命名
朝になった。
俺とリリーナが目を覚ました頃、既にピエールは起きていた。
「おう2人共、おはようさん!」
「おはようピエール!」
「おはようございますピエールさん!」
「起きるの早いんだな⁉」
「まあな、今まで色んな仕事してきたからな、早起きしないといけないこともあっからな、自然と朝は早くに目が覚めちまうんだ!」
「へぇー!」
そんな感じの挨拶を済まし、俺等も使った毛布等を片付け、簡単に洗顔等を済ました。
そんな俺らを尻目に、例の子供はまだスヤスヤと寝ている。
「よく寝てるな…」
「そうですね、熟睡してますね。昨夜お腹いっぱい、沢山食べたのも影響してるんでしょうけど、きっと疲れとかも溜まってたんですよ。それにしても、改めて見ると、寝顔かわいいてすねタイガーさん!」
「確かに…最初見たときは、野生の獣みたいな雰囲気だったけど、やっぱ子供だ。子供らしい無邪気な顔してるよ…」
「あぁ、息子の小さい頃を思い出すよ!」
俺等は子供の寝顔を眺めながら話し、その最中、1つの疑問を思い出した。
「そういえばだ…」
「どうしましたタイガーさん?」
「いや何、そもそもこの子は、何だってこんなところにいるんだ⁉」
「そういやそうだな…」
「見たところ…近くの町や村の子供ってわけではなさそうですね…」
「身なりからして、普通の家で育った子供ではないな…」
俺等はアレコレ議論した。
そして、
「恐らく捨て子か、山の動物か何かに連れ去られてしまったってところかな?」
「十中八九そうだろうな…」
「前者だとしたら許せませんよ!こんなに小さな子供を捨てるなんて…」
リリーナが、珍しく興奮気味に言った。
リリーナも早くに両親を亡くしているからな…彼女の場合は、周りの人達が支えてくれたけど、それでも一人っきりになる寂しさをよくわかっているから、尚の事感情移入しているんだろう…
等と話していると…
「ふぁ~〜!!」
「あっ、起きた!」
子供が目を覚ました。そして覚ましてそうそう。
「グゥー!」
俺等を警戒しだした。
「待て待て、落ち着けって…」
「タイガーさん、ここは私が…」
そう言うとリリーナは、子供に近づいた。
「気をつけろよリリーナ!」
「ええ!」
そう言うとリリーナはおもむろに、紙包みを取り出した。
そしてそれを開いた。中には、クッキーや飴、砂糖菓子などが入っていた。それは、リリーナが読書の傍ら、つまむお菓子だった。
それを子供に差出し、
「食べる⁉」
と、子供に聞いた。それに対し子供は、
「食べる!」
と、返したのだった。
何とも現金なやつだな…でも、言葉は通じるようだ。
お菓子のおかげで子供は、俺らに対する警戒を緩めてくれた。
そして、お菓子を食べながら、色々と質問した結果、分かったこと。それは、
なぜここにいるかはわからない。気付いたらこの山に居た。そして、1人で木の実やキノコ、川で魚を採ったり、時には山中を行き交う馬車等から食べ物を拝借し生きてきたという。随分とたくましい奴だ。
因みに言葉はというと、馬車の人間の会話から覚えたのだとか…学習能力凄いなと思った。
因みに自身の名前はというと、
「オレっちの名前…知らねー!」
だ、そうだ!
「そうか…1人で生きてきたから、自分の名前が無くても不便しなかったのか…てか、名前という概念が無いみたいだな…」
「それじゃあ、この子何て呼べはいいんだ?」
「そうですね…何時までも君とかって訳になりいきませんよね…」
「なら、俺等で考えようぜ!いいか?」
「オレっちは、何でだっていいぜ⁉」
そして俺等はそれぞれ名前を考え発表しあった。
リリーナ案「アーサーディカプリオス」
リリーナいわく、愛読書の複数の登場キャラから拝借したらしいが、少し長いし立派すぎるんで却下。
ピエール案「ペロ」
「犬かよ!」と俺はツッコんだ!ピエールいわく、昔飼ってた犬の名前だと…本当に犬かよ!リリーナからも「真面目に考えてください!」と、軽くキレ気味に言われていた。当然却下。
御者の人案「ジェイド」
俺等の利用している馬車の御者の人が、何時の間にか混じっていた。因みに由来はというと、昔の恋人と子供が出来たら何て名付けるか話していて、その時考えたものらしい。名前自体は悪くないが、由来が…取り上げず保留!
そして俺の案「レオ」
由来は俺の今の名がタイガー(虎)で、同じ猫科の豹がレオパルドだから、そこから取った。リリーナ達には、顔からイメージして思いついたと説明した。
結果、リリーナ達からも、「カッコいい」「覚えやすい」「いい名前」と、評判は上々だった。
「決まりだ!お前の名前は、「レオ」だ!」
「レオ、オレっちが…」
「そうだよ、よろしくねレオくん!」
「あっ…うん…」
こうして、子供の名前はレオに決定したのだった。