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船乗り

 俺とリリーナが、皿洗いと閉店後の店内清掃を終え、ジョウがチェックをする。


 「…はい、いいですよ。では、これで完済ということで!」

 「はぁ~…」

 「やっと終わりましたね、タイガーさん…」


 今日の働き分でようやく、レオのおかげて出来た借金を返し切ることが出来た。

 結局、俺等は2週間もの間、この町に滞在しこの店で働いて返済することになった。その原因のレオだが、流石にリリーナにキレられかけたのが効いたらしく、途中からは大人しくしていた。女性従業員のファンが、遊び相手になってくれていたのも大きいだろうけど。

 因みにその間は、店の空き部屋を提供してもらい、ずっとそこに寝泊まりした。町には宿もあるが、借金ある身では利用するわけにはいかなかったので有り難かった。

 そんなこんなでようやく自由になった俺等は、


 「はぁ~、お疲れリリーナ…」

 「お疲れ様ですタイガーさん…」


 閉店後の店内の客席で、ジョウが入れてくれたコーヒーを飲みながら一息入れていた。

 疲れていたので俺も砂糖を多めに入れて飲んだ。疲れた身体にしみるように感じた。

 ジョウやミチヒコ、更にファンも混じって、客席でコーヒー片手に談笑した。因みにレオは、店のまかないを食わしてもらっており、大人しくしている。


 「で、あなた達今日で、全額返済した訳だけど、明日からどうするの?」


 ファンが聞いてきた。


 「そうだな、この町には単に通りがかっただけで、元々はここから南の方に行くつもりだったからな。」

 「南の方と言いますと、確か…」

 「そう、香辛料で有名はとこだ!そこに行こうと思っててな!」

 「確かにあそこは、香辛料で有名だけど、一体何する気なんだ?」

 「いや特に何か目的があるわけじゃないけど、何となく俺の感がそこに行ったほうがいいと言ってる気がしてな…」

 「感って…」


 冗談抜きで本当にただの感だった。そんないい加減な決め方でいいのかと言われそうだが、この旅も、最初に行った町から感で行き先を決めてきたのだ。

 風の吹くまま気の向くままという言葉があるように、俺はアレコレ考えて動くより、行き当たりばったりで行く方が性に合っている質だ。まぁそれに突き合わすリリーナには、悪いけど…

 しかし、今の所旅は順調だし、エージにテレシア、ピエールと、旅先でいろんな人と出会った。何よりそのおかげで今、レオと出会ったわけだしな!

 なんて1人、勝手に心の中で盛り上がっていると、店の入口がバーン!と、勢いよく開いた。


 「おう、邪魔するぞ!」

 「どちら様で?あいにく本日の営業時間は過ぎて…」


 そこまで言うと、ジョウは驚きの声を上げた。

 

 「コリート船長じゃないですか!何時戻ってきたんですか?」

 「ついさっきだ!ほんの少し前に港に着いてな!」

 

 と、大声で軽快に話す大柄の男。顔には大きな傷がある。

 ジョウに船長と呼ぼれていたが、船長と呼ばれずとも分かる。彼は見るからに船乗りといった感じの格好をしている。パイレーツ何とかって映画にそのまま出れそうだ。これに眼帯をしたら、モロ海賊だ!


 「あのー、あの方は?」


 リリーナがミチヒコとファンに聞いた。


 「コリート船長か!あの人はとある商船の船長をしている人だ!」

 「商船の⁉」

 「ええ、しかも若い頃には、世界中の海を渡り回って、海賊とも戦った事があるらしいわよ!まぁ、何処まで本当かわからないけどね…」


 本当のところはどうなのか分からないが、船乗りとしては1流らしい。海で大嵐に遭っても、幾度となく生還したとか。

 この店の店長のジョウとは古い付き合いらしく、店で使う調味料や飾りの装飾品とかも、安価で卸してくれているらしい。

 店の入口でしと話すコリート。すると例のクラゲの水槽に気付いた。


 「何だクラゲなんて飼ってんのか?」

 「ええ、お客様からも好評ですよ!」

 「クラゲなんざ、食えなくもないが、あんまりいいもんじゃないだろ…」


 そう言いながらコリートは暫し、水槽を眺めた。


 「…成る程、言われてみりゃ悪くねーな!」

 「でしょう⁉」

 「お前が考えたのか?」

 「いえ、アチラの…」


 ジョウが俺の方に顔を向ける。


 「見ねー顔だが、新入りの従業員か⁉」

 「いえそうではなく…」


 ジョウはコリートに、ことの経緯いきさつを説明した。話を聞いたコリートは俺とリリーナの所に来た。


 「小僧!中々いい目の付け所してんな!」

 「はぁ…まぁ…」

 「よっしゃー!おいジョウ!酒だ!酒もってこい‼」


 と、いきなり酒を注文しだした。


 「酒って船長、さっき飲み過ぎて気分が悪いと…」

 「こんな時に飲まずにいられっか!ジャンジャン持って来い!」


 こんな時って、どんな時だよ…


 「いや俺、酒は…」

 「あん!俺の酒が飲めねーてか‼」

 「……」


 あまりの迫力に、俺は断れなかった。確かテツの時も、そうだったな…

 

 「さ~飲め飲め!!」

 「……」


 俺は酒盛りの突き合わされた。

 こうして俺は、あの日のあの時と同様悪酔いし、リリーナに介抱されるのだった。そして翌日、二日酔いで動けず、この町での滞在日数をまた1日伸ばしたのだった…

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