ジパーネ国
「ご乗車ありがとうございました!」
俺達は馬車の停留所で降りた。
俺等が降りた後、馬車は走り去っていった。
「ココで降りたのは、俺等くらいか…」
「いえ、私達以外にも降りてる人いますよ!」
「本当だ。」
リリーナの見る方には、3人の男女がいた。一人は中年の女性で、後の2人は3~40代位の男だ。彼等はすぐに停留所を離れて立ち去った。
こんな辺ぴなとこに何しに来たんだ?と思ったが、俺等も似たようなものか…
「なぁタイガー!」
「どうしたレオ!?」
「ココが次の目的地か?」
「いや、まだもう少し先だ。ココからは歩きだ!」
次の目的地、ジパーネ国は今いる停留所から暫く歩いた先にあるらしい。
ジパーネ国は山間部にある小さな国で、 今いる停留所が一番にして、唯一の最寄りなのだ。
「ええ…歩くのかよ…」
その場にしゃがみこんで、気だるそうに言うレオ。
「文句言うなって、向こうに着いたら、例の美味い菓子食えるんだから我慢しろ!」
「!そうだった!あのうめ~の又食えるんだったな!!」
ガバっと勢いよく起き上がったレオ。
「ほれそれ、早く行こーぜ!!」
と、打って変わって、生き生きして張り切るレオ。本当に、現金な奴め…
「って、そっちじゃないぞ!コッチだコッチ!!」
レオは、全く違う方へと走り出した。慌ててレオを捕まえに向かう俺。
「食べ物のことになると、人が変わるわねあの子って…」
「それがレオくんの、個性だよレイナちゃん!」
「でも、そのお陰で姉さんもタイガーも、色々大変な目にあったんでしょ!?」
「あぁ…うん…」
リリーナの脳裏には、レオの食欲によって被った事が、フラッシュバックしていた。
屋台の品を勝手に食って店主に謝ったこと、ジョウのレストランで食材を食い荒らし、2人で働いて返した事など…
「前の町でも、つまみ食いはする、クッキー投げ大会でも、投げる用のクッキー食べちゃうし…」
「うん…でも、悪いことばかりじゃないよ!?そのつまみ食いのお陰で、ケイさんのお店の新メニューが誕生した訳だし、タイガーさんが言ったけど、こういうふうに最終的に良い結果になるのを、災い転じ…ええっと…」
「「災い転じて福となす」だろ!」
「タイガーさん!そうそう、それそれ!」
明後日の方に走り出したレオを捕まえて、戻って来た俺が、補足するように言った。
「目的地は向こうだ!」
「そっか!そんじゃ、改めて…レッツゴー!!」
「だから、勝手に行くなっつーの!!」
そんなやり取りをする俺とレオ。
「姐さんなんだかあの2人って、本当の兄弟みたいだね!?」
「でしょ!?自由奔放な弟とそれに手を焼く兄って感じかな!?」
「確かに…そう言えばさ、姐さん!」
「何、レイナちゃん!?」
「さっきの、災いなんとかってやつ。始めて聞く言葉だけど、タイガーって、どこ出身なの!?」
「えっ、あぁ、そうだね…」
「記憶喪失で、昔の事とかは、忘れてしまったんでしょ!?」
「うん。でも、全く無いわけじゃ無いらしいの。確か、おぼろげ…にあるって…」
「おぼろげ!?どういう意味?」
「さぁ…そう言えば、確かにタイガーさんって、時々、私達が知らない、聞いたことのない言葉を言う時あるよね…」
「…彼の出身地で使われてる言葉かしら!?」
「あぁ、その可能性は、あるわね!」
「出身地が分かれば、忘れてしまった過去とかも、分かってくるんじゃないの!?」
「うん。旅をしていれば、何時の日か、タイガーさんの出生とかも分かるんじゃないって、私も思ってたの!」
「流石、姐さん!!」
「そんな大したことじゃ…」
と、いったやり取りが行われているのが、少し離れた俺の所まで、聞こえてきていた。
それは置いといて、俺等はジパーネ国を目指して、歩き出した。
公国で調べて得た情報によると、コッチの方であっているはずなのだが、間違ってないか不安だ。生憎この世界に、スマホのナビもGPSも無いからな…
「何しろ、ジパーネは小さな国で、国民ものんびりとした人が多いお国柄らしい…」
調べた際、書き写したこの辺りの地図とにらめっこしながら言った。
「悪い奴らに襲われたりとかしないように、目立たないようにしてるみたいだから…」
「タイガーさん、アッチみたいですよ!?」
「えっ、何で分かるんだ?」
「だって、ほら!」
リリーナが指差す先には、
【ジパーネ国 この先〇〇〇m➔】
と書かれた、どデカい看板があった。
それを見て思わずズッコケそうになった俺。
「なんつーデカい看板だ…目立ちたがりなのか、そうでないのか、ドッチなんだよ…」
「まぁ、いいんじゃないの、分かりやすくて!?」
とレイナが言う。
まぁ、迷わないにこしたことはないが…
「…まぁいいか…」
気を取り直して、俺等はジパーネに向かった。
やがて、看板に書いてあった通り、
「おお!」
「ここが…」
俺等は次の目的地、ジパーネ国にたどり着いた。