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自信

 「このガキ!熱いじゃねーか!」

 「大丈夫っすか兄貴⁉」


 店の前には、顔に古ギズのある男と、不良のパシリっぽい感じの男のいった、絵に書いたようにガラの悪い2人組がおり、怒鳴り声を上げて騒いている。

 兄貴分らしい男の服には、ポックルン焼きが付着している。

 それを見て、状況はだいたい把握できたが、一応リリーナにも話を聞いた。内容は、概ね予想通りだ。


 教会の幼い子供達がポックルン焼きを食べてテンションがあがって、はしゃいでいた。すると、近くを通りがかった例の2人組ぶつかってしまい、男の服を汚してしまった。


 との事だ。何ともベタな話だ。


 「どう落とし前つける気だ!アッー!!」

 「慰謝料とクリーニング代、払ってもらおうか!!」


 と、こいつ等もこいつ等で、ベテな事言い出した。

 まるで吉○新喜劇を見てるみたいだな…

 って、俺も又、呑気な事考えてんだよ!


 「待ってください!」

 「テレシア!」


 テレシアが2人組の前に割って入っていた。


 「何だテメーは⁉」

 「この子達の保護者です。この度は申し訳ありませんでした。クリーニング代はお支払いしますので、どうかお許しを!」


 2人組に丁重に謝罪するテレシア。しかし、男達は、


 「それだけじゃ足りねーな…うん、アンタ美人だな!」

 「ええ、かなりの上玉すよ兄貴!」

 「よーし、俺等と良いことしよーぜ!それでチャラにしてやらー!」

 「兄貴、ナイスアイデアす!」

 「えっ、ちょっとお待ちを!」


 テレシアを無理やり連れて行こうとすると男達。

 すると、

 

 「シスターを離せ!」


 ドン!ナタクが兄貴分の男に体当りした。


 「イッテー!何のつもりだこのクソガキ!!」

 「いけませんナタク!」 

 「そういう訳にはいかねーな。弟達の不始末は、兄である俺の責任だ!」

 「ホー!なかなか立派なこと言うじゃねーか…どうやら痛い目にあいたいらしいな!」

 「みたいっすね、兄貴‼」

 「ああ、俺でよけりゃ気が済むまで殴れ!!」


 男達にナタクは怯まず、向かっていった。いや、足元はガタガタと震えている。本当は怖いのだろう。


 「あいつ、いくらなんでも無茶だぞ!」

 「タイガーさん…」


 横でリリーナが顔を青くしている。


 「仕方ない、俺が行く!」


 俺は腕まくりした。

 実は旅に出る前俺は、ニコからカリボーを習っていた。いざって時にリリーナを守れる様、教えてもらってのだ。

 ニコだけでなくケティからも、自警隊直伝の格闘術を教えてもらった。

 どちらも完全な付け焼き刃だが、無いよりはマシ!

 俺が行こうとすると、


 「お待ちを!」

 「ピート!」


 ピートが静止した。


 「私が行きます。店のお客様を守るのも、店主の役目です!!」

 「ピート…わかった、けど無茶すんなよ!」

 「ハイ!」


 そう言ってピートは、向かっていった。

 一方、向こうでは、


 「この子達に手を出すのだけは、止めてください!」

 

 テレシアが涙目で懇願している。が、男はテレシアを突き放し、


 「テメーは後で相手してやる。それよりも…」


 男は左手でナタクの胸ぐらを掴み、右手を握り固めた。


 「ガキが、望み通りにしてやるよ!」


 握り固めた拳をナタクに振りかざそうとした。その時、

 ガシッ!

 ピートが両手で掴んで止めた。


 「止めなさい!」

 「あぁ、チッ、何だよ次から次と…」


 舌打ちしながら振り返った男は、顔色を変えた。

 そこには恐ろしい形相があった。

 普段から強面の顔をしているピートだが、今はナタクとテレシアを助けようと、勇気を振り絞り立ち向かった。その顔は、恐怖と緊張が入り混じって、凄まじいモノと化していた。


 「ヒッ、ヒギャーー£|~@@:’¡$$@(*·©‥‡†№§!!」

 「アッ、兄貴ー!」


 男は悲鳴をあげた。途中からは声にもならない声になっていた。

 そのまま2人は慌てて逃げていった。

 見かけによらずチキンだな…いや、あの顔を見たんじゃ無理もないか…


 「ハーハー…」

 

 ピートは特に動いた訳でもないのに酷く呼吸が荒れている。それだけ怖かってのだろう。


 「ヤッター!逃げてったぞ!」

 「助かったー!」


 子供達も大喜びだ。


 「大丈夫ですがピートさん?」

 「ハッ、ハイ!なっ、何ともないです!」


 テレシアがピートに聞いた。ピートは今度は別の理由で緊張している。そこに、


 「ピートさんスゴーイ!」

 「悪い人達追い返しちゃった!」


 と、先程までピートを怖がっていた子供達が、今は普通に接している。


 「皆、私の事怖くないのかい?」

 「確かに、最初は怖かったよ。けどもう大丈夫!」

 「そうそう、歌の歌詞通り、優しいおじさんだって分かったもん!」

 「「ねー!!」」


 そう、ロール作詞のポックルン焼きの歌。森に逃げたポックルン焼きだったが、最後の方で、悪い猛獣に襲われていた所を、自分を探しに来た店のおじさんに助けられ、仲直りして店に戻るという、パッピーエンドになっている。元ネタの歌だと、最後は食われて終いらしいけど、パッピーエンドの方がいいから、そこだけはロールに注文リクエストしたのだ。


 「おじさん、あたしハギも食べたい!」  

 「あっ、俺も俺も!」

 「ちょっと皆!贅沢を言っては…」

 「構いませんよテレシアさん!そうだ!皆、よかったら自分達で作って見ませんか⁉」

 「いいの⁉」

 「勿論!」

 「ヤッター!」

 「すみませんピートさん!」

 「いえいえ、子供達にこの店のお菓子の事を、色々と知ってもらう良い機会ですよ!」

 

 そう言ってピートは子供達を店に案内していった。


 「一時はどうなるかと思いましたけど、皆無事でよかったですね!」

 「ああ、それに…ピートもようやく自分に自身が持てたみたいだ!」


 急遽始まったお菓子作りの体験教室で、教えているピートと、お菓子作りをしている子供達、そしてそれを笑顔で眺めるテレシア。  

 そんな光景を俺達は邪魔しないよう、離れた所から暖かく見守った。


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