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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第102話 ハーピー討伐依頼

 少し予定外の出来事はあったけれど、そこまで時間がかからなかったのでサウスの想定どおりに昼過ぎにクンフォの街が見えてきた。

『ナイト、もう少ししたら街に着くから呼ぶかも』

『承知いたしました。準備しておきます』

 お願いします。

 サウスがゆっくりと降下態勢に入り、高度を下げていく。こうやって安全に降りているとさっきの急降下がどれだけ危なかったのかがわかるな。

「ユウ、入り口にヒトが集まっているぞ」

「ぷー」

 サウスはともかくボムにも見えているのか。目がいいなぁ。俺にはまだ全く見えない。

「おそらく、私たちのことを連絡してくれているので迎えに来てくれているのだと思います」

 サウスが降りるなら副ギルドマスターや騎士団がいるんじゃないかな。うっかり別の魔物だったら大変なことになるし。

 そう考えているとあっという間に門が見えてきた。確かに、人がたくさんいる。

 門から少し距離を空けて着地したサウスと一緒に門に近づくと向こうからも近づいてくる。ボムは肩の上で大人しくしている。

 鎧を着た騎士たちと……角の生えた人だ。ギルドの制服を着ているから職員なんだろうけれど、見たことのない種族の人だな。

「連絡は来ていましたが、本当にグリフォンに乗っていらっしゃるとは……」

 角の生えた男性が苦笑しながら手を差し出してきた。すごい綺麗な瑠璃色の角だな。なんていう種族の人なんだろうか。

「急がせてしまい申し訳ありません。私はこの街の副ギルドマスター、ラピスと申します。ギルドマスターは現在不在のため名代としてご挨拶を」

「はじめまして。名は……知っているだろうが、私はユウと」

 角のラピスさんと握手をすると、横から騎士の男性も手を伸出してくれた。

「私は駐屯騎士団長のヘンリー・マセルトだ。トリヌの街での救助、改めて礼を言う」

 駐屯騎士団長のヘンリーさん。握手をしながらお礼を言われた。トリヌの街というのはさっきの街か。

「そちらでのことは彼に。彼が気づいてくれたから間に合った」

「見えた以上、放っておくわけにはいくまい」

 サウスを差すと、横で静かにしていたサウスにそう言われた。

「その優しさのおかげで最小限の被害で押さえることができました。ありがとうございます」

「うむ。まあ、被害が少なかったなら何よりだ」

 ははは。照れてる。

 翼を擦り合わせたサウスが顔を寄せてきた。

「ユウ、私は山地に戻る。一応警戒範囲を広げて飛んでおくが、解決したら山に寄って教えてくれ」

「承知しました。ここまでありがとうございます。それで、お礼と言ってはなんですが」

 作っておいた魔石を取り出す。

「……背中で何かしていると思ったら」

「お礼になるものが浮かばなくて」

 魔石はボムのご飯になるみたいだから、サウスも食べられるかと思って。スレイプニルの肉はここで取り出すにはちょっと。生肉一抱えは俺の人格が疑われる。

 手の平いっぱいの魔石を差し出すと、サウスがガリゴリと魔石を食べた。やっぱり食べられるのか。

「ふむ。破格の報酬だな。気合いを入れて警戒するとしよう」

 ありがとうございます。羽毛をモフモフさせてもらってからサウスが飛び立つのを見送る。いやー、速いな。俺あの背中に乗っていたのか。

 サウスの姿が見えなくなったので二人を振り返るとヘンリーさんが頭を掻いていた。

「いやー、しかし。大丈夫だと聞いていても真体のグリフォンと真正面から対峙するのは肝が冷える。新兵を退かせておいて正解だったな」

「そうか?」

「そうだぞ」

 そうだったろうか? 最初に面と向かったのがウェストだったから感覚がおかしくなっているのかも知れない。

「とりあえず街に入りましょう。詳しい話はギルドでいたします。資料もありますから」

「了解した」

 ラピスさんに促されて門に向かう。

『ナイト、街に入るからこっちに来られる?』

『はい』

 同じ轍は踏まないぞ。しっかりナイトのことを紹介しておかないと。影から現れたナイトに騎士たちは驚いていたようだけれど、さすがにラピスさんとヘンリーさんは驚かなかった。

