探検
コリートの部屋を出たレオとローラ。
遊ぶにしてもこの船には、子供用の遊び道具の類は、これと言って置いてはいない。
「さて、何すっかな?…」
レオも特にやりたいことはない。
普段から、食べる事にしか興味がない上、同世代の子供と遊んだ試しがないレオ。
故に、何をしたらいいのか分からないくらいらしい。
「そうね…それじゃあ、船内を案内してあげる!」
「おもしろそうだけど、出来んのか⁉」
「勿論!停泊してる時に何度か乗せてもらってるから、大体の間取りは把握してるわよ!」
「それじゃあ、案内頼むぜ!」
「任しなさい!」
自信満々に宣言するローラ。
ローラの提案で、船内の探検をすることにしたようだ。
最初にやって来たのが、
「ここは食料庫よ!」
「おほ~!!」
「普段は、日持ちする食料品が大半を締めてるけど、今回の航海は数日だから、果物とかが多いみたいね!」
食い気盛んなレオは、先程までとは打って変わって、目を輝かせている。
無意識、いや、条件反射的に、目の前の果物に手を伸ばしかけるレオ。
そこへすかさす、
「レオくん!」
「!」
「勝手に食べたら怒られるよ!」
と、リリーナが静止し、レオもすごすごと手を引っ込めた。船の船員よりも、リリーナに怒られそうだと、感じたようだ。
「つ、次のとこに行こうぜ!」
「うん、えーと次は…」
食料庫を後にする2人。
「レオのやつ、案の定…」
「少しずつ、矯正していくしかないですね…」
と俺等は、2人の後ろ姿を見ながら話た。
次に向かったのは、
「ここは医務室よ!」
「ふ~ん…!何か変な匂いするぞ⁉」
「変な匂い?」
「何て言おうか…鼻にツンとくる匂いが!」
「それって消毒液の匂いじゃないか?」
2人の見守りをしていた俺が話に入った。
「あぁ、確かに、少し消毒液の匂いがしますね!」
俺とリリーナも医務室に入った。
そして、棚にしまってあった消毒液の入った瓶を取り出し、フタを空けた。
「あっ、それだそれ!」
「棚にしまってあるから、あまり匂いしないのに、よくわかったなレオ!」
「鼻と目には自信あっぞ俺っち!」
少し自慢げに言うレオ。
少し前まで大自然の中で生きてきたからな。運動神経だけでなく、目と鼻もいいようだ。
「ところで、船医は不在みたいだな…」
消毒液の瓶を棚に戻しながら呟いた。
それに対してローラが答えた。
「ううん、元々この船には、決まった船医さんはいないみたいだよ!」
「えっ、いないの⁉怪我人や病人が出たら、どうするのローラちゃん⁉」
「パパやメットおじさんみたいに、医学の心得のある人が担当するって聞いたわよ!」
「!せっ、船長にメットが!」
意外な名前が出てきた。
「あの2人に、怪我人とか診れるのか?」
「うん、でも大体が、メットおじさんが傷口に直接消毒液をぶっかけて、ガーゼ当てて、包帯巻いて終わりってパターンが多いみたいだよ!」
「雑すぎるよ、それ…」
「でも、それはまだマシな方で、パパなんか忙しい時は、消毒だと言って口に含んだお酒を傷口に吹きかけるなんてことしてるって、船員の人から聞いたよ!」
「更に雑!本当に医学の心得あんのかよ…いや、絶対ないだろ、少なくとも船長は!」
「タイガーさん、怪我しないように気をつけましょう!」
「ああ、勿論だ!」
俺とリリーナは固く誓った。
そのまま、医務室を後にした。
その後は、道具類を締まってある倉庫や、寝室、マスト上部の見張り台等を見て回った。
「次が最後よ!」
「もう終いか…」
「船内なんだし、広さは限られてるのよ!」
彼女の言うように、船内なので見て回るところはそんなに多くなかった。
それは兎も角、最後の場所はというと、
「なかなか広いな!」
レオの言う通り、そこはこの船の中で1番広い場所で、机と椅子から並んでいた。そして奥には、厨房らしきものがあった。
「ここって、食堂か⁉」
「うん、そうだよ!」
「食堂!」
レオが再び目を輝かせる。
こいつを矯正できる日は遠そうだなと感じていると、
「あっ、お嬢!」
コックが、俺等に気付いて話しかけてきた。
レオにリンゴをくれた人だ。
「あっシェフ!丁度いいは、何か作ってくれない⁉お昼ご飯には少し早いけど!」
「はぁ、いいッスけど…」
「ヨッシャー!」
テンションの上がるレオ。
それを尻目に、
「……」
「?…」
「コックさん、どうしたんですかね?」
「さぁ…」
浮かない表情のコック。
この後、浮かない表情を浮かべるコックの、その理由を知る事となるのだった。