レオ
山道で遭遇した少年をレオと命名した。
少年改めてレオは、
「オレっち…レオって言えばいいのか?」
「そうだよ、今日から君はレオくんだよ!」
「レオ…か…」
当の本人も満更でもないない様子だ。
しかし、次の町で自警隊に保護してもらうことを説明する。
保護後は、国の管轄の施設で暮らすこととなる。それを聞いた途端、
「嫌だ!」
レオは拒否し始めた。
「そんな得たいのしれないとこに行くなんて、そんなところに行くぐらいなら、すっとこの山で暮らす!」
と言い出す始末。
確かにレオにとっては、この山が故郷も同じだ。それを急に町の、それも国の運営する施設で生活するなんて、簡単には受け入れられないだろう…
「レオくん、何時までも山でって訳には行かないんだよ⁉」
「そうだ、君のことを知った以上、放って置く事は出来ない。拒否しても、俺等が町で自警隊等に報告すれば、役人達が動きだす。そうなれば、山狩りをしてでも君を見付け、保護しようとするぞ!」
アレコレ説得するが、レオは聞き耳を立てない。
「嫌だと言ったら、イ・ヤ・ダ‼」
断固拒否するレオ。そして、
「オレっちの事、捕まえるってんなら、捕まえてみろ!何処まででも逃げてやる!」
バッ!
「あっ、待てレオ!」
猿のような身のこなしで、飛び出して逃げ出すレオ。しかし、
「誰が待つ…」
ガッ!!
レオは馬車の壁に顔面を強打した。
そして、その場に倒れた。まるで漫画のように、伸びてしまった。古い漫画だったら、顔の上を、鳥が円を描くように飛んでいるだろう…
「あ~あ、だから待てって言ったのに…」
「うわ~、痛そう…」
「完全な前方不注意だな。慌てて逃げ出すから…」
山中で、獣同然に育った普段のレオなら、こんなミスなどしないだろう。が、今回は興奮していて、逃げ出そうとしたため、前方がお留守になっていたのだ。
伸びてしまったレオをリリーナが膝枕で看病する。
少しするとレオは目を覚ました。
「良かった、気がついて!大丈夫レオくん⁉」
「あっ…うん…」
「どうしたの?」
「お前、オレっちの事、見ててくれたのか?」
「そうだよ!」
「優しな!さっきも、食い物くれたし…」
「そんなたいした事じゃないよ!そうだ、お菓子まだあるけど、食べる?」
「うん!」
そう言って菓子を食べるレオ。食べ終えると、
「そういえばこれ、何て言う食い物だ?山では見かけないけど…」
「これ?これは…」
お菓子の説明をするリリーナ。説明を聞いたレオは、
「町でしか、ありつけないのか…」
「そうだよ!キノコみたいに、自然には無いよ!」
「町で暮らすのはやだけど、食い物は…」
等とブツブツ言いながら、考え込んだ。
「ところで、お前等どこに行くんだ?」
「ん、俺等か…?俺達は…」
俺等は旅の目的をレオに、説明した。
「うんうん…なるほどな…」
少し難しい顔をした後、レオは、
「決めた!タイガー!リリーナ!」
「何だ?」
「どうしたの、改まって!?」
「オレっち、お前等と一緒に旅する!」
等と言い出した。
「えっ!」
「お前、俺等と一緒に来るってのか?」
「今そう言ったろ!」
「そうだけど…いきなり何を言い出すんだ!」
「町で暮らすのは嫌だけど、少し滞在する位なら我慢できる。得体の知れない場所で暮らす位なら、世界中を回ったほうが、マシだ!」
「マシって…」
「それに…」
「それに?」
「おまと一緒なら、アチコチの美味い食い物食えそうだからな!」
レオは、力を込めて発した。
「そこかよ!結局、食い物かよ…この山に未練は無いのかお前…」
「ははは…」
俺がツッコミ、リリーナは力なく笑った。
「でもレオくん、本当に私達についてくる気なの?」
「本気だ!リリーナ、俺に優しくしてくれたお前になら、信じて身を預けてもいいぜ!ダメって言うなら、オレっち、これからもココで生きてく!追って差し向けても、逃げ切ってみせるぞ!」
レオは力強く宣言した。
「身を預けてるって…どうしましょう、タイガーさん…」
「そうだな…」
俺は考えこんだ。そして、
「確かに、このままにしとく訳にもいかないし、山で一人っきりにさせるより、俺達と一緒の方がいいかもしれないな…」
「よし、決まりだー!ツーわけで、ヨロシクな!」
「なんだかもう、決定したみたいな雰囲気になってる…」
「(旅は道連れ世は情けっ、て言葉もあるし…)もう、しょうがないみたいだな、リリーナ…」
「ですね、タイガーさん…」
「どうなるんだ、俺等の旅は…」
こうして突然ながら、俺とリリーナの旅に、謎の少年「レオ」が加わったのだった。
はてさて、俺等の旅は、この先どうなるのか、それはまだ誰にもわからない。
突然ですが、ここからは三人旅になります。
本当に、少々強引に話は進みます…