魔法の練習
「部屋はこちらになります。」
自分は屋敷の自分の部屋に荷物を運ぶため、サムさんに案内してもらっていた。
弟子になるということで、この豪邸に止めさせてもらえることになったのだ。
「御食事は、19時からとなりますのでそれまでおくつろぎください。何か質問はございますでしょうか。」
「あの、山ってなくなってしまっても大丈夫なんですか?」
フェルナ様は、魔法をぶっ放し山を消してしまったのだ。字面にすると、凄い変に感じるがそのまま山がなくなってしまったのだからそれ以外に表現のしようがない。
「えぇ、大丈夫ですよ。飛び立った土はフェルナ様のお弟子さん達が直しますので明日ぐらいには直っていると思いますよ!それでは、ごゆっくり。」
へーーーやまってなおせるんだー。
思わず、棒読みになってしまう。
自分は、何か違う世界に来てしまったんだろうか?
と思うぐらい規格外すぎる。
でも、自分の中でこれからあんな魔法を教えてもらえるのかとドキドキする気持ちもある。
時間になり、サムさんに呼ばれて食事を取るための部屋に行くとそこにはとても大きなテーブルがありそこにフェルナ様が座っていた。
「どうぞ、どうか致しましたか?」
椅子をひきながら、サムさんは聞いてくる。
「いえ、あのーお弟子様はいらっしゃらないんですか?」
「えぇ、最近はフェルナ様はお弟子様をとってらっしゃいませんでしたので。」
「リアム、別にタメ口でいいんだぞ。これから、過ごしていくのにそんなんだと大変だろう。楽にしろ。」
「あっ、ありがとうございます。フェルナ様」
「フェルナ様じゃない、先生と呼べ。」
「はい、先生。」
「うむ。」
食事は、コースのようになっており
ライトブアのちょっとした煮込んだものや
ちょこっとずつ皿にのったサラダ、カプシュプという魚介類の入ったスープ
などが次々とくる。
こんなに美味しすぎる物があってもいいのだろうかと思うほど美味しい。
「リアムよ、お前は魔法師になりたいんじゃろう?
なぜ、なりたいんじゃ?お前が今までどう思って過ごして来たのかそれを知りたいんじゃ。」
「自分は、もともと生産職系の仕事に着くんだろうなと最初思ってたんです。運動も嫌いだし、人と話すのも苦手でした。でも、神が出した答えは戦闘職だった。それで嫌々ながら練習をし始めたんですけど、
すぐ耐えられなくなって…」
「逃げ出したんですよ、僕。で死のうとまで考えたんですけどでもある人が助けてくれて自分を変えてくれた。だから、その人のために頑張ろうと思ってやって来たんです。まぁ、魔法師が適正職業として出るとは考えもしませんでしたけどね。」
雷海竜のブリャーニ焼とって言う意味のわからない食べ物が出てくる。雷海竜ってあの災害級と言われる竜じゃないの?えっ?食べ物だっけ?
うまっ 意外と淡白でうまい。
「そうか、それならその人のために頑張らないといけないな。」
「はい!」
「明日から鍛えてやるから、しっかり今日は休めよ。」
「あら、フェルナ様が教えようとするのは珍しいですね。」
「うむ、こいつは気に入った。動物に躊躇せず突っ込んで行って戯れられる奴だからな。」
「すいません。勝手に触っちゃった。」
「いいのじゃ、いいのじゃ。」
そうして、その日は自分の部屋に戻り眠った。
もちろん、その後にも凍らせたフルーツやお肉
それにケーキも出てきた。
サンダードラゴンの肉は超美味しかったと言うことだけは伝えておきたい。
翌朝、サムさんに呼ばれて朝食を取り、フェルナ様と共に広場に出た。
「いいか、魔法というのは魔力が基礎となる。」
「この、魔力というのを自分の中で作り出しそれを放出することで魔法を放つことができる。
しかし、自分が作り出すにしても限界がある。
それは人によって変わってくるのじゃが、いずれにせよ限界というものは存在する。
そうすると、昨日のわたしのような魔法は打つことができない。」
「そこで使うのが空気中の魔力じゃ。魔力は空気中にも含まれておるんじゃが、この魔力をどう自分と絡めていくかがわたしは重要だと考えておるんじゃ。」
「まぁ、まずは自分の中で魔力を作り上げるところから始めようか。」
「はいっ」
「心臓にまず手を当ててみろ。そして、目を閉じて
心臓の上に水のようなものがあるイメージを思い浮かべてみろ。」
手を胸に当て、想像しているとじわじわじわと液体が溢れ出す感じがした。
これが魔力か……
「よし、魔力を出せるようになったみたいだな。
ならそれをわたしのように丸く固めてみろ」
と先生が見せてくれる。
もちろん、自分は胸の中にあるその魔力を固めようとするのだがなかなかうまくいかない。
なんというか、本当に水を手で固めようするようなものなのだ。当然固めようとしても次から次から零れ落ちてしまう。
何回か休憩をはさみながら、やっとのことで
雪玉のような魔力を完成させることができた。
「………できた!」
「よし、じゃあ次のステップだ。手を貸してみろ。」
手を前に出すと先生は手をつかむ。
「うわぉっ!」
次の瞬間、自分の中にあった魔力が一気に手に引っ張られ出て行く感覚になる。
「よし、通ったな。」
自分一人で練習しても、魔力を外に出すことは可能だけどそれこそ川のように蛇行を繰り返して出てくる形になる。
一度通ってしまうと、そこを魔力が流れるようになるので無駄が多くなる。
そのため、とりあえず一本まっすぐ魔力の道というものを作ってくれたのだ。
前には水の塊が浮かんでいる。
それは完全に球体ではなく歪な形をしていた。
「それを前に飛ばしてみろ。」
「えぃっ!」
水の塊が前にまっすぐ飛んで行き、木に当たり
ぱしゃっと音をたてて飛び散った。
「これが、ウォーターボールと言われている奴だ。」
「これをどんどん極めていくと言う練習方法が一般的なのだが、リアムにはこれを自在に扱えるようにして欲しい。」
というと、
先生が出していた球体を棒状にしたり四角形にしたりいろんな形にぐにゃくにゃ動かす。
自分もやってみようとするが、難しい。
まず、円形で固めているのにそれを粘土のようにこね回すのは大変なのだ。
雪玉をぐにゃぐにゃにするのは無理なように、
魔力がぼろぼろ落ちてしまう。
そして、なくなってしまった。
「これを極めれるようにまずは練習してみてくれ」
結局、この日は全く形を変えることができずに終わった。