類は友を呼ぶ
ポックルン焼き。
それは、この世界で有名な、森の小さな精霊が活躍する児童向けの絵本の主人公ポックルン。それをモチーフにしたアズビー入りの焼き菓子の事だ。元の世界の、たい焼きに近い。
これもまた、俺のアイデア(正確に言うと、元の世界のモノから来てるのだが…)で出来た商品で、ピートの店の看板商品だ。
それが今、俺等の目の前にある。
「ご存知でしたか、ポックルン焼き!?」
「ええ。以前ホープスという所で…」
「ホープスで…」
「あっ、もしかしてピートが…」
「あら皆さん、ピートさんのお知り合いで!?」
「やっぱり…」
その後、店員の女性(名前はサキ。名札より)と話した結果、この店はピートが菓子作りを学んだ場所の一つらしい。ピートは複数人いる、この店の店主の弟子の一人とのこと。
そして今、ピートを始めとする、その弟子達が戻って来ているという。何でも、その店主の両親が最近、相次いで亡くなったらしく、その訃報を聞いて、戻って来たという。
ナタクが言っていた、用事とはその事らしい。
「ピートさんは、今何方に!?折角なので、挨拶しておきたいんですが…」
リリーナがサキに尋ねるとサキは、
「少々お待ち下さい!」
と言って、店の奥の方に。
少しすると戻ってきて、
「ピートさんに、皆さんの事をお話したら、ピートさんも、お会いしたいとの事です。どうぞ奥の方にお越しください。」
という訳で、店の奥の方で、ピートと会う事となった。俺等はサキに案内され、奥に進んだ。
「懐かしいですねピートさん。」
「ああ!」
「ねぇ、あたし達も良いの!?そのピートって人、全然知らないんだけど…」
「オレっちも!」
レイナが聞いてきた。
確かに、レオとレイナは、ピートとは面識ない。レオはホープスを出た後で、レイナに至っては最近俺等と知り合ったからな。
「勿論だよ。レオ君とレイナちゃんの事、ピートさんに紹介したいからね!」
「うん。姐さんがそこまで言うならね…」
「…(別にそこまでって程、言ってないだろ…)あっそうだ、2人共、ピートに会うなら少し気を引き締めとけよ!?」
「気を!?何で?」
「すぐに解る!」
等と話してる内に、ピートの待つ部屋にたどり着いた。
「お客様をお連れました!」
「どうぞ!」
サキがドア越しに声を掛けると、中から返事が返ってきた。その声は、ピートのものだった。
サキがドアを開け、
「どうぞ!」
と言い、俺等は中に入室した。
そして、そこにいた、
「どうもお久しぶりです!」
ピートと対面した。サングラス風の眼鏡をかけた、超強面の顔のピートと目があった。ピートは、(恐らく)笑顔のつもりだろうが、返って不気味に見えてならない。
久々に会ったピートだったが、
「「……」」
俺とリリーナは、一瞬硬直した。もう見慣れたつもりだったが、久々に会ったので面食らった。
その一方で、
「「ひぃ〜!」」
初めて合うレオとレイナは、ビビっている。
普段気の強いレイナだが、萎縮している。
「あの…」
そんや俺等の様子を見て、ピートは少ししょげてしまった。
「あっ、スミマセン!久しぶりにあったもので…もう見慣れた顔と思ってたのですが…」
「フォローになってないぞリリーナ…」
「いいんです…慣れてますから…」
青菜に塩の事く、元気を無くすピート。
何とかしないと…
「にしても久しぶりだなピート。元気にしてたか?」
「ええ、お陰様で。店の方も順調です!」
「それは何よりだ。聞けば、ココの店主に菓子作りを学んだんだってな!?」
「そうなんです。普段はお優しい人なんですが、修行は厳しかったですよ!?」
「で、その店主のご両親がお亡くなりになったんだってな!?」
「はい。旦那さんの方は、ここの先代の主人で、跡を継いで店主になられたのです。修行中、良くしてくださいました。」
祖父師ってやつかな!?
「少し前に、手紙で亡くなられたとの知らせが届き、お店の方は従業員達に任せて、急遽この国に戻って来たんです。」
元々は1人でやっていたが、商売が軌道に乗り、忙しくなってきたので、従業員を雇うようになったという。
「そうだったのか…ところで、ピート以外にも弟子がいるそうだな!」
「ええ実は、偶然にも、他の皆も戻って来てるんです!よろしければ紹介しましょうか?」
「そうだな、折角だからしとくか!?」
「ですね!」
こうして、他の弟子達とも会う事となった。
サキが他の弟子達を呼びに行った。数分して、
「皆さんをお連れしました!」
サキに連れられ、弟子達が入って来た。
その弟子達の顔を見て、
「「キャア!!」」
「ひぃ〜!」
「……」
今度は俺等全員、驚愕した。
入って来た面々は、ピートに負けじとも劣らすの、強面揃いだった。
1人はモヒカン刈り。
1人はどこぞのA級スナイパーみたいな男。
1人はスキンヘッドに左目に眼帯をしていた。
更に1人は、髭を生やした大男だった。漫画に出てくる、ヤンキーや盗賊団の頭といった感じの面々だった。
「何、どしたの!?」
女性の声がした。女性の弟子の人もいたようだ。
が、入って来た女性は、女暴走族や極妻みたいな女性だった。
「この人達が私と同じく、師匠の元で菓子作りを学んだ人達です!…って、どうしました!?」
「いや、何でも…」
「……」
俺等は恐怖ですっかり震えてしまっている。
そこへ、
「何だお客さんか?」
「師匠!」
師匠。つまり、ここの店主であり、ピート達に菓子作りを教えた人物が入って来た。が、その人を見て俺等は再び驚愕することとなった。
「いっらっしゃい!!」
「「「………」」」
俺等は声が出なかった。
何故なら、店主が一番怖かったのだ。店主は顔中傷だらけで、尚且つ、ものすごくドスの効いた声をしていた。
「どうかしたのかい!?」
「……」
声をかけられても、恐怖で返事の言葉が出てこなかった。
この店、店主とその弟子達が、怖い顔の人ばっかだった。
下手なお化け屋敷やホラー映画よりも怖いぞ。
類は友を呼ぶとはまさにこの事か…
そして、サキ。よくもまぁ、平然としてられるもんだな…と思った。
祖父師
正しくは、武道の世界での、師の師を指す言葉です。