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読み聞かせ

 レオは字が読めなかった。これじゃ感想を聞くのはむりか…

 そう思っていたら、


 「だったらレオくんには、私が読み聞かせます!それならいけるでしょう。」


 と、リリーナが言ってきた。 


 「ああそうだな、それなら出来るな。でも、ここでするわけにはいかないよな…」


 今いるのは、フームの案内で入った喫茶店だ。ここで読み聞かせするわけにはいかない。

 少ないとはいえ、他にお客もいるし、何より店側に迷惑だ。


 「あっそうですね…」

 「それなら近くの公園に行きませんか⁉広くて静かな場所だから、読み聞かせをするのにはピッタリですよ!」

 「あぁ、そこにするか!」


 俺等は支払いを済ませると、フームの言う近くの公園に移動した。店を出る時、店主が愛想よく振る舞って


 「ありがとうございました、またどうぞ!」


 と、元気よく言いながら見送られた。失礼ながら、さほど流行ってないけど、店主は真面目にやってるようだ。

 それはさておき、公園に着いた。

 フームの言うとおり、そこそこ広い公園で、子供達が遊具で遊んでいる。その光景を見て気分が和むのを感じた。どこ世界でも、元気に明るく遊んでいる子供の姿はいいもんだ。レオも食ってばかりいないで、あんな風になってもらいたいもんだ。


 「あの…タイガーさん…」


 等と考え込んで自分の世界に浸っていた俺を、リリーナが現実に引き戻した。


 「あぁ悪い悪い、ちと考え事しててな…それよりも、読み聞かせなら、あそこなんて良いんじゃないか⁉」


 俺がある場所を指差す。そこは大きな木の下のベンチで、丁度いい感じに、日陰が出来ている。


 「そうですね、それじゃあレオくん行こうか⁉」

 「ん!」


 ベンチにリリーナとレオが並んで座った。

 こうしてリリーナによる、フームオリジナル小説の読み聞かせが始まったのだった。


 「…少年はすくすくと成長していきま…」


 リリーナが子供にも聞き取りやすいペースと声量で、原稿用紙の文面を読み進める。

 その横でレオは、じっと座ったまま聞いている。普段は食い意地の張ったレオが今は借りてきた猫のように大人しくしている。それを見て、


 「真剣に聞いてくれているみたいですね、あの子!」

 「ああ!」


 あのレオがこんなに聞き入るなんて、やはり彼女(フーム)の小説は面白いのだろうな!

 俺はそう思っていた。が、直後に違和感に気付いた。

 違和感を感じた俺は、


 「リリーナ、一旦ストップだ!」

 「えっ⁉どうしましたタイガーさん?」

 「なに、ちょっとな…」


 俺はリリーナの横のレオに近付き、顔を覗き込んだ。


 「やっぱり…」

 「「……」」


 リリーナとフームが何事だろうって顔で見ている。

 それに答えるように俺は言った。


 「レオの奴、寝てやがる…」

 「zzz…」


 そう静かだと思えば、レオは居眠りしていたのだ。だから、大人しかったのだ…


 「もー、レオくんたら…」

 「起きろレオ!!」


 俺がレオの体を軽く揺さぶると、レオは起きた。


 「何だメシの時間か?」

 「さっき食ったばかりだろが‼」

 

 やっぱりこいつは、食い気しかないみたいだ…

 余りにもせがむので仕方なく、俺はレオを近くに出ていた露店に連れて行き、適当に食わせた。


 「うめ~!」


 買ってやった品々を美味そうに食うレオ。

 それを見て俺は、


 「レオと文学は水と油だったみたいだな…」


 と呟いた。そのつぶやきを目ざとく聞いていたレオは、


 「何だ水と油って⁉水と油の料理なんてあるのか⁉」


 などど、聞いてきやがった。そんな料理があったら、俺がお目にかかりたいつーの!

 レオが満足したので、リリーナとフームが待つ公園に戻った。

 すると、


 「何だありゃ⁉」


 ベンチにいるリリーナの周りに人だかりが出来ている。よく見ると、さっきまで公園の遊具で遊んでいた子供達だ。

 子供達は、リリーナが読む小説に夢中で耳を傾けている。


 「これは一体?」

 「あっ、タイガーさん!」

 「フームさんよ、何があったんだ?」

 「それが…」


 フームの話によると、俺がレオを連れて露店に向かった直後、子供達の方から話しかけてきて、


 「話の続きを聞かせて!」

 「その後どうなったの⁉」

 「続き!続き‼」


 と、矢継ぎ早にリクエストされたのだとか。

 それでリリーナが、話の続きを読み聞かせあげているのだとか。


 「どうやら、レオくんに読み聞かせていたのを、近くで聞いていたみたいなんです!」

 「そういう事か…フームさん…何だか嬉しそうだな?」

 「えぇ、だって…私の書いた作品をあれだけの子供達だ、真剣に聞いてくれているんですから…」

 「確かに、あの様子からして、やっぱりあの小説は、面白いって事だな!」


 自分の作品に聞き耳を立てる子供達の姿を見てフームは、満足気な表情をしていた。

 

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