豪華景品
突如、店の中に運び込まれた大量のパンの山に人々が、何だ何だとザワついている。
その疑問に答えるように店長が、
「こちらのパン。勿論、タダのパンではありません。一見して普通のパンですが、なんと中には、豪華景品が入っているのです。」
その言葉に客達は更にザワついた。あちこちから
「豪華景品!」
「本当かしら?」
等というフレーズが聞こえてきた。
続けて店長が
「そう、豪華景品です。全てのパンの中にアクセサリーや宝石、又は当店で使える割引券等が入っています。」
「嘘、本当に?」
「本当です。更に言うと大当たりは超高級品が入っています。」
「本当なのか…」
店内の客達は半信半疑らしい。当然だろう。そこで俺は思い切って店長に問いかける事にした。
「おい、待てよ。本当に景品何て入ってんのかよ?客集めの為のハッタリじゃないのか?!」
と、するとこうなることを店長は想定していたのか、表情をピクリともさせずに答えた。
「よろしい。では試しに、お見せしましょう。」
そう言うと店長は山積みのパンを1つ手に取ると、おもむろに割って見せた。すると中から紙包が出て来てそれを開くと銀のイヤリングが出て来た。
「ご覧の通り、出て来ました。こちらはさほど高い物ではありませんが、先程申した通り大当たりは超高級品となっております。さぁ皆様、早いもの勝ちですよ。逃したら損ですよ⁉」
店長が少し怪しく見える笑顔を見せた。
それと共に何名かの客がパンを買い出した。
買った客は店中でパンを割っている。すると確かに先程の店長の実演同様紙包が出て来た。中からは本当にアクセサリー等が入っている。
「本当に入っているみたいですね。」
「あぁ、見たとこ大して高い景品は出ていないがな。(て言うかこれ、衛生上大丈夫なんだろうな?)」
と俺が疑問を抱いていると、
「出たー!大当たりよ!」
と、少しわざとらしく感じる位の大声が聞こえて来た。声の主を見ると、主婦風の客が大はしゃぎで割れたパンを片手にはしゃいでいる。もう片方の手で、素人目にも高級品と解る宝石を掲げている。
それを見て本当に景品が入っいると解るや否や、他の客も景品入りのパンに殺到した。まるでゴールドラッシュだ。現金なものだ。本当に人間は欲深いなと俺は感じた。って、この世界で一山あげるとリリーナに宣言してしまった俺が言えた義理じゃないけどな…
それを見て、リリーナとホリィは、
「スゴイね。皆、殺気立ってるわよ…」
「これはとてもじゃないけど、私には真似できないは…」
と、この光景に少々引き気味だ。
確かにホリィには、出来ない方法だな。
そおこうしている内に、ワゴンのパンが少なくなって来た。しかし、無くなる前に追加のパンが運び込まれて来た。更に人々が群がっている。大当たりを引いた人がごく少数だが、姿を見せている。それが更に、人々の購買意欲を高めているようだ。
「タイガーさん…」
リリーナが不安げな顔をしている。
が、俺はこの光景に少し違和感を感じ始めていた。もし、俺の感が正しければ…
「2人共。先に店の方に帰っていてくれないか?」
「えっ、タイガーさんは?」
「俺はやる事があるから、もう少し残る。後でホリィの店で会おう。」
「…分かりました。行こう、ホリィ。」
「う、うん…」
そう言うと、2人は店を後にして行った。それを見送ると、俺は
「さてと、人混みは好きじゃないんだが…2人の為だ。」
そう言うやいなや、俺はパンに群がる人混みに向かって行った。