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勇者の息子は地球出身  作者: 潮柳
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第99話 レニアへの帰還

 しばらく街を眺めていたアースが一鳴きして影の中に入っていった。懐炉のおかげで暖かいからロボたちの所に遊びにいったのかな?

 帰りに八百屋に寄って野菜を調達してギルドに戻る。ドラゴンフルーツやパッションフルーツ、スターフルーツとかも売っていたのでうっかり買ってしまったけれどドリアンに手を出す勇気は無かった。

 ギルドのダイナーに戻ってナイトに野菜を渡しているとフィニスさんがやってきたので昼食を一緒することに。

 テンカレのダンジョンのことを訊かれたので簡単に説明して、ペンペンたちのことがわかったか訊いてみたけれど、まだガンジさんからも帝国からもなんの発表も無いらしい。再びテンカレに現れた父さんがそのまま大雪の対処に消えたそうだから仕方ないか。

「テンカレはあの大雪で大丈夫だったんだろうか?」

 ナイトは普通にガンジさんから紹介状を持って帰って来ていたみたいだけど。

「始めから大雪が降る地域は対策しているからね。テンカレくらいはまだ平気らしい。もっと北のほうは対策の意味が無いくらいだから勇者が出動してるんだけどね」

 大変そうだなぁ……。というか、帝国国土すごい広いな。

 そのあとレニアの訓練場を改築した話になり、実際に訓練場で魔法で簡単に形を作りながら説明しているうちに夜になっていた。

 夕食をとって部屋に戻り、ロボたちが今日はどんな所で遊んできたのだと話してくれるのを聞きながらのんびりする。

「雪遊びができるほどとは。アースはいいものをいただきましたね」

「うん。職人ギルドの人はさすがだね。短時間でこんなにちゃんとしたものが作れるんだもん」

 ギーと嬉しそうに懐炉ケープの上に乗っているアースを撫でつつ、ふとロボのエプロンに埋まっているネコを見た。

「そういえば、ネコの装具どうしようか」

「そう言われると……何も言われていませんが、していたほうがいいのでしょうか」

「ジェシカさんは大型の魔物には装具がいると言っていたけど」

 ナイトが作ったなんちゃってハーネスは大きくなったときに千切れてしまったようで、それ以降ネコは何も付けていなかったんだけど特に何か言われたりはしなかった。まあ今の状態だと間違いなく小型の魔物だもんね。

 でも他の子が付けているのにネコだけ何も無いのもな。ボムは付けようが無いから仕方ないけど。

 翌朝、鍵の返却と一緒にフィニスさんにネコの装具について確認すると本人が付けたくないなら付けなくてもいいとのことだった。

 やはり中型以下の魔物は装着の義務は無いらしい。ただ同じ小型といってもさすがにドラゴンは特例扱いなのでアースは装具が必須だった。

「装具自体が重くて、偵察とかを担当する小型の魔物だとそれだけでへばっちゃったりもするからね」

 確かに。軽い素材を使っているとはいえアースの装具をネコが付けると重いだろうな。そのうちネコが大きくなったら改めて考えよう。

「じゃあ、また何かあったらお願いするよ」

「ああ。気軽に呼んでくれ」

 フィニスさんとデオンさんに別れを告げて、ナイトはネコを連れて影に入った。横を歩くロボとマントの中に入ってきたアースを連れてギルドを出る。今日はようやくいい天気だ。

「アース、暖かいんじゃないのか?」

「ぎゅー」

「それはそれ、だって」

 甘えたいのかな。ケープを被っていても襟の中でゴロゴロと満足げなアースに笑いながら街を進む。

 ゆっくり見てみると気づいていなかった店とか結構あるな。文具を中心に売っている店を覗くと、木簡があった。割札として見たことはあるけど、結構日常的に使っているのかな。

 パピルスもあるけれど、木簡よりも比較的お高い。真っ白いものは更に値が張る。和紙みたいなものもあったけれど、これまたお高い。この世界で本をあまり見ないのは紙が高いからかな?

