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パン屋

 後日、リリーナと共に俺は町の外れまでやって来た。

 この日は2人共、仕事は休みだった。

 人通りの余り無い道だった。そこには、一軒のパン屋があった。俺等の目的の場所はココだ。


 「ここがリリーナの友達がやってるパン屋か?」

 「えぇ、ホリィって娘がやってるんです。」

 「しかし、話には聞いてたけど、小さい店だな。」


 その店は、本当に小さい店だった。余っていた土地に無理して作ったと感じる程の大きさで、売り場は畳3畳分程のスペースしかなく、商品棚等に更にスペースを取られ、客が3〜5人位しか入れそうにない。奥にレジ、更に奥に厨房といった感じだ。


 「確かに小さいですけど、味はいいですよ。ほら、私達が出会った次の日の朝、食べたパン。あれもこの店の商品ですよ。」

 「あれがか。確かに美味かったよ。」


 あの時のパンはお世辞でなく、本当に美味かった。バターやジャムを付けなくとも、そのままで十分いけた。


 そもそも、俺等がここに来た理由(わけ)は、このパン屋の店主、つまりリリーナの友人の相談に乗ってほしいと言う理由だった。その友人は子供の頃からパン屋を夢見ていて、数ヶ月前、俺とリリーナが出会う少し前にオープンしたらしい。

 しかし、客の入があまり良くなく、しかも、近くに他の町で有名な大型パン屋の支店が出来てしまい、更に苦行に立たされているという。今はリリーナ等の友人達が買ってくれているので、何とか保っている状態だとか。が、それもいつまで持つか分からないという。

 そこで、リリーナが俺に相談を持ち掛けたというわけだ。何でもマリーの店での事をリリーナが彼女に話して、自分も何かアイデアを欲しいと頼まれたらしい。

 正直言って、マリーの店での件は、たまたま上手く行っただけだ。俺みたいな素人に何が出来るから分からない。現在は町で玩具のプロデュースに力を入れてはいるが…料理は完全な素人だ。ベーゴマにカードと、次は何をプロデュースするか考え中だ。


 とは言え、リリーナには色々世話になったし、相談くらいなら、乗ったっていいだろうと、引き受けてしまった。

 等と思っていると、店から1人の女性が出て来た。


 「あっ、リリーナ!来てくれたの?!」


 どうやらこの人が、リリーナの友人のホリィと言う人らしい。リリーナと同様、純朴な感じの娘だ。


 「ええ、もちろんよ。友達でしょ。」

 「ありがとう、リリーナ。折角の休みの日なのに…」

 「いいのよ、気にしないで。そうそう、この人が例のタイガーさんよ。」

 「あぁ、タイガーだ、よろしく。」


 リリーナに紹介され、俺も簡単に自己紹介を行った。


 「ホリィです。ご存知の通り、ここでパン屋を経営しています。」

 「あぁ、で単刀直入に言うけど、俺に相談に乗って欲しいんだって。」

 「あっはい、マリーさんの店を繁盛させた実績のある方にお話を聞いてもらえないかと、厚かましいようですが、リリーナに頼んで紹介して貰ったんです。」 


 ホリィは畏まって答えた。

 実績と言われてもな…もう1度言うが、本当にあれは、たまたま偶然に上手く行っただけの話だ。まぁ、ここまで来たんだ。乗りかかった船とも言うしな。


 「いいさ。俺もリリーナには世話になってるし、話くらいなら、いくらでも聞くよ。」

 「ありがとうございます。さぁ、店の方へ。」

 「今、営業中でしょ?店の中で大丈夫なの、ホリィ?」

 「うん、いいよ。今日の分の商品は仕上がってるし。そもそも、お客さん居なくて暇だし…」


 何とも不景気な話だなと俺は思いながら、リリーナ・ホリィと共に店の中に入った。

 

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