アズビー菓子
タイガー達がジパーネ国に入国した後。
「いやぁ、本当に久々の客人だったな!」
「ああ、それも4人も…」
「男1人・女2人に子供1人か…一体、どういう関係なんだ!?」
「そうだな…片方の女が、もう片方を「ねえさん」って言ってるのを聞いたから、姉妹と、口ぶりからしてそのドッチかの彼氏、そして、その弟ってところじゃないかな?」
と、(色んな意味で)当たらずとも遠からずな予想をする門番A・B達。
一方、窓口のおばさんは再び暇になり、のんびりと菓子をお茶請けに、茶をすすっている。
ガサ!
「!?」
物音に反応するおばさん。
視線を向けるも、そこには何も無く、それ以降は、特に何も聞こえない。
「…気のせいかね…」
気のせいと、結論づけたおばさん。
が、近くの森の中にて、
「4人は国に入国したな。」
「我々はどうする?」
「少し時間を開けて、別の門から入るぞ!」
「了解!!」
謎の数名の人影が潜んでいる事に、気付かなかったのだった。
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「コレがジパーネか…」
ジパーネ国に入国した俺達4人。
取り立てて派手さは無いが、何とも平和そうな国だ。瓦屋根の家こそないが、俺は何処か、日本の地方を思わされた。そういう、雰囲気を感じた。元々、それを充てにしていたので、そこは希望通りになった。
行き交う人達も、首から下げた札で俺等が観光客だと分かると、
「今日は!」
「ゆっくりして行ってね!」
と、気軽に挨拶してくれた。
挨拶に返事をしつつ、何か見どころがないか質問した。
「そうだね…この近くだったら…」
手頃な場所を何ヶ所か教えてもらい、そこに向かった。
「わぁ…」
「随分と立派な石像だな…」
最初に向かった場所は、高さが約3メートル程はある、立派な石像が祀られていた。
側にある立て札によると、その昔、この辺りを納めていたお偉いさんの石像らしい。
石像の前の水鉢には、少額の小銭が数枚、入れられていた。お賽銭みたいなものか。そういうのは、日本と変わらないな。
その後も、教えてもらった場所をいくつか回った。最初に見た石像を始め、歴史ある聖堂、樹齢数百年の神木と、小さな国たが観光スポットは多いようだ。
観光の最中、沢山の畑を目にした。この国は、主に林業と農業で成り立っているらしい。国の周りの山もこの国の領土で、そこの木々で林業を行っている。国内でも、畑で各種野菜等を育て、収穫し、近隣の国々におろしている。
この2つが主な収入源だ。
後は、俺等のような観光客が落としていく金だが、見ての通り、観光客事態が少ないので、そっちは小遣い稼ぎ程度の様だ…
まぁそれは置いといて、いくつか観光スポットを回った後、
「腹減った!」
と、案の定、レオがごねだした。本当、このパターン何度目だ?完全にテンプレだ。
「しょうがねーな、まあ確かに沢山歩いたからな。でも、この辺に食うとこって…」
「タイガーさん、あそこはどうです!?」
リリーナが指差す方には、茶店らしい店があった。営業中の札も出ている。
「よし、アソコで一息入れるか!?」
「うおー!」
「あっ、おい!」
速攻で飛んでいくレオ。
「賛成!姐さん、あたし達も行こう!」
「あっ!ちょっとレイナちゃん…」
リリーナの手を引き、茶店に向うレイナ。
「だから、俺を置いてくなって!!」
皆を追うように俺も茶店に向かった。
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「うめ~!」
「うん、このアズビーっていう豆のお菓子、始めて食べたけど美味しい!」
何時ものようにガツガツ食うレオと、始めてのアズビー菓子に舌鼓をうつレイナ。
この茶店は、アズビー菓子を出す店だった。地球でいうところの和菓子屋に近いだろう。
アズビー菓子。俺とリリーナも、ホープスで出会った菓子職人ピートの店でも食べた。土産も貰ったが、ソッチはレオに食われてしまった…
先程見た畑にも、収穫前のアズビーが沢山実っていた。この国の主要生産物だからな。
なので、久々のアズビーをじっくりと味わう。
「お茶のお代わりいかがですか?」
店員の若い女性が尋ねてきた。
「ああ、もらいます!」
「私も!」
「あっ、あたしも!」
お茶のお代わりをもらい、味わいながらアズビー菓子を堪能した。
「ふぅ~、ごちそうさま!」
一通り食べ終える。
すると、先程の女性店員が、お盆で何かを運んで来た。
「あの、よろしければコチラもどうでしょう。今度、発売予定の新製品なのですが、ご試食どうでしょうか?お代は結構ですので!」
「おー、食う食う!!」
いの一番に手を伸ばすレオ。まったく、まだ食うのかよ…
それは兎も角、折角なので新製品とやらも頂く事にした。
「どうぞ!」
女性店員が新製品を俺等の前に置いた。
それを見て俺は、
「!?」
少し驚いた。
「あれ、コレって…」
リリーナも同様だ。
「コチラ新製品の…」
「ポックルン焼き!」
「えっ!?お客様、何故ご存知なので!?まだ発売前なのに…」
そう。新製品として目の前に出された菓子。それは、ピートの店の目玉商品の一つ、ポックルン焼きだったのだ。
本編に出て来た「当たらずとも遠からず」ですが、「当たらずといえども遠からず」というのが、正しいそうです。前者の方が一般的(?)なので、あえてそうしてます。