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最初の町

 翌朝、俺は早く目が覚めてしまった。しかも、うまく寝付けなかったので、少々寝不足気味だ。

 できる限り横に倒してはいるが、こんな一人掛けの、しかも、安宿の物なので弾力もあまり無いソファじゃ無理もない。それに比べ、リリーナはスヤスヤと寝息を立てて寝ている。向こうも安物のベッドに布団と枕だが、断然寝心地は違うだろう。

 寝直そうかと思ったが、これ以上寝れそうになかったのでやめといた。俺は枕代わりにしていた、丸めた安宿のタオルを適当な場所に置いた。

 その後俺は、部屋の外に出て、トイレに行きそれから洗面所で顔を洗った。安宿なので、風呂・トイレ・洗面所は共同だった。風呂トイレは男女別だが…洗顔しながら外を除くと外は夜明けの頃だった。

 洗顔を終え部屋に戻ると、リリーナはまだ寝ていた。起こしたら悪いので、出来るだけ音を立てないよう気をつけ、ソファの方に戻った。ソファに静かに座り、外からの僅かな明かりで帳面を付けた。宿代は前払い式だったので、既に支払い済みだ。宿代と昨日の馬車代を足して、旅の路銀から使った分を引いて計算する。少々面倒だが、キッチリ計算しておかないと、後で困るかもしれない。

 

 「えーと、宿代と馬車代を足して…それから…」


 ブツブツ言いながら計算していると、


 「うーん!」


 リリーナが起きてきた。俺の声で起きてしまったのか…


 「リリーナ…」

 「ふぁ~!あっ、おはようございますかタイガーさん。もう起きてたんですか?」


 軽くアクビしてから俺に気付いたリリーナが挨拶してきた。


 「おはようリリーナ!いやなに、目が覚めちゃってな。で、暇だから帳面付けてたんだ。それよりも、もしかして起こしちゃったかな…」

 「いいえ、大丈夫ですよ。私も普段から、これ位の時間に起きてますから。」


 リリーナは外の様子を見ながら答えた。

 そういえば俺と彼女が初めてあった日の翌朝、リリーナが朝食を用意してくれてたな。それもこの位の時間帯だったかな?妙に懐かしい気がした。

 それからリリーナも、洗顔等を済ませた。それが終わって戻ってきたリリーナは、俺のもとに来て、


 「タイガーさん、もしかしてあまり眠れなかってんじゃないですか?」

 「えっ、いや、そんな事ないぞ…バッチリ、よーく寝れたぞ。」

 「その割に顔色が良くないですよ…」

 「いや、本当に…寝れたぞ…」


 何となく誤魔化してしまった。彼女の事だ。俺1人ソファなんかで寝たもんだから、寝不足になったんだと、気に病むのではと、思った。彼女にはあまり気を使わせたくない。

 と思っていたら…

 

 グ~!


 と、腹の虫がなった。それを聞いたリリーナは


 「ぷっ、随分と大きな音ですね、タイガーさん!」

 「ハハ、そうだな。そういや昨夜はホリィのサンドイッチの残りを食ったくらいだったからな…」


 この安宿は、素泊まりなので食事は出ない。風呂に入れる時間が決まっている以外、後は各自の自由だ。

 

 「もう少ししたら、チェックアウトして、どこかで何か食おう。」

 「そうですね。」


 俺達は忘れ物が無いか荷物のチェックをし、適当な時間に宿を出た。

 何か食べたかったが時間が早いので、空いている店は少ない。


 「やっぱり少し早かったかな…手頃なとこが無いな…」

 「そうですね…あっ、あそこやってるみたいですよ!」


 リリーナが見付けたのは、小さな軽食屋だ。既に何人か先客が来ていたが、席が空いていたので待たずに入れた。マリーの店と似た雰囲気だが、そこそこ繁盛しているようだ。

 俺等はモーニングセットの様な品を注文した。少し待ってから、出て来たのは、トーストとサラダにコーヒーといった物だ。こっちでも、モーニングは似たようなものだった。

 俺等は朝食を食べ始めた。2・3口食べてから、

 

 「結構イケるな!」

 「そうですね。でも…やっぱりパンはホリィの作った方が美味しいですよ。風味から違います。」

 「確かにな。って、店の人に聞こえたら、にらまれるぞ!」


 俺は店員の様子を伺いながら、小声で忠告した。それを聞いたリリーナも、


 「イケない!そうですね…」


 と小声で返し、甘党の彼女は、砂糖を多めに入れたコーヒーを口に運んだ。

 店を出て俺等は町をブラブラと見て回った。この町には、これといった目的は無い。単に宿泊が目的だ。とわいえ、せっかくなので散策していたが、小さな町なので、昼頃にはやる事が無くなった。


 「だいたい見て回りましたね、タイガーさん。この後はどうします?」

 「そうだな…これと言った物も無いし…そろそろ出発しようかな?」

 

 等と、俺達はオープンテラスの店で小休止として、茶を飲みながら話していた。すると、

 

 「どーすんだよ、こんなに作っちまって!」

 「スイマセーン!!」


 といった大声が聞こえて来た。


 「何ですか、今の声は?」

 「分からないが…気になるな。行ってみよう!」

 

 会計を済ませ、俺等は声のした方へと走った。

 

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