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ステージとパレード

場面は戻り、聖堂にて姫様が、フルーツアズパイを実食された。

姫様は、フルーツアズパイと共に出された茶を飲み干した後、


「実に美味(おい)しゅう御座いました!!」


と述べた。

これは、日本の茶道(さどう)における、


「結構なお点前で」


みたいなものなのだろう。流石は姫様。この辺りも又、所作が美しかった。

それを聞き聖堂のお偉方は、


「ありがたき御言葉です!!」


と返した。

そしてお偉方は、自身の側にある台に乗っていた、本を手にすると、栞を挟んでいたページを開き、音読(おんどく)し始めた。

堅苦しい…なんて言ったら失礼か!?

もとい、随分と難しい文で、内容はサッパリ分からなかったが、どうやらありがたい教えの様だ。地球で言うところの、聖書の様なものだろう。

聖書?を一通り読み終えると、再び栞を挟み、本を閉じて元あった台に戻した。

それからお偉方は、回れ右をして、観覧していた観覧者達の方に体を向け、


「お集まりの皆様!これをもちまして、今年度の建国祭における、【代食(だいしょく)の儀】を終わりにいたします!」


と発した。

どうやら今見たのは、代食の儀と呼ぶようだ。神様の()わりに()べるから、代食か…

それと共に、カーテンは閉じられ、姫様はカーテンの向こうに消えていた。

代食の儀が終ると、観覧者達は聖堂から離れていった。コレで終わりのようだ。


俺等も聖堂から離れ、露店の並ぶ区画に戻った。


「さて、これからどうスッかな!?」

「どうやらこの後、メインステージでイベントか何かするみたいですよ!?」


リリーナが祭のパンフレットらしき物を見ながら言った。まぁ、パンフレットと言っても、あからさまに手書きなものを、ガリ版刷りとかいうやつで、コピーした、小学校のプリントレベルのもの1枚だけだがな…

パンフレットによると、イベントの予定時間は午後からだ。

俺等は露店の品々で昼を済ませた。


俺は串焼きの肉。

リリーナ・レイナ・サキはドーナツ。

レオは兎に角、あれこれと手当たり次第。


とまぁ、こんな感じだ。

時間が近づき、メインステージに向かう途中、


「よっ、あんちゃん達!!」

「おお!」


ボンと出くわした。


「何処に行くんだ!?」

「メインステージだよ。なんかイベントあるみたいだからな!」

「偶然だな。俺もだ!」

「俺もって、店の方はいいのかよ!?」


昼頃の今の時間は、書き入れ時だろう。


「大丈夫大丈夫!店の方は、完売だよ!」

「完売!?」

「ああ、お陰様でな、フライドポテトに唐揚げ。どっちも大盛況でな!予想以上の売れ行きで、用意していた分、昼には無くなっちまってな…」

「そんなに売れたのかよ…」

「ああ。だから、もう店じまいだ。片付けも済んで、暇なんで祭を回ってんだ。ほら、セリの方もアソコで…」


ボンが指差す方では、奥さんのセリが楽しそうに茶を飲んでいる。一緒に飲んでいるのは、この国の主婦などのおばちゃん連中だ。

そのおばちゃんの1人に見覚えがあった。


「タイガーさん、あの人…」

「あぁ…」


その1人というのが、入国料を支払った窓口のおばさんだった。さっきの門番の2人と同様、今はオフの様だ。

向こうも俺等に気付き、


「あらアンタ達、どう楽しんでる!?」


と、フランクに話しかけてきた。


「ええ、いい(ところ)です!」


と、リリーナが返した。

そうこうしてたらイベントの時間になった。メインステージに急ぐと既に沢山の人が。空いてるスペースで遠目だが、何とか観覧出来た。

そしてイベントが始まった。


メインステージでは、大道芸人達によるジャグリングにサーカス並の曲芸が次々と披露され、それが終ると今度は、マジシャンによるマジックショーが行われた。内容は、ハンカチからハトをだしたり、帽子(シルクハット)から花を出したりといったものだった。観客は結構盛り上がっているものの、言っちゃ悪いが、前世の世界で(TVだけど)ド派手なマジックを見てきた俺的には、何ともオーソドックスで古いものに感じてしまった。が、見ている内に、だんだんと味わい深く感じるようになっていった。

それらが終ると今度は笛や各種弦楽器、太鼓類を持った人達が次々と出てきて、演奏会が始まった。前のとこの収穫祭でもあったな。やっぱ祭では、音楽系は付き物らしい。

演奏会でメインステージは終了だ。


夕方になって暗くなりかけると、会場の中心部が騒がしくなった。

向うと派手な衣装を着た男女が踊りながら列を成して練り歩いている。列の中には演奏会で見た演奏家達が演奏を、大道芸人達が芸をしながら共に練り歩いている。

パレードだ。どうやらコレが、この祭のメインイベントみたいだ。

列の中心部には、時代劇で言うところの、殿様が乗るような籠があった。どうやらそこに、誰かが乗っているようだ。

見物客達も、一緒に踊ったり歌ったりと、騒いだりしている。

パレードは祭の会場中を一回りするように移動している。俺等も続いた。


「一体何処に向かってるんだ!?」

「あっ、アソコに祠があるわよ!」


レイナが刺す方に、少々古いがしっかりした造りの、体育倉庫位の大きさの祠があった。

どうやら列は、そこに向かっているようだった。




本文に出てきた、「フランク」という言葉。

日本語では、「気さくな」又は「フレンドリーな」というイメージがありますが、英語では、「正直言うと」「悪意はないけれど」という感じになるそうです。

本作では、前者の意味合いです。

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