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荷造りと墓参り

 遅れながらも誤字脱字報告をくださった方々。ありがとうございます。この場を変えて、御礼申し上げます。

 挨拶回りを終え、俺は今、旅立ちの準備をしている。

 準備といっても、大した荷物は無い。この世界に来た俺は元々、裸一貫も同然だった。借りているこの小屋にも、調度品の類は殆どない。あるのは、この小屋に元々あった汚いベットと、簡易的な調理台位だ。聞けばこの小屋は、牧場のオーナーが家を改築する際、仮住まい用に作った物で、改築が済んだ後は放ったらかしで、俺が来るまで物置き同然だったらしい。雨漏りしなかったのが不思議な話だ。

 一方、俺の私物であるのは、所持金・食料品・衣服・帳面と羽根ペンの筆記具位だ。それ等をテツがくれたリュックに詰めた。前世でリュックに荷物を詰める際、軽い物を下にして、重い物は上の方に入れるといいと聞いたのでその通りにした。最も、どれもそんな重さに変わりはないけど…


 「そうそう、これを忘れちゃならないな!」


 俺は小屋の隅の床板を外し、そこに両手を入れて、隠してある物を取り出した。それはツボだ。その中には俺がこの世界で稼いだ金が入れてあるのだ。そう言わばこのツボは金庫みたいなものだ。その金を革袋にまとめて入れ、リュックの中に隠すように入れた。旅には金がかかるからな。

 この小屋に元々あった物は、オーナーも好きにしていいと言っていたが、特に持って行くような物もないので置いていく。

 荷造りを終え、俺は簡単だが小屋の掃除を始めた。一応借り物だし、出ていく時に、綺麗にしておくのが常識だしな。「立つ鳥跡を濁さず」とも言うしな。


 「よし、こんなところかな?」


 こんな小屋でも、掃き掃除や拭き掃除をするだけでも、結構きれいになるものだ。俺は出たゴミを近くのゴミ捨て場に捨てた。これで後は出発するだけだな。


 「そういえば、リリーナの方はどうなってるかな?」


 俺はそのまま、リリーナの家へと向かった。

 彼女の家に着くと、丁度彼女が家から出て来るところだった。手には花束を持っている。


 「おーい、リリーナ!」

 「あっ、タイガーさん!どうしたんですか?」 

 「いや別に、特に用事がある訳じゃないんだけど、こっちは荷造りが終わってな。リリーナの方はどうなってるかなと思ってな…」

 「そうですか。私も終わってますよ。まぁ元々大した荷物はありませんけど。服とお金ぐらいですし。それから、旅立つ前にと掃除をしてたんです。」

 「そうか、俺も似たようなものだ。」


 本当に、俺が思った事と同じ様な事を彼女は口にした。やっている事もだ。「考えることは皆同じ」とはこの事だな。


 「手伝おうか?」

 「いえ、大丈夫ですよ。もう終わりましてから。元々、そんなに広くない家ですし。」

 「それならいいけど。しかし、長い事空けておいて大丈夫なのか?」

 「ええ、森の持ち主の方が、何時でも帰って来れるように、そのままにしておいてくれると言っておられたんです。なので、お言葉に甘える事にしました。」

 「へー、そうなのか…」

 

 親切な人だなと、俺は感心した。

 

 「ところでその花束は?」

 「これは…両親のお墓に備える用です。」

 「墓⁉リリーナの両親の?」

 「えぇ、旅立つ前にお墓参りしておこうと思いまして。」

 「…なぁ俺もついていってもいいかな?」

 「タイガーさんがですか?」

 「ああ、一緒に旅に出る訳だからな、挨拶しておこうと思ってな。」

 「いいですよ、こっちです。」


 俺はリリーナに案内され、彼女の両親の眠る墓に着いた。そこは彼女と出会った森の近くにある小高い丘の上だ。そこに小さめの墓がある。墓には「リリス」・「ターナー」と刻まれていた。それが彼女の両親の名前だ。

 母「リリス」と父「ターナー」。元々幼馴染だった2人は、村でも有名な仲良し夫婦で、ファーマ村・ブラウンタウンの人達とも親交が深く、マリーや森の所有者等もその口だったとか。リリーナが色々と顔が利くのも、両親に似たようだ。

 しかしそんな両親も、数年前に事故で亡くなった。何でも雨の日に外出した際、土砂崩れに巻き込まれ、2人共、命を落としたと聞いている。

 リリーナは留守番をしていたので事なきを得たが、当時はショックでかなり塞ぎ込んだらしい…その後、ホリィ達の励ましで何とか悲しみから吹っ切れたのだ。その後は村の手伝いなんかをして、皆に支えられながら懸命に生きているらしい。感心するよ。


 リリーナは墓に手を合わせた。俺もそれに倣って手を合わせた。

 暫くはして、彼女は手をおろした。


 「何だ、もういいのかい?」

 「ええ、今日は「行ってきます」と言いに来ただけですから。」

 「そうか…」

 「それに…何だか2人の声が聞こえた気がするんです。」

 「2人の声が…どんな?」

 「「行ってらっしゃい、リリーナ!」「気をつけてな!」って聞こえた気がします。」

 「それはきっと、両親は今も君の事を、見守ってくれているんだよ。」

 「私もそう思います。」

 

 そしてリリーナは墓の方を向き、


 「お父さん、お母さん、次は「ただいま」を言いに来る時だから、それまで待っててね。」


 そのまま俺達はその場を後にした。が、俺は直ぐに足を止めて、墓の方を振り返った。


 「どうしたんですか、タイガーさん?」

 「あっいや、なんでもないよ…」


 そう言うと俺は、再び歩き出した。実は足を止める直前、

 「リリーナの事を頼みます」と言われた気がしたのだ。

 その事を、彼女にはあえて言わなかった。声の主はおそらく、彼女の両親だろう。俺はそう直感した。その声に対し俺は振り返らず歩きながら、


 「任せてください、彼女は俺が守ります!」


 と、彼女の両親に誓った。


 次回、いよいよ旅立ちの予定です。

 下手な文章が続いたり、都合良すぎる展開になったりすると思いますが、温かい目で見てくだされば幸いです。

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