スナック菓子
「はぁはぁ…やれやれ、危なかったぜ…」
激しく息切れしながらも安堵するボン。
自警隊に必死に不審物でないことを説明し、何とか新しい屋台を返してもらえたボン。
「全く、しっかりしとくれよアンタ!」
奥さんのセリがボンを叱咤する。
「わりーわりーセリ!しっかし、本当に危なかったぜ。自警隊の基地内の保管庫に運び込まれたら、金取られっからな…」
不審物等と見なされ、自警隊に回収された品々は、一時的に自警隊の基地内の保管庫に入れられる。後で、持ち主が引き取りに来た場合、身分確認やら何やらされる。
それで問題ないと分かれば、物は返してもらえるのだが、例え短時間でも保管庫に入れられていたら、保管料等の名目で、金を取られるのだ。
ソレも、結構な額を…
本当に、レッカー移動された車や、撤去された自転車みたいだな。
保管料を取られたら、飲みに行く為の小遣いが無くなっていたので、安堵感も一入だ。
それから場所を、近くの家に移った。ここは、ボンとセリと(今はいないけど)露天商仲間が、祭の準備及び宿泊用に、短期間だけ借りた家らしい。備え付けの家具等は壊したりしなければ、自由に使っていいという。
ウィークリーマンションみたいなものだ。
「ところで、今回のお祭でも、例のフライドポテトに、唐揚げを売られるんですか?」
「ああ!先日の収穫祭でも、大好評だったからな!更に、新しい味付けも色々と考えたんだぜ!」
「へぇ~どん…」
「どんな味だ!?」
レオが割って入って来た。
本当、食い物の事となると、目の色が変わる奴だな…
「よ~し、チョイと待ってな。今、試作がてら作ってやらー!」
「うお~!」
「ちょっとレオ君…すみませんボンさん…」
「イイってイイって!どっちにせよ、本番に向けて試作するつもりだったしな。良い機会だ、味見してくれや!」
そう言って、備え付けの調理具で調理を始めたボン。流石、慣れてるだけあった、手際がいい。
次第にいい匂いが漂って来た。
「出来だぜ!」
やがて、唐揚げとフライドポテトが完成した。
側には、色々なソース等が入った小鉢がある。
「さあ、好みで味付けして食ってくれ!」
早速、頂くこととした。
出来立ての熱々の唐揚げとフライドポテト。フォークに刺して、側のソース類を付けて頂いた。
「うん!辛口だけど美味いぞ!」
「美味しいです!ソースを付けることで、サッパリして食べやすくなります!」
「コッチのタレを付けてもイケるよ姐さん!」
「うめ~!!」
それぞれ、感想を述べる俺等。レオは無我夢中で食らいつく。
流石はプロだ。短期間でコレだけ相性のいいソースを考えつくとは。
ただ、出された時点で気付いたが、フライドポテトが随分と細長いタイプになっているのだ。
理由を聞くと、
「実は、ある女性客から、ポテトが太すぎると苦情(クレー厶)が来てな…」
「太すぎる?」
「ああ、太すぎて食いづらいだの、口紅が落ちるってな…それで、出来るだけ細くしたんだよ…」
「太すぎるか…」
「細くするのは、その分、手間も時間も余計にかかるんだよな…」
「……」
「どうしたんだよさっきから黙って…」
「ボンさん、今は話しかけないで下さい!タイガーさんが、こうなった後、スゴいアイデアを出されるんですよ!」
「そうなのか?…」
リリーナが周りを静止してくれたお陰で、俺は、アレの存在を思い出した。
そして、ボンに台所と材料のジャガイモを借り、調理を開始した。
工程は、
①ジャガイモを薄くスライスし、暫く、水にさらす。
②ジャガイモの水気を切り、それを高温の油で揚げる。
③揚がったら、塩等で味付けをする。 以上!
至って簡単だ。
そう。もう説明するまでもないだろう。今回俺が作ったのは、スナック菓子の定番、ポテチこと、ポテトチップスだ!
先程の、客からクレームが来たという話を聞き、思い出した。ポテチは元々、客からのクレームが元で生まれたのだ。
とあるレストランで、客からフライドポテトが厚すぎるとクレームが来た。コックが薄めに作り直すも、それでも厚いと言われ、何度も作り直された。
腹立ったコックは、ジャガイモをこれ以上ないってほど薄ーくスライスし、それを揚げて出した。
すると、パリッとしていて美味いと、予想外に好評だった。コレが、ポテトチップス誕生秘話だ。
それはともかく、早速、出来立てのポテチを頂いた。
パリッ!
懐かしい食感が俺をジーンとさせた。
勿論、独り占めはしない。リリーナ達にも食べてもらった。
「うん!美味しい!」
「この食感がたまらないは!」
「うめ~うめ~!」
コレもまた、皆に大好評だった。特にレオは、両手で片っ端からポテチを口に運んでいく。コイツは美味けりゃ何だってOKなんだよな…
ボン等にも好評だった。けど、ポテチよりも、フライドポテトや唐揚げの方が見栄えが良いというわけで、流石に露天には採用されなかった。確かに、祭の屋台でポテチは見たことないからな…
何だかポテチを思い出したら、他のスナック菓子も食いたくなったな。かっ○えび○ん・ハッ○ーター○・じゃ○りこ…とか。
しかし、技術的に難しい(と言うより無理)か…
まぁ、それは置いといて、ボン夫妻は祭の準備がある。邪魔しちゃ悪いので、この辺で御暇した。
帰る最中、
「タイガー、ポテチもっと食いてーぞ!」
レオが強請ってきた。
リリーナが嗜めるも効かないレオ。
「分かった分かった、機会があったらまた、作ってやるから!」
と、約束した。
まぁ、何時になるかは分からないけどな…と思っていたが、その機会は、予想外に早くやってくるのだった。