女子会
それから暫くして、紙袋を持った俺は、約束通りホリィの店に戻って来た。店の前に着くと店の2階、つまりホリィの寝室の方から話し声が聞こえて来た。しかも、あからさまに、1人2人の量ではない。
一先ず、俺は入店した。
「おーい!リリーナ、ホリィ、戻ったぞ。」
「あっ、お帰りなさいタイガーさん。2階に居るんで、上がって来て下さい!」
言われた通り、俺は2階に上がった。
するとそこには、
「皆、この人が、今話してたタイガーさんよ。」
「この人が…」
「顔は…まーまーってところね。」
「ちょっと、初対面で失礼よケティ!」
「イヤイヤ、あからさまに人が何か増えてるぞ⁉リリーナ、ホリィ!」
そう、2階にはリリーナとホリィ以外に、3人の女性がおり、机の上にお茶と茶菓子が乗っており、ちょっとした女子会の様になっていたのだった。
「すみません、皆、私達の友達です。」
「ここに戻ったら、3人が来てくれてたんです。なので、お茶とお菓子出しておしゃべりしてたんです。」
彼女等の事と、事情を説明するリリーナとホリィ。
「そうか、俺はタイガーだ。よろしく。」
俺が簡単に挨拶をしたら、彼女達も自己紹介をしてくれた。
「よろしくね。あたしはケティよ!」
と、初対面で俺をまーまーと評価した、黒髪の気の強そうな少女が言う。同時に手を出してきたので、握手を交わしたが、なかなかの握力だった。見れば、良い体格をしている。
「私は…ニコです。よろしくお願いします…」
と、茶髪でケティと対象的に、なんとも大人しそうな少女が言う。
「私はミミ。よろしく!」
と、ケティを窘めた漫画に出てくるエルフのような風貌の少女が言う。最も、このモンスターの類のいないこの世界、当然エルフなんて種族も存在しないので、普通の人間だろう。
と、挨拶を済ますと、中々個性的な友人達の中に俺が加えられた。これで男1人に女5人の計6人が、この余り広くない部屋に集まっている。
傍から見たらハーレム状態で羨ましがられるかもしれないが、俺は少し居辛い気分だ。
俺は女性経験が全くない。女子とは家族親戚以外、学校の先生や同級生の子と、必要最低限の会話をした位だ。
なので、女子とは何を話せばいいか解らない。
前世でも、1人でリアル脱出ゲームに参加して主催者側にチーム分けされた時、俺以外、女子ばっかりでとても気まずかった思い出がある。主催者側に
「もっと考えてチーム分けしてくれ!」
と1言文句言ってやりたかった位だ。
と、無駄話はこの位にして話を戻そう。
「早速だが、俺等はホリィの店の事で集まっている訳だ。」
「そうそう、何とかホリィの店を軌道に乗せるんでしょ。で、マリーさんの店を繁盛させ、最近、町の子供達の間でベーゴマだの、カードだのと色々流行らせた実績を持つ、アイデアマンのアンタに白羽の矢が立ったわけね。」
「(白羽の矢って…)いや、アイデアマンって程じゃないよ。」
「で、何か閃いたの?」
「いやまだ何とも言えない状態だ。それは兎も角、ケティ達が来てくれていたのは、調度いい。これを。」
そう言うと、俺は紙袋を机に置き中身を取り出して並べた。それは多種多様のパンだ。
「何です、パンがこんなに…」
とニコが言い、
「ホリィの店のとは違うみたいだけど…」
とミミが言った。
「これはだ、例の店のパンだ。」
「例の店のって、ちょっとアンタ、向こうの売上に協力してどうすんのよ。」
とケティが声を荒げた。
それに対して俺は、
「落ち着けって。これは調査の為だ。今から皆であの店の品を試食して貰いたい。それで、皆の意見を参考にアイデアを練ろうと思っている。」
「うーん、まぁそういう事なら…分かった、やるわ!」
「私も協力するわ。」
「それじゃあ、私、何か飲み物持ってきます。」
「ああ、お願いねホリィ。」
「あっ、手伝うよ!」
「ありがとう、ニコ!」
「あたし、ココアが良いな。濃いめで!」
「ちょっと、ケティ!」
ミミが再びケティを窘めた。
という訳で、この6人で向こうの店の商品の試食会が行われた。