対策とお礼
俺がベーゴマをヒットさせてから早一月近く。今も男子児童の間でベーゴマは盛んに行われている。そんな中、新たなブームが生まれていた。
「よし!連勝連勝!」
「今日も絶好調だな。」
「あぁって、お前それ…」
ベーゴマ勝負を見物している少年の手には、お菓子の紙箱が握られている。
「あぁ、ヤンバールのカード付きのやつだ。」
「やっぱり。で、どのカードが出たんだ?」
「これだ!」
少年は自慢する様にカードを見せ付けた。
「スゲー!初めて見るやつだ。」
「だろうな。レアらしいぜ。」
俺がプロデュースしたカードのオマケ付きの菓子は、子供達の間で瞬く間に噂となった。そして口コミもあってから、トントン拍子で売上を上げていった。最初はカードに慣れない子供達だったが、ベーゴマ同様、次第に慣れ親しんでいった。ベーゴマを沢山持っているのが一種のステータスであるのと同じで、カードをどれだけ集めたかがステータスとなっているのだ。因みに、子供達の間で、
「俺の欲しいな…ても、食べ切らないと買えねーしな。」
「バター風味は飽きたから、次はチョコ味を買うか。」
そんな会話も聞こえてくる。その理由は、菓子を捨てることを防止するためだ。かつて俺がいた世界でも、昔、カード付きのスナック菓子が流行ったらしい。ところが、子供達の目当てはカードだけでスナック菓子の方は食べずに捨ててしまうケースが相次いだらしく、それがニュースで取り上げられるくらいの問題となり、結果、そのスナック菓子は販売中止になってしまったと聞いている。
それを防止する為の作で、菓子には子供達の保護者等が、菓子を食べたのを確認しサインしてもらう。それと引き換えでないと買えない、といったシステムを採用している。このシステムは面倒だと、あまり評判は良くなかったが、親御さん等からは良い庵だと言ってもらえた。
もう一つ作は味のバリエーションだ。一種類だと飽きてしまうので、味は複数種類で、カードの混入比率は公平に設定した。おかげで、目当ての為に、食べたくない味を買う、なんてことが無く、どの味にするかといった楽しみも加えられ、こちらは評判が良かった。
そんなこんなで俺の懐はかなり潤った。プロデュースし販売開始後は、売れるのを待つだけなので、何もしてなくても金は入ってくる。その金でまず色々と世話になってるリリーナにお礼をする事にした。
リリーナの家にて
「と、言う訳でだリリーナ。少ないけど世話になったお礼だ。受け取ってくれ。これで、服でも何でも買ってくれ。」
「そんな、こんなの受け取れませんよ…」
リリーナは困り顔だ。
「気にしないでくれよ。君には出会った時から色々してくれて、感謝してんだよ。これはせめてもの気持ちだ。」
「でも…」
「これくらいしないと俺の気が収まんないんだよ。」
「そう言われても、流石に現金は…」
あれこれ説得してもリリーナは、首を縦に振らない。埒が明かず
「分かった。ならこうしよう。とりあえずそれは、君に預けておく事にする。」
「預ける?」
「そう。で、いつの日かそれを受け取ってもいいと思える時に、そのまま君の物にしてくれ。その気にならないなら、そのままの状態にしててくれて良い。それでどうだ?」
「…分かりました。」
リリーナは了承した。そしてその金の入った封筒を、家の奥の方へと締まいに行った。その姿を見て俺は、
「(少し強引だったかな?そりゃ、いきなり金を受け取れなんてな…)」
と思い、自分のデリカシーの無さを反省した。
等と考えていると、金を締まい戻って来たリリーナが、席に座るわ否や、
「ところでタイガーさん。」
「ん、何だよ?」
「話は変わりますが、相談に乗ってほしいことがあるんです。」
「君が?何か悩みでもあるのか?」
「いえ、私じゃなくて、私の友達の事なんです。」