朝食
翌朝、俺等はピエールの友人宅でそのまま朝食をごちそうになった。泊まらせてもらった上に食事まで…本当にありがたい話だ。
「ほぉ~、それで旅を…」
「えぇ、世界を見て回ろうと思って…」
「ははは、若いうちに色々チャレンジしとくのはいい事だ!」
何て事を話している相手は、ピエールの友人で名前はジャン。前にも言ったが自警隊の幹部クラスの人間だとか。
初めて合ったときは少し怖そうな感じだったが、話してみると至って気さくで、感じのいい人だった。
ただ…
「どうだね、このバターは⁉濃厚で全くしつこく無い、実に味わい深いだろう!!採れたてのミルクから作っているので、新鮮そのものだ!」
「ハイ、とても美味しいです!」
ジャンの問いかけに答えるリリーナ。
「そうだろう、このパンとの相性も抜群だ!この目玉焼きの卵だが、いい養鶏場で今朝生まれたばかりの物の中から、厳選した物から作った。味付けも塩だけだ。塩だけなので食材そのものも旨さを十分に味わうことが出来るのだ。塩自体も時間をかけて海水を煮詰めて作ってある。海の香りがするだろう⁉」
「は、ハイ…」
「塩だけなのがいい。これに下手にソースなんてものかけたら、食材そのものも旨さが台無しになってしまう!食材そのものも旨さを味わうなら、シンプルな味付けでないとな!」
「えぇ…そうてすね…」
「だろう!ピエールも思うよな⁉」
「あぁ…」
「流石、話が分かる!」
と、ベラベラ話し続ける。
流石、ピエールの友人だ、よく喋るな。
類は友を呼ぶとはこの事か…
「更に、添え物のレタス!これもいい肥料を与えて育てたものだ。ドレッシング等はかけずとも、大地から吸い上げた栄養素が詰まっていて、口に入れた途端、野菜本来の旨味が広がり、なおかつシャキシャキとした食感がダイレクトに伝わってくる。素晴らしいだろう!」
と、聞いてもいないのに、うんちくを語ってくる。
かなりの美食家だ。まるで海○雄○みたいだ。
最も、外見は全く似ていない。立派なヒゲを生やしていて、どちらかというと、ガ〇〇ムに出てくる東○不○といった感じだ。まぁ、顔は全然違うけど…
「悪いなタイガー、ジャンは食に人一倍こだわりが強いやつなんだ。」
「あぁ、言われなくてもよーくわかるよ…」
「聞いてもないのに、食材1つに対しても、あーだこーだと…本当に口の多いやつだ!」
「あぁ…」
「本人は悪気とか無いんだろうが、相手のこと考えず喋り続けるからな、相手にとってはたまったもんじゃないんだよ全く!」
と、俺に小声で文句を言うピエール。
「どの口が言ってんだ!」と、言ってやりたかったが、ぐっとこらえた。
因みにレオはというと、大人しく食べている。ピエールからジョンの事を事前に聞いていたので、大人しく、マナーよく食べるように口を酸っぱくして言っておいたおかげだ。
朝食を終え、俺達はピエール等と一旦別れ、町に繰り出した。折角なので散策することにしたのだ。
その最中での事は、これと言ったエピソードでもないので、全て省く。
そして昼食頃になった。
「タイガー腹減った!」
「もう減ったのか!朝あんだけ食っといて⁉」
レオはマナーよく食べていはいたが、案の定、人一倍食ってもいたのだった。
等と話していると、
「あらまあ皆さん!」
「あっ、フームさん!」
フームと再開したのだ。挨拶そこそこに、折角だからと一緒に昼食を取ることになった。
店はフームがよく利用しているという、喫茶店だ。表通りから離れた場所にあるので、昼時ながら空いていた。
フーム曰く、いつ来ても空いてることが多いので、よく利用しているらしい。経営大丈夫なのか気になったが、何でも勤めていた仕事を退職した初老の男性のマスターが、暇つぶしを兼ねて、半分趣味で1人やっているので、構わないとか…
そんな感じで、各自注文した品を食いながら世間話に花を咲かせていた。
そんな中、
「そうだフームさん、小説の方はどうなりました?」
と、リリーナが聞いた。
俺は内心軽く血の気が引く感じがした。また、長々と話されるんしゃないのか…と心配した。
昨日といい、今朝のジャンのうんちくといい、長話にはもう、うんざりしているところだ…
が、そんな考えとは裏腹に、フームの顔は暗かった。
「あれ…どうしましたフームさん…私、変なこと言いましたか…」
「あっいえ、そう言うわけでは…」
そう言いながらも、フームの顔色は良くなかった。
そして少しためてから、
「実は…」
と、訳を話し始めた。