 木簡やパピルスに書くならインクよりもこの世界の墨の塊のようなペンのほうがいいんだろうか。

 ソロバンみたいな物もあったけれど、もうソロバンの使い方なんて覚えていないのであれが本当にソロバンなのかもわからない。とりあえずパピルスの巻物とペンを買ってみた。

 屋台で串焼きのケバブが売っていたので買ってみた。串焼きはシシケバブだっけ? ケバブサンドもあったのでそれも。今日の昼ご飯にしよう。

 すっかり雪が溶けた広場の噴水の縁に座ってケバブサンドを食べる。スパイスが効いていて美味しい。ナイトもケバブサンド、ロボたちにはシシケバブを串から抜いて皿に盛った。ボムたちも瓶から出して日光浴させておく。

 昼を回ったのでミゲルさんの店に向かった。店に入るとミゲルさんが俺に気づいて近づいてくる。

「いらっしゃいませ。完成しておりますよ」

 やったー。

 ミゲルさんが持ってきてくれた皿は、ぱっと見は縁に金色のラインが入っただけのように見えたけれど、皿の内側にスズランの花冠の絵が描かれていた。底にもスズランが描かれていてとても可愛らしい。

「すごいな、とても綺麗だ」

 派手すぎず華やか。

「お気に召していただけたようで何よりです。お祝いの絵ということで職人が張り切っておりましたから」

「ああ。きっと相手も気に入ってくれる。職人の方に礼を伝えておいてほしい」

「勿論でございます」

 それにしてもすごいな。こんな短期間で完成していた皿に絵を付けられるなんて。桐の箱にも入れてもらい、サービスでリボンも掛けてもらった。お祝い品感が増したな。

 代金を払い、無理を言ったことを詫びて店を出る。

 そのまま外壁に向かい、門を出たところでロボが大きくなった。

「まだ結構雪が残ってるな」

「ねー。見てみてお兄ちゃん、この雪固いんだよ」

 溶けて凍っちゃってるのかな? 街道横に積まれている雪はロボが登っても脚の半分も沈まない。たぶん、大きいロボって1トンくらいあると思うんだけど……雪ってそこまで固くなるの? ほぼ氷じゃん。

 ロボの背中に登って、頭を撫でる。

「じゃあ、レニアまで頼むな」

「任せてー!」

 元気に返事をして走り出した。



 3日走って、あと数時間でレニアに着くというときにロボがゆっくり減速した。

「どうかした?」

 クンクンと空気を嗅ぐロボに声をかけると頭を回して辺りを伺う。

「お兄ちゃん、街道に出ていい?」

「もうレニアに近いし驚かれないとは思うけど……どうしたの?」

「ビクターの匂いがするの!」

「そうなの? じゃあ、行ってみようか」

「うん!」

 バッと崖を飛び降りて街道を目指すと街道に出る少し前にビクターの白銀の毛が見えた。ビクターもロボに気づいていたのかこちらを向いていた。

「ビクター!」

「ケン!」

 呼びかけに応えるように鳴いたビクターの前にロボが到着する。ジェシカさんが目を丸くしていた。横から顔を覗かせて挨拶をする。

「ジェシカさん、久しぶり」

「ユウさん! お久しぶりです! ……ということは、この子はロボちゃんですね? 母から聞いてはいましたが、本当に大きくなりましたね」

「久しぶり、ジェシカさん!」

「はい。お久しぶりです」

 ロボに続いてアースも鳴いて襟から顔を覗かせる。ビクターともそれぞれ挨拶をして並んで歩き始める。

「ジェシカさんは今から街に?」

「はい。今日の採取は完了しました」

「じゃあ一緒に帰ろ!」

「ケーン!」

 嬉しそうに言うロボにビクターが応えて一緒に街に向かう。門に近づくとなんだか帰って来たなぁという気持ちになる。一番最初の街だったからか、この街が一番落ち着く。騎士の人にも速かったなぁと言われつつジェシカさんの提案でハンナさんの店に先に寄ることに。

 ロボの装具が完成しているらしい。

「こんにちはー!」

「はーい。あら、ロボちゃんにユウさん! ナイトさんも」

「久しぶり。ロボの装具が完成していると聞いて」

「はい。できていますよ。細部を微調整するので、奥にお願いできますか?」

「わーい!」

 尻尾を振りながらロボがハンナさんの後に続いて作業場に入っていくのに笑いつつナイトと続く。アースとネコはジェシカさんとビクターと表で遊んで待っているとのこと。

 こちらです、と見せてもらったのは綺麗な白い革の装具だった。メインの留め具に首輪が使われているからか、差し色に栗色の革が使われている。メリハリがあって格好良い感じ。

