後片付け
その日は皆で雑談を続け、日が暮れてきた頃に、お開きとなった。
「そんじゃリリーナ・タイガー、後お願いね。」
「すみません、後片付け、手伝えなくて…」
ホリィが申し訳なさそうに言った。
「気にすんなよ、明日休みの俺らと違い3人は仕事なんだから。特に、ホリィは明日の仕込みあるし、ケティも明日は、早番なんだろ。」
「そうよホリィ、遠慮しないでいいよ、友達なんだから。」
「それじゃあ、お言葉に甘えて…」
「そんじゃまたねー!」
「少し早いけど、お休みなさい。」
「あっ、リリーナちょっと…」
「何、ケティ?」
ケティがリリーナを人の元へと手招きした。近寄るとケティはリリーナに小声で耳打ちし、
「リリーナ、2人っきりだからって、アイツと変な事したら駄目だぜ、人の家なんだから!」
「!ちょっ、何言ってんのよケティ!」
リリーナが顔を赤くした。
「隠さなくていいんだよ。リリーナ、あんたタイガーの事、気になってんでしょ⁉」
「ち、違うわよ私はそんな…」
「兎に角、ここは人の家、しかも飲食店なんだし、やるなら何方かの家でしなよ!」
「へ、変な事言わないでよケティ!」
ホリィは更に顔を赤くした。
それに対し、ケティは少し真面目な顔をした。
「リリーナあたしはね、友人としてアンタだけでなくホリィやミミ皆に幸せになってもらいたいのよ。中でもあんたには、特に幸せになってもらいたいの。早くに親を亡くして苦労して来たのを知ってるから、尚更ね。」
「ケティ…」
「女の感なんだけど、タイガーなら、アンタを幸せにしてくれそうな気がするのよ。」
「…」
「まっ、そんなに急ぐことないから、色々とゆっくり考えな。」
そう言って、ケティ・ホリィ・ミミの3人は帰って行った。
リリーナはタイガーと店の片付けをしているが先程のケティの言葉が頭から離れないでいるのだった。
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「よーし片付いたなリリーナ。」
「ええ、お疲れ様タイガーさん。」
俺とリリーナは店の片付けを終えた。これでマリーが帰ってきたら即座に開店できる。は、言い過ぎか…
それはそれとして…
「リリーナ、さっきケティに何言われたんだ?」
「!えっ何かって…」
「いやだってよ、さっきから様子が変だぞ?半分上の空みたいだったし。」
「あっいえ、何でもないです。さっきのはその…グチです、そう!ただのグチです!」
「…そうか、それならいいんだ(グチとは思えないんだがな…)」
「ええ、大丈夫ですよ、本当!」
リリーナは明らかに、何かを誤魔化そうとしているような雰囲気だったが、それ以上追求しないほうが良さそうだったので、しなかった。それよりも、俺の方こそ大事な話をしようと思っている事を思い出した。
「それよりもだリリーナ…」
「何ですタイガーさん?」
「少し、話があるんだ。」
「話って何です?(何なのまさかケティが言ってたみたいに…)」
ふと見るとリリーナが顔を少し赤くしている。何か勘違いをさせてるのかもと俺は感じた。
「あっリリーナ、別に変な事しようってんじゃない、少し俺の相談に乗ってもらいたいだけなんだ。」
「!あっその…勿論ですよ。わかってますから…(ヤダ、私ったら何考えてんのよ…)」
俺はリリーナが落ち着いたのを見計らい、話を切り出した。
「リリーナ実はな、少し前からが考えてたんだが…」
「前から考えてた…」
「俺…」
と、俺は少しためてから話を続け、こう言った。
「旅に出ようと思ってるんだ!」
それに対しリリーナは、
「えっ…」とだけ発し、少しの間、沈黙が続いた。
今年最後の更新です。来年も相変わらずのスローペースでの連載になると思いますが、よろしくお願いします。