「本当に首無し騎士を連れているのか」

「連れているというか、むしろ世話を焼かれている。ナイトだ」

「はじめまして。ナイトと申します。よろしくお願いします」

 二人と挨拶をしてナイトも一緒に街に入る。レニアよりも街が無骨な印象だ。なんというか、建物が大きくて頑丈そう。武具工房もたくさんあるように思う。

 俺が街を見ていると、ナイトがラピスさんに並んだ。

「しかし、珍しいですね。鬼種とは」

「首無し騎士よりは珍しくないですよ」

 ん?

「きしゅ?」

「彼は魔物ですよ」

 ナイトがラピスさんを手で差して言う。マジ? きしゅ……鬼種? だから角が生えていたのか。

 魔物がギルドの副ギルドマスターなのすごいね。

「レニアの街で私があまりにも自由に動けると思っていましたが、貴方という前例があったからなのですね」

「多少は関係があるかも知れません」

 そうだったのか。契約していたら魔物でも自由に動き回れるものなのかと。いや、装具が必須なことを考えると本来はある程度規制があるのか。

 ギルドに着いて、ギルドマスターの部屋に通され、ソファーに座るとヘンリーさんが巾着袋を置いた。

「これは?」

「トリヌの街での救助に対する謝礼だ。ハーピーの素材は小屋や畑を直しても釣りが出るからな。このくらいは受け取ってほしい、とのことだ」

 本当に要らなかったんだけど……。ウェストにもお礼は素直に受け取れって言われたしなぁ。

「謝礼ということなら有難く受け取っておこう」

「素直でよろしい。まあ断られたら懐にねじ込むつもりだったが」

 意思がお強い。お金も送ったりできるのか? それとも立て替えているだけ?

 俺が鞄に巾着を仕舞うのを待ってラピスさんが机に地図を広げる。

「では、早速ですが依頼についての話に入ります。内容としてはハーピーの討伐、住処等の調査は既に他の冒険者の方々によってほとんど完了しています」

 もしかしてレニアの掲示板で見た女帝の森の調査ってこの調査だったんだろうか。

 ここ、と印を付けられた所をラピスさんが指差す。女帝の森近くってことだったけれど完全に森の中に入っているな。まあかなり端っこだけれど。

「森を大きく迂回して進んでいただくのが一番速いかと思います」

「首無し騎士やフェンリルがいるなら負けないだろうが、魔物が向かってくるだろうからな」

 一々止まるよりは大回りでも邪魔されずに進んだほうが速いってことか。主が強いってことは棲息している魔物も他よりも強いんだろうな。

「規模としては50体前後の群れが形成されています。行動範囲もある程度特定されていたのですが、先日のゼウスの行動に触発されたのか数日前から一気に範囲が拡大しました」

 んあぁー。ゼウス!

「さすがに街や村が襲われることは無かったから至急の依頼にはしていなかったのだが……様子見ばかりで戦闘を避けさせていたのは失敗だったか」

 バッチリ街襲われましたね。

「逆上させないための措置でしたが、増長させてしまいましたね」

 両手で顔を覆ったヘンリーさんにラピスさんが眉を下げる。

「トリヌは距離があるから到着が遅れていたようだが、既に近くの農村や小さな街にはこの街にいた高ランクの冒険者に向かってもらっている。明日、明後日にはトリヌでも騎士団と協力して撃退が可能だろう。ユウはハーピーの討伐だけに集中してもらえばいい」