「今は真っ白ですが、使っていく内にアイボリーくらいの色に変化します。その頃にはロボちゃんの毛の色にも馴染むかと」

「ああ」

 実際に付けてみてベルトの長さを確認し、俺が掴むベルトの長さも調節する。技術の粋を詰め込んで作りたいとのことだったけれど、本当にすごい。機能性を重視しつつデザインも拘っているのだろう。

 取っ手のようだった俺が掴むベルトもデザインの一部のようになっていた。掴むときだけ引っ張り出せる。

「格好良いなぁ。男前だぞ、ロボ」

「色合いは可愛らしいですがデザインと形が格好良さを出していますね。フェンリルの勇ましさに合っています」

「かっこいいー?」

 可愛いと言われることが多いロボは格好良いと言われることが嬉しいようだ。尻尾がブンブンと振れている。

「動きにくさが無いようでしたらこれでこちらでの作業は完了です。どう? ロボちゃん」

「うんっとね……平気! 今までのよりも軽い気がする」

 作業場を歩き回ったロボが尻尾を振りながら感想を伝える。

「重量自体は重くなっているのだけど、より体に合ったサイズにしたことで動きやすくなったから軽く感じるんだと思うわ」

「そっか。ありがとう、ハンナおばちゃん。おじちゃんたちも」

 職人たちに向かって礼を言うロボはいい子だな。手を振ってくれるみんなも笑顔だ。

「以前の物は引き取りましょうか?」

「いや、万が一壊れた場合などに備えて持っておきたい」

 外していた今までの物を受け取って鞄に仕舞う。料金を払って、改めて俺からもお礼を言って店を出てジェシカさんたちと合流する。

「わぁ、ロボちゃん更に格好良くなりましたね!」

「うふふー。ぼくお兄ちゃんだから!」

 お兄ちゃんと格好良いことの繋がりはよくわからないけれど、ロボが満足そうなのでいいです。アースとネコ、ビクターが新しい革細工の匂いを嗅いでいるのを一旦止めて移動を促す。

「サリカさんの所に行って、術式を作ってもらおう。獣舎にも入れなくなってしまうからな」

「はーい」

 歩き出したロボたちの後ろをついて歩く。

「ネコちゃん、ユウさんの随獣としては珍しいですね」

「そうか?」

「はい。えっと、その、無邪気一直線というか。ロボちゃんやアースちゃんはしっかりした子ですから」

 どこかに飛んでいこうとしてロボに咥えられたネコを見てジェシカさんが笑う。見た目は捕食シーンだけどネコがご機嫌で鳴いているのでいいのだろう。

 ナイトが肩を竦めた。

「まだ赤ちゃんですからね」

「そうなんですか?」

「ええ。まだ一語文で話していますから。多少単語は増えましたが」

 あ、今のでも増えてるんだ。

 サリカさんの店で装具に術式を刻んでもらい、代金と一緒にお祝い品を渡す。

「いいのかい? これ、かなりいい物だろう」

「祝いごとなんだから気にしないでくれ。それに、これからも定期的に世話になるだろうから、心付けだと思ってくれたらいい」

「そうかい? では遠慮無く。もうすぐあいつも帰ってくるから改めてお礼と挨拶に行くよ」

 いえいえ。そういえばサリカさんのお相手さんどんな人なんだろう? 怖くない人だといいな……サプライズキャンセルしてしまったのを思い出してしまった。

 そろそろ日が暮れそうになってきたので冒険者ギルドに向かう。ホールに入るとアリサさんがカウンターにいた。

「ユウさん! おかえりなさい」

「ただいま。ヴァネッサさんはいるかな?」

「はーい! すぐ呼んで来ますね」

 ジェシカさんが以来の完了をカウンターで手続きしているのを見ながら待っているとアリサさんがヴァネッサさんと一緒に戻ってきた。

「おかえり! 色々訊きたいことがあるから、夕食を一緒にどう?」

「勿論。ジェシカさんとアリサさんもどうだ?」

「ではご一緒させていただきます」

「ギルマスの奢りですか?」

「んな訳ないでしょ」

 ははは。賑やかだなぁ。


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