友人宅の離れ
「それでここは…」
「やっぱり…」
その後も2人の話は続いた。ほんとよく続くなと感心していた。
が、それにもようやく終わりの時が来た。
「ふ~、すっかり話し込んじゃいましたね!」
「えぇ、時間が経つのも忘れて!」
全くだよ。長々とよく話が続いたもんだ…
すっかり待ちくたびれた俺に気付いたリリーナは、
「待たせてすみませんタイガーさん、話に盛り上がってしまって…」
本当に結構待ったよ。そう言いたかった。
が、そんな本心を飲み込んで、
「いや、そんな待ってないよ!」
と、言っておいた。
その後、家の用事があるのからと、フームは帰宅していった。残った俺等も、食事を済ませると会計をして店を後にした。レオが値段も気にせずにバカ食いしてくれたおかげで、結構な額になり、財布が軽くなった。
結局、サンドイッチ代は出さなくて済んだが、出していたらもっと懐が痛くなっていただろう。
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「ほ~そんなことがあったのか、…大変だったな!」
「あぁ…」
俺は茶を飲みながら、ピエールに今日あった事を話していた。
ここはピエールの友人宅…の離れ。
レオのおかげで出費がかなりかさんだ。その上で宿をどうしたものかと悩んでいたら、知らない人と一緒にいるピエールと再開した。
聞けばこの町のピエールの友人とのこと。軽く話していたたら、
「今日泊まる所はどうなってる?」
と聞かれ、まだ決まってないと話したら、
「何なら家に泊まってくか?」
と、言ってくれたのだ。
出費がかさみ、困っていたところなのでありがたかった。まさに渡りに船だった!
で、その友人宅に行くと、以外…と言っちゃ失礼かもしれないが、庭付きのそれなりに大きな家だった。
何でもその友人は、自警隊の幹部クラスの人らしい。
やはり、それなりに社会的地位の高い人は良い暮らししてるんだなと思った。
因みに、自警隊は前の世界の警察に近い組織だ。しかし、公務員の様な終身雇用制度は無く、ピエールのように問題を起こせばクビになる。それに仕事もキツイので離職率も高めだとか。生半可な気持ちでは務まらないのだと、ケティが言っていた。そんな中でも、がんばって手柄を立てて出世すれば、それ相応の見返りはある。それがこれなのだろう。
で、俺等はその家の庭にある離れに厄介になることとになった。
「ふ~、いいお風呂でした!」
と、風呂を借りて入っていたリリーナとレオが戻ってきた。レオは昼間に入ったが、食事で顔とかを汚したので再び入ったのだ。
「リリーナ、レオは大人しくしてたのか?」
「えぇ、昼間はあんなに嫌が出てたのに、それが嘘のように…まぁ、ジャンプーは嫌がってましたけど…」
再びさっぱりしたレオ。リリーナの言うように、シャンプーは昼間の時も無茶苦茶嫌がってた。目に染みるとか言って騒いでいた。
気持ちはよくわかる。俺も子供の頃はシャンプーが苦手だった。泡が目に入って痛くて痛くてたまらず、それで苦手になった。それをふまえて、母さんが買ってきてくれたアレのおかげでなんとか…
「アレ…そういやこっちの世界では見かけないよな…確か素材はプラスチックだったな…でも今のこの世には…」
俺がブツクサとつぶやいている。
その横で、
「おいリリーナちゃんよ、タイガーのやつどうしたんだ!?ブツブツ言ってよ…」
「あぁ、タイガーさんって、時々ああなるんでよ。でも、その後私達には想像もつかないアイデアを出すことがあるんですよ!」
「ほぉ~!」
と、リリーナとピエールが話していた。
その直後、皆を放ったらかしにしてしまっている自分に気付いた。
「あっ、悪い!つい考え込んじまった…」
「いえ、それはいいんですけど、また何か思い付いたんですか?」
「あぁ、まだなんとも言えないけどな…」
「勿体ぶらずに具体的に言ってくれよ!」
「あぁ、それは…っておい、レオは何処だ?」
さっきまでそこにいたレオがいなかった。
「あれレオくん⁉」
「またどこ行ったんだ?」
俺等が周りを見渡してると、ピエールが叫んだ。
「あっ、あそこ!」
ピエールが指差す方向を見ると、レオが庭木の上に登っていた。
「レオ!何やってんだ!」
俺が叫ぶとレオが、
「あぁ、また小腹が空いたんでな!木の実か果物でも生ってないかと思って探してたんだ!」
等と呑気に答えた。
「庭木に実ってるわけ無いだろう、降りてこい!」
「ほらレオくん!」
「ん!」
レオはしぶしぶといった顔をし、木から飛び降りた。そして、あろうことか俺の上に落ちてきやがった。
「ぐえ!」
「あっ、ゴメンタイガー!」
「お前…わざとだろ…」
「タイガーさん!!」
レオが落ちてきた衝撃で盛大に転けた。
体が土で汚れてしまったので、俺も風呂に入ることにした。
そのおかげで、先程思い付いたアイデアの件は、有耶無耶になってしまったのだった…