 迎撃態勢が間に合わないくらい急に行動範囲が広がったのか。まあ、手を打ってあるなら他を俺が気にする必要はないだろう。サウスの羽根もあるし。

「私やロボ、アースが近づきすぎるとまた行動パターンが変化する可能性がありますね。途中までは送りますが、二手に分かれましょうか」

 ナイトが地図を指差した。

「わかった。討ち漏らすことがあるだろうし、それを警戒しておいてくれ」

「承知しました」

「ぷー?」

「ボムは魔物に警戒されないようだし、私についてきてくれるか?」

「ぷ!」

 飛ばれる以上、全部倒すのは難しいだろうな。ペリュトンのように地上に向かって来るように指示されているわけじゃないなら、さすがに機動力で負ける。

「ハーピーは昼行性ですので、夜にはほとんどが住処に戻りますからそこが狙い目でしょう。全滅とは言いませんが、30体を目処に討伐をお願いします」

 全滅でなくていいのは有難い。

「了解した」

 依頼書にサインをして、正式に依頼を受ける。

「本日は泊まっていかれますか?」

「いや、このまま出る。警備が間に合いそうだとしても速いほうがいいだろう」

 地図を見ると、迂回するとロボの脚でも崖まで1日かかりそうだし、途中から俺自身が走るとなると明日の夜に間に合うかどうかってところだろう。何があるかわからないし、動ける内に動いておこう。

 善は急げ。



「ユウ、昼食は?」

「あ、食べてない」

 街を出て森を目指そうと思った時にナイトに訊かれた。

「では、昼食にしましょう」

 そう言って差し出されたのは肉まんだった。……この世界で肉まんは見たことがないなぁ。

「作ったの?」

「はい。片手で食べられるボリュームのあるものを考えていまして。肉巻きおにぎりよりはこのほうがいいかと」

 肉巻きおにぎりはちょっと食べにくいでしょう。手がべったべたになるよ。

 座って食事を取る。

「ぷー」

 肉まんには興味を示さずに分かれて漂っていたボムがコンソメスープの皿に寄ってきた。

「飲んでみますか?」

「ぷ」

 ナイトに訊かれて元気に応えている。意外と言葉が通じなくともなんとかなるものだよな……。

 今まで普通のご飯には興味ゼロだったのに、成長して変わったのかな? ナイトが平皿に注いでくれたスープに集まったボムたちはみるみるスープを飲んでしまった。

「ぷー!!」

 飲み終わってからナイトのそばでポンポンと跳ねている。相当気に入ったようだ。

「お気に召したようで何よりです。今晩からはボムにもスープものを出しましょうか」

「そうだね」

 具はまだ無理みたいだけど、汁だけでも美味しいからね。

 食事を終えてからバターに来てもらい女帝の森まで進む。バターは森に入りたくないみたいで、一定距離を空けて止まった。振り返って俺を見てくる。

 ナイトが影から出てきたので俺のバターから降りる。

「これ以上は嫌かな」

「そうですね。元々この子は戦闘を得意としていませんし」

 強い魔物がいっぱいいるならナイトが近くにいても怖いものは怖いよね。送ってくれたバターを撫でてお礼を言って地球に送り返す。

「日も暮れてきましたし、少し中に入って拠点を作りましょうか。ロボたちには私たちの所に帰って来るように言っていますから」

 はーい。

 ナイトが簡易結界を張ってくれたので天幕を用意する。焚き火や天幕内の用意も完了したところでロボたちが帰ってきた。

「ここどこ?」

 街の中に帰ると思っていたら森の中で驚いたらしい。ブンブンと尻尾を振って匂いを嗅いでいる。アースとネコも不思議そうに地面を掘っている。

「女帝の森です。新しい依頼があって移動してきたのですよ」

「そうなの? どうやって?」

「サウスという、南の山地の主のグリフォンに送ってもらったんだよ」

 そう説明するとロボがジッと俺を見てきた。

「グリフォンって飛ぶひと?」

「そうだよ」

「お兄ちゃん飛んでもらったの?」

「うん」

 ジーッと俺のことを見てくる。もしかして乗せてもらったのが羨ましかったのかな?

「依頼が終わったら報告に行くから、乗せてくださいってお願いしてみるかい?」

「うん!」

 いい笑顔です。アースとネコもキラキラとした目でこちらを見ていた。うちの子は甘えるのがうまいなぁ。


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