?」

「羽根と骨、爪、あと肉だな」

 肉も採れるのか。鶏肉なんだろうな。

「ハーピーの肉はギルドに卸すと問題あるだろうか?」

 高価なようならウィルに怒られるよな。

 訊いてみるとラピスさんが腕を組んだ。

「あまり出回るようなものではありませんが、高級品ではないので問題ないと思いますよ」

 そうなんだ。

「では肉をいくつか持って帰りたい。持ち帰る分以外の肉はこちらのギルドに卸してもらって、他の素材は買取りで頼む」

「了解した。いつ発つ予定だ?」

 考えてなかったな。サウスを待たせているし、ある程度は急いだほうがいいか?

「部屋を用意しますから、とりあえず本日は泊まっていかれませんか? 殆ど休み無しで動かれていたでしょう」

 確かにこの2日ほぼ寝てないな。

「ではお言葉に甘えよう」

 ラピスさんの言葉に甘えさせてもらおう。出発は明日朝にしようかな。ゆっくり風呂に入りたい。

 静かに伏せて待っていたロボがアースとネコを頭に乗せたまま顔を上げる。

「お兄ちゃん、ぼく森で遊びたい」

「森で?」

 ロボがこんなことを言うのは初めてだな。

「うん。お仕事終わるの森の外で待ってたから、森の中探検したい」

「ギー!」

 アースも探検したいか。せっかく女帝の森まで来ているんだし、外で待っているだけだとつまらなかったかな。

 しかしあまりサウスを待たせるのも良くない。

「ナイト、サウスに連絡だけ頼めるか? 帰ってから詳しく説明には行くが、対応が済んだことを先に伝えておいてほしい」

「承りました」

「やったー!」

 跳ねて喜ぶロボとアースと、たぶんわかってないまま喜んでいるネコを落ち着かせる。遊びに行くのは明日になってからだからね。

「そんじゃあ、とりあえず明日の朝までに解体できる分の肉を用意しておくよ。15体くらいかね」

「わかった。お願いする」

 依頼料は素材の買取り代金と合せて明日の朝もらうことになったので、ひとまず用意してもらった部屋で休ませてもらうことにしよう。

 ヘンリーさんを見送って、受付でラピスさんから部屋の鍵を受け取る。

「そうだ、この街に孤児院はあるか?」

「この街には無いですね。子供が独り立ちするには難しい土地ですので、この街の孤児は近隣の街で育ちます」

 そんなことがあるのか。

 理由を訊いてみると、街の近くに現れる魔物ですらバイコーンやケンタウロスらしい。そりゃ子供には厳しい。冒険者や傭兵だけでなく商人でもだいぶ胆力が要りそうだ。

「孤児院がどうかされましたか?」

「あるなら寄付をしておこうと思ったのだが、無いなら仕方ない」

「それでしたら、ギルドとの連名でよろしければ送れますよ。受け入れ先の街に定期的にギルドからも寄付をしているので」

 そうなのか。

「では、そうさせてもらおう。銀貨50枚を頼めるか」

「承知いたしました。そちらは買取り代金から引いておきますね」

「ああ」

 他の冒険者も増えてきて視線を感じるようになってきたので今度こそ部屋に引っ込もう。


後ろ楯の重圧がすごい主人公。


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[気になる点] 別に次男坊は倒してしまってもかまわないのでは?襲ってきてるのは向こうだし、弱肉強食が自然の摂理てしょう。
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