チンピラ
「オラオラ、こんなとこで長々と行列作りやがって、邪魔なんだよ!邪魔!」
そこには、少々ベタな感じのチンピラ3組人が、怒鳴り声を上げていた。
「オラ!失せやがれ!」
そして、並んでいたお客を追い返しだしたのだ。この町にも、こう言う質の悪い輩は居るんだな。
「何なんだよあんた等は。営業妨害は止めてくれ。」
「うるせぇ!」
「邪魔だから邪魔って言ってんだよ!」
「たかが食パンごときに大層に並びやがって。こんなもん。」
そう言うと1人の男が、店で買い物を終えた主婦の持っている食パンの袋を取り上げてしまった。
「おい、お客さんに手を出すのは止めてくれ!」
俺が静止しようとしたが、間に合わず、男はパンの袋を地面に叩きつけ、そのまま踏みつけてしまった。この光景に、周りのお客は蜘蛛の子を散らす様に逃げ出し始めた。当然と言えば当然だ。
「辞めろよあんた!」
「ケッ!」
俺が声を荒げて文句を言うも、男は全く悪びれる様子も無く、更にツバまで吐きやがった。俺は怒りを覚え、次の文句を言う前に後方から
「止めて下さい!」
と、聞こえて来た。そこには悲し気な顔をしたホリィが立っていた。
「パンを粗末にするのは辞めて下さい。パンには何の罪も無いんです。」
「何だ何だ、ねーちゃん誰だ?」
「私は、この店の店主です。」
「ほー、アンタが店主か、よーし丁度いい。行列作られて迷惑してたんだ。迷惑料を払ってもらおうか!」
男は無茶苦茶な事を要求し出した。
「迷惑料だなんた、そんな…」
「払わねーなら、店続けられない様にしてやってもいいんだぜ⁉」
そう言うと男はホリィの服を乱暴に掴み、自身に近づけた。俺は黙っていられず、
「辞めろ!」と、ホリィを助けようと近づくも
「うっせぇ!テメーは引っ込んでろ!」
「あうっ!」
と、逆に蹴り飛ばされてしまった。
「痛ってー…」
「タイガーさん、大丈夫ですか?」
それまで離れて所に居たニコが、蹴飛ばされて尻もちをついている俺に駆け寄って来た。
「俺は大丈夫だ。それよりホリィを…」
「ホリィ…」
ニコがホリィに視線を移す。ホリィは今にも連れて行かれそうだ。
「ここじゃあれだ。場所移そうぜ。」
「おうよ。」
「マズイ、このままじゃホリィ、奴らに何されるか分かんないぞ…」
「ホリィ…」
友達のピンチを目の当たりにし、ニコの表情が変わった。先程まで怯えていた顔が、今は覚悟を決めた様な表情をしている。そして彼女はホリィと男達の方に向かって行った。
「さぁ来な。」
「嫌っ!」
「ホリィ!」バシッ!
「!何だ?」
ニコがホリィを掴む男の手を払った。
「大丈夫、ホリィ?」
「ニコ!」
「何だ、テメーは?」
「ホリィの友達です。これ以上、ホリィに乱暴な事はさせません!」
「ほー、いい度胸じゃねーか、ねーちゃん。」
「ニコ無茶だ!逃げろ!」
俺がそう叫ぶも、ニコに逃げる気配はない。
「いーだろう。だったらテメーも可愛がってやんぜ!」
男がニコに掴みかかろうとする。それを見て、
「ニコ!ホリィ!」
俺は無我夢中で2人を助けようと、2人の元へ走った。特に勝算がある訳ではない。兎に角、ジッとしてなんていられなかった。
が、その直後、眼前に何かが飛んで来た。そしてそれは、俺の目の前に墜落し、砂埃をあげた。
「へっ…何なんだ…一体…」
俺が呆気にとられ、飛んで来たものを見た。何とそれは、先程ニコに掴みかかった男だった。
その男は、無様にもそのままその場で、大の字に伸びてしまっていた。