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あけましておめでとうございます!

今年もよろしくおねがいします!

 それから数日後。


 「忘れ物は無いかリリーナ⁉」

 「ええ、大丈夫です。何度も確認しましたので、全部揃ってます!」

 「よし、そんじゃあ行くか!」

 「ハイ!」


 リリーナが元気よく返事すると、俺等は荷物を持って部屋を出た。

 そのまま、教会の皆に挨拶をして、教会を出た。

 随分と長居してしまったが、今日俺等はいよいよ、この町を離れて、次の所に行く。 

 そこそこの期間いたので、この町にも愛着が湧いたが、何時までもくすぶってる訳には行かないからな。多分、リリーナも同じ様な気持ちだろう。


 「いざ離れるとなると、少し寂しいですね…」

 「そうだな、居心地良かったしな。だからといって、何時までも教会やピートの所に厄介になってる訳にはいかないからな。気持ちを切り替えないと。」

 「そうですねタイガーさん。次の場所では、どんな出会いがあるのか、楽しみですね!」

 「ああ!」


 そんな風に喋りながら、馬車の時間を確認し、まだ余裕があるので、最後にピートの店を始め、関わった人達に挨拶をして回った。

 一通り、挨拶を済ます。そして馬車乗り場に着いた。 

 そこには、教会の皆がいた。


 「テレシアさん!」

 「何だ何だ、ついさっき別れたばかりなのに…」

 「すみません、皆がここでお見送りをしたいと言うものですから…ご迷惑でしたか…」


 テレシアが少し申し訳無さそうに言った。


 「迷惑だなんてそんな…」

 「そうそう、大いに結構だ!」

 「そうですか…」


 そうして俺等は時間ギリギリまで、子供達と触れ合った。


 「しっかりと、良い見本になるんだぞナタク!」

 「分かってら!立派な兄貴になってみせるぜ!」


 ナタクはキッパリと断言した。


 「これからも作詞やお話づくり頑張ってね、ロールちゃん!」

 「うん。いつの日か、本になる位の名作を構想してみせるわ!出来たら読んでね!」

 「ふふっ、楽しみにしてるね!」


 そんな感じで子供達と触れ合ったのだが、実は今回の一件で彼らに大きな変化があったのだ。

 ピートの店の一件が人知れず町中に広まり、その結果、自分の店のイメージソングを作ってくれ・歌ってくれと、ナタクとロールの元に依頼がアチコチから来たのだ。最初は渋った2人だったが、渋々引き受け、今やアチコチで引っ張りだこだとか。

 もしかしたら、この2人がこの世界における、子供タレントの先駆けになったのかもしれないが、それは定かでは無い。

 更にそんな2人に触発され、他の子供達も自分の趣味や特技を磨き始めたという。おかげで子供達は皆が皆、生き生きしているという。

思わぬ副作用があったものだ。


 因みに、2人は仕事のギャラを自分達は一切手を付けず、全て教会に入れているとか。神父やテレシアの方も、最初は拒否していたが、根負けして受け取った。運営費等に困っている教会にとってありがたかった。

 と、言うのはまた別の話だ。


 「それじゃあ、そろそろ時間だから…」

 「ハイ、本当にお世話になりました!」

 「良いってことよ。そうそう、ピートにはさっき挨拶しに行ったよ。店が忙しいから見送りには来れないけど、代わりに色々と土産貰ったよ。」

 「そうですか。ピートさんの事も、ありがとうございました!」

 「なーに、元々エージに頼まれてたからな。」

 「いえ、おかげてピートさんと更に良い関係になれました。」

 「良い関係⁉」


 そういえば、ピートはテレシアに想いを寄せてるんだった。


 「具体的に言うと?」

 「ええ、あの時子供達を守ってくれました。改めてお礼を言ったんです。そして、こう言ったんです。これからも、一緒に助け合って行きましょう。」

 「うんうん!」

 「同じ町の住民同士として!」

 「住民…同士…」

 「ハイ!お互いに何かあったら同じ町の住民同士、手と手を取り助け合って行きましょう、永遠に!と」


 俺とリリーナは軽く絶句した。

 彼女はピートの事を1ミリも異性として意識していないようだ…そういや、さっき挨拶した時、テレシアの事を口にしたら、ピートが少し渋ってたのは、その為か…

 果たして、ピートの想いが成就する日が来るのだろうか…

 それは置いといて、出発俺とリリーナは馬車に乗った。


 「じゃあな、またいつか会おう!」

 「タイガー!リリーナ!も元気でな!」


 窓から子供達と最後の挨拶を交わし、窓から腕を出し手を降った。

 するとテレシアがやって来て、窓から出していた俺の手に触れた。


 「本当にありがとうございました。旅の無事を祈っております!」

 「……」


 そして馬車は発車した。テレシアと子供達は馬車か見えなくなるまで見送ってくれていた。

 俺はテレシアに触れられた手を眺めた。

 そういやリリーナ以外で、女性の手に触れたこと無いな…(鍛練時のニコとケティは除く)

 俺は自然に顔がほころんだ。それを見てリリーナは、


 「…機嫌いいですね、タイガーさん…」


 と、少し拗ねた様に言った。俺と対象的に少し不機嫌そうだ。

 

 「何だよ、どうかしたのか、リリーナ?」

 「何でもありません!」


 そういや、あの町にも着いて間もない時も少し不機嫌そうにしたな…


 「何でもないことないだろう…」

 「本当に何でもありません!」


 この後、リリーナの機嫌か治るのまでの間、暫くはこんな調子だった。 

 

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