祭の後
収穫祭も無事に終わり、俺等は…
「コレは何処に?」
「向こうの方にまとめといてもらえるかな!」
「あいよ!」
祭の後片付けをしている。
何で俺が、後片付けをしているのかというと…
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時間は少し遡る。
収穫祭 最終日の翌朝。
「それじゃな兄ちゃん達!」
「さよならです!」
「ああ、気を付けてな!」
「みんな元気でね!」
朝早く町を出る、合唱団を見送りをした。
「ナタク、これからもみんなのアニキ分として、しっかりな!」
「言われなくても、わかってら!」
「ふふふ!」
「みんな乗ったね!?それじゃあ、出発!」
合唱団の引率の大人(聞いた話、神父の知人らしい)が、合図をすると共に、皆を乗せた馬車は走っていった。
馬車が見えなくなるまで送った。
「行ったな…しかし、まさか合唱団とはな。随分とまぁ、大所帯になったもんだな…」
「ですね。でも、みんな元気そうでよかったです!」
「だな!」
そう言って俺等は、馬車乗り場を後にした。
その後、祭の役員のエムーが、他の役員の人達と話しているのを見付けたが、何やら困り顔だ。
「どうしました?」
「おや、皆さん…」
「何か困った顔したけど…」
「それが…」
話しを聞くと、祭の後片付けをするのだが、係りの人間が相次いで、急用が出来て、片付けに参加出来なくなったらしい。
「他の都合もあって、今日中に終わらせたいんですが…」
困り顔のエムーを見て、
「タイガーさん…」
「ああ!!」
そこで、俺等が手伝う事となった。
レイナの件もあるとはいえ、運営側の施設に、タダで寝泊まりさせてくれたしな。数日分の宿代を考えれば、その位は、お安い御用だ。
「うんしょ!!」
俺は資材を運んでいる。
「ふぅ~…」
顔の汗をぬぐっていると、
「ほら、しっかりやんなさいよタイガー!」
「レイナ…分かってら!」
ゴミ袋を下げたレイナにそう言って返し、俺は次の資材を取りに行った。
ゴミ袋をゴミ捨て場に置いた後、レイナは、
「捨てて来たよ姐さん!」
「ありがとうレイナちゃん!」
リリーナとレイナは会場の掃除を手伝っている。
「でも、いいのレイナちゃん!?」
「いいのって、何が姐さん?」
「レイナちゃんって、貴族の家柄なのに、こんな事を手伝わせちゃったりして…」
「いいから、いいから!これも人助けだよ!人助けするのに、身分は関係ないからね!」
「そう…」
そう言いながら掃除していると、そこへ、
「あっ、おはようございます!」
「サヨちゃん!」
箱を抱えたサヨが通りがかった。
ブルマン氏の店の片付けを手伝っているらしい。
「朝早くから元気だね!?」
「いえ、普段から朝練で早起きしてますので…」
「ああ、そうか…」
「そうそう。朝早くからやる鍛錬って、身が引き締まるしね!」
「そうです、清々しい朝にやるのがまた、いいんですよ!」
「分かる分かる!いいもんだよ、姐さん!?」
「へぇ、そうなんだ…」
「どう姐さんも、今度一緒に軽く、ロードワークでもしてみない!?結構、気持ちいいよ!?」
「わ、私は、遠慮しとくよ…」
等とワイワイ話している。
レイナにサヨ。妙に分かり合えている。どっちも格闘家。気が合うのだろう…
って、それよりも。
「おーい、手が止まってるぞ…」
「「あっ!!」」
「レイナ、そっちこそしっかりやれよな!」
「うぅ…」
「たく…ん!あれは…」
「どうしましたタイガーさん?」
「アソコで材木を運んでるのって、武道大会でレイナと一回戦であたった男じゃ…」
俺が指差す方で、男が重そうな木材を、汗をかき、死にそうな顔で運んでいた。
「あっホントだ!名前は確か…」
「ドラムーさんですよ!」
「ブルマンさん!」
「おじさん!」
「サヨが戻ってくるのが遅いから、探しに来たんだよ!」
「あっ、ごめんなさいおじさん…」
「ははは。いやそれよりも、何で彼が…確かいいトコのボンボンなんじゃ…」
「それが、大会で負けたことで、父親に勘当されたそうですよ!」
「絶縁!そういや、そんなこと言ってたな…」
「それも所持金0で放り出されたそうです。」
「(無一文でか…)」
「完全に縁を切られお金も無し。しかも、普段から家柄をいいことに偉そばっていたもんですから、誰一人として、助けようという人がいなかったそうです…」
「ありゃ〜…でも、愛人が4人もいるんじゃなかったか?」
試合でレイナに、5人目にしてやるとか言ってたから、4人いるのは間違いないだろう。
「それが元々、お金目当てで付き合っていただけだったようで、勘当されたと分かった途端、そっぽ向かれたようです…」
「結局、金か…」
「お金も無く、親も愛人、住む家と全てを失い、アチコチに泣き付いて、何とか肉体労働の仕事をさせてもらったようですが…」
ブルマン氏はドラムをチラ見し、
「それも、何時まで持つでしょうか…」
と言った。
その間もドラムーは、厳ついガテン系の人達に怒鳴られながら、涙目で、汗と泥塗れになって働いていた。
因みに、ココでの仕事が終わったら、次はこの近くの炭鉱で、働く予定だとか。
自業自得とはいえ、なんともまぁ、悲惨な末路だことで…
「でも、よくそんな事知ってるな!?」
「飲食店をやってますので。お客様と世間話を話している内に、自然と色々な噂話が、耳に入ってくるんです!」
「なる程な…って、俺も手が止まっちまってた!」
「レイナちゃん私達も!」
「だね、姐さん!」
俺達は後片付けに戻った。
ブルマン氏とサヨも自分達の作業に戻った。
あっ、因みに、最初の方からレオの姿が無いが、そのレオはというと、
運営の施設、俺らが借りている部屋にて、
「ZZZZZ…!!」
祭でたらふく飲み食いしまくり、(ドラムーとは対照的に)満面の笑みで、大イビキをかいて寝ていたのだった…