リバーシ
「た、タイガーさん、お気になさらずに。考案者なら強ければならないなんて決まりはありませんし、それに、ゲームが弱くてもそんな困ることは…」
「…」
リリーナが俺を励ましてくれている。が、いい言葉が出てこないみたいだ…
因みにリリーナとは更に2回程したが、2回とも負けた。結果的に5連敗を喫した。励ましてくれてる割に、ゲーム自体は一切手を抜いてなかった。加減無用かよ…
そんな訳で、軽くヘコんでいる俺を他所に、
「それ!」
「!そうきたか…」
「どう⁉」
「ならば…ココだ!」
「あぁ!そこがあったか…」
リバーシにすっかりハマっているレオとローラ。
そおこうしているうちに、
「夕飯が出来たぞー!」
と、シェフが皆を呼んだ。
リバーシに夢中になって、時間が経つのも忘れていたが、何だかんだで夕食時だ。
「うお~!」
「待ってました!レオくん、続きは食べ終わったらね⁉」
「おうよ!」
と、リバーシを中断して食事に向かうレオとローラ。
いやいやいや、昼にあんだけ食ったのに、もうそんなにも減ってんのかよ…
「レオくん、ローラちゃん。お昼に沢山食べたでしょ?…」
リリーナも同じ心境だった。
「ん…トランプやリバーシで頭使ってエネルギー消費したから、腹減った!」
「あたしも!頭も身体も、使うとお腹空くからね⁉特に糖分は欠かせないもん!糖分は力の源だからね‼」
そう言ってローラは厨房のシェフに向けて、
「と言うわけでシェフ!デザートもお願いね⁉」
「へ、ヘイ!」
困り顔で返事するシェフ。
昼間のような事もあるし、気が重いようだ…
昼と同じように、再びレオとローラが、食堂のテーブルに並んで座っている。
似た者同士だなあの2人。
「あの子達って、案外お似合いかもしれませんね⁉」
と隣のリリーナが呟いた。
確かに、短時間ですっかり打ち解けた感じの2人。姉弟にも見えるけど、もう少し成長すれば、お似合いのカップルかもしれないなと感じた。
それは兎も角、俺達はコリートを始めとする船の乗組員達と食事を楽しんだ。
「どうだったローラ、タイガー達と過ごして⁉」
「楽しかったよパパ!」
と父娘の会話を楽しむコリートとローラ。
「船の中を探検したり、トランプしたりして。特にリバーシが面白かった!」
「リバーシ?」
ここでもリバーシが出てきた。
事の初めから話すローラ。それを聞くコリート。
「ほ~、タイガーが考えたのか⁉」
「まぁな…」
正確には俺じゃないんだけど…
「食べること以外でローラがこんなに夢中になるなんて珍しいな!そんだけオモシレーのか⁉」
「うん、すっごく面白い!」
と早くもデザートに手を付けるローラ。
側には何時の間にか彼女がたいらげた料理の皿が山積みになっていた。
そんな感じで和気あいあいと食事は終わった。
レオとローラはさっそく、リバーシの続きを始めた。
リリーナは厨房で洗い物を手伝っている。
俺も手伝おうかなと思っていると、コリートに船長室に呼ばれた。あいも変わらず酒瓶を片手に…
側にはコリートの愛鳥のパロがいる。
で、コリートは俺を椅子に座らせてから話に入った。
「どうだった船旅は?今日1日過ごしてみて⁉」
「あぁ、結構いいもんだと思うぜ!まぁ、船だから行動できる範囲が限られてるし、少し揺れっけど…」
「そりゃ船だからな、陸とは違っからな!」
「チガッカラナ!チガッカラナ!」
パロがオウム返しした。
「それは兎も角だ、オメーを呼んだのは他でもない!」
そう言ってコリートは机の上に紙を広げた。それは俺とリリーナがりんをやるのに使っていた紙の盤だ。
どうやら俺とリバーシで一勝負いきたいらしい。
ローラから話を聞いて自分もやってみたくなったとか。で、俺に相手をしてもらいたいらしい。
「ルールはローラから教えてもらった。どうだタイガー⁉」
「いいぜ船長!一勝負いくか!」
「おうよ、そうこなくちゃな!」
と、何となく強引な感じがするが、俺等はリバーシで対局を始めた。
そして、結果は…
「白34黒30よーし俺の勝ちだ!」
「クッ…」
俺は奇しくもリバーシで初勝利を飾った。
「負けでぱなしでいられっか!もう1回だ‼」
コリートと勝負を続けた。結果は勝ったり負けたりだ。概ね互角となった。
「やるな…」
「そっちこそ…」
と、柄にもなく熱くなっていると、リリーナが部屋を訪ねてきた。
で、コリートと良い勝負をしていることを話すと、彼女と再び勝負する流れになった。
この良い流れのまま、彼女から初白星を取ってみせようと息巻いて勝負に入った。
その結果!
「はい、勝ちました…」
ボロ負けだった。勿論、俺の…
先程までのいい勝負が嘘のようだった。
もしやと思い、リリーナとコリートの2人に勝負させた。
結果はリリーナの圧勝だった。
あとから聞いた話だとコリートもトランプの類は弱いとか…
よーく分かった…
俺とコリート。俺等はこういったゲームに関しては、同レベルだということが…
それは置いといて、何だかんだで俺等はこの船旅を大いに楽しんだ。そんな船旅もいよいよ終わりの時が来た。
予定通り、目的地の島に到着したのだった。