冒険譚
「うっ…頭痛てー…」
「タイガーさん、お水!」
「あぁ、ありがとうリリーナ…」
コリートに突き合わせれ、苦手な酒を飲まされ、二日酔いになった俺と、そんな俺を介抱するリリーナ。
リリーナにて渡された水に口を付ける。
「ふぅ~、あっところで、レオのやつはどうした?」
「レオ君ならファンさんが遊んでくれてます。ファンさん、今日は仕事お休みだそうですから!」
「ファンさんが…それならいいけど、またコリもせずに盗み食いしてたりしなきゃいいけど…」
「大丈夫ですよ。今回のことがありますし、私の方からよーく言っておきました!」
「リリーナが⁉どうなふうに?」
「どうなふうにと言われましても、少しキツめに…」
「少しキツめ…」
後でファンに聞いたら、レオは借りてきた猫のように大人しかったらしい。そういや一週間目位で、珍しくキレかけてたからな…本当にどうなふうに言ったのか気にはなるが、聞かないでおこう…
と、そこへ
「よっ!オメー等!」
「船長!」
「船長さん!」
コリートがノックもせずに部屋に入って来た。酒の瓶を片手に。昨夜あんだけ飲んだのに、まだ飲むか⁉どんだけ飲む気なんだよこのおっさんは…
グビッ!グビッ!
「はぁ~!え~と確かタイガーとリリーナって言ったな⁉」
「はい…」
酒瓶をラッパ飲みしてから、話し出すコリート。
「ジョウから聞いたぞ、アチコチ旅してんだってな⁉」
酒臭い息を吐きながら話すコリート。
酒臭い息に顔をしかめながらも、俺とリリーナはコリートに、これまでの旅の話した。
「ほうほう…そんなことがあったのか!なかなか、ロマンのあるじゃねーか!」
酒瓶の酒をラッパ飲みしながら、コリートは俺とリリーナの話を聞いた。完全に俺等の話は、酒の肴と化していた。
そして、
「俺も船でアチコチ回っているが、これまででそんな経験はしたことないな!」
「えぇ、でもコリートさんだって、いろんなことされてきたんでしょう⁉船乗りなんですから、危険な目に遭ったことも、多少ありますよね⁉」
「おうよ!生死の境をさまよったことも、1度や2度じゃねーぜ!」
「聞かせてもらってもいいですか?」
「当たり前だ。そっちがしたのに、こっちがしないなんて、不公平だかんな!」
それからコリートは、自身の冒険譚を話した。
航海の最中に突然、船底に穴が開き、浸水し沈没の危機に遭ったこと、
船員がたちの悪い病気に侵され次々と急病人が出て、最終的に自身も感染したこと、
大嵐で船が壊れて無人島に漂流、水と食料も底を突き、飢えと戦ったこと、
等、様々なエピソードを聞いた。
「…で、食料は魚を採って何とか飢えをしのいだが、問題は水だ。その無人島にはろくに飲めそうな川や池もなくてな…あん時、雨が降ってきて助かったぜ!まさに、恵みの雨だ!」
「はぁ~」
「スゴい話ですね…」
と、コリートの冒険譚に俺等は耳を傾けた。何時の間にか、二日酔いも治っていた。
「大変だったが、今となっちゃいい思い出だ!」
そう言ってコリートは、酒瓶に残っていた酒を一気に飲み干した。
それから間もなく、
「たっだいまー!」
「タイガー君、気分はどう?」
レオとファンが入って来た。
「お帰りレオ君…って、その顔…」
レオの顔には、何かの食べカスが付いていた。
「あぁ、一緒に遊んでたらね、お腹すいたってせがまれちゃったの。それで…」
「もーレオ君たら…すみませんファンさん。あの、お金…」
リリーナはサイフを取り出す。
が、ファンは、
「いいわよ大した額じゃないし。それに、いい食べっぷりだったわよ!」
「本当にすみません…もーレオ君!」
「へへへ…」
「ヘヘへじゃないの!」
レオを嗜めるリリーナ。昨日の今日でこれとはな…
レオには、「蛙の面に水」だったな…
等と俺が思っていると、
「ハハハ、おもしれー連中だな!」
大笑いするコリート。どこに持ってたのか、新しい酒瓶の蓋を開けて、これまたラッパで飲みだした。
「コリート船長、また朝から飲んで…」
呆れ顔のファン。
そんな最中、何を思ったのか突然コリートが
「おっそうだ!なぁオメー等!」
「!何だよ船長?」
「次の航海、オメー等も一緒に来ないか?」
「‼」
藪から棒に、コリートは言い出した。
少々強引に、話は動きます!