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引ったくり犯を追え

 俺達は引ったくり犯の子供を追った。


 「オイ、待てー!カバン返せ‼」

 「お願いだから返して!大事な物が色々入ってるの‼」


 俺等が叫んでも、犯人の子供は、当然ながら逃げ足を止めることはなかった。

 町中で通行人もそれなりにいる。人が障害物となり、犯人の子供もあまり早くは走れない様だが、それはこっちも同じ。

 イヤ、向こうは小柄だし、なによりも、俺もリリーナも運動神経はあまり良くない方だ。少しづつ引き離されていく。


 「クソ、このまま人混みにでも入られたりしたら、アウトだ!完全に見失うぞ!」

 「ハーッ、ハーッ…」


 リリーナは息を切らして苦しそうだ。


 「リリーナ、休んでてくれ。俺がなんとかするから、俺の荷物を見ててくれ!」

 「ハーッ…タイガーさん…ハーッ、スミマセン…お願いします…」


 リリーナは、そのまま近くの壁に手を付けて、立ち止まった。そんな彼女を自分の荷物を預けた、追跡を続行した。


 「待てー!」


 しかし、引ったくり犯の子供との距離はますます離れていく。リリーナにカッコつけた手前、逃したなんてことになったら、恥もいいとこだ。

 

 「クッソー、もう少し体力作りしときゃ良かったな…」


 必死に走って追いかける最中、俺は前世で聞いた話を思い出していた。

 陸上選手のベ○・ジョ○○ン。オリンピックでメダルを取ったこともある有名なアスリートの彼だが、旅行中、少女に財布をすられ、追いかけたがどう言う訳か逃げられてしまったという。

 それを聞いて俺は、体調悪かったのか?、その犯人の少女が将来オリンピックでメダル取ったりしてな、等と感じたものだ。

 当時は家族で笑い話にしていたが、今の俺に笑う資格ないなと感じた。無論、状況は似ているが、立場が全く違う…


 「って、また俺は何を呑気に考えてんだよ!!」


 俺が我に返って視線を犯人の子供に戻す。すると、子供はヨロヨロと立ち上がってる途中だった。見えなかったが、あの様子だと、どうやら走っていてつまづくかして、転んだみたいだ。シメた!と感じた。

 更についている事に、前方から自警隊の隊員が歩いてきている。パトロール中の様だ。

 俺が大声で隊員に捕まえてくれるように頼もうとした、が、その直後、

 

 ダッ!


 「あっ!」


 子供はすぐさま側の路地裏へと入っていった。どうやら向こうも自警隊の存在に気付いたようだ。


 「ここまで来て逃がすかよ!!」


 俺も急いで路地に突入した。通りと違い、少々狭い所だったが、小柄な子供には殆ど関係なかったのか、既に路地裏の出口に差し掛かっていた。向こうに人混みが見えた。


 「マズイ、あそこに紛れ込まれたら!…」


 捕まえるのは、ほぼ不可能だ。奴もそれを察した様で、余裕を見せ俺を方を向き、顔をニヤけやがった。

 が、次の瞬間、


 ガチャ!!


 「「!!」」


 出口前の辺にある勝手口のドアが開いた。

 そして次の瞬間、


 ドーン!!


 「ギャフン!」


 と、子供は悲鳴をあげて、ドアに激しく激突した。そしてその場に倒れ込んだ。リアルでギャフンって言う奴、本当にいんのかよ…

 その光景を見て俺は、中学の時に修学旅行て大阪に行き、そこで見た吉○新○劇の島○○代を思い出していた。


 直後にドアの向こう側から、ゴミ袋を手にした、白髪交じりのオッサンが現れた。どうやらゴミ捨てに出て来たところだった様だ。


 「おっ、オイ!坊主大丈夫か!」


 オッサンはうろたえながら子供を介抱している。

 子供も思いっきり顔を打ったらしく鼻血を出している。自業自得とはいえ、流石にカワイソウになった。

 とわいえ、俺的にはラッキーだった。


 「おっちゃん、そいつ引ったくり何だ!」

 「何だと!」


 こうしてようやく引ったくり犯の子供を捕まえることが出来た。ぶつかった拍子に放り投げたリリーナのカバンも無事取り返せた。


 「そうか、そりゃ来て早々災難だったな。まあ、取り返せて何よりだが。」

 「ああ!」


 俺はオッサンに事情を説明した。オッサンは子供の鼻に詰め物をしてやりながら、話を聞いている。


 「そんじゃカバンは返してもらうぞ!」

 「……」

 

 子供は何も喋らず、黙り込んでいる。ふてぶてしい奴だ。


 「コイツ事、どうする気だニイチャン⁉」

 「えっ、あぁそうだな…」

 

 追跡に必死で捕まえた後の事なんて考えてなかった。

 正直言って、面倒事は御免被ごめんこうむるが…


 「そうだな…」


 ここはやっぱり、自警隊にでも引き渡すのが普通かな?子供といはいえ、罪は罪だしな。

 などと考えていると、


 「まぁ、ナタク!何しているのです⁉」

 「!!あっ、シスター!」

 「シスターだって…」


 声の方を向くと、俺は一瞬天使が現れたのかと思い、目を奪われた。

 そこには、そう錯覚するくらい美しい、修道女姿の女性がいたのだった